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コードギアスの二次創作サイト。 ルルーシュ(ゼロ)至上主義です。 管理人は闇月夜 零です。
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ギ ア スの小説を書いています。
ゼロ(ルル)至上主義です。
騎士団多め。
表現力がなく×ではなく+どまり多数。
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ルルーシュは、エルとして笑顔を見せながら、内心苦虫を噛み潰して桐原を睨むのを何とか堪えていた。
全く、碌な事を言わない。
確かに、相手が藤堂と仙波だと聞いて好奇心が疼いたのがいけなかったのだろうが。(というか「どいつもこいつもゼロに無断で」と思った為だが)
そんな思わせ振りな言い方をする桐原に乗ったのが間違いだったのだろう。
桐原から「ゼロに会う為に黒の騎士団に行ってみるのも一興だぞ」なんて言われたところで、会えるわけがないのだ。
しかも桐原や二人だけならばともかく、この姿を全団員に見せるとなると抵抗もかなりある。

「ゼロ、か‥‥」
桐原の「ゼロをどう思う?」という問いに、藤堂はそう呟いたきり思案に耽る。
「桐原公は如何様に思うておられるのですか?」
その間に仙波が逆に桐原に尋ねる。
それには藤堂も興味を覚えたのか、考えを中断したように、桐原に視線を向けた。
「わし、か?‥‥そうじゃな。‥‥わしは期待しておるよ。あやつがブリタニアを倒す日を、な。待ち望んでおると言えば良いか?」
「ゼロに、それが出来る、と桐原公は信じておられる、と?」
目を見張りながら、仙波は再度尋ねる。
「そう、さな。あやつがその気でおる限り、いずれその日が来ると思うておる。‥‥その為にも大事なものはきちんと守っていて欲しいと願ってもいる」
藤堂と仙波は顔を見合わせる。
「ゼロの、大事なもの‥‥?」
「左様。‥‥あやつがゼロになっておるのも、日本の為に戦っておるのも、全てはその大事なものの為。それが無くなれば、ゼロは唯の復讐鬼になるであろう」
「‥‥唯の、復讐鬼‥‥?」
少女が、驚いたのか、桐原の言葉を復唱する。
「どうした?エルや。‥‥話が怖かったか?」
案じるように桐原は少女に声を掛けるが、少女はゆっくりと首を横に振った。
「いいえ。ですが、大切なものを失ったとすれば全ては色褪せてしまうでしょう。‥‥もしもそれが奪われたとすれば復讐に動くのは自然だと思いますわ」
少女は儚げな外見には似合わず、はっきりと言い、「それのどこがいけないのでしょうか?」と首を傾げた。
桐原は笑う。
「いけなくはないぞ。唯、わしら日本人や騎士団にすれば、ゼロが復讐鬼になってしまい、指導者を失うのは痛手、という話じゃよ」
まだ納得しきれていない少女に向かい桐原は続ける。
「エルや。主はゼロと気が合いそうじゃな。どうじゃ?直接話をしてみれば為になるやも知れぬぞ」
少女は溜息を吐いた。
「おじい様。‥‥わたくしとてナイトメアに騎乗出来るようでしたら自ら騎士団を訪ねたかも知れません。‥‥ですが‥‥」

それだけ言うと、少女は口を閉ざしてしまった。
俯いて、藤堂と仙波に見えない角度で桐原を睨むが、それを承知で桐原は笑った。
「わしの使い、と言う事で、行ってみぬか?そこな藤堂と仙波が一緒ならば手を出す輩もいるまいよ?」
面白い事を思いついたとばかりに、桐原は話を進めたがった。
行ったとしても、ゼロには確実に会えないのを承知している桐原の、それは過ぎた悪ふざけである。
「‥‥おじい様‥‥」
困った風情で、少女は桐原を呼ぶが、桐原はただ笑うだけだ。
「わしからゼロに手紙を用意しよう。それを渡せばゼロとて無碍にはするまい」
そこまで桐原に言わせてしまえば、少女はともかく、藤堂と仙波に断る術はなかった。
あくまでも控えめに拒否していた少女をよそに、こうして、少女エルの騎士団訪問が決まってしまったのだった。

桐原は書状を渡すと言って少女を伴い一度、奥へと引っ込んだ。
「‥‥宜しかったのですか?藤堂中佐。彼女も、あまり乗り気ではなかった様子ですが」
「桐原公としては、内部調査のつもりなのかもしれない。あのような少女を使うのはどうかと思うが‥‥」
二人だけになったその部屋で、仙波と藤堂はそれでも声を低めて会話をする。
「桐原公の意思が変わらぬのならば、連れて行く事になるだろうな。‥‥その時は仙波、彼女から離れるな」
「承知いたしました、藤堂中佐」
桐原の遣いとはいえ、あの少女はブリタニア人で、或いは団員の反感を買いかねない事を二人は理解していた。

───────────
作成 2008.04.20
アップ 2008.07.24
 

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コーネリアはユーフェミアとその騎士とをセシルに任せ、ロイドについてくるように言ってギルフォードを従え部屋を出た。
「義兄上はなんと仰っている?」
「シュナイゼル殿下はですねー。コーネリア殿下が合流した後はコーネリア殿下の指示に従うようにーっと仰ってましたよー」
「‥‥ユフィの名前返上の件については?」
「う~ん。それについては殿下も参っているみたいですねー。『直接皇帝に話を通されてしまっては白紙に戻す事も出来ない』って蒼い顔してましたー」
そう言うロイド自身は全然顔色を変えたりしていないので、信憑性に欠けるものはあるが、コーネリアは「そうか‥‥」と頷いた。
「コーネリア殿下はゼロが宣言した『合衆国』をどうされるおつもりですかー?」
「独立国など認めない。ゼロを抑えて廃止させるか『行政特区』にまで引きずり落としてくれる」
ギッと宙を睨みすえて、コーネリアはそう宣言した。
「‥‥それー、やめておいた方が良いですよー?」
「貴様。姫様に意見する気か?」
「ですがねー、ギルフォード卿?日本人達は今回の件で、『行政特区』が持つ欠点を数多く見つけてしまってますよねー。成功しませんって」
「ならば『合衆国日本』など潰すまでだな」
「ですからー。それをしたら、ユーフェミア殿下の宣言しようとした『行政特区』まで否定する事になりますよー?」
ロイドの言葉はあくまでものんびりとしていて、その実内容は辛辣だった。
「‥‥ならばアスプルンド伯はどうせよ、というつもりか?」
「まずは騎士団との講和、ですかねー?あちらは既に独立宣言しちゃってますから、今後はテロリストとしてじゃなくて一国として扱う必要があるかなーって」
意見を求められたロイドはそう言ってへらりと笑う。
「馬鹿なッ!黒の騎士団のこの暴挙と共にこれまでの事まで不問にしろとでも言うつもりか?」
「ですがねー。『行政特区』としてとはいえ、『日本』を認めるような発言を皇族の立場でしちゃってますからねー。まずは話し合いしないとまずくないですかねー?」
コーネリアとギルフォードはロイドの言葉が正しい事を認めてしまい押し黙る。
「それに、ほらー。黒の騎士団とゼロに呼びかけておいて、やってきたら騙まし討ち~って件も残ってますしー。謝罪も必要なんじゃないですかー?」
続けるロイドの言葉はそれもまた正論だった。
確かに、騙まし討ちがまかり通ると思われたままではこの先、ブリタニアとしての外交全体に大きな影響を及ぼしかねない。
それはエリアの総督としては見過ごしてはならない事だとコーネリアは「くッ」と喉を鳴らす。
「‥‥それは貴様の意見か?それとも義兄上の?」
「シュナイゼル殿下は何も仰って無かったですよー。ユーフェミア殿下の名前返上の件が相当堪えてらしたみたいでしたしー」
ロイドは腐れ縁というべき学友を思って嘆息する。
基本的に弟妹に優しい兄なシュナイゼルは、弟妹に降りかかる災いの報せには弱いのだ。
クロヴィス殿下暗殺の時には顔を見る機会はなかったが、やっぱり蒼い顔をしていただろうとロイドは思っている。
「‥‥しかしッ。ゼロが義弟クロヴィスを暗殺しているのは事実。それまで不問にせよと言うつもりか?」
そして目の前にいるコーネリアもまた、弟妹には優しい姉であり、仇をなす者には当然厳しくなるのだ。
「それはー。交渉で何とかするしかないんだと思いますけどー?こちらにだって報復しようとして周囲巻き込んだ弱みがありますしー?」
コーネリアの考える案はことごとくユーフェミアのおこないによってロイドに却下されまくる。
厄介な事だとは思っていたコーネリアだったが、事ここに至ってその度合いがかなり重いのだとの実感を伴った。
「くッ‥‥しかし。講和ともなるとわたしの一存では決められない。‥‥義兄上にも相談し、場合によっては皇帝へも話を通す必要が生じよう‥‥」
「大変ですねー。殿下でしたら、ユーフェミア様の『特区宣言』が危ないものだと理解されておいでだったはずですよー?何故許可を?」
ロイドに問われて、コーネリアは己の甘さを呪う。
確かに穴は色々とあるとは思っていたし、ダールトンにも早急に詰めるようには言っていた。
だが、まさか開始の日に、宣言すら出来ずに終わるとはコーネリアにすら予想できない事だったのだ。
もしも総督として許可をしなければ、コーネリアは「副総督であるユーフェミアを罰しなければならない」と言う心理が働いたのも事実だが。
「一度皇族として宣言して希望を持たせ、すぐに撤回するなんて人心を惑わすにも程がある」との非難を受けさせるには忍びないとも思ったかもしれない。
しかし、「或いはその方がマシだったのではないか」とコーネリアは今更ながらに思うのだった。
「‥‥どうするにしろ、ゼロにはそれなりの罰を受けてもらうぞ」
コーネリアの宣言には自嘲の色が混じっていた。

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作成 2008.06.27
アップ 2008.07.22
 

五機の無頼改が白兜を振り切って、洞窟に身を隠す事に成功した時、藤堂と四聖剣は、安堵から同時に息を吐き出していた。
そして、あの人外魔境としか言いようのない白兜を相手にして藤堂達の元に辿り着いたゼロを称賛する。
彼等とて一対一ならば逃げおおせる事は出来なかったと思うからだ。


仙波、卜部、千葉と相次いで無頼改から降りると、念のためにと銃を手にまだ姿を見せない藤堂の無頼改に近づいた。
朝比奈は無頼改から降りず、周囲の警戒。
何も言わずともそんな役割分担は出来ていた。
万が一傍受される恐れのある通信は使えないので、降りて来るのを待たなくてはならない。
じりじりと焦りながら四聖剣は藤堂が姿を見せるのを待っていた。


無頼改の中でモニターを通して四聖剣の動きを見ながら、藤堂は「さて‥‥」と思う。
腕の中には、気を失ったゼロがいて、今降りて行けば仮面を取ると言う流れになりそうで躊躇われたのだ。
テレビや雑誌で見て思っていたよりも随分と小柄で華奢にさえ思え、軽い身体に、まだ子供なのだと驚きを隠せない。
「ん‥‥ッ」
低く唸る声が藤堂の耳を打ち、ゼロが身じろぎしたのが伝わって来た。
「気がついたようだな。どこか痛むところはないか?」
藤堂の声にゼロはハッとして身を起こし、それから右腕を押さえて呻いた。
「急に動くからだ。今から降りる。下で手当てをしよう」
藤堂はそう言うと、ハッチの開閉スイッチに手を伸ばした。
「待てッ」
ゼロは掠れたものの、鋭い制止を発して左手を重ねた。
振り切る事は簡単だったが、藤堂は実行せずに動きを止めた。
「‥‥何故だ?」
問い掛け。
何についてかの言及はない。
「‥‥‥‥何の事だ?」
藤堂は思い当たる節があったがあえて尋ね返した。
「何故仮面を取らなかった?」
ゼロの再度の問いは藤堂の思った通りのもの。
「傷ついて意識のない者のか?そんな事はしない」
「今なら意識はあるぞ?」
「‥‥取って欲しいのか?」
「まさか」
「敵でもない者に、無理強いしたりはしないさ。‥‥もう降りて良いか?部下が外で心配しているのだが」
藤堂の言葉にゼロはハッとして手を引っ込めた。
「すまないッ」
律義に謝るゼロに藤堂は苦笑を返しながら、ハッチを開いた。

藤堂はひょいと、ゼロを抱き上げると「ぉいッ」と慌てた声を上げたゼロを無視してコックピットから降りて来た。
「無理はするな。千葉、手当てをしてやってくれ」
「‥‥承知」
ゼロを胡散臭く思いながらも藤堂の指示だからと頷き、治療キットを取りに無頼改へ向かおうとする千葉をゼロが止めた。
「手当ては不要だ。裂傷があるわけでもない。ただの打ち身や打撲程度のものだからな」
「それでも、スプレーや湿布をして固定して置いた方が良いだろう?」
藤堂が眉間の皺を深くして諌める。
「ッそれに、‥‥女性の前で服を脱ぐのは失礼だろう?」
藤堂に抱え上げられた状態でフェミニスト発言をするゼロに四聖剣は唖然となって絶句した。
千葉は確かに女性だが並の男よりも漢前なので、余り女性扱いをする者が周りにいないせいもあったが。
「ならおれがしてやる。千葉には他所を向かせておくし、だから大人しく手当てを受けろ」
藤堂が妥協して言う。
「‥‥‥‥‥‥‥‥頼む。済まない」
ゼロは暫く藤堂を見上げた後、ゆっくりと頷いて頭を下げた。
と、そこでまだ抱えられた状態だった事に気付いたのか少し慌てた声を出す。
「ッと、藤堂。とにかく降ろしてくれないか?」
今更と思いながらも藤堂は従おうとして、はたと動きを止めた。
「‥‥‥‥何故おれの名前を知っている?」
まだ名乗ってもいないのにと藤堂は訝しく思い尋ねた。
「‥‥『厳島の奇跡』藤堂鏡志朗は有名だからな。今回、わたしの策を読んでコーネリアの騎士を待ち伏せしたのもお前だろう、藤堂」
「‥‥そうだな」
「こちらの不手際まで察して退いたタイミングも評価に値する。‥‥迷惑をかけた事は詫びる。すまなかった」
藤堂達もまた確実に想定外の要素だっただろうし、示し合わせたわけでもないと言うのに、素直に非を認めて頭を下げるゼロへの評価は上がる。
「‥‥不手際と言うが、あんなのを相手にしては分が悪すぎるだろう」
仙波が慰めの言葉をかける。
「‥‥あぁ、確かにな。だがッ、わたしはいつも奴に‥‥ッ!‥‥すまない。愚痴を聞かせる気はなかったのだが‥‥」
憤りを見せた事が気恥ずかしいのか、ゼロの言葉には勢いが欠けていた。
「中佐、これを。‥‥朝比奈、代わろう」
千葉は治療キットを藤堂の前に置くと、唯一起動中の無頼改を振り返って言葉を投げた。

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作成 2008.04.16
アップ 2008.07.16
 

※「心の叫び」の続きです。

メカオレンジを引き続きC.C.に委ね、残りは部屋を出た。
一応反省したらしいC.C.は、当面「オレンジ」とは言わないだろうと思われたからだ。

「あれ?卜部さん、どうしてここにいるんですか?」
とカレンが首を傾げたのは廊下に出てすぐだった。

「どうした?カレン」
足を止めたゼロはカレンに声を掛ける。
「え?‥‥だって、卜部さんにはあいつ頼んだはずなんですよね。どうしたんです?」
その言葉に、一同の視線は卜部に集まった。
「簀巻き状態だったし、部屋に閉じ込めて来たんだが‥‥?」
卜部の回答に、ゼロは深々と溜息を吐いた。
「‥‥ならば枢木のところへ向かうのが先か。カレン。扇達への説明は任せる。卜部、閉じ込めたという部屋はどこだ?」
「なッ‥‥わたしも行くわよ。てかあいつの方こそ誰かに任せるべきよ」
ゼロの指示に卜部が踵を返そうとしたところへ、カレンの反論が入って動きが止まる。
「ダメだな。カレンとC.C.の話通りならば、枢木はわたしの素性を知っている事になる」
「‥‥あれ?紅月さん、いつからゼロとタメ口だったっけ?」
「紅月が枢木を『即効落とせ』と言ったのはそのせいだったのか?」
朝比奈と千葉がそれぞれ疑問を口にする。
そしてゼロは再び溜息を吐いた。
「カレンと藤堂にもわたしの正体はバレている。後はC.C.と桐原公。‥‥それにジェレミア卿だな」

「「「‥‥は?」」」

「だから、ジェレミアにもバレていると言ったのだ。流石にそうでもなければ、説得など出来るものか」
「えっと‥‥藤堂さんにはいつ?」
「さっき、だ。藤堂とも昔、会った事があるのでな。それに枢木の師匠だったし?当然同行するよな?」
「あぁ。‥‥卜部と朝比奈はおれと。仙波と千葉は紅月と」
「「「「承知ッ!」」」」
「カレン、頼む」
「‥‥‥わかったわよ。確かに貴方が直接話してると、収拾つかなくなりそうだし、事前説明くらいしてくるわよ」
カレンは渋々折れて頷いた後、「理由は、『大切』にしとく?『最愛』にしとく?」と尋ねた。
「任せる。‥‥だが」
「それはわかってるわよ。そんな事は言わせないから心配しないで。それよりもあいつには気をつけてね」
「わかっている」
ゼロとカレンは頷き合うと、それぞれ目的の場所へと歩き出し、藤堂と四聖剣が従った。


仙波と千葉を従えて戻ってきたカレンに、幹部達は気付くなり、周囲に集まった。
いないのはゼロの傍にいる三人と、ディートハルトくらいだ。
「やっと説明する暇が出来たのか?カレン」
杉山が尋ねる。
「えぇ、そうね。‥‥それで、何が知りたいの?」
「大事な局面でいなくなったわけが知りたい」
「何がおれのせいだってんだ?」
杉山の抑えた声と、苛立つ玉城の声が前後する。
「学園を放棄した玉城のせいよ。‥‥何故ゼロが学園を拠点にしようとしたのか、説明しなかったところはゼロの落ち度かもしれないけどね」
鋭い眼差しで玉城を見据えた後、カレンはそう言って溜息を吐いた。
「白兜を捕まえる為、‥‥じゃなかったのか?学園の生徒だから誘き寄せやすいって言う‥‥」
「あいつはどこにだって来るわよ。‥‥何の説明もなかったから察しろッて言う方がきついのかも知れないけどね」
「なら‥‥」
「知ってるでしょ?あの学園はわたしも通っていたわ。だから知り合いも多いし、仲良くなった子もいたのよね。ブリタニア人だったけど、子ども、よね?学生だもの」
カレンはそう言って、「つまるところ、ブリタニア人とはいってもゼロの言うところの弱者に入るんじゃない?」と問いかける。
「‥‥まさか、学園の生徒を守る為、だなんて言わないだろうな?」
「なッ、ふざけんなよ、カレン。おれ達は日本の為にだな」
「ふざけてるのはあんたの方よ、玉城。『合衆国日本は人種を問わない』って言ったゼロの言葉、忘れたの?」
「‥‥待て、カレン。つまり、ゼロが学園にこだわったのはカレンの為、か?」
「と言いたい所だけど違うわ。学園に有ったのよ。ゼロが、ゼロになった理由が。『合衆国日本』を求めた理由が、ね」
カレンは首を振ってからそう答え、「でも玉城が学園を放棄してしまった。コーネリアと対峙してる時にその連絡を受けたらしいわ、ゼロは」と続ける。
幹部達は息苦しさを覚えて押し黙る。

「学園にいたはずの、ゼロの大切な人が浚われたって連絡を、ね。ゼロにとって、その人は世界よりも大切な人だったのよ」
カレンの静かな声は、静かになった空間に染み渡る。

「あっさり騎士団を捨てた、なんて言わないでよね?その人がいなければ、ゼロ自身がいないも同じ、ゼロがゼロである為には、その人が必要だったの」
「その人って言うのはぁ、藤堂が抱えて降りて、車椅子に乗ってった子ぉ?」
唐突にラクシャータが言葉を挟んだ。
「‥‥え、えぇ、そうよ」
「あー‥‥。まぁ、そーかもぉ?確かに世界よりも大切よねぇ」
「‥‥ってラクシャータ?」
「わたしぃ、ゼロとゼロの大切な人ってぇ知ってるかもぉ。なぁるほどぉねぇ。大納得だわぁ」
ラクシャータの言葉を聞いた仙波と千葉は揃って小さく「「またか」」と呟いた。
それはカレンにのみ聞こえて、「顔が広いにも程がある」とか「というより世の中狭いというのか?」と続く呟きも聞いてもっともだと納得した。
「と、とにかく。浚われたその人を助ける為にゼロは戦場を離れる事になったのよ。その時のゼロの最大の誤算は、扇さんが負傷してた事ね」

「「誤算?」」

尋ねたのは仙波と千葉だった。
「それでなくても焦って気が動転してたゼロは、扇さんが負傷してるって聞いてパニックになったらしいわよ。想定外が重なりすぎたとも言うけど」
カレンがそう言うと、「あぁ、ゼロってそう言えば、想定外の事には結構弱かったよな」とあちこちで頷くのが見えた。
「本当は指示したかった作戦とか有ったけど、ファイルは扇さんに預けていたし、一から説明する心のゆとりもないから、前線の藤堂さんに任せたって」
カレンの説明を聞いて、「それは確かに誤算としか言い様がないなぁ」と幹部達は納得した。
ゼロが離れた場合を想定した作戦を用意していて、副指令に預けていたにも関わらず、それが使えなかったのだから大誤算だっただろう。
それまでは確かに有った刺々しいギスギスとした空気が、フッと消えていくのをカレンは感じた。



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作成 2008.04.24
アップ 2008.07.14
 

ガウェインに乗ったC.C.は、続いたラクシャータがゼロの席に落ち着くのを確認すると、コックピットを密閉し、通信が繋がっていない事を確かめた。
「さて‥‥と」
「まず、良いかしらぁ?‥‥その仮面、予備なんかじゃないんでしょぉ?」
C.C.が本題に入る前に、ラクシャータが機先を制して尋ねた。
「‥‥あぁ、そうだ。‥‥予備は作っていない。そうだな。機能を追加してもらった後、予備の一つ二つも作ってもらった方が無難だろうな」
ラクシャータに話す分には問題ないと判断したC.C.は肯定する。
「ふ~ん。なら藤堂がゼロの素顔知ってるってのは、ホントだったんだぁ」
「あぁ。だからゼロの部屋はパスした。アイツがいると煩いのも事実だしな。‥‥さて、と。実はこれの機能追加と関連する事なんだが、眼帯も一つ作って欲しい」
面白がる風のラクシャータを不思議な思いで見たC.C.は、それよりもと話を進める。
「‥‥眼帯?ってゼロ、眼も怪我してたのぉ?それとも元から?」
スッと眼を眇めたラクシャータの声音が幾分か低くなっている。
C.C.は溜息を着くと、無言でゼロの仮面を被る。
「今、この仮面についている機能は、コレだけだ」
そう言ってから、仮面の側面に触れると、シュッとごくごく軽い音を立てて、仮面の一部が消え、C.C.の左目が現れる。
ラクシャータは眼を見開いてその様子を見ていた。
「なぁに、それぇ?」
「アイツの左目は少々特殊でな。それでこんな仮面を作ったのだが‥‥。色々と使いすぎた為に暫く光に当てたくないんだ。だから光すら通さない眼帯が欲しい」
C.C.は我ながら良くもまぁこんな嘘がつける、と内心苦笑する。
「特殊、ってぇ?」
「わたしからは言えない。それと使いたい時に使え、仮面の機能と連動していればそれに越した事はないな。本人にしか操作できないような感じが一番良いな」
「‥‥それは眼帯の方の機能、でしょぉ?その仮面に追加する機能ってぇのはぁ?」
「今更だが、他言無用だぞ?藤堂もこの辺りは知らない。当然、桐原公もだ。コレについて知っているのは、アイツ本人とわたし、それにお前だけだ」
C.C.が遅ればせながらそう恫喝し、「技術屋のお前にはそれっぽくて良いだろう?」と笑う。
「そぉねぇ。良いわよぉ。誰にも言わないって約束したげるわぁ」
ラクシャータの返事に満足したC.C.は追加する機能の説明を始めた。


ガウェインに乗った時よりも遥かに上機嫌になって降りてきたラクシャータは、部下に当たる技術者達に向かって開口一番言い切った。
「ナイトメアの修理とかはぁ。暫くあんた達に任せるからぁ。よろしくねぇ♪」
そうしてラクシャータは驚く一同に背を向けると、鼻歌混じりに自室へと向かっていった。
特にラクシャータを良く知る技術者達の混乱は凄まじい物があった。
「彼女がナイトメアを丸投げするとは‥‥」
「ゼロのあの仮面、ナイトメアよりも興味深いとでも言うのだろうか‥‥」
「「「‥‥‥気になるッ」」」
技術者達は、自分達だけでそんなふうに盛り上がっていた。


盛り上がる技術者一同を幹部が呆然と見ていると、今度はC.C.が降りてきた。
C.C.は用は済んだとばかりにスタスタと立ち去ろうとしている。
「ちょっとお待ちなさい」
それに待ったを掛けたのは、皇神楽耶である。
足を止めたC.C.は胡乱気に振り返ると「なんだ?」と煩そうに尋ねる。
「ゼロ様の愛人というのは真か?」
声を怒らせて尋ねる神楽耶に、「最初のツッコミがそこですかッ」と問いたい衝動に駆られた者が多数いたが、みな何とか黙っていた。
「まさか。わたしにも好みというものがある。だいたい自分を一番に想わない相手を選ぼうなどとは思わない」
C.C.の好み云々で「ゼロってやっぱり不細工だから顔を隠しているのか?」と思った者がいたが、それよりも続いた発言にみな驚いた。
「‥‥ゼロ様に既に想い人がいらっしゃると言うのか?」
ショックを受けた神楽耶が呆然と呟いた。
紅蓮の足元でカレンもまたショックを受けていた。
「一番目は昔から決まっているし、今後も変わる事はないだろうさ。話がそれだけならば、わたしはもう行くぞ」
相手のショックなど気にせず言い放つとC.C.は踵を返して歩き出す。
だが、神楽耶もいつまでも自失していなかった。
「では二番目は誰です!?」
C.C.の背中に、神楽耶が声を投げた。
「これ、神楽耶さま。流石にそれは皇の言葉としては見過ごせませぬぞ」
桐原が神楽耶に注意を促す。
「わたしではないが。‥‥そうだな、埋まっているのではないか?あれをなんと呼ぶのかは知らないがな。この話は終わりだ」
C.C.はそれでも答えると話を打ち切り、再び歩き出した。
だが、それも幾らもいかない内に止まる。
「扇」
「あ、‥‥あぁ。なんだ?」
突然名前を呼ばれた事に扇は驚いて、どもりながらも何とか返事をする。
「報告する事があるなら、簡潔に纏めておけ。多分、次に呼び出されるのはお前だ。良いか、簡潔に、だぞ」
C.C.は念を押し、「だからと言って漏れていて二度手間になるなんて事はわたしが許さないからな」と更に脅す。
「‥‥わ、わかった。善処する」
扇は顔が引きつるのを自覚しながら、頷いた。
「後は‥‥。カレン、今から出るのか?」
「え、えぇ。そうよ」
カレンもまた挑むような目つきでC.C.を睨みながら、躊躇いがちに頷く。
「そうか。‥‥では四聖剣の、‥‥そうだな、仙波で良い。『わたしが用事を頼むから早目に戻れ』とでも伝えておいてくれ」
「えーと‥‥。仙波さん限定なの?」
訳がわからずカレンは首を傾げるが、わからないのは他の幹部もご同様だった。
「別に卜部でも構わないが。千葉と朝比奈はさっき出たばかりだろう?とんぼ返りをさせる気はない」
カレンは「確かにさっきよね」と一応納得する事にして頷いた。
それを見たC.C.は今度こそ、本当に立ち去ったのだった。

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作成 2008.04.24
アップ 2008.07.13
 

スザクは浮かれていた。
数日前、生徒会室でルルーシュに言葉を貰ってから。
ずっと浮かれていた。
『10日、お前時間が取れるって言ってただろ?なら出て来れるよな?』
ルルーシュはスザクにそう言った。
わざわざ「10日」と言ったのは、きっと誕生日を覚えていてくれて、だから祝ってくれるのだと思ったから。
ご機嫌なスザクに、セシルは「何か良い事有ったの?スザク君」と尋ねる。
「う~ん。これから、かなぁ」とスザクは曖昧に答えて微笑む。
こんな時には適合率が普段より良い事が判っている特派主任のロイドはそれを無駄にするつもりはない。
人よりも高い適合率を誇るというのに、波が激しく、低い時には「普通の」騎乗者よりも低くなるのだ。
そんな数値を見る度に、「やる気あるのかねー?」とか「仕事だろー?」とか疑問に思うのだ。
「調子良さそうだねー、スザク君?ならさくさくっと実験やっちゃおうかー」
と機嫌の良いスザクをランスロットのコックピットへと追い立てる。
勿論スザクにも、10日に作業を残さない為にも嬉々として二つ返事でランスロットに乗り込んだ。


2日前。
今日も今日とて、ロイドとセシルを除いた特派メンバーが「ちょっと過酷じゃないか?」「いや、でも全然元気そうだし」と小声で囁きあっている。
ロイドやセシルにもそれは聞こえるが、取り合う気は全くないので、故意にスルーしている。
ロイドの携帯の着信音が鳴り、相手を確認したロイドは「セシル君、暫く頼むね」と言ってから、通話を繋げる。
「はい。‥‥じゃあスザク君。次に行きましょう?」
セシルの笑顔に、スザクは素直に頷き、特派メンバーは冷たいモノを感じながら、慌てたように次の準備に取り掛かった。

『状況はどうなっている?』
「順調ですよー」
『そうか。役に立っているなら、良いがな。‥‥それで?対象についてはどうだ?』
「それについては嫌になるくらいですけどねー。全然ですしー」
『‥‥プランの変更が必要か‥‥』
「そうですねー。いっそ全部試しますー?」
『全て、か。‥‥そうだな。調整してみよう。明日にでも最終確認の連絡を入れる』
「わかりましたー。それまでは今のままやってますねー」
『あぁ、頼む』
短い返事と共に切れた通話に、ロイドは寂しく思いながらも「明日も声が聞ける」と喜ぶ事にした。


ルルーシュは通話を切ると息を吐き出す。
「どうした?巧く行っていないのか?」
その様子を向かいから見ていた藤堂が声を掛けた。
「いや。ロイドは予定通りに事を進めているようだ。ただあいつの体力が思っていた以上に底がなかっただけだな」
ルルーシュはそう言って肩を竦めて見せる。
「それで、プランを変更すると?」
「あぁ。どうせ変更するなら全部やればどうか?と言われた。これから調整に入ろうかと思う」
「‥‥全て、か。おれのプランはきっちりこなそう」
藤堂はしっかりと請け負う。
藤堂のプランは当然といおうか、月下での対白兜破損計画である。
デヴァイサーを仕留められれば、それに越した事はないのだが、悪運が強いので、ランクを少し落としているのだ。
白兜が破損すれば、ロイドが小言を喰らわせて、「ざんねんでしたー。スザク君残業決定~」と言う事になっている。
「あぁ、疑っちゃいないさ。問題があるとすれば、白兜が出てこない事だが‥‥、それはロイド次第だな。後は‥‥」
「確か、第二皇子と第二皇女にも話をつけたとか言っていたな?それは?」
全てのプランを把握しているわけではなかった藤堂が尋ねる。
「義兄上には特派、当然白兜込みの出迎えをするようにと連絡を入れるように頼んでいる。丁度こちらに来るそうだ」
ルルーシュはそう言ってから、「予定時間を早めに告げて、機か何かのトラブルで遅くなった事にすれば長時間拘束できるからな」と笑う。
藤堂はそれを聞いて、とばっちりを受ける事になる特派のメンバーに同情した。
何をどういってもスザクを抱え込んでいる特派のダメージが一番大きいのは事実なのだ。
「義姉上には、ユーフェミアとその騎士を呼び出すように頼んだ。まぁ、口実は義兄上が来る事に関連した事ででもと言ってある」
つまり、特派白兜のデヴァイサーとして空港で長時間拘束された後、そのまま政庁に直行して、第三皇女の騎士としてまたも時間を拘束されるという事だ。
「‥‥しかしそれだけでは丸一日の拘束には至らないのではないか?」
「あぁ、だからタイミングを見計らって騎士団が行動を起こす。義姉上が物資も提供すると言っているので、ついでに奪取するが」
「‥‥その言い方は逆ではないか?物資を奪取するついでに白兜破損計画をおこなうのだろう?」
藤堂がやんわりと訂正するが、ルルーシュはきっぱりと首を横に振った。
「いや。今回ばかりは優先順位を逆転させて貰う。物資の奪取は必須だが、白兜破損も必須だからな」
ルルーシュは言い切り、「だから奪取する扇隊と白兜破損の藤堂隊に完全に分けただろう?」と笑った。
つまり、早朝から空港で長時間到着を待ち、政庁にて第三皇女の騎士として行動し、更には白兜のデヴァイサーとしてテロ対応をする。
そして、特派に呼び戻されてお小言を喰らい残業を言い渡される、というスザクのタイムスケジュールが、当人の与り知らぬところで決定されたのだった。



枢木スザクの7月10日のタイムスケジュールはゼロの予定通りになった、とだけ記しておく。


待機と銘打った拘束時間の間中、焦りを募らせていっていたスザクは、月下と紅蓮の攻撃によって白兜を見事に破損させたのだ。
そうしてロイドから小言を喰らい、愚痴を言われ、残業を言い渡されたのも、予定通りだった。

そうしてスザクの今年の誕生日は散々な終わりを告げた。


次の日。
なんとか生徒会に顔を出したスザクを待っていたのは。
「いやぁ、昨日は来れなくて残念だったなぁ。主役いなかったけど、折角用意したんだしってみんなで美味しくルルの料理食べちまったぜ」と礼を言うリヴァルと。
「モノは用意してなくってね~。サプライズを用意してたんだけど、それも昨日限定だったから、何もないのよね~」と苦笑するミレイと。
「ルルーシュに言われて結構遅くまで待っていたんだけど。‥‥普通連絡の一つも入れるものよ?」と嫌味を言うカレンと。
「騎士さまだもの。主のご用事が優先されるのは当然なのに、どうしてそんな顔をしているの?」とスザクの表情に不満そうなニーナと。
「はぁ~。スザク君も騎士なんだから、もう少し常識っての覚えた方が良いわよ?」と呆れ顔で忠告を入れるシャーリーと。
冷ややかな視線を向けてくるルルーシュだった。
「る、るるー、しゅ?その‥‥」
「お前馬鹿だろ?来ると言ってた奴が連絡もなく来なかったら何かあったかと心配するだろ?」
恐る恐る尋ねるスザクは、案じるような言葉が返ってきた事にホッとする。
「その、ごめん。連絡を入れる暇もなくて‥‥」
「‥‥仕方がないから、昨日のとは別に用意しておいた。食べるだろう?」
溜息を吐いたルルーシュの続けた言葉に、スザクは満面の笑みを浮かべて力強く頷いた。

しかし、ルルーシュが持ってきた「おにぎり」を一口食べたスザクは蒼白になるのを自覚した。
「改めて作ろうと思ったところに、お前の職場の女性がやって来て『誕生日、忙し過ぎて用意するのが遅くなったのだけど』と持ってきたからな」
ルルーシュはそう言って悪びれる事無く、「折角用意して持ってきてくれたんだ。おれが作る必要もなくなった。しっかり食べてくれ」と言い切った。
はっきり頷いた手前、今更「食べない」とは言えず、スザクは蒼い顔をしながら、「おにぎり」を平らげたのだった。



「‥‥あんな事言ってばれないかな?」
「ん?平気だろ。他の生徒と交流持つ奴じゃないし」
「昨日は生徒会室にすら集まらなかったじゃないか。ルルーシュの料理は食べたけど。スザクが来れるようになってたら何言われてたか」
「その時間なら待ちきれなくて解散したところだったんだとでも言っておけば良いんだよ」
ルルーシュは「いや結局来なかったわけだけどさ」というリヴァルにきっぱりと言い切ったのだった。



更に翌日、アジトにやってきたルルーシュとカレンによって事の顛末が幹部達に披露され、爆笑が巻き起こったという事を記し、終わりとする。



───────────
作成 2008.07.11 
アップ 2008.07.12 

騎士団のアジトは騒然としていた。
事の起こりはゼロの登場だ。
いつも通りやってきたゼロは、とてもいつも通りとは言えないモノを肩に担いでいて、幹部団員達はそれに驚いたのだ。
活動に関係の無い物をあまり持ち込む事のないゼロが持って来たモノ。
それは──。

「笹?‥‥‥ってゼロ。あの、もしかして七夕するんですか?」

カレンが心底意外そうに尋ねる。
どこから運んで来たのか、ゼロは大振りな笹の枝を担いでいたのだ。
「そうだ。短冊に願い事を書く。‥‥年に一度の事だ。気休めでもやりたくなってな。まぁお前達に強制するつもりはないから安心しろ」
立ち止まって応えるゼロの言葉に、一同戸惑う。
七夕をするつもりで笹まで用意して来たゼロが、きっぱりと「気休めでも」と言った事に、どう反応すれば良いか測りかねたのだ。
てか「安心しろってなんだ?」という気持ちもある。
「ゼロ。信じてないのに願い事書くの?」
朝比奈が尋ねる。
「そうだな。‥‥『鶴を千羽折って願い事をすると叶う』と同じくらいには信じているかな?」
ゼロが応えると、「いやそれ叶わないし‥‥」と思わずツッコミたくなった一同に恐らく非はないだろう。
「‥‥折ったのか?千羽鶴‥‥」
唖然として玉城が呟く。
「いや‥‥。話を聞いただけだ。‥‥信じて折っている最中の者は知っている。叶うのか?」
玉城はゼロに素でそう応えられ、仮面を傾けるゼロにたじろいだ。
「えっと、おれは千羽折れたって人に会った事がないから‥‥判らない、かな」
絶句した玉城に代わって、扇が応えると、ゼロは「そうか‥‥」と呟いた。
「あのッ!ゼロの願い事って何ですか?」
カレンが勢い込んで割り込み尋ねる。
「わたしの?わたしの願いは変わらない。『優しい世界』。それに『ブリタニアの崩壊』だ」
ゼロはそう言うと歩き出す。
「わたしも同じ事をお願いします。一人で願うよりも効き目があるかもしれませんしッ!」
カレンの言葉にゼロは立ち止まってカレンを振り返る。
「カレンの願いは別にあるだろう?日本を取り戻す事、それに‥‥。とにかく七夕に無理をしてわたしに合わせる必要はない」
「でもッ!取り戻した日本が『優しい世界』だったら嬉しいですッ!その為にはブリタニアが邪魔なのも変わりありませんッ!」
勢い込んで反論するカレンに、それでもゼロは頷かなかった。
「‥‥表でする気がなかったから持ち込んだだけだ。お前達にまでやれとは言わない」
そう言ってゼロは歩き出す。
困惑する幹部団員達は、戸惑うように隣や近くの者と視線を交わしあう。

「‥‥ちょっと待った~~~あ!ゼロストップストップ」

笹を担いだまま格納庫を出ようとしていたゼロを朝比奈の声が呼びとめた。
立ち止まったゼロは朝比奈を振り返ると煩そうに「なんだ?」と尋ねる。
「う~ん。ちょっと聞きたい事が有ってさ~‥‥」
躊躇うように朝比奈はそう言ってゼロの反応を待った。
「なんだ?言ってみろ、朝比奈」
ゼロは溜息を吐いた後、先を促した。
「えーっと、ですねー。ゼロが七夕をどう認識しているのか、ちょーっと興味があってさー」
朝比奈の言葉の意味が理解できた者はこの場にはいなかった。
藤堂や四聖剣も例外ではなく、質問されたゼロもそうだった。
「認識?」と仮面を傾けるゼロに誰もが無理もないと思う。
「うん、そう。おれが考えてる七夕と、なんか違ってそうだったから気になってさ」
朝比奈の言葉に、「そう言えば『強制しない』とか『お前達にもやれとは言わない』とか言ってたよな、ゼロ」と思い当たる。
幹部団員達にとって、七夕は祭りである。
なのに、「見せびらかすだけ見せびらかして一人で楽しもうなんて」と思った者もいたわけで。
最初の認識が違っているのなら仕方がないかもとゼロの答えを待つ事にした。
「七夕は‥‥『願い事をする日』だろう?『自分一人では叶えられない願いをする日』。‥‥違うのか?」
合ってるのに違うような気がしてならず、曖昧に首を傾げるだけで頷く者はいない。
「えーっと。織姫とか‥‥は?」
扇が躊躇いがちに聞く。
「‥‥あぁ。晴れると良いな」
ゼロは空は見えないのに、格納庫の天井を見上げて、そう呟くように言った。
「あ、やっぱり、ちゃんと合ってるんじゃないか?」とホッとし、「ならなんで一人で?」と首を傾げる。
しかし、続くゼロの言葉に頭を抱える事になる。

「晴れてくれれば、心置きなく願い事が出来る」

「は?ゼロ?ちょっと待ってください。別に曇っていたって雨が降っていたって願い事は普通に出来ますよ?」
カレンが驚いて問い返す。
藤堂とラクシャータが信じられないものを見るかのように、ゼロを凝視していた。
「‥‥普通に?しかし‥‥」
カレンの言葉に逆に驚いたゼロは言い淀んだ。
「‥‥ゼロ。別に晴れていなければ代償が必要になるというわけではない。ただ、願うだけで、叶えるのは結局自分達だからな」
藤堂が、諭すようにそう言うと、「一体いきなり何を言い出すんだ?」と言う視線に晒される。
「あらぁ?そう言うって事は、藤堂もおんなじ事を考えたのかしらぁ?‥‥て事はぁ、『生きてて良かったわぁ』って言うべきかしらぁ?」
ラクシャータの言葉が、藤堂とゼロと、その他の幹部団員達を驚かせた。
「‥‥‥‥なッ‥‥。何故‥‥」
否定する事すら忘れたのか、肯定とも取れる返事を返すゼロに、ラクシャータと藤堂は苦笑する。
「『七夕はね。晴れていれば離れ離れになっていた恋人達が会える日で、だから無償で願い事を叶えてくれるのですよ』って言ってた方を知ってるからぁ?」
ラクシャータは一言一句間違えないように言って見せる。
「『けれど雨が降れば会えなかった恋人達へ代償を払わなければならない。願うには会いたい人に会えなくなる覚悟が必要だ』と言った君を覚えている」
藤堂もまた、昔聞いた事をそのまま告げた。
その時も何度も「それは間違っている」と諭したつもりだったのだが、どうやら思い違いを覆すには至らなかったらしいと藤堂は思う。
「‥‥ッく。‥‥行事でバレる事になるとは‥‥」
「大体、昔から聡明だったんだからぁ。幾ら仰ったのがお母様だからって、鵜呑みにしたままにしなくても良かったんじゃないですかぁ?」
ラクシャータは呆れた口調で指摘する。
「何を言う。母上が間違うはずがないだろう?日本の文化に造詣が有って、『丑の刻参り』で何人もの幸福を祈ったとも仰っていたし」

唖然。

絶句して唖然とゼロを見る一同は、「それ間違ってる。激しく誤解してる。てかゼロに何を吹き込んでるんだ、母親はぁ!?」と内心で絶叫していた。
声に出さなかったのは、怖かったからである。
誰も、「丑の刻参り」で幸福を祈られたいとは思わないのだ。
「藁が手に入るのは秋だからな。今回は『優しい世界』を願おうと思っていた。『ブリタニアの崩壊』は秋になってから祈ろうかと」

ゼロゼロゼロゼロゼロ‥‥‥‥(えんどれす)。

「てかゼロもするんですか、藁人形に五寸釘を!!!」ともやはり口に出せない一同は数名を残して後ずさっている。
「あー‥‥お母様直伝なら多分すっごく効果抜群なんだと思うんですけどぉ。それでも皇帝はピンシャンしてるわけでぇ」
ラクシャータは遠い目をしながら「あっちの方が一枚上手なんじゃぁ?」と尋ねる。
ラクシャータの言葉に「ゼロの母親の藁人形の対象が皇帝!?てか効果抜群って程の五寸釘でピンシャンって。何モノだ皇帝はッ!?」と大混乱中の一同。
「あの男には効かないだろ。母上も散々愚痴っておられた。だから周囲から攻めようかと考えている」
「ゼロゼロ。それ、やるのってぇ秋になってからって言ってたわよねぇ?」
「そうだが?藁を手に入れて人形を作ってからになるな」
「手伝いますッ!ゼロ!」
カレンが手を挙げ立候補する。
「ゼロぉ。とりあえず提案なんだけどぉ。七夕の願い事をぉ。『ブリタニアからの寝返り』ってぇのにしないぃ?たぶん叶うわよぉ」
ラクシャータは面白そうにそう言って、「ゼロが貴方だって判っていれば最初っからこの手を使うんだったわよねぇ」と藤堂を見る。
「まぁ。‥‥ブリタニア人達にどの程度有効なのかはともかく、スザク君に効果が有るのだけはこの目で見た事があるな」
「あらぁ?疑うのぉ?白兜のパーツはいらないけどぉ。ゼロのお母様のその辺りの事を覚えている人って多いのよねぇ」
ラクシャータと藤堂がそんな会話で盛り上がった為に、ゼロの正体とか素性とか尋ねそびれた一同は、ゼロと一緒になって首を傾げたのだった。



───────────
作成 2008.07.05 
アップ 2008.07.07 

藤堂と仙波はポツリポツリと昔の話を口にしていた。
日本が敗れて以来、あまり口の端に上る事のなかった事柄ばかりだった。
そこへお座なりなノックの後、返事も待たずに卜部が一人で戻ってきた。
「早かったな、卜部。千葉と朝比奈はどうした?」
仙波が声を掛ける。
「あー‥‥多分、もう来るぜ。えっと、紅月連れて。だもんだから、先に報告しとこうかなぁと」
藤堂と仙波は出てきた名前に眉を寄せて顔を見合わせた。
「紅月を?何故?」
「えっとぉ。二人の話に寄ると‥‥『制服がアッシュフォードのだから、紅月に聞けばわかるとかなんとか』で引っ張ってくるらしい」
卜部が「ちゃんと聞いてはないんだが」と言って曖昧に告げた。
「‥‥卜部、行って止めさせて来い」
藤堂が苦い声で卜部に指示を出し、その声音に仙波と卜部は驚いた。
しかし、時既に遅く、バタンと扉が開いて朝比奈と千葉、カレンが顔を出した。
「なんなんですか、藤堂さん。お話が有るって?」
開口一番、カレンが怒ったような声で尋ねていた。

「お前等、何を言って彼女を連れてきた」
藤堂が鋭い視線を、千葉と朝比奈に向ける。
「えーっと?『少し学校の生徒について尋ねたい事があるんだけど、藤堂さんにも聞いて欲しいから来てくれないかな?』‥‥だったよね?」
「‥‥。その前に、『ラクシャータ、少し紅月さん借りて良いよね?』とも言っていたな、お前は」
カレンは「あれ?藤堂さんの指示じゃなかったんだ?」と内心首を傾げつつ、それなら仕方ないかなぁと諦めた。
「それで‥‥話って?」
「えっとね。黒髪でぇ。肌の色なんてすっごく白くってぇ、容姿なんかはと~~っても整っててぇ、瞳の色が神秘的な絶世のぉ、美少年が通ってるよね?」
朝比奈の形容に、カレンは「なんて的確な‥‥」と苦虫を噛み潰しながら、「性格に難有りなんて見た目でわかる訳ないものねぇ」と諦めて頷いた。
「‥‥いるわね、‥‥ひとり。‥‥それが何か?」
あっさり肯定されて、「そりゃ一目見たら忘れられないような美人だったけど‥‥」と朝比奈の方が驚いた。
「知りたいんだよね?だから教えて?」
「アイツが何か朝比奈さん達にしたんですか?てか、確か租界には出ないはずだったんじゃ‥‥」
露骨に嫌そうなカレンの反応は、続いて「確かゼロと‥‥」と非難の眼差しに変わった。
「勿論。出てないよ。見かけただけなんだよね。彼が助けてるところをさ」
慌てた朝比奈は、ブンブンと首を振って説明した。
カレンは納得して非難を引っ込める。
「まぁ。わたしも彼が日本人を庇ってたりするところを見たことは有りますけど‥‥。アイツ、ゲットーの付近まで何しに来てたのよ」
カレンは自分のテリトリーに入られていた事に酷く憤慨している様子だった。
というか、朝比奈は「助けているところを見かけた」としか言っていないのに、カレンは勝手に「日本人を」という言葉を嵌め込んでしまった様でそこには驚いた。
カレンの憤慨する様子から、「いや、ゲットー付近じゃなくて、ゲットー内なんだけど」とか言えば、暴れそうだなと千葉と朝比奈は思った。
「‥‥その彼、日本人を良く助けるんだ?」
朝比奈がちょっと脱線して、尋ねてみると、カレンはむすっとして応じた。
「‥‥良くかどうかは知らないけど‥‥。わたしは一度見た事があるし、他にも見たって人を知ってるから‥‥」
「けどさ。言っちゃなんだけど、彼、全然強そうじゃないよね?助けに入って、その後どうするんだろ?」
「朝比奈。話が逸れているぞ」
「だけど、千葉さん、気になりませんか?」
注意する千葉に言い返す朝比奈を見ながら、カレンは「さぁ」と首を傾げてみせた。
「わたしが見た時は少し話をしていただけですよ。かなり非友好的に。そしたら相手は何をどう納得したのか、ふいっと行ってしまって」
「「‥‥へ?」」
朝比奈と卜部の声が重なる。
「いや、だから。あいつが『イレブンイジメは飽きただろう。だったらお前達が去れ』とかなんとか言ったんですよね。そしたら『あぁ、そうだな』とか言って、そのまま」
「‥‥その時の顔が怖かったとかか?」
卜部がまだ首を傾げながら言うと、藤堂と千葉、朝比奈、カレンが揃って首を振った。
「「「「いや、それはない」」(ですよー)」(わね)」
口々に否定の言葉まで言うのを、仙波は不思議そうに見ていた。
「少しくらい睨んだからって、逃げ出すくらい怖い顔になるはずないですよねー」
朝比奈が言えば、控えめながら千葉も頷く。
「いや、結構威圧的な態度とか取れるかも知れないけど、世の中を斜めに見てるあいつが、そこまで労を割くとは思えないんで」
「‥‥斜めに?」
「そうなんですよ。批評家ぶって色々言うくせに、自分じゃ動こうとしない。世界は変わらないって諦めきってて。見てるとすっごくムカつくんですよね」
忌々しいとばかりにカレンはバシンと左の手のひらに右の拳をぶつけていた。
「‥‥あー‥‥、その紅月。その者の名前をまだ聞いていなかったと思うのだが」
藤堂を気にしながら、仙波が控えめに尋ねた。
「‥‥あいつの名前はルルーシュ・ランペルージ。本気になるのは溺愛する妹の事だけで、顔は良いけど口は悪いし素行も悪いし、ついでに趣味も悪いわ」
千葉と朝比奈は顔を見合わせて、「口が悪い?」「素行が悪い??‥‥まぁゲットーには来てたけど」と目で語り合い、それから千葉がカレンに尋ねた。
「趣味が悪いというのは?」
「だってあいつ。あの白兜の枢木スザクを親友だなんて言ってるんですよ!!生徒会に入れたのだってあいつだし」
カレンは「その時は名誉で軍人だって事は知ってたけど、白兜に乗ってるなんて知らなかったからうっかりちょっぴり親しくなってしまったしッ」と続けて愚痴る。
「頭は良いって聞くのに成績はそれ程でもないって事は手を抜いてるって事だし、賭け事ばっかりしてるらしいし、体力は人並み以下なのに偉そうだし」
放っておくと際限なく続きそうな、カレンの「ルルーシュ・ランペルージ」に関するマイナス評価に、藤堂の表情が徐々に険しくなるのに気付いたのは四聖剣のみ。
「こ、紅月。‥‥あー‥‥良くわかったから、そのくらいで」
仙波が額に汗を浮かべながら止めに入った。

作成 2008.03.12 
アップ 2008.07.03 
 

「‥‥何故、あんな話を作った?何故そこまでして、別人である事を強調しようとするんだ?‥‥ゼロ、いや、ルルーシュ君」
ゼロの私室で向かい合って座った藤堂は、仮面を外したゼロに対して、そう尋ねていた。
「作ったつもりはないぞ、藤堂。出会った云々以外はほぼ真実だろう?」
ゼロに言われて、藤堂は当時を思い返した。
確かに、ゼロが話した皇子との会話の内容を藤堂が聞いたのは二度目だった。
『ぼくには力がない‥‥今は。一人では何も出来ないのも知っている。子供のぼくが足掻いても世界はきっと変わらない、何一つ。‥‥だから待つんだ』
『十年だろうと、十五年、いや二十年だって。その間にぼくは大人になる。力をつける。世界を変える為に必要な力を、きっと手に入れてみせる』
それはかつて、かの皇子が藤堂に言った言葉だった。
しかし、その後、開戦のドサクサで亡くなったと聞かされ、守り切れなかった事を、藤堂は悔やんだ。
そうなる前に、妹共々浚ってでも連れ出していれば、と何度思った事か。
己の葛藤まで思い出した藤堂は動揺を押し隠すように、応じる。
「‥‥確かに、同じだが。‥‥それではラクシャータの言葉まで事実になるのではないか?」
「結託はしてないだろう?‥‥単に本人なだけで」
懸念する藤堂に、しかしゼロは悪びれない。
確かに自分と結託、とは言わないだろうが、と藤堂は複雑である。
軽い溜息を吐いた藤堂は話題を変えた。
「‥‥ゼロ。ロイド・アスプルンドのあれは‥‥」
「あれ?‥‥具合が悪くなった事か?それともナイトメアの話か?」
首を傾げてから、ゼロは藤堂にどの話かを問う。
「‥‥両方だ。彼程の男が、ちょっとした事で体調を崩すとは思えない。‥‥とすればニュースの内容、だな?」
「そうだ。未明に起きた交通事故。それに乗っていたの者の一人が『ルルーシュ・ランペルージ』だと気づいたんだろう」
平然と己の死を口にするゼロに、藤堂は顔を顰めた。
「‥‥‥‥今からでも、止める事は出来ないのか?」
「無理だな。既に動き出している。軍のスザクとその周辺に対する調査も、な。‥‥それに、例えおれが本気で止めようとしても、‥‥もはや止まらない」
軍が動き出している以上、徹底的にやっておかなければ意味すらなくなる。
それは藤堂にも理解できるのだが、それでも良い気がしないのも確かなのだ。
「妹君の見舞いには‥‥。アスプルンドが、己を責めていたぞ。『妹君が体調を崩したのは自分のせいだ』と言って」
「‥‥テロと殺人、‥‥か。‥‥おれのミスだな。同じニュースでやる他の事件にまでは手が回らなかったからな‥‥」
表情を曇らせたゼロは、妹の身を案じて溜息を吐いた。
「‥‥‥‥藤堂」
「なんだ?」
表情を曇らせたままのゼロに、藤堂は訝しげに応じる。
「‥‥ロイドの言ったナイトメアを奪取するのに、同行して欲しい。‥‥彼等をキョウトに送り出した後すぐに出るつもりだ」
藤堂は即座に頷いた。
「おれで良ければ付いて行こう。‥‥てっきり紅月君と紅蓮弐式を連れて行くのだと思っていた」
「カレンには学園に通っていて貰わなければならないからな。‥‥スザクが気づいた時期と反応が知りたい。あいつも行動が読めないからな」
スザクの名前に藤堂は顔を曇らせる。
どこまで行っても、ゼロの、ルルーシュの邪魔をする藤堂のかつての弟子。
決別を済ませた以上、最早師でも弟子でもないのだが、それでもその行動を耳にする度に、藤堂は怒りを募らせるのだ。
「‥‥わかった。‥‥移動は、月下を使うのか?それとも」
「月下は持って行くが、出来れば使いたくないな。‥‥ラクシャータの伝手で良いモノを手に入れた。‥‥先行して使わせて貰おうと思っている」
「では彼女も?」
「あぁ、後は操縦士などだな。扇やディートハルトは今回は留守番だ。ここを留守にするわけにもいかないからな」
ゼロの言葉に藤堂は頷く。
「四聖剣と客人を見送った後、月下を乗せたトレーラーで移動する。‥‥表向きは藤堂とラクシャータのみでの受け取り、だ」
「わかった。‥‥ところでC.C.を見ないのだが、彼女はどうしている?」
「‥‥既に目的地付近にいるだろう。‥‥ロイドの言っていたナイトメアは、二人乗りなんだ。‥‥おれより腕が良い」
最後に憮然と言い添えるゼロに、毎回のように騎乗するナイトメアを壊されている事を余程気にしているのだと気付いた。
「‥‥別に君の腕が悪いというわけではないだろう?唯、君が指揮官だから腕の良い敵が相手に回るだけで‥‥」
藤堂は一面の真実を述べるのだが、つまりは相対的なモノであっても、敵となる相手よりも腕が落ちる、と言っているようなものではあった。
「壊されているのは事実だからな。流石にロイドのナイトメアまで壊したくはない。‥‥というか、壊したら泣くぞ?アイツは」
苦笑しながら言うゼロは、かなり本気で言っている様子だ。
きっと、「ぅう、こんな事ならば、主に逆らってでも渡すんじゃなかったぁ~」とか言いながら、残骸となったナイトメアに縋りついて泣くのだろう。
もっとも、壊されたのがその主だと知れば、「ぅう。主は無事だったし、こんな姿になってまで良くお守りしてくれたな。ご苦労だったね」くらいは言いそうだが。
「‥‥それで、合流はどこで?」
「あ、あぁ。‥‥一度表に戻ると言って、わたしが先に出る。合流は港で良いだろう。場所はラクシャータが知っている」
藤堂が話を戻すと、反射的に頷いたゼロは、少し間を置いてそう応じた。

───────────
作成 2008.03.02 
アップ 2008.06.27 

「扇、ラクシャータ。後を頼む。‥‥藤堂と四聖剣は話がある」
アジトに着くなり、格納庫内で、ゼロは告げる。
「あ、あぁ‥‥わかった」
「い~わよぉ。とりあえず、ナイトメアフレームの修理から始めようかしらねぇ」
扇は気負って、ラクシャータは面倒そうに、それぞれ頷いて請け負った。
ゼロは藤堂と四聖剣の返答を待たずに踵を返す。
付いて来るも来ないも自由と言わんばかり、或いは付いて来る事を疑っていないのか。
藤堂は、四聖剣を振り返るとゼロの後を追い、四聖剣もまたそれに続いた。

ゼロは小会議室の一つに場を設けた。
長方形の机には人数分の椅子が並んでいる。
これまでこのメンツでこの場所を使った時は、ゼロと藤堂が向かい合って座り、四聖剣は二人ずつに分かれて座っていたのだが。
ゼロが座った後、藤堂はゼロに右隣を示されて、座る位置を変えた。
それに倣うように、四聖剣もまた、座る位置を変える事になった。
まず朝比奈が、それならばと藤堂の隣に座り、それを呆れたように見ながら仙波が藤堂の向かいに、卜部がその隣に座る。
‥‥そう、今回のメインとなる千葉が、普段は藤堂が座っているゼロの向かいに座る事になったのだ。

「‥‥さて。まずは、状況を訊こうか?仙波、卜部、朝比奈」
全員が座り、沈黙が降り切る前に、ゼロがそう切り出した。
「えぇッ、そこから?」
朝比奈が驚いた声を出す。
「なんだ?問題でもあるのか?」
ゼロは朝比奈に仮面を向けて訝しげに尋ねる。
「いえ、全然。さ、仙波さん、説明説明」
朝比奈は首を振って否定した後、説明を年長者へと押しつけた。
「む‥‥。わしには、敵機を追跡中に、千葉の月下が突然制御不能になったように少し蛇行して見えた」
押しつけられた仙波は顔を顰めて朝比奈に視線を向けたが、いつもの事なので苦情は後回しにして、ゼロに説明する。
「あぁ、おれにもそう見えたね。んで、敵に隙だと思われたのか、そこを突破しようと‥‥反転して来たんで、仕方無くその場で殲滅しちまったわけだよ」
卜部もまた仙波の言葉に頷いた後、先を続けた。
「ほら、逃がす方がマズイじゃない?だから、最悪の事態にはならなかったって事で、ねぇ?ゼロ」
朝比奈が最後にそう締めくくった。
「‥‥朝比奈」
藤堂が、減刑を求める朝比奈の名を呼んで黙らせる。
「‥‥千葉。月下の不良か?単なるミスか?‥‥それとも、作戦中に別の事でも考えていたか?」
ゼロはまっすぐ千葉と向き直って訊ねるのだが、その声に藤堂は微かに眉を寄せた。
これまで、ゼロは失敗をした者に対して原因を尋ねる時、その声には苛烈さや厳格さが混じっているのが常だったが、今の声には感じられなかったからだ。
「申し訳ない。‥‥わたしのミスだ。手を滑らせたのは確かなのだから‥‥」
千葉はゼロの仮面から視線を逸らせる事無く、キッパリと言い切った。
そして、沈黙が落ちる。
何かを考えているのか、ゼロが次の質問なり、言葉なりを発しないので、誰もがゼロと千葉とを見比べるように首を巡らせるだけで途方に暮れた。
「‥‥ゼロ?」
藤堂が流石に訝しんで声を掛けるとゼロは溜息を吐いた。
「唯のミスだと、そう認めるのか?千葉」
「そうだ。わたしのミスには違いがない」
千葉は躊躇わず、もう一度繰り返す。
「‥‥ならば、次の作戦時、謹慎と言う名目で外さなければならなくなるが?」
「なッ、それは困るよ、ゼロ。おれ達四聖剣は四人一緒じゃないと」
「朝比奈ッ。少し黙ってろ」
朝比奈が慌てて抗議すると、藤堂が注意する。
「唯のミスだと言うのならば、再発する可能性がある。ならば使うわけには行かないのは当然だと思うが?」
ゼロは淡々と一同に同意を求める。
当然と思うからこそ、四聖剣は慌てる。
「千葉。何か別の事を考えていたのではないのか?」
「そうそう。悩みがあるなら相談に乗るからさ。抱え込んでないで言ってみろって」
「そうですよ、千葉さん。ゼロがいると話し難いって言うなら外して貰うし」
仙波、卜部、朝比奈の順で、「だから唯のミスじゃない事にしとけ」と暗に付け加えながら言い募った。
「‥‥‥‥‥‥」
それでも何も言わない千葉に藤堂もまた声をかけた。
「千葉。‥‥仙波達の言う通りなら、話してくれないか?」
「中佐‥‥しかし、‥‥ミスはミスです」
「ふぅん?確かにわたしは結果を大切にしている。しかし過程の全てを蔑ろにしているつもりはないぞ?」
頑なな千葉に、ゼロは面白そうな声を掛ける。
「ほら、千葉さん。ゼロだってこう言ってるじゃないですか。だから、ね?話してくださいよ」
朝比奈がその尻馬に乗った。
「この部屋の外では単なるミスだった、と言う事で通しても良い。その後、藤堂に厳重に叱って貰った、と言う事にしても良いと思ってはいるが」
ゼロの破格の妥協に、藤堂と、千葉以外の四聖剣は驚き、千葉は折れた。
「‥‥わかった。‥‥確かに、あの時。わたしは一瞬別の事に気を取られた。‥‥逃げる敵機を追う我々に、別の景色が被ったような気がしたんだ」
折れた千葉は、すぐに白状した。
その言葉に、ゼロは仮面の下で「まさか‥‥」と声にならない声で呟いて渋面を作り、朝比奈はポンと両手を打った。
「あッ、既視感って奴ですね?千葉さん。‥‥その別の景色って言うのは?」
「‥‥今日、道案内をしてくれた‥‥相手だ。会った時に、逃げていたから‥‥それが被った」
千葉は言い難そうにそう告げると、細く息を吐いた。
「逃げて?それって、犯罪絡み?それとも騒動?」
朝比奈が首を傾げる。
「‥‥いや、どちらも違う。‥‥どちらもブリタニアの学生だったから‥‥。強いて言うなら騒動、の方だろうが‥‥」
千葉が首を振って応じた。

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作成 2008.02.21 
アップ 2008.06.25 

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