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混乱の始まりはその日の戦闘終了後の事だった。
‥‥そう団員達にとっては。
アジトに戻った後、月下隊長機からはゼロが、ゼロの無頼からは藤堂が降りて来たのだ。
ちなみにゼロの無頼は、いつもの如く、戦闘中やられて片腕を失っている。
更に言うならば、月下隊長機もまたいつも通り目覚ましい活躍を披露していた。
なのに、乗り手が逆だったので団員達はパニックに陥ったのだ。
「大丈夫か?」
月下隊長機から降りたゼロが無頼から降りた藤堂に近づきながら、そう声をかけた。
「あぁ、怪我はしていない。‥‥月下の扱いはどうだ?」
「体格の差の分だけ、調整が必要だな‥‥このままでは、咄嗟の時ミスが出る」
ゼロと藤堂は外野を無視して会話を続け、揃って溜息を着いた。
「ちょッ‥‥。藤堂さん、それにゼロ!隊長機にゼロが乗っていたなんておれ達聞いてなかったんですがッ!」
朝比奈が抗議の声を上げたのを皮切りに、団員達が口々に疑問や驚きを言い立てた。
「というか中佐、ゼロ。何故今、月下の乗り手を変える必要が?」
裏返った声が大半だった為か、はっきりした千葉の声はしっかりとゼロと藤堂に届き、二人は顔を見合わせた。
「「‥‥‥‥‥‥‥‥」」
暫くの沈黙。
団員達は答えを待って固唾を呑んでいる状態だ。
「そうだな。やはり、四聖剣とラクシャータには話しておいた方が無難だな」
藤堂がそう言うとゼロが頷いた。
「はぁ~あ?おれ達には言えねッてのか!?」
玉城の怒鳴り声。
「‥‥更に混乱するのがオチだ。一度にそんなに宥められるものか」
藤堂が冷ややかな視線を玉城に向けて言い捨てると、歩きだした。
「ラクシャータ、四聖剣はついて来い」
ゼロはそれだけ言うと、藤堂の後を追った。
移した先は藤堂の部屋だった。
藤堂とゼロ、四聖剣、ラクシャータが、朝比奈と卜部が運び込んだ椅子に落ち着いたところで、藤堂が口を開いた。
「実は‥‥」
だが藤堂は珍しく困惑の表情を浮かべて言葉をとめた。
「‥‥説明が難しいからな。代わるか?」
ゼロがそんな藤堂を気遣ってか声をかける。
くすりと藤堂は笑う。
「いや。だが面倒なのは確かだ。いっそ素で話すのが、手っ取り早いだろう」
「‥‥本気か?」
「あぁ。人を絞ったのはその為でもあるのだろう?」
藤堂にしては珍しく笑みを浮かべて言う言葉に、ゼロはチラと四聖剣を見渡して頷いた。
「‥‥そうだな。ラクシャータ、月下の調整を頼みたい」
それからゼロはおもむろに、ラクシャータへ仕事を依頼する。
「ちょッ、待ちなさいよぉ。その前に説明してくれるんじゃなかったのぉ。ゼロぉ」
話があっさりとすっ飛んだ事に、流石のラクシャータも慌てて抗議するが、それに対して「なんだ?」と返事をしたのは藤堂だった。
「月下には今後も藤堂を乗せる。その為に必要な調整だ。やってもらうぞ、ラクシャータ」
藤堂がそう言うので、ラクシャータも四聖剣も、唖然と藤堂を凝視した。
姿は、声も、藤堂なのに、「藤堂を」と他人事のように言い、口調も違い、それはまるでゼロのようで。
「最初から飛ばしすぎだ、ゼロ。少しは加減してやってくれ」
聞いていたゼロが苦笑を漏らした後、藤堂に向かってそう言った。
「‥‥つまり、もしや、中佐とゼロの中身が入れ替わった‥‥なんて事になっていたりするのですか?」
「どうやらそうらしい、千葉」
ゼロが千葉の言葉を肯定した。
暫く続いた沈黙を、朝比奈が破る。
「それって藤堂さん、ゼロの顔を見たって事ですか!?」
「朝比奈。まずそこなのか?他に言う事はないのか?」
ゼロ(外見藤堂)が呆れた口調で朝比奈に言う。
「え?ポイント高くないですか?」
「なんだ、そのポイントというのは‥‥。藤堂、教育しなおせ」
「すまない、ゼロ。多分手遅れだ」
げんなりとする藤堂(中身ゼロ)がゼロ(中身藤堂)に向かって指示を出すも、藤堂(外見ゼロ)はあっさりと謝り匙を投げた。
「あのさぁ?原因と元に戻る目処はぁ?それともずっとこのままぁ?」
ラクシャータが朝比奈をスルーして問いかける。
「‥‥いや、目を覚ました時には入れ替わっていて‥‥」
ゼロ(中身藤堂)は首を傾げながら答える。
「原因ならハッキリしている。『C.C.の悪戯』だ。現に入れ替わって以来、アイツの姿を見かけていないからな。どうせ今頃どこかで笑っているのだろう」
ゼロ(外見藤堂)が心底嫌そうに言い捨てた。
「ちょっと待て、ゼロ。その話は聞いていなかったのだが」
「そうだな。言ったところで、何の解決にもならない。効力切れが何時起こるのか、或いはC.C.がその気になるまでかも知れないが、わたしは知らないのだからな」
藤堂(外見ゼロ)がゼロ(外見藤堂)に抗議するが、ゼロ(外見藤堂)は堪えた様子もなくあっさりと応じた。
「ってそこまでわかっててなんで落ち着いてるのさ。C.C.を捕まえて元に戻すように言わないと」
「今、C.C.はアジトにはいない。ならば表の住まいだと思うが‥‥藤堂にわたしの表になりきって周囲に悟られる事なくC.C.を連れて来い‥‥と?」
朝比奈の焦った言葉に、ゼロ(外見藤堂)は畳み掛けるように説明した。
「う゛‥‥無理だぞ。流石にそこまで器用ではない」
「知っている。期待もしていない。だから言わなかったんだ」
呻いて力なく首を振るゼロ(中身藤堂)に、藤堂(中身ゼロ)はどこか遠い目をしながらもすっぱりと言い切った。
「‥‥そんなに大変なのですか?表の行動は‥‥」
仙波が「藤堂に期待していない」と言い切るゼロ(外見藤堂)に少しむっとしながら尋ねた。
「想像出来ないからな上司にからかわれる藤堂や、書類に埋もれる藤堂や、多数の男女に追い掛け回される藤堂は」
あっさり言うゼロ(外見藤堂)は「‥‥第一、下手をすれば殺傷沙汰になりかねない」とこれまた心底嫌そうに言い切った。
その例えに、「ゼロって表で日常的にそんな生活をしてるのか‥‥?」と四聖剣の頭の中にハテナマークが飛び交った。
「ちょっとぉ。殺傷沙汰って物騒だけどぉ?そんなに危険なのぉ?」
ラクシャータはあっさり前半をスルーして自分の気になるところだけを尋ねる。
「‥‥さて。藤堂がキレる状況が待っている可能性があるのでな。流石にわたしの表の姿でそんな惨事を引き起こして貰いたくはない」
藤堂(中身ゼロ)はまっすぐにゼロ(中身藤堂)の仮面を見据えて真面目な表情で言う。
「‥‥つまり、おれがキレる状況を表で体験している、ということだな?ゼロ。‥‥やはり彼、か?」
藤堂(外見ゼロ)は声を低くして唸るように言う。
既にキレかけている藤堂(外見ゼロ)に、四聖剣はゼロ(外見藤堂)の暴言への非難を取り下げた。
「それは答えられないな。言っておくが、表に出る事は認めないからな、藤堂。大人しくしていろよ」
藤堂(外見ゼロ)の言葉を物ともせずに、ゼロ(外見藤堂)が逆に藤堂(外見ゼロ)に警告する。
「‥‥あぁ、承知した」
暫し検討する為に黙った藤堂(外見ゼロ)は、重々しく頷いたのだった。
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作成 2008.04.14
アップ 2008.05.01
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災厄は突然に【1】混乱。朝比奈:「え?ポイント高くないですか?」
なんとなく混乱モノを。
またもや終わりなど考えずに書き始めました。