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※「七夕と願い事」の続き
七夕であるその日の夜、満天の星空の下、テレビのスクリーンが黒の騎士団によってジャックされた。
『さて。七夕に無粋な事をして申し訳ない』
スクリーンに映ったゼロがそう挨拶した直後だった。
すぐにスクリーンに映らない場所にいるのか女性の声が割って入って来る。
『ブリタニアに告げるわぁ。これから藁を手に入れようと思うのぉ。人形を作る為なんだけどぉ。後五寸釘はちゃぁんと入手したから心配要らないわぁ』
『おい、一体何を言っているんだ?』
『良いから貴方は黙ってなさいなぁ。‥‥聞いてるかねぇ?皇帝に効かない事は過去に実証済みだからぁ。周囲から攻める事にしたわよぉ』
『おい、何を!何故バラす?逃げられるではないか』
『あらぁ?どこに逃げたって効果に変わりなんてないんだから良いじゃないのぉ。ゼロに味方するってぇなら、対象外にするらしいけどねぇ』
ラクシャータがそう言ったところで、スクリーンが二つに割れた。
『それ、本当かぃ、ラクシャータ!?』
現れたのはメガネをかけた銀髪の男で、その白衣の後ろに軍服を着た女性が控えている。
『あんたは別よぉ。プリン伯爵ぅ。なぁんで速効で喰いついてくるのかねぇ』
『だって、君がそう言うからにはゼロってあの方なんだろ?そうじゃないかとも思っていたし、それなら騎士団につこうかなって思ってさー』
『そうですよ、ラクシャータさん。わたしもそちらに行きますね。あ、ランスロットは持参しても良いですよね?』
『あ、デヴァイサーは要らないわよぉ。確かプリンも乗れたはずだしぃ。プリンはなんとか許容してもぉ、パーツまではねぇ?』
『大丈夫ですよ。気付いてませんから。じゃあ、ロイドさんとそちらに向かいますね~』
ブツンと音を立てて黒くなった半分に、分割されていたスクリーンが戻るかと思いきや、すぐさま別の人物が現れる。
『先を越されてしまったけれど、わたしも君につこうと思う。構わないだろう?ゼロ』
代わって現れたのは、神聖ブリタニア帝国宰相である第二皇子シュナイゼル・エル・ブリタニアだった。
『‥‥‥‥宰相閣下自らが、ですか?』
『ぅん?そんなの気にする必要はないよ。わたしにとっては君の方が大事というだけの事』
シュナイゼルがそう言うと、シュナイゼルの姿は4分の1になり、その下に更に見知った顔が現れる。
『義兄上ぇえ!何をお一人で決めているのですかッ!!』
『‥‥コーネリア、かぃ?誘って欲しかったのかな?』
肩を怒らせて抗議する第二皇女に、シュナイゼルは普段通りに問いかける。
『‥‥‥‥‥‥当然です』
コーネリアは不服そうな表情のままでこくりと頷いてみせたのだった。
『ゼロぉ。とりあえず、ここにいる意味はもうないわよねぇ?言うべき事は言ったんだしぃ』
『ぇ?いや、しかしわたしはまだ』
『良いから良いからぁ。ほら、笹のところでみんな待ってますよぉ。今日は晴れてますしぃ、存分に願い事を致しましょうねぇ』
戸惑うゼロに対して、女性はそう言ってゼロの背中を押すようにしてスクリーンから退場していった。
二人の皇族をそのままに、人の映らなくなった半面は、数瞬後ブラックアウトした。
慌てたのは四分割表示から二分割表示に切り替わった二人の皇族だった。
『コーネリア。こうしてはいられないね』
『そうですね。わたしはすぐに動きますので、義兄上もお早く。‥‥ではあちらで』
そんなやり取りを画面越しで交わした二人の姿もまたぶつんとした音と共にブラックアウトして、モニターは暫く黒一色となった。
そんな黒画面を前にして、一番慌てたのは、皇帝の傍近くに仕える者達だった。
ゼロと共に映っていた女性の言葉が正しければ、最初の標的にされる可能性が濃厚だったからだ。
そして、地位が高ければ高い程、昔のとある女性について知る者も多く、恐慌状態に陥る者まで出る始末だ。
宰相である第二皇子と、エリア11の総督である第二皇女がゼロにつくと公表しているのだから、自分がそれに乗っても悪くないだろうと言う心理が働く。
そうして、空前の寝返りがここに起こる事になった。
ブリタニア本国、謁見の間にて、ブリタニア皇帝シャルル・ジ・ブリタニアは、玉座に座っていた、何時も通りに。
しかし、謁見の間には他に人の姿はない。
謁見の時間になってから随分と経つのだから、何時もならば引きも切らない長蛇の列の謁見を望む者を相手にしている時間のはず。
しかし、取り次ぐ者もいなければ、取次ぎを待つ者もいない。
護衛の兵も姿を見せず、だだっ広いだけに謁見の間は薄ら寒く感じられ、皇帝は一人首を傾げて人の来るのを待っていた。
一方エリア11政庁では。
黒の騎士団へ寝返る者達が長蛇の列を作っていた。
エリア11総督コーネリア・リ・ブリタニアが、黒の騎士団に政庁を無血で明け渡したからだ。
これまでコーネリアが座っていた椅子に、戸惑いを隠せないらしい仮面をしたままのゼロが座り、寝返る者のリストを手に首を傾げていた。
傍には藤堂とラクシャータ、シュナイゼルとコーネリアにロイドが立ち並び。
壁際には四聖剣と扇、カレンの他、ギルフォードにダールトンにセシル、その他付き従う騎士達が並び立つ。
吐息を漏らしたゼロに視線が集中した。
「‥‥どうした?ゼロ。‥‥疲れたのならば少し休むか?」
尋ねたのは藤堂で、ゼロは首を振ってから藤堂を見上げた。
「いや。‥‥ただ、晴れた日の七夕の威力がいかに凄いかを身をもって実感している」
心底感心したように言うゼロに、「いや、それは違うから」とそれぞれが内心でツッコミを入れる。
結局、ゼロの誤解を解く事が、出来なかったのだ。
そして今回のラクシャータ発案の作戦のせいで、ゼロの誤解に拍車がかかっていて、最早多分その誤解を解くには手遅れである。
何故なら、裏切って長蛇の列を作るブリタニア軍人達の手には折鶴があったりする。
更には列の最後尾辺りには座り込んで鶴を折る者や折り方を教わる者、教えてくれと頼む者がひしめき合っていたりする。
七夕の効果を実感したゼロが、今度は千羽鶴の効果を検証したいと思ったらしく、折鶴持参を条件にした為だった。
そうして受付を済ませた者の書類がゼロの手元にやってきているのだが。
「えーっとぉ。ゼロぉ。千羽鶴幾つ用意するのぉ?てか何祈るのぉ?」
ラクシャータが既に千枚をゆうに越している経歴書に視線を向けながら、尋ねた。
「決まっている。千羽鶴に祈るのは『優しい世界になりますように』だ」
きっぱりと言い切ったゼロに、一同揃って溜息を吐いていた。
了
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作成 2008.08.06
アップ 2008.08.07
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七夕と願い事『ブリタニアからの寝返り』。
七夕と願い事の続き。
8月に七夕をするところもあるから、良いかなぁと。
本当は7月の時点で前後編とかぁと思ってたりしたけれど、
どんどん話がずれていくので、ボツってました。
七夕、丑の刻参り、千羽鶴とお祈り行事三点セットで纏めてみました。(違)