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突然、C.C.がやってきた事に、その場にいた騎士団幹部とキョウトの面々は驚いた。
いや、一人、藤堂だけはあらかじめ知っていた為驚かなかったのだが。
C.C.は一同を見渡すと桐原に視線を向けた。
「桐原公。ゼロが話があるそうだ。‥‥それと、藤堂。お前も来い」
次いで藤堂に視線を転じると、その後はそのまま踵を返して立ち去ろうとする。
慌ててC.C.の背中へ、扇が声をかける。
「ちょっ、ちょっと待ってくれC.C.。ゼロは」
「後だ。今は忙しい。桐原公に藤堂。いつまでゼロを待たせるつもりだ?」
足を止めたC.C.は肩越しに扇を睨みつけると、それだけ言って再び歩き出した。
「わかった」と呟いた桐原と、無言のままの藤堂がその後に従った。
その背後では、アチコチでざわめきが巻き起こっていた。
ゼロはその部屋で、ソファに座っていた。
マントを羽織り、仮面を被り、入って来たC.C.と桐原、藤堂の三人を待っていた。
二人を招きいれ、最後に入ったC.C.は、そのまま扉を閉めて鍵をかける。
「座れ。立ったままでは話も出来まい」
C.C.が後ろから声をかけると、桐原は向いのソファに座る。
動かなかった藤堂に、C.C.は苛立ち紛れに再び声をかけた。
「藤堂。座らないのならば、追い出すぞ」
言われて、藤堂は桐原と同じソファに座るのも躊躇われ、横のソファに腰を降ろした。
といってC.C.が座る様子は見せない。
「この場に、藤堂を呼んだのは、この男もまたお主の正体を知っているからか?ゼロ」
まずは桐原が切り出した。
「‥‥そうだな。藤堂ともあの時会っている。知っていてもおかしくはないだろう?」
ゼロは平然と言う。
「ならば、‥‥仮面を取って話をしてはどうだ?」
桐原の言葉に、藤堂は息を呑み内心焦る。
だが、C.C.もゼロも平然としたまま、ゼロは頷いた。
「良いだろう」
答えたのはゼロだったが、仮面に手を伸ばしたのは、いつの間にかゼロの背後に立っていたC.C.だった。
カシュンと軽い音を立てて、仮面が取り除かれた。
既に仮面の下にある顔を知っているはずの桐原と藤堂は、だがしかし、それを見るなり驚きに絶句してしまう。
ゼロの素顔の、左目を覆うように黒いバンダナが斜めに取り巻いていたのだ。
「‥‥それは、一体‥‥」
呟いたのは桐原だった。
藤堂は、もしこの場に桐原がいなければ、ゼロに突進していってバンダナを剥いでいたかもしれない程、驚いていてまだ声が出なかった。
「何が有った」、あるいは「どうした」と、詰問していたのかも知れない自分を、藤堂は自覚していた。
「気にするな。‥‥それよりもこの先の話だ。キョウトにはわたしの指揮下に入って頂く。『特区』が不発に終わった今、我々が『日本』を宣言する為に」
ゼロはなんでもないという態度を崩さず、桐原を呼んだ本題に入った。
「キョウト六家はわしが説得しよう。‥‥だが、『特区』と違うと認めさせるのは、こうなると少々骨じゃぞ」
「‥‥宣言した後、トウキョウ租界を落とす。そこを手始めとして、日本全土を開放していく。そうすれば"日本人"も認めざるを得まい」
隻眼でも尚鋭い眼光で、ゼロは言い切った。
「‥‥お主は、今後の展開を、どこまで見ておるのじゃ?」
少し思案した桐原が訊ねる。
「コーネリア皇女が妹姫の為に打てる手は八通り。その内、ブリタニア皇帝にユーフェミア皇女の『廃嫡宣言』をおこなわせない手は二通りしかないな」
ゼロはそう切り出した。
「『廃嫡宣言』が出されれば、"日本人"の支持は一気にこちらに傾くだろう。そうなれば、全国各地で、一斉蜂起と言う事も有り得るな」
「‥‥コーネリアが、何もしなくても皇帝が『廃嫡宣言』を出さない、という事はないのか?」
藤堂が、黒いバンダナの下を気にしながらも、そう切り出す。
「それはない。奴がこの機を逃すとは思えないからな。出さない時は、コーネリアか、‥‥シュナイゼル辺りが働きかけた時だけだ」
「その根拠はなんじゃ?」
確信めいたゼロの言葉を不思議に思った桐原が、訊ねる。
「‥‥『閃光の』マリアンヌの庇護下にいたおれ達が良い例だな。‥‥奴はコーネリアの庇護下にいるユーフェミアを見てはいないだろう」
ゼロの自嘲気味の言葉に、二人は日本に送られてきた幼い皇子と皇女を思い出していた。
「出されなければ、『ゼロ』の虚言だった、とでも言い繕い、あの場の惨劇を黒の騎士団のせいに出来る。あちらにとってはそれがベストだろう」
クツクツとゼロは笑いながら言う。
「‥‥そうなる確率はどの程度と見ておる?」
桐原が痛ましそうな表情を浮かべて尋ねる。
「‥‥まず、二割も有るまい。その筋書きに達するには、コーネリア達にとっては道が険しすぎよう」
「宣言を出させない方法が二通り、と言ったな?‥‥それは?」
藤堂が口を挟む。
「コーネリアがブリタニア皇帝に向かって言えば良い。『ユーフェミアの代わりにわたしを』‥‥と。奴はそれ以外は恐らく認めまい」
ゼロの言葉に桐原も藤堂もC.C.すらもが目を見張って絶句する。
「もっともそうなれば、庇護をなくしたユーフェミアに待つのは、他の皇族による毒牙である以上、コーネリアはそれを口にはしないだろう」
「それで?もう一つの方法とは?」
C.C.が後ろからゼロの仮面を胸に抱えたまま訊ねる。
「‥‥宣言者がいなければ、宣言しようがないと思わないか?」
ゼロはその整った顔に悪魔の笑みを浮かべる。
禍々しくも美しいその表情に、桐原と藤堂はハッと息を呑む。
「‥‥‥‥。それこそあり得ない話だな?まさか、貴様が殺めに行くとでも?」
「まさか。‥‥シュナイゼル辺りなら、本当に守りたいと思っていればそのくらいはするだろうと思ったまで」
「第二皇子は、‥‥行動に出るかの?」
桐原が乾いた唇を舌で湿らせながら、訊ねる。
「出ないな。‥‥出るとすれば‥‥、コーネリアに対して何らかの交換条件を出す場合か?弑逆するとなればコーネリアは頷かないかな」
ゼロはそこまで言うと溜息を吐く。
「この辺りは予測でしかない上に、あの二人は読む相手としては少々厄介だからな。暫く様子を見る必要はあるだろう」
随分と先走った事を訊ねていたと言う事に思い当たり、桐原は頷いた。
「‥‥ゼロ。‥‥そのバンダナは如何にした?それもユーフェミアにやられたものなのか?」
桐原は仮面を外しているにも拘らず「ゼロ」と呼び掛けていた。
それはゼロの放つ気がそうさせているのだが、ゼロは怪しく笑う。
「‥‥いいや?これはわたしがゼロである事の証。それとも代償と言うべきかな?」
左手をバンダナの左目の部分に宛がい、皮肉気に言うゼロは残った片目でC.C.を見上げる。
「‥‥‥‥そうだな。代償‥‥、だが、呪いと言いたくはならないのか?」
C.C.は頷き、仮面の表面を撫でてから、何かを堪えるような表情を見せて尋ねた。
「ならない。‥‥第一自ら望んだ事だ。‥‥さて。宣言は夕刻。舞台は任せる。まずは先手を打つとしよう」
ゼロはC.C.に笑いかけ、スッと真顔に戻って桐原を見据えると言った。
桐原はそれ以上の話はないと見ると、立ち上がる。
桐原からの目配せを受け、内心渋々藤堂も腰を上げる。
藤堂は桐原に続いて部屋を出る直前、ゼロを振り返り、視線を絡ませ合う。
フッと微笑んだゼロが頷くのを見て、藤堂もまた笑みを浮かべて頷き返し、部屋を後にしたのだった。
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作成 2008.01.20
アップ 2008.01.29
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「おれを撃て」【8】ゼロの私室にて密談。
結構アチコチに出没する桐原登場。
さて八通りとか適当に言ってるけど、全然考えてないし....(汗
本編でシンジュクゲットーの対クロヴィス戦でルルが言った言葉。
どんな手が有ったのか知りたかったなぁ~とか思うんですよね。
「一番愚かな手を打ってきたか」....他の手は~(涙)
なので、ここでも残る六通りがどんなのかは知らないw