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★hidori様へのリクエスト作品★
(四聖剣とゼロ(又はルルーシュ)がメインの話)
「ゼロってぇ、藤堂さんの事、結構信頼してますよね?」
朝比奈の問いは唐突だった。
その場にいた他の四聖剣にしてからが、訝しげな視線を朝比奈に向ける。
それは尋ねられたゼロにしても同様だったが。
「いやぁ、今逃したら、こんな機会ないと思って。藤堂さんもいないし、おれ達四聖剣とゼロだけだし。だから丁度良いかなって」
朝比奈の明るい口調に、ゼロは溜息を吐いた。
「藤堂の戦略や戦術の知識は経験に基づいているし、頭も切れる。十分に信頼に値すると思うが?」
それでも答えるゼロに、仙波、卜部、千葉も「確かにこんな機会はないかもしれない」と話を聞く体勢をとる。
「ゼロはおれ達が合流する前から、藤堂さんの事知ってたりしました?」
朝比奈の質問はまだ終わらないらしいと、ゼロは手に持っていた書類をテーブルに戻した。
「『厳島の奇跡』はこの地ではあまりにも有名だからな。当時、ブリタニアに土をつけたと聞いて喝采を上げた程だ」
ゼロのその答えには、四聖剣は驚いた。
「当時、からですと?」
仙波が呆然と尋ねる。
「そうだが?わたしは昔からブリタニアが嫌いだったのでな」
ゼロは首を傾げてから頷き、「何をそんなに驚く?」と不思議そうに仙波を見た。
「筋金入りだな~。ゼロって、主義者って奴か?」
そんなゼロの様子に卜部が問うが、ゼロとしては一括りにされたくはないと言う思いもないではない。
「ブリタニアの政策だけではなく、ブリタニアという国の在り方そのものを憎んではいるが、な」
「‥‥‥。何故か、と聞くのもいけないことか?ゼロが何を思って黒の騎士団を率いているのか、それが判らないままでは不安が残る」
千葉が言葉を選びながら尋ねる。
「黒の騎士団を作ったのは、力が欲しかったからだ。一人でブリタニアを相手取るには、少々手間が掛かる。だから騎士団を作った」
ゼロのその言葉は「一人でもやってやれない事はない」と言っているようにも取れる。
「ふむ。つまり、わし等は駒か?」
仙波が冷静に尋ねる言葉に、ゼロは躊躇いもせずに頷いた。
駒という認識のされ方に、眉を顰めないでもない四聖剣だったが、それも束の間の事だった。
「そうだ。一応、指し手はわたしのつもりだが、‥‥そう、言わば賭チェスのようなものだな。負ければ指し手も諸共だ」
そう言って笑声を発するゼロに、「駒は駒でも捨て駒ではないのだ」と納得できたからだった。
「ゼロ。一つ忠告をしておくが、人は駒呼ばわりされる事をあまり好まぬ。少し言い回しに気をつけた方が良かろう」
仙波は真面目な口調で諭すように告げた。
「‥‥そうなのか?‥‥そうか。わたしの戦略の構想の基盤はチェスなのでな。‥‥そうか、気をつけよう」
ゼロは首を傾げ、まるで今始めて知ったとでもいうように、しきりに頷いている。
「真面目だよね、ゼロって」
そんなゼロを見て、朝比奈が評すると、三人は同意するように頷いた。
「当然だろう?人命が掛かっているんだぞ?それに指揮官たるもの、犠牲は最小に留めた上で、最大の効果を得なければならないのだからな」
ゼロは「真面目でなくてどうする?」と不思議そうである。
「なるほど。上に立つ者としては当然の気構えだな。仮面を被っているのに、人がついてくるわけがわかった気がする」
「犠牲は最小って、なら一つ改めた方が良いんじゃないかなぁ?」
千葉は納得し、朝比奈は首を傾げた。
「どこをだ?」
「君だよ、ゼロ。指揮官だからといって、毎回最前線に出る必要はないと思うけど?適材適所って言葉、知ってるよねー?当然」
朝比奈がゼロを指差して説明していると、千葉が横から「指を差すな、指を」と朝比奈の手を叩き落とした。
「しかし、トップが動かなければ、誰もついてこないだろう?」
「まぁ、そーなんだがな。ゼロはこれまでに十分実績を積んでる。少しくらい前線に出なくなったからといって、途端に誰も従わなくなるなんて事はないぞ?」
「卜部さんの言うとおり。だから、前線はおれ達に任せて、後方で指揮に専念すれば、もっと良い成果とか出ると思うんだけどな。ほら、白兜とか」
卜部や朝比奈の言う事もわかるのだが、ゼロは更に反論してみた。
「だが、藤堂も前線に出ながら指揮をしているだろう?」
「藤堂中佐は戦術レベルの指揮官。だが、ゼロは戦略レベルの指揮官、全体を把握しておく必要があり、一つの戦場に出る事がマイナスとなる場面もある」
「‥‥‥そうか。わたしはリーダーが動かなければ、誰もついて来ないと思っていたし、『行け』と言うより、『ついて来い』と言う方が好きなのでな」
「ゼロ‥‥。言いたい事はわかるし、同感だが、好き嫌いで選ぶのはどうかとも思う」
千葉が少し呆れながらも意見を述べた。
「だが、命じられる側も後方で踏ん反り返って『行け』と言われるよりも、先頭に立って『ついて来い』と言われる方が従いやすいだろう?」
「ま、まぁ、確かに前線に立った事すらない上官からただ『行け』と命じられるのは少々辛いのは確かだが‥‥」
「けど、ゼロは前線の事だってちゃんと理解してるからな。無謀で無意味な『行け』にはならないだろう?ならば従うさ、みんな」
仙波と卜部が唸りながら言ったのは、状況を検討していたからだろう。
「ゼロって軍隊にはいた事ないみたいなのに、良く分かってるんだね、そう言うところ」
朝比奈が感心したように言うと、ゼロは軽く溜息を吐いた。
「‥‥そうでもない。ゼロになってから兵法の書物を読みあさりはしたが付け焼刃なのは自覚している」
「待て、ゼロ。ゼロになってから?と言う事は、クロヴィスを暗殺してからなのか?兵法を学んだのは」
千葉が驚きの表情を隠しもしないで、ゼロに尋ねる。
「以前にも読んだ事は有ったが、随分と昔の話だったので、改めて読み直した。‥‥やはり問題だったか?」
ゼロは「そんなに驚く事だったか?」と思いながら質問に答え、仮面を傾けた。
「問題ないから驚いていると言うか‥‥。随分昔って?読み直したってどのくらい?」
朝比奈が呆然と首を振りながら答えた後、とりあえずの疑問点を尋ねてみた。
「そうだな。‥‥日本に来る前の話だからな。‥‥八年くらい前までか?読み直したのは、図書館で関連の書物を総浚いしただけだ」
「‥‥『総浚い』を『だけ』とは言わないと思うが」
ゼロのズレた感覚に、千葉は頭痛を覚えながらも一応の訂正を試みる。
「エリアのせいか、蔵書量が少なくてな。関連と言ったところで昔読んだ分の半分にもならなかった」
残念そうに言うゼロに、租界にあるブリタニアの図書館を思い浮かべた四聖剣の面々は首を傾げた。
「かなり大きな図書館だと思ってたんだが、‥‥本少ねぇのか?」
「そうだな、日本人が建物の外観で考えるよりは少ないだろう。ブリタニア人は無駄な空間を取るのが好きなようだ」
不必要に吹き抜けだったり、天井が高かったりする建物の構造を思い浮かべてゼロは答えた。
「確かにねー。そこまで大きくしなくてもーとか思うのって結構たくさんあるよね、あちこちにさ」
「この地は狭いのだから、極力無駄は省くべきだと言うのに、大半がブリタニアにいる時の感覚で物事を処理しようとしているからな」
そう言ったゼロの視線が、時計に向かい、四聖剣もつられるように時計を見た。
「もうこんな時間か。朝比奈、質問はもう良いか?そろそろ会議の準備を始めないと間に合わなくなる」
「あ、じゃあ後二つ」
と言う朝比奈に、ゼロは軽い溜息を吐いて、「それで?」と問う。
「おれ達の評価を聞いていいかな?ゼロがおれ達四聖剣をどう思っているのか」
「藤堂の部下。絶対に藤堂を裏切る事はしないだろうし、何が有っても藤堂に付き従う。騎士団にいるのは藤堂がいるから、だろう?」
ゼロが即答すると、朝比奈は少しだけ不満そうに「他には?」と尋ねる。
「‥‥流石に軍人だけ有って、藤堂共々、他のメンバーよりも戦闘力は高いし、一から十まで懇切丁寧に説明しなくて良い分楽だな」
促されてゼロはそう続けたが、それでも朝比奈は不満そうに「それで?」と続きをねだる。
「‥‥‥‥。続きを聞くか、二つ目を言うか、どちらが良い?」
数瞬黙ったゼロに逆にそう聞かれて、朝比奈は二つ目を口にした。
「また、時間くれる?それで、『おれ達と話をしませんか?』」
朝比奈の二つ目に、そう来るとは思っていなかったゼロは、くつくつと笑った。
「良いだろう。時間が有ればな。一つ目の続きもその時に言ってやる」
ゼロはそう言うと、書類に手を伸ばし、朝比奈は「やったぁ~」と喜んだ。
「では、わし等も準備をしに戻ります。行くぞ」
仙波が言い、ゼロが頷くと、四聖剣はそれぞれゼロに暇の挨拶をして、一旦部屋に戻る為にその場を後にした。
「おかしな奴等だな」
ゼロはそう呟くと、本格的に書類を読み始めた。
以来、団員達は時々、ゼロと四聖剣が語らう姿を目にする事になる。
藤堂は少し淋しく思いながらその様子を見、団員達はそんな藤堂に少し同情した。
了
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作成 2008.04.24
アップ 2008.05.02
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hidori様へ。
お気に召していただけましたでしょうか?
リクエスト内容に合致しているかはいまいち不明ですが、
どうぞ、お受け取りください。