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コードギアスの二次創作サイト。 ルルーシュ(ゼロ)至上主義です。 管理人は闇月夜 零です。
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ギ ア スの小説を書いています。
ゼロ(ルル)至上主義です。
騎士団多め。
表現力がなく×ではなく+どまり多数。
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※「光と闇の想い」の続きです。

洞窟の前に、白い機体を持つ白兜と、黒い機体を持つガウェインを見つけて、カレンは赤い機体の紅蓮弐式を降り立たせた。
どちらにも人が乗っている気配はなく、カレンもまた紅蓮弐式から降りた。
状況からしてスザクとC.C.は洞窟の中だろうと、カレンもまた洞窟に入っていった。

何故こんなところに?と疑問に思う程、大きな扉の前で、スザクとC.C.が何事か言い合いをしているのを、物陰に隠れながら進んでいたカレンは見つけた。
聞こえないその内容や、険悪な雰囲気よりも、カレンは扉の向こうが気になり、身を隠しながら側面を移動した。
その小さな扉を見つけたのは偶然だった。
もしかしたら大きな扉の向こう側へ行けるかも知れないと、カレンは好奇心の赴くままに、その扉を開けて中に入った。

再び小さな扉から出たカレンは、まだ言い合いを続ける二人に、そっと近づいていく。
「奴はッ!ゼロは間違っているんだッ!」
「何を基準にして間違っていると?‥まさか、貴様が決めた、等とは言うまいな?」
厳しいスザクの声と、苦笑を含んだC.C.のそれ。
余裕があるのはC.C.に見えるが、武器を手にしているのは、スザクだけだ。
「法に背いてるじゃないか。何もかも間違ってるのがわからないのか?存在自体がッ!彼が生きている事がッ!」
スザクの主張をC.C.は鼻で笑い飛ばした。
「確か、‥‥貴様の主張は、『結果だけでなく、過程も大事』だったか?『間違った過程で得られた結果には意味がない』とか言っていたな?」
「そうだ。だからゼロは!」
「まぁ、わたしの話にも付き合ってもらおうか?というより、聞きたいものだな?『何処までが過程で、何処からが結果』だと思っているのか、をな」
「『何処までが過程で、何処からが結果』?‥‥なんだそれは」
枢木スザクが眉を顰める。
近くまで寄っていたカレンもまた首を傾げた。
「例えば、日本解放。大抵のイレブンと呼ばれるかつての日本人達にとってはそれこそが『結果』だと言うだろう。その為に努力するのが『過程』か?」
C.C.の言葉にカレンは頷いた。
まさにカレン達はその為にこそ、頑張っているのだ、是非とも「日本解放」をこそ結果にしたいのだと。
「だけどその為にテロなんて、間違ってるッ!体制を変えて行けば良いじゃないか」
「貴様のように名誉になって軍に入って?普通はまず二等兵止まりだなぁ?」
「‥‥何が言いたい?」
「ゼロが。クロヴィスの本隊を叩いたお陰で、貴様は白兜に乗る事が出来た。『結果』、准尉に昇格?‥‥これは『間違った過程』で得たモノだと思うが?」
C.C.は笑い、「テロは間違っているのだろう?」と付け加える。
確かにそうだ、とカレンは思う。
間違った過程だと言う、テロがあったお陰で結果的にスザクは白兜に乗る事になったのだろう。
そして、軍の昇進とは所詮そんなモノなのだ。
他者との戦が全てで、戦に出て相手をたくさん殺してこそ昇進もするのだろう。
「それはゼロがッ!」
「はいはい。自分を肯定する為に、ゼロを悪者に仕立てたいわけだ」
「違うッ!」
「ナリタはどうだ?ゼロと黒の騎士団が勝ちそうになった『過程』があるから、『結果』、お前は出動したよなぁ?コーネリアに恩を売る事も出来た?」
しかもこの時、上からの命令を待っていたのではなく、下から上をせっつき、尚且つ、知り合いであるという情にまで訴えているのだ。
ユーフェミアに対して「ユフィ」と声なき声で呼んで見せる事で、ユーフェミアから出動を勝ち得た。
「ゼロはッ!正義の味方を名乗りながら、民間人まで巻き込んだんだぞ」
「『結果』だろう?その『過程』は?先に攻撃を仕掛けたのはブリタニアだ。それともブリタニアが仕掛けるのは正しくて、反撃するのは間違ってるとでも?」
それもそうだ、とカレンは再び頷いた。
「ブリタニアが仕掛けなければ、ゼロもあんな手は打たなかっただろう。それと。第一ゼロは街への避難勧告を軍がしている事を知っていた」
「‥‥え?」
「つまり、軍に従っていれば、街は無人だったはず。この時の死者は軍が『過程』を間違えたのか、これこそが正しい『過程』だったのか。どちらかの『結果』だぞ?」
C.C.の声に容赦はない。
「なッ!それは違うッ!彼等を死に追いやったのはッ!ゼロや黒の騎士団だッ!!」
「正しい『過程』で得られた『結果』には文句は言わず、受け入れるんじゃなかったのか?‥‥。やれやれ。話す価値もないか。とりあえず殴り倒しておくか?」
呆れたC.C.の声に従ったカレンが、スザクに振り返る隙すら与えず、殴って昏倒させた。

「‥‥C.C.。こいつはどうするの?」
「後腐れないように、ここで始末すれば話は簡単なんだろうが‥‥。わたしの独断でそんな事は出来ないからな。つれて戻るしかないな」
面倒そうにC.C.が言った。
「‥‥ねぇ。一つだけ教えてくれない?ゼロがここに来たのって、‥‥ナナリーちゃんの為?あちらに、ナナリーちゃんがいたわ。つまりゼロの正体って‥‥」
「一つと言いながら、二つになっているぞ。‥‥確かに、何故か守られているはずの学園から、浚われたナナリーを助ける為だな。‥‥無事なのだろうな?」
「ええ。今、連れてくるわ」
カレンはそう言うと踵を返した。
「浚われたナナリーを助ける為」と言い切ったC.C.の言葉に、カレンの抱いていた疑惑の全てが氷解した今、その足取りは軽かった。

ナナリーはカレンが抱えた。
ナナリーの車椅子には気を失って簀巻きにされたスザクが乱暴に乗せられ、ガタガタの洞窟内をC.C.が押して移動していた。
出口付近で、入ってこようとするゼロと遭遇する。
「おい。とりあえずご注文どおり、ナナリーは助けておいたぞ。コレはおまけだ。そっちはどうなった?」
C.C.が相変わらずの高飛車な物言いで尋ねる。
「‥‥『オレンジ君』なら、租界に戻った。今頃は戦闘中のはずだ」
「‥‥‥おにい、さま?」
ナナリーのか細い声に、ゼロとC.C.の動きが止まる。
「やっぱりナナリーちゃんの事が気になって助けに入ろうとしてたのね?待っていれば良かったのに。ルルーシュ」
カレンが呆れた口調でそう言った事で、ゼロは「バレたのか‥‥」と思い、そっと息を吐いてから話しかけた。
「‥‥ナナリー、無事だったんだね?‥‥何処も、怪我とかしてないかい?」
「勿論ですわ。おにいさまが助けに来てくださるって、信じていましたから」
「‥‥そ、うか。‥‥その。‥ここは租界から少し離れていてね?戻るのに、ナイトメアに乗る必要があるんだけど‥少し窮屈な思いをさせてしまうんだ」
「おにいさまと一緒ならどんなところだって構いません」
「C.C.。先にナナリーを連れて上がっていてくれ」
「それは良いが。エナジーフィラーはもうないぞ?」
「予備がある。後で紅蓮で交換する。紅蓮の予備は?」
「あ‥‥持ってません。残り後15分程だったかと‥‥」
「なら何とかなる。白兜はここに捨て置く。あれのエナジーフィラーを取ってあるから、何とか持つだろう」
C.C.は頷くと、カレンからナナリーを受け取り、器用にガウェインの腕伝いにコックピットまで移動して行った。



───────────
作成 2008.03.07 
アップ 2008.03.19 

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おれが、スザクと再会した時──。





いきなり飛び回転蹴りを喰らったな‥‥‥‥。





思い返してみれば、初めて会った時は、殴られたし──。





実は嫌われていたりするのか‥‥?









わたしが初めて白兜に遭遇した時──。





奴はわたしが折角用意した駒をことごとく潰し──。





このわたしにまで飛び回転蹴りを見舞ってくれた‥‥‥‥。









────ん?????





‥‥‥‥‥‥‥‥ッ、まさか!?




───────────
作成 2008.03.16 
アップ 2008.03.18 

※「反撃の烽火」の続きです。

「なんだ、あれはッ」
ギルフォードの驚く声が響く。
内心で、悪態を付きまくっていたが、それは何とか表には出さない。
『どこかへ飛んで行く前は黒の騎士団を攻撃しておりましたな』
配下の誰かが、わかりきった事を平然と口にする。
「くッ‥‥。総員、態勢を立て直せ。たった一機に怯むなッ」
とは言ったモノの、ギルフォードとて、先程、アレが黒の騎士団に対し、どれほど圧倒的だったかを見ているのだ。
コーネリアとの連絡が取れない事に焦燥を覚えながらも、ギルフォードは一人、ブリタニア軍の指揮に追われているのだ。

『見えた見えた見えた見えた‥‥‥‥』
メカオレンジが歓喜の声を上げながら、ブリタニア軍のナイトメアの攻撃を避け、確実にその数を減らして行っている。
オープンチャンネルが何故か開きっ放しなので、その呟きは戦場に丸聞こえだった。
『攻撃ムダ!当たらず!このジェレミア・ゴットバルトには!!』
『ちぃッ、オレンジの分際でッ』
ブリタニアのナイトメアの一つから、そんな声が広がった。
メカオレンジに続いていた騎士団は、それを耳にした途端、固まり、いつでも逃げられるように、どころか一部は既に回避行動に出ている者もいる。
『おおおぉぉぉぉ、お願いデス!死んでいただけマスか?!』
そう言うなり、スラッシュハーケンがそのナイトメアを直撃し、パイロットは脱出する暇もなくあの世へと逃げ落ちた。
騎士団は、絶対に「オレンジ」とは言わないでおこう、と改めて心に誓う。

一方、その光景を目の当たりにしたブリタニア軍将兵は、恐慌状態に陥った。
みな、それぞれ、「オレンジ」とか「オレンジ卿」とか「オレンジの分際で」とか一度は言った事のある者ばかりだったからだ。
逃げ腰、及び腰になってしまっては、ギルフォードの奮戦も指揮もフルに発揮出来はしなかったのだ。
こうして、ブリタニア軍は敗走した。


「ガウェインと紅蓮弐式が租界に近づく」の報を騎士団幹部が受けたのは、ブリタニア軍が政庁の一部を残して租界から撤退してしまった後だった。
ギルフォードは敗走後に知った唯一の主コーネリア重体を知り、二重の衝撃を受けていたとか。
騎士団はそんな報告と共に、コーネリアに負傷させたのがゼロだと知らされ困惑気味だった。
それならそうと知らせておいてくれれば、もっと違った攻め方だって出来たかも知れないのに、と「怪物」が来るまでの劣勢を苦く振りかえる。
それから。
未だに「怪物」から降りてこない「オレンジ」が気になって仕方がないのか、ちらり、‥‥ちらり、と「怪物」に視線が流れたりしていた。
「突然背後から襲ってきたらどうしよう‥‥」誰の目もがそう語っていた。

相次いで着地した紅蓮弐式とガウェインは、どちらもが膝をつく形で停止した。
先にハッチが開いたのは紅蓮弐式だった。
「すみません、手を貸してくださいッ」
顔を出すなりのカレンの言葉に、わけが判らずざわつく。
「手を貸せってなんのだよ」
「枢木スザクを捕らえました」
その名前に、四聖剣は藤堂を振り返り、頷くのを見て卜部が紅蓮弐式に近づいた。
「とりあえず、意識ありませんけど、起きたら暴れますから、速攻殴って落としといてください」
カレンの言葉には遠慮と言うものが欠落していた。
しかし有無を言わせぬ勢いと迫力があり、卜部は「あぁ」と頷いて、枢木スザクの身柄を預かった。
預けた途端、カレンは先に紅蓮から飛び降り、ガウェインの元へと走り寄った。
卜部はその行動が気になりはしたが、荷物を抱えた状態では動けないので、仕方なくそのまま紅蓮から下りる事にした。

「C.C.。状況は?」
カレンがゼロにではなく、C.C.に声を掛けたことに、その場にいる大半の者が驚いた。
『‥‥もう少し待ってろ。‥‥そうだな。彼女と、あちらの件を』
「あ、‥‥そうね。わかったわ」
カレンの納得した声にガウェインは再び沈黙する。
勿論、納得したのはカレン一人で、他の幹部も団員も首を傾げるばかりだ。
カレンがガウェインから視線を外して振り返ると、説明を求める無言の圧力に満ち満ちていた。
「えっと‥‥。わたしに判る範囲は後で説明します。でも質問が先です。政庁と仮の指揮所にしていた学園はどうなってますか?」
「軍は撤退した。政庁の一画に一部人が立て篭もっている状態だ。‥‥学園の方は‥‥白兜が動いた時に撤退を余儀なくされて、その後立ち入っていない」
頭や肩に包帯を巻いた藤堂が答えた。
カレンは政庁については無表情に聞いていたが、学園の話になると驚きの表情に変わった。
「冗談でしょ?‥‥何処までも祟る奴ね、枢木スザクはぁ!‥‥玉城ッ、あんたあの場所の警備任されてたんじゃなかったの!?」
「こっちの身が危ねってのに、ブリタニア人にまで構ってられっかよッ」
枢木のとばっちりで怒鳴られては堪らないと、玉城は怒鳴り返すのだが、カレンはその言葉にスーッと目を細めた。
「‥‥つまり、あんたのせいでゼロは戦線を離れなくてはならない状況に陥ったって事ね?後でキッチリなしつけてあげるわ、玉城」
冷ややかに、カレンは低い声で玉城に告げた。
それは普段、玉城をポンポンと怒鳴る姿を見慣れた幹部達に息を呑ませる程の迫力を有していた。
「‥‥それはどういう事だ?カレン」
杉山が問いかける。
「説明は後だって言ったはずです。‥‥ところで、あれは何故ここに止まってるんですか?中身まだ入ってるッポイですけど」
「あー‥‥、ゼロが説得して、半分味方、になってるらしい。‥‥ちなみに禁句は言うなよ。ゼロのつけた疑惑の名前だ」
納得はしていない杉山だったが、事情の知らない者に、いきなり禁句を口にされてとばっちりを喰らう気もなかったので、そこは大人しく答える。
「‥‥じゃあ放っといて良いですね。わたしはとりあえず学園に行ってきます。‥‥そうね、零番隊を連れて行きますけど、構いませんね?」
カレンは真っ直ぐに藤堂を見て尋ねる。
「あ、あぁ。‥‥しかし無事なのは半数だぞ?それに零番隊を動かすにはゼロの許可も」
藤堂の言葉を途中でカレンは「貰ってます、許可なら既に」と遮った。
「半数で十分。わたしの指示に従うし、他の隊が混ざると指揮系統が混乱するもの。ラクシャータ、紅蓮とガウェインのエナジーフィラーを交換して」
「いーけどぉ?一つ良いかしらぁ?何処まで行ってたのか知らないけどぉ。この時間じゃぁ、ここまで戻ってくるまでの残量なんて、ないと思ったのだけどぉ?」
進み出たラクシャータはこの期に及んでのんびりな姿勢を崩さない。
「それは、ゼロが白兜から接収しました。動けなくなった白兜は現地に置き去りにしてきましたけど」
「‥‥現地って?」
「‥‥‥‥‥神根島よ」
『おい、カレン。何時までそこで喋ってるつもりだ?お前が行って戻ってこないうちは』
「ごめんッ、C.C.。すぐ行くわ。零番隊、出動するわ。みんな騎乗して」
カレンもまた紅蓮弐式に戻り、エナジーフィラーの交換が終わるなり、零番隊を率いてその場を後にした。
残ったのはわけが判らないままの幹部と団員達で、彼等は呆然と零番隊を見送った後ガウェインに視線を移した。



───────────
作成 2008.03.06 
アップ 2008.03.18 

──審査「ロイド」編──

その日、ゼロは自室で入団希望者リストを眺めていた。
藤堂と四聖剣が騎士団に合流後、これまでにも増して入団希望者が増えていた。
中にはスパイや明らかに怪しい者も含まれてくるので、審査は何重にも及び、次第に厳しいものになってきている。
そう、例えるなら今玉城辺りが審査を受ければ、まず間違いなく落ちているだろう程、にだ。
最終審査はゼロ自身がおこない、最終的な合否が決まるようにしているのはトップに立つ者の務めだと思っているからだ。
ふと、リストを捲っていた手が止まる。

ブリタニア人。

ディートハルトが入団後、それが知られているはずはないというのに、時々見かけるようになった。
だが、ディートハルト以外にはまだ入団許可を出した事はなかった。
リストを作成している一人である当のディートハルトは、それを何故か喜んでいるが。
まずは特記事項に視線を向け、唖然とする。
「‥‥なんの冗談だ?」
そのまま顔写真と、氏名に改めて目を向けた。
「‥‥‥‥。見なかった事にするべきだろうか、これは‥‥」
とりあえず保留にして次に進む。
他は滞りなく終わり、問題の経歴書だけが残り、再びそれに視線を落とした。
見覚えのある顔と名前、と言うよりはかつては良く目にした顔であり、良く耳にした名前が載ったその書類。
人種は先程も確認した通り、ブリタニア人である。
暫く睨むように見つめていたが、やがてその一枚をリストから外し、別の場所に保管しておいて、合否それぞれのリストを締めた。

幹部だけでおこなわれるその日のミーティングも大過なく終わり、後はゼロの解散の合図を待つだけとなった時である。
「‥‥。ディートハルト」
ゼロが、思い出したかのように、広報・情報担当の名前を呼んだ。
「はい」
「これは今回の入団希望リストの最終合否だ。処理しておけ」
「承知いたしました」
ディートハルトは席を立つと書類を受け取りに行き、「他には?」とまるで「まだ用件は残っているのでしょう?」と言わんばかりに尋ねる。
「‥‥‥この後、話がある。ラクシャータと藤堂もだ。‥‥扇とカレン、四聖剣については任意。残りは解散」
難色を示すのはいつもの如く玉城である。
「はぁあ?半分以上じゃねぇかよ。ならこの場で話したって構わねぇんじゃねぇのか?」
「‥‥‥。ならば変更する。ディートハルト、ラクシャータ、藤堂はわたしの部屋に来い。残りは解散」
ゼロは前言をあっさり翻すと、そのまま自室に引き上げていった。
「‥‥玉城ッ、あんたが文句ばっか言うからわたし達まで締め出されたじゃないの」
「そうですよ。おれだって藤堂さんが聞く事知りたかったのに」
任意と言われていて参加する気満々だったカレンと朝比奈が玉城に詰め寄った。
無言だったが他の四聖剣、三人も不満そうな視線を玉城に向けていた。
「めんどぉだわぁ」
そんな騒ぎを眺めながら、ラクシャータは盛大な溜息を吐いてからゆうらりと立ち上がる。
無言で立ち上がった藤堂と、キビキビとした動きで早速階段に向かうディートハルトの後を追ったのだった。

「ディートハルト。貴様何を考えている?」
自室に三人を招いたゼロは、椅子を勧め、三人がソファに座るのを待って、そう切り出した。
ちなみに長ソファはラクシャータが一人で占領し、藤堂とディートハルトは一人掛けのソファに座っている。
藤堂とラクシャータの視線がディートハルトに向かう。
「わたしには判断がつきかねましたので、ゼロの判断を仰ごうと思った次第ですが?」
ディートハルトは平然と応じる。
「‥‥貴様以外ならば、わたしの元に来る遥か手前で即座に叩き落としていただろうな」
「わたしも一瞬そうしようかと愚考いたしましたが、思い直しまして」
ゼロは黙ったままディートハルトを見ていた。
「‥‥先程ザッと目を通しましたが、合否どちらのリストにも載っておりませんでしたね?」
「ちょっとぉ、ゼロぉ?一体入団希望者とわたし達に何の関係があるってのよぉ?」
要領を得ない二人の会話に痺れを切らせたラクシャータが口を挟んだ。
「入団希望者が技術屋でな。君の意見が聞きたい。パイロット代表として藤堂、お前にもな」
ゼロはそう言うと、テーブルの上に一枚の経歴書を置いた。
ラクシャータはそれに触れる事無く、一瞥しただけで顔を顰めた。
「って‥‥なんでプリン伯爵がぁ?」
「やはり知り合いか」
「えぇ‥‥プリン伯爵って言ぅのよねぇ」
驚くラクシャータにゼロは経歴書の備考欄を指し示した。
「‥‥‥‥‥ひとっ言も聞いてないわぁ」
『ラクシャータに照会すればぼくの身元はハッキリするよぉ~』
備考欄には、達筆でそう書き込まれていた。
勿論、ラクシャータに照会しないままに最終のゼロに見せたのはディートハルトである。

「で?どんな奴だ?」
「プリン伯爵はぁ、ナイトメア以外一切興味のないオタクの変人よぉ。今はオモチャがあるからこんな気なんて起こさないと思ってたけどぉ?」
「‥‥オモチャ?」
「そ。騎士団じゃ、『白兜』って呼んでるナイトメア。あれの開発担当じゃないかしらぁ?」
「ふぅん?‥‥つまりこちらのナイトメアの情報を手に入れる為のスパイ、と言うことも有りか?」
「プリン伯爵に限ってそれはないわねぇ有り得ないわぁ」
キッパリとそれでも嫌そうにラクシャータは断言した。
「ナイトメアを破壊する為の工作要員と言う事は?」
「それも有り得ないわぁ。わたし達は技術屋だからねぇ」

「では藤堂。もしもこいつが入団した場合、ナイトメアを任せる気になるか?」
ゼロは藤堂に尋ねたが、藤堂が口を開く前に、ラクシャータが難色を示す。
「ちょッ‥‥お断りよぉ。プリン伯爵と共同作業なんてぇ。日本製触らせる気もないしぃ」
「‥‥ゼロ。入れる事は決定事項なのか?」
藤堂はそんなラクシャータを見ながら、質問で返す。
「‥‥‥‥いや?どちらかと言えば、見なかった事にしようかと思ったくらいだな」
ゼロは珍しくも素直な感想を率直に口にした。
「何故そうせずに、おれ達に諮った?」
藤堂はますます訝しむ。
「特記事項を見たから、だな」
ゼロはそう答えるが、改めて見ても特記事項には『伯爵、中佐』としかかかれていない。
「それは、わたしが書いたものですが‥‥?」
ディートハルトがそう言って首を傾げる。
「お前か。‥‥それではなく、その下だ。持参品が書かれているだろう?」
と、ゼロは言うのだが、三人には他に何も見えない。
「いや‥‥他には何も書いているようには見えないが‥‥」
戸惑った藤堂の声に、今度はゼロが「ん?」と首を傾げた。
「‥‥‥‥‥。あぁ。もしかしてコレか?」
思い当たったらしいゼロが、ポイッと藤堂に何かを放った。
器用に受け止めた藤堂は、それを見て眉を顰める。
「‥‥‥ペンライト?」
「それで光を当てて見てみろ。多分見えるだろ」
ゼロの言葉どおりにしてみると、確かにディートハルトの書いたという『伯爵、中佐』の文字に重なるようにして別の文字が浮き上がった。
書き込む時にディートハルトは先に書かれていた文字が見えなかった為に、上から重ね書きをしてしまったようである。

『お~め~で~と~ぉ。もれなくランスロットを持参します~。だ~か~ら~ぁ。い~れ~て~ぇ』

ふざけているとしか思えないその文字に、三人は暫し、絶句したのだった。

───────────
作成 2008.03.05 
アップ 2008.03.17 

租界を、ブリタニアの男子学生が一人後ろを気にしながら走っている。
少し離れた場所では、その男子学生を追いかけるように走る複数の女子学生。

学園の外に出れば追ってこないだろうと思っていたルルーシュは、走りながら己の甘さに内心舌打ちをする。
このままでは早々に息が上がって追いつかれるのは目に見えている。
第一、かなり目立つので、何処で誰に見咎められるかも知れない今の状況は、ルルーシュにとって、かなり有り難くなかった。

千葉は一人、ゲットーの一角で呆然と壊れた壁──正確には壊れた壁に貼られた破れた貼り紙──を見ていた。
なんとか読み取れる文字を繋げるに、この場所に在ったハズの店の転移の知らせ文らしい。
移動先が租界だと言うのも問題だが、地図の部分がほとんど読み取れない事も大問題だった。
地名で、大まかな場所はわかっても、随分と様変わりしているに違いないその場所にたどり着くのは至難の業だろう。
千葉は一度腕時計に視線を送ってから、その場所に向かうべく踵を返した。

「角を曲がって、身を、隠すッ。‥‥ゲットーに、近い、から‥‥、それで、諦める、ハズだッ」
弾む息の合間に、そう呟いたルルーシュは、早速手近な角を曲がった。
もう一度曲がれば‥‥と思っていると、その場所から出てきた相手とかなり派手にぶつかってしまった。
勢いが出ていた事も手伝って、ルルーシュはかなり派手にすっ転ぶ。
「くッ‥‥失礼した。‥‥急いでいたもので‥‥ッ」
自分に非があるとわかっていたルルーシュは、上体を起こしただけで相手を気遣って声を掛けたのだが。
そこにいた人物に見覚えがある事と、相手が口の前に指を立てて短く「しッ」と鋭く注意したのとで、途中で口を噤んだ。
「あ、すみませ~ん。こっちに学生が一人来ませんでした?すっごく綺麗な男の子なんですけどぉ?」
ルルーシュを追っていた女子の一人が千葉に声を掛けた。
どうやらルルーシュの事は千葉の影になっていて見えなかったらしい、というか、明らかにイレブンの千葉に対し声を掛けるとは勇気のある奴だ。
「‥‥少年なら、その先を左に曲がって行ったぞ」
「どうもありがとう」
千葉のおこなった嘘の説明に女子達が礼を言ってその方向へと駆け出していった。
足音すら聞こえなくなってから、ルルーシュは立ち上がる。
「‥‥まずは礼を言います。‥‥助かりました。‥‥あの先に、危険はありませんか?」
「あぁ、気にしなくて良い。ぶつからなければ逃げ切れていただろうし‥‥。あの先は租界の別の道に出ていたはずだ。‥‥怪我はないか?」
千葉は相手の少年がかなりの美形──美人と言っても差支えない──と気づいて目を見張りながら、声をかけた。
「ぁ、はい‥‥。受け身らしきものはちゃんと取れましたから‥‥。本当にすみません」
「あー‥‥それはもう良いんだが。少し道を尋ねても良いだろうか?」
改めて詫びるルルーシュに、千葉はそのままでは相手の気がすまないのだろうと、そう聞いてみる。
これで場所が分かれば、千葉としても助かるのは確かなのだ。
「おれでわかる場所なら良いんですが?‥‥どこですか?」
千葉はメモを書いた紙を見せながら、「ここなんだが‥‥」と指で示す。
「‥‥あぁ、『なごみ』、確か和菓子屋、でしたよね」
ルルーシュはメモ用紙を覗き込んでから頷いた。
一度咲世子に連れて行ってもらった事がある、かなりおいしい和菓子を提供する店だ。
「‥‥知っているのか?」
「えぇ。‥‥ただ、口で説明するには、入り組んだ場所にいますから‥‥」
「‥‥案内して貰うわけには、いかないだろうか?」
入り組んだ、と言われて千葉はますます単独での到着に不安を抱いた。
ルルーシュは珍しく不安そうな千葉に、少し考えてから時計を見る。
「‥‥一時間なら時間を取れます。おれで良ければ案内しますよ」
千葉はホッとした表情を浮かべて頷いた。
「よろしく頼む。‥‥わたしは千葉という。‥‥君は‥‥」
「‥‥‥‥。ランペルージ。学生です」
ルルーシュは無難に姓だけを名乗った。
藤堂の事を考えたからだが、どの道カレンの耳に入れば同じか、と諦めが入りながらも「こっちです」と言って先に立って歩き出した。

小さなキャンピングカーを改造して和菓子屋を営む『なごみ』の主は、見知った顔に笑みを浮かべた。
「いらっしゃい、久しぶりだねぇ、千葉ちゃん。今日もいつも通り五つかい?」
「あ、いや‥‥。‥‥そう、五つを包んで、それとは別に二つ、頼めるかな?」
「はい、まいどぉ。‥‥彼氏かい?」
連れの顔が見えていない店主は、そう言って千葉をからかいながら、和菓子を詰めている。
「‥‥ここまでの道がわからなかったので、案内を頼んだだけだ。‥‥もう少しわかりやすくして欲しかったが」
「あー‥‥そうか。すまないねぇ、千葉ちゃん。馴染みには来て欲しいけど、来て欲しくない連中もいるもんだから‥‥」
千葉は紙袋を受け取って料金を渡す。
「‥‥なら租界に移動したのは‥‥」
「以前いたゲットーの辺りも、急に軍人が押し寄せてきたからねぇ‥‥。ほとんど仕方なく、だよ。それに道も悪いから車じゃねぇ」
諦めの入った店主の言葉を聞いた後、千葉は少しばかり強引に話を終わらせて店を後にした。

「‥‥聞こえていたか?」
少し離れた場所で待っていたルルーシュに、近寄った千葉は気まずそう尋ねていた。
「‥‥聞こえていましたが、だからと言ってどこかに報告するつもりはありませんよ」
ルルーシュは肩を竦めて、投げやりに言った。
実際、そんなつもりは毛頭なかったし、店主の言っている事は事実だったから腹も立たない。
いや、ルルーシュ自身が、ブリタニアや軍人に対して腹を立てている状態だから、共感するところの方が大なのだ。
千葉は暫くルルーシュをジッと見つめていたが、紙袋から和菓子をひとつ取り出すとルルーシュに差し出した。
「案内をしてくれた礼だ。‥‥こんなもので悪いが‥‥」
「迷惑をかけたお詫びと、嘘の証言をしてくれたお礼に案内したはずだったのですけど?」
ルルーシュは首を傾げて千葉の差し出す手を見る。
「あぁ。だが、予定時間を越させてしまったようだから、な」
千葉に言われて時計に目をやったルルーシュは、思った以上に経っている時間に目を丸くした。
計算上では時間内だったはずが、疲れていたせいか、歩く速さがいつもよりゆっくりになっていたようだとルルーシュは分析した。
「‥‥では遠慮なく。‥‥ゲットー付近まで行けば後はわかりますか?出会った場所まではとてもご一緒できませんが」
「あぁ、助かる。最後まですまない、ランペルージ君」
ルルーシュは貰った和菓子を鞄に入れると、少し足早に歩き出した。

───────────
作成 2008.01.31 
アップ 2008.03.16 

ギルフォードは部屋に入るなり、スザクに鋭い一瞥を投げ、気付かないスザクから興味を失ったように視線を外した。
ユーフェミアが立ち上がり、「お姉様ッ」と言ってコーネリアに抱きつく。
コーネリアは普段通りのユーフェミアにほんの少し安堵して妹姫の身体を抱きしめた。
「じゃ、セシル君。後は任せるね。殿下、ぼくはこれで」
ロイドはそう言ってさっさとその場から離れようとするのだが。
「待て。状況も聞きたいし、このまま同席していたまへ」
ギルフォードによって足止めされてしまい、仕方無くセシルの横、壁際に並び立った。
コーネリアはその声で、ユーフェミアを離し、一同を見渡した。
「ダールトンはまだ見つからないのか?」
視線はロイドとセシルに向けられていて、その声音は厳しい。
「‥‥はい」
セシルはロイドをチラリと見たが、返事をする気がなさそうなので、短く応じた。
「ユフィ。‥‥お前は何か知らないか?ダールトンはお前につけた副官だ」
すぐ傍で自分を見上げる妹姫に視線を落とすとコーネリアは声を掛ける。
「‥‥‥‥。知らないわ。だって、ダールトンは邪魔をしたのですよ、お姉様」
表情を曇らせたユーフェミアは、コーネリアから視線を外すように俯いて、そう言った。
「ユフィ。わたしは何でもダールトンと諮って事に当たれ、と言っておいたはずだね?」
溺愛する妹に対するにして少しきつい口調で、コーネリアは確認する。
くしゃり、とユーフェミアの表情が歪んだ。
「だってお姉様。ゼロは‥‥ゼロはクロヴィス義兄様を殺したのですよ?」
「それは分かっている。‥‥だが、クロヴィスの仇はわたしが取る、と言っておいたはずだね?ユフィが手を汚す必要はないのだよ?」
コーネリアは妹のピンクのドレスについた赤いシミを悲しそうに見つめる。
「申し訳ございません。何分にもこのアヴァロンにはユーフェミア様に着ていただける服を載せていなかったものですから‥」
それと察したセシルが項垂れて謝罪する。
ユーフェミアの着替えはG1ベースに置きっ放しなのだ。
「良い。後で何か取り寄せよう。‥‥それよりもユフィ。ゼロと二人きりでどんな話をしたのだ?いや、それ以前に、何故ゼロを招いた?」
「え?えーと‥‥。目的は同じなのですからゼロと黒の騎士団にも『特区』に参加して欲しいと思ったのですわ、お姉様」
「目的が同じ」と言うユーフェミアの言葉に頷いたのは、スザク唯一人。
「‥‥それで?」
「ゼロは確かに式場に来てくれましたけれど、まだしかとは決めかねていたようなのです。だから『話をしよう』といってきたのですわ」
そのくだりはコーネリアも映像で見ているので、先を促す。
「で?ゼロと二人きりでどんな話をしたのだ?」
「えーと。大切なモノの話を。その為に名前を返上したと言ったら、『特区を生かす形で策を練る』と手を取ってくれたの」
初めて聞く内容に、コーネリアとギルフォードは困惑した表情をロイドとセシルに向ける。
ロイドはいつも通りの表情で肩を竦めただけだったが、セシルは同じ困惑顔でそっと首を振った。
「それならば、何故今こんな事になっている?」
「‥‥だって思い出したの。ゼロが、クロヴィス義兄様を殺したって事を。シンジュグゲットーで『虐殺を命じた』、『ブリタニア皇帝の子供』だからという理由でッ」
ユーフェミアは憤ったようにそう言って俯いた。
「少し宜しいでしょうか?ユーフェミア様。‥ゼロがクロヴィス殿下を殺害した理由に『ゲットー虐殺』は以前から言われていましたが、もう一つの方は何処で?」
ギルフォードが疑問点を口にした。
「河口湖のホテルで、です。わたしを助けてくれて‥。その時にそう言って、『そういえば貴女もあの男の子供でしたね』と続けて銃を向けてきた事があります」
大人達の視線が一斉にスザクに向かったのは、そんな報告は受けていなかったからだ。
「あ、スザクが来た時には、ゼロの銃は降ろされていましたから。『他にする事がある』‥‥そう言って人質の人達を救ったのです」
ユーフェミアはそう言うが、ゼロの言うところの「他にする事がある」とは黒の騎士団の宣言である事だと他の者にはわかった。
「‥‥しかし、ゼロはかなりの皇帝嫌いなようですねぇ?」
「ロイドさんッ」
ロイドとセシルの会話はユーフェミア以外の一瞥を受けただけでスルーされる。
「ユフィ。‥‥『大切なモノの話』、とは?名前を返上する事を決めた程の。‥‥ユフィは何が大切だったのだ?」
コーネリアの問いに、スザクとギルフォード、セシルはハッとしてユーフェミアを見た。
ギルフォードとセシルはコーネリアの問いに「確かに‥‥」と思って答えが気になったからだが、スザクは答えを知っているからこそ、だ。
「えーと。大きくて安全な、弱者と呼ばれる方でものびのびと暮らせる場所を作りたいと思ったのです。‥‥ブリタニアの名の下では無理でしょう?」
「ユーフェミア様ッ。それは皇帝批判に繋がりかねません」
あまりの理由に、ギルフォードが口を挟んだ。
「‥‥何故、わたしに相談しなかった?ダールトンにでも、お前の騎士枢木にでも‥‥。何故一人で決めたのだ?」
悔しげに表情を歪めたコーネリアは、ユーフェミアに訊ねる。
「だって。‥‥お姉様はお忙しそうでいらっしゃったし。ダールトンも、わたしの仕事の大半を受け持っていて‥‥」
「ユフィ。お前は何も分かっていないのだね。‥‥枢木、貴様もだ。‥‥名前を返上し、皇族でなくなったのならば、騎士を持つ事は出来なくなる」
コーネリアの言葉に、セシルは沈痛な表情になって俯き、ユーフェミアとスザクはハッとなって顔を見合わせた。
「‥‥‥‥え?‥‥でもスザクは、既にわたくしの騎士ですわ」
「名前の返上と同時に、騎士もまた返上、と言う事になります。枢木は騎士叙任に対する少佐昇級でしたので、准尉に逆戻りもします」
ギルフォードが冷たい声音で告げる。
「‥‥ユ、‥‥ユーフェミア様?」
スザクが茫然とした表情でユーフェミアの名前を呼んだ。
「枢木。一度なりとも騎士としての誓いを立てた相手であるユフィが、何の地位も、権力も失った後も、貴様のユフィへの誓いは変わらないと信じて良いのか?」
冷たい視線を投げられたスザクは直立した。
「はッ、はい。‥‥勿論であります。コーネリア殿下。ぼ‥‥自分はユーフェミア様の、ユフィの剣となり盾となる事を誓約しております」
内心では大いに動揺していたスザクだったが、面と問われれば、そう応じるしか道はない。
反射的に応じてしまったスザクは、それが本心か建前なのか、自分でもわからなくなっていた。

───────────
作成 2008.03.01 
アップ 2008.03.15 

ゼロはトレーラーの自室に篭り、「これだからこの手のイベントはッ」と忌々しげに呟いてソファにどさりと沈み込んだ。
今ここにC.C.はいない。
朝出掛けに、「ピザ10枚」と言ってきたので、今日は部屋で大人しくしているだろう、それが今は救いだった。
このまま寝てしまおうか、そう思わないでもなかったが、朝比奈が用事が有ると言っていたのを思い出し、ゼロは顔を顰めた。
朝比奈のテンションに今はついていけないと、ゼロは藤堂へ連絡を入れた。

朝比奈が再度ゼロを迎えに行く為に部屋を出ようとした時、奥の部屋から仙波が出て来た。
「朝比奈。迎えにはわしが行く事になった」
そう言った仙波は朝比奈を部屋に押し戻すと自分が出て行った。
誰にも何も言う隙を与えない、素早い行動だった。
朝比奈が我に返った時には、既に仙波の姿は何処にもなく、朝比奈は奥の部屋に直行した。
「藤堂さん、どういう事ですか?迎えはおれが行くって言ってたのに」
「諦めろって、朝比奈。仙波さんを指名したの、ゼロだしさぁ」
卜部が言うと、朝比奈は「が~ん」と擬音つきでショックを受けていた。

千葉は月下のコックピットの中でモニター越しに、仙波を発見して首を傾げた。
荷物を担いだ団員を一人従えてアジトから出て行った仙波は、どこか団員に気を使っているように見えたからだ。
「折角ゼロが良いものをくれたというのに、みなどこへ行ったのだ?‥‥中佐までおられないし」
千葉は一人そう呟いたのだった。

仙波は頭痛がする頭を手で押さえながら、背後に向かって声を投げる。
「別に、あの姿のままでも宜しかったのでは?」
「だが、用があるのは『ゼロ』なのだろう?団員姿で行っても意味がないだろう?」
あっさりした答えが返ってきて、仙波の頭痛は酷くなる。
「‥‥いつもこのような場所で着替えを?」
「あぁ。人がいた時の為に、他にも幾つか確保してあるが?‥‥もう良いぞ、仙波」
ゼロを振り返った仙波は、ずずずいと近寄ると有無を言わさぬ口調で言った。
「次からは、わし等四聖剣の誰でも良いから、呼びつけるか、着替えずにアジトまで来るように。宜しいですな!?」
ゼロが戸惑っていると、「この件は藤堂中佐にも報告させていただく」と言って、先に立って歩き出した。
ゼロはまだ戸惑いながらも、その後に従った。

仙波が立ち止まって「ここです」と示したのは、一月前にゼロが男性幹部を連れてきた場所だった。
「‥‥‥‥帰る」
ゼロはポツリと呟くと踵を返して引き返し始める。
仙波は慌てて止める。
「ゼロ。‥‥用事が済んだ、という事は千葉達にお返しを渡したという事ですな?ご自分だけお返しを渡しておいて、わし等に渡すな、と?」
仙波の言葉に、ゼロの足がピタリと止まる。
「まさか‥‥全く思われなかったのですか?」
この期に及んでゼロが逃げに出るとは思っていなかった仙波は、もしやと思って尋ねてみたのだが。
「わたしは男だ。この日に何か貰うなどと思うわけがないだろう?」
ゼロにキッパリと肯定されてしまった。
「ゼロ。この場合、前提条件が異なりますぞ。一月前に渡せば、今日貰う可能性は高くなると言う事ですな」
仙波はそう言ってゼロの認識の誤りを訂正すると、「さあ入ってください」と促した。
ゼロは諦めの息を吐くと扉に手を伸ばした。

ゼロは入った途端、にゅ~ぅと突き出されたカラフルな物体に、固まる。
いや、それが花束だという事は、ゼロにも理解できたのだが、差し出してきた人物が玉城だった事で、頭が拒否してしまったのかも知れない。
「‥‥‥。あー‥‥その、なんだ。この前の、ケーキは美味かったからさ。おれ達にゃあんなの作れねぇし、それぞれで何かってのも金がねぇしで、コレやる」
玉城が黙ったままのゼロに向かって、ポソポソと言い訳じみた説明をしてみせた。
「「「「感謝の気持ちとして、受け取ってくれ、ゼロ!!」」」」
杉山と、南と、吉田他、前回集まった隊長クラスの男達が唱和する。
その中に、ディートハルトがいないのを素早く確認したゼロは、玉城の持つ花束を受け取った。
「‥‥‥あ、ありがたく、受け取ろう」
声を引きつらせながらもゼロはそう言った後、一同を再度見渡して尋ねた。
「──ところで、今日の作業は終わらせているのか?」
礼を言ったゼロに、浮かれて騒ぎ始めていた男達は、その一言で、ピタリと動きを止めた。
「ッ‥‥な、なんでぇ、今日くらい、固い事言わなくたって良いじゃねぇか」
「玉城。言葉は正しく使った方が良いぞ?固い事ではなく、当たり前の事だ」
ゼロが言い直すと、杉山と南が笑い、つられた他の者にも伝染した。
「ま、おれ達の用件は済んだし、帰って作業の続きでもするか」
杉山の言葉に、玉城以外が頷いて、玉城は南と吉田に引きずられるようにしながら出て行った。
「後は任せた」との言葉が仙波に残された。

その場がゼロと仙波だけになった後、ゼロは仙波を振り返る。
「わし等の当面の作業は終わっておりますよ」
仙波の言葉に、ゼロは諦めて奥の部屋へ向かった。
扉を開くと朝比奈が突っ込んでくる勢いで近づいて来た。
「酷いよ、ゼロ~。おれが迎えに行くって言ってたのにー。なんで仙波さん?」
「朝比奈、耳が痛い。もう少し静かに話せんのか」
「遅くなってすまなかったな、藤堂」
ゼロは朝比奈をスルーして奥に座ったままの藤堂に声を掛けた。
「いや。‥‥用事は済んだのか?」
「あぁ‥‥、当面はな」
後ろで仙波が扉を閉めて鍵を掛けるのを音で察したゼロは、そのまま仮面を外した。
仮面をつけた状態で花束を持つ図は、ミスマッチ過ぎて笑いを誘うか、不気味なだけだが、仮面を外せば、似合う‥‥どころか花束が霞んで見えさえする。
「今日も綺麗だね~‥‥てか、なんか疲れてる?顔色悪い気がするけどー?」
ゼロが仮面に手をやった時からウキウキと期待に満ちた目で見ていた朝比奈が、それと気付いて表情を曇らせて尋ねた。
「‥‥少し寝不足なだけだ」
「とりあえず、座りなって。茶ぐらい出すぜ」
「ぐらい、じゃないですよー、卜部さん。さぁさ、行きましょ、ル‥‥‥‥じゃなくて、ゼロ」
危うく言い直した朝比奈はゼロの背を押して奥へ誘う。
「‥‥待てッ。わたしは靴を脱がなければッ」
畳の間との境にある段差に躓いて危うく転びそうになるゼロを、近くまで来ていた卜部が慌てて抱きとめた。
「ッぶねぇ~。朝比奈、テメ、慌てすぎ。‥‥大丈夫か?ゼロ」
卜部がそのまま朝比奈に文句を言って、ゼロを気遣う。
後ろにいた仙波は問答無用で朝比奈の頭に拳を落とした。
「ッ~~~。ご、ごめんね、ゼロ」
朝比奈は自分に非がある事が判っているので、痛いのを我慢してゼロに詫びる。
「あ、あぁ。‥‥助かった、卜部。朝比奈も、そう気にするな。なんともなかったのだから」
礼を言って一人で立つと、ブーツを脱いで、揃えてから畳の間に入る。
「以前も思ったが似合わないな‥‥」とゼロは思い、マントも外して畳んで端に置いた。
「しっかし、ゼロ。ちゃんと喰ってるのか?腰回りなんてありえないくらい細いんだけど」
手をわきわきとさせながら言う卜部にゼロはさっと赤くなった。
「──ッ食べている。食べても太らないのだから仕方がないだろう。それより、花瓶とかないのか?このままでは花が可哀相だ」
「んじゃ、おれが水につけてきてやるよ。別に今愛でる必要はねぇんだろ?」
卜部は言うと、ゼロの手から花束を取り上げて一旦部屋の外に出て行った。
「ゼロ、とりあえず座れ。疲れているようだし、ゆっくりしていけば良い」
藤堂の声を聞いて、平静を取り戻したゼロは畳の上に正座した。
「‥‥ッあ。お茶でも注ぐか?」
「って、ゼロ?君、客だって自覚ある?お茶くらいおれ達にだって淹れられるんだから、ゆっくり座ってなよ」
座ってすぐに立とうとするゼロに、朝比奈は呆れて言う。
「何かしていないと、どうも落ち着かなくてな‥‥‥‥」
ゼロはそう応じながらも息を吐いて気持ちを落ち着けた。
そこへ卜部も戻ってくる。
「では、始めましょうか、藤堂中佐」
仙波が頃合いと藤堂に声をかけた。
「おれ達は、君のように手作り等はとても出来ないから、買って来たモノになって申し訳ないが」
藤堂の言葉に、仙波、卜部、朝比奈がテーブルの上に皿を載せ始めた。
いちごのショートケーキ、いちごタルト、いちごプリン、それにいちご大福と見事にいちご尽くしだった。
ゼロは目を見張ってそれらを見てから、藤堂と四聖剣を見上げる。
「‥‥‥‥買ってきたって、こんなに、どこで?」
「紅月さんに良い店教えて貰ったんだよね。前にゼロ、いちごが好きだって言ったこと有ったろ?それで」
朝比奈がにこにこと笑って説明する。
「どうだ?気に入ったか?まずくはないと思うんだけどさ?」
卜部が首を傾げながら問いかける。
「『まずくはないと思う』ではなく、素直に『おいしいと思う』と言った方が良いだろうに‥‥」
仙波は卜部の言葉を注意していた。
「ゼロ、‥‥まぁ食べてくれ」
藤堂が少しテレながら勧めた。

始まりは一月前のゼロの我が儘だったはずなのに。
花を貰い、お菓子を貰う。
そんな可能性など、全く考えていなかったゼロは、この時、やっと心からの笑みを見せた。

「ありがとう‥‥本当に、嬉しい‥‥」
ゼロは、ルルーシュはそう言うと真っ赤になって俯いた。



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作成 2008.03.14 
アップ 2008.03.14 

生徒会室から出たルルーシュは、時間は早いながらも、いつものルートを通り、アジトへ向かう。
もちろん、途中でゼロになっている。
到着するなり目標を探そうとしたが、見つける前に邪魔が入った。
「ゼロ!よかった。今日は来ないかもとか思ったけど来てくれて」
朝比奈がそう声をかけてきて、そのままゼロの背中を押すようにして案内する。
「‥‥後だ、朝比奈ッ」
身を翻して朝比奈の手からなんとか逃れたゼロがそう言った。
「えぇ!?藤堂さんだって待ってるんですよ、ゼロが来るのを」
断られるとは露とも思っていなかったようで、朝比奈は盛大に驚いてくれる。
「‥‥活動に関係が有る事か?」
ゼロは一瞬考えて、それならば妥協しようかと尋ねたのだ。
「そーじゃありませんけど!」
朝比奈は拗ねたように否定する、って幾つだ貴様。
「なら後にしてくれ。第一今日は随分早いんだ。それを」
「え~‥‥。良いじゃないですか、今日くらい」
「朝比奈。‥‥用事が済めば行く。どこだ?」
ゼロが少し疲れた色を声音に乗せると、朝比奈はやっと渋々引き下がった。
「えっと。それは秘密です。なので用事が済んだら知らせてください。一度藤堂さんに伝えてから戻ってきますし」
「‥‥わかった」
朝比奈の答えに「なんだそれは」と思いながら息を吐いてゼロは頷くと、朝比奈に背を向けて当初の目的を果たしに歩き去った。

「朝比奈、一人かぁ、お前‥‥」
部屋に入るなり、かかる声に、朝比奈は無言で頷いた。
「ゼロ、来たんじゃなかったのか?」
「来た事は来たんですけど~。『活動に関係がない事なら後だ』とか言われました。だから一度藤堂さんに報告に戻って来たんですよね~」
朝比奈は力なくそう言うと、「報告したらまた戻りますよ、だから」と付け加える。
「なんでぇ~。折角早く来たんだから少し付き合うくらいすりゃ良いってのに。ホント付き合い悪い奴だぜ、アイツはよぅ」
「そう思うのならば、戻ればどうだ?玉城」
「杉山、テメッ。おれまで締め出そうってのか?ディートハルトだけじゃなく」
「それはよした方が良いですよ、杉山さん。下手に戻るとディートハルトに感づかれてしまうし」
「まぁ、そんな事になれば、来た途端回れ右しかねないからな。朝比奈、戻るなら」
「判ってます。扇さんでしょ?ちゃんと言っときますから。とりあえず、おれは藤堂さんに報告してきま~す」
ぶんぶんと手を振って朝比奈は奥の部屋に向かった。

「ラクシャータ」
ナイトメアの横で最初の一人を見つけたゼロは、「苦手は先に済ますべき」と内心唱えて声を掛ける。
「ん~?あれまぁ。早いじゃないのさ、ゼロ。何か有ったのぉ?」
「いや。‥‥君に、渡したい物が有っただけだ」
顔だけゼロに向けるラクシャータに、ゼロはそう言った。
立ち上がるラクシャータにゼロはシンプルな小箱とデータチップを一枚差し出す。
「ん~?これはぁ?」
「‥‥いつかの礼と、ナイトメアに関する情報だ」
ゼロの返事に、ラクシャータは「あぁ」と納得顔になってにんまりと笑って受け取った。
「律儀ねぇ。こっちのデータチップだけでも良かったのにぃ。ま、有りがたく受け取っとくわぁ」
「そうか。ではわたしはこれで」
「あ、ゼロ。千葉なら一人ポツンと月下にいるわよぉ?」
背中を向けようとしたゼロを止めてラクシャータは月下の上部を煙管で指示した。
「ん?‥‥まぁ良いか。助かった、ラクシャータ」
何故一人なのか疑問に思って首を傾げたが、とりあえず今は用事が先と思い、ラクシャータに情報提供の礼を言うと、ゼロはタラップを上った。
足音に反応したのか、千葉が月下から顔を覗かせる。
「ゼロか。中佐ならここにはいないが?」
千葉の言葉にゼロは絶句する。
そのまま思い返してみれば、かなりの割合で藤堂に用事だったから仕方がないか、と思い直した。
「あー‥‥、いや、今は千葉、君に渡したい物が有ったんだが」
ゼロがそう言うと、千葉は一瞬目を見開いて、月下から出てきた。
「それは失礼した。‥‥それで?」
前に立った千葉に促されて、ゼロはやはり小箱とデータチップを一枚差し出した。
千葉はそれらに視線を落とし、手を伸ばさずに訝しげにゼロを見る。
「一月前の礼と、おまけ‥‥だが」
千葉は「一月前‥‥?」と呟きつつ眉を寄せていたが、思い当たって、驚いた。
渡しておいてなんだが、千葉はお返しが貰えるとは思ってもいなかったのだ。
「‥‥‥おまけ?」
「あぁ、ナイトメア戦での陣形のわたしなりの考察を纏めてある」
ホワイトデーで、お返しだと言うのに、ゼロに浮いた様子はなく、いつも通りなので千葉は苦笑して手を伸ばした。
「ありがたく頂こう。ありがとう、ゼロ」
「い、いや。では、わたしはこれで」
テレたかのように、そそくさと背を向けるゼロに、千葉はかわいいと思ったが、それは中佐にも他の四聖剣にも黙っておこうと思った。

カレンがアジトに来た時、何故かゼロは既に来ていて、丁度トレーラーに入っていくところだった。
声を掛けるには少し離れていたので、走って追いかける。
トレーラーの入り口に着いた時、中から聞こえたゼロの声に、カレンの足は止まる。
「井上?一人か?」
「あら、ゼロ。早いのね。さっきまで扇さんがいたわよ。他の幹部を誰も見かけないから探してくるって出てったところ」
「一人なら丁度良い。井上に渡したい物があるんだが」
「渡したい物?‥‥って仕事かしら?」
「いや‥‥これだ」
気になったカレンはそっと覗き、ゼロが小箱と袋を差し出しているのを見てしまった。
それ以上話を聞いていられなくなったカレンは、そろそろと後退り、トレーラーを離れた。

ラクシャータは嬉々としてデータチップの検証をおこなっている時に物凄い勢いでタラップを駆け上がる音を聞く。
千葉は焦るように紅蓮弐式のコックピットの中に飛び込んでハッチを閉めるのを見た。
余計なお世話かとも思ったが、思いがけず良いものを貰ったばかりの二人は、ゼロが向かったと思われるトレーラーに足を向けた。

ゼロは自室ではなく、トレーラーの一階にいた。
ここにいたはずの井上の姿は見えない。
「ゼロぉ?あんた、お嬢ちゃんが来たの知ってるぅ?」
ラクシャータの声にゼロは顔(仮面)を上げる。
「‥‥来たのか?随分と早かったな」
と応じたゼロが立ち上がろうとするのを見て、ラクシャータと千葉は顔を見合わせた。
「あー‥‥、もしかしてぇ。やっぱり、気付いてなかったのかねぇ?多分、井上に渡そうとしてるところ、見られてるわよぉ、お嬢ちゃんに」
ラクシャータが忠告めいた言葉を紡いだのだが、ゼロは「ん?それが?」と首を傾げただけだった。
「あの様子では、誤解したかと思うが。今、紅蓮に閉じ篭っている」
千葉が続ける。
「‥‥‥誤解?」
「鈍いねぇ。つまりぃ、一人ずつにプレゼントを渡して回ってるって、その場を見たら結構コクッてるようにも見えるわけよぉ」
「‥‥‥‥‥‥‥‥。わたしが?」
「紅月がそう受け取ったようだ、と言っている」
恐らく目が点になっているか、呆然としているだろうと仮面の下を想像しながら、千葉は言葉を足した。
「‥‥‥流石に、仮面をつけたまま告白しよう等と、誠意に欠ける事をする気にはならないが」
「ゼロ。この場合、ゼロがどう考えているかではなく、紅月がどう受け取ったかというのが、問題だと思うが」
ゼロの言い分に好感を持ちながらも、千葉は的外れな事を言うゼロを諭す。
「‥そ、そうだったな。紅蓮だな?行ってみよう。‥‥助かった、ラクシャータ、千葉」
ゼロは二人に礼を言うと、二人の間を抜けてトレーラーから出て行った。

紅蓮の傍に立ったゼロは、そのままで声を出す。
「カレン。聞こえているのならば、話がある」
張り上げるでもないいつもの声で、ゼロは語った。
『す、すみません、ゼロ。い、今は‥‥』
オープンチャンネルでも無いようなのに、声が聞こえて、振り返ったゼロは、集音器を手にしたラクシャータを発見した。
「‥‥カレン。君に渡したい物があるのだが、受け取って貰えないのか?」
『えッ‥‥あいたッ‥‥。それって‥』
驚いたのか慌てたのか、カレンはそんな事を言った後、ハッチを開いた。
ゼロの手にある小箱に見覚えがあり、カレンは慌ててコックピットから降りた。
「あ、あのあの、ゼロ。一つだけ先に聞いても良いですか?さっき井上さんに渡していたのも‥‥」
「あぁ。一月前の件のお返しだ。カレンにはこれからも零番隊で頑張ってもらわなければならないし。‥‥受け取ってもらえるか?」
「はいッ!喜んで!!‥‥‥あの、これは?」
小箱と一緒に受け取ったデータチップが気になって尋ねた中には、「井上さんに渡していたのは袋だったのに」と言う思いもあった。
「表との二重生活も大変だろうから、それで少しでも軽減になればと思ってな。後でゆっくり見てくれれば良い」
ゼロは気負うでもなく答える。
カレンがわからないなりにももう一度礼を言うと、ゼロは、「ではわたしはこれで」と言って背を向ける。
「ん~?ゼロぉ?あんたもしかして、これをわたしらに渡す為だけに来たわけぇ?」
ラクシャータがそう尋ねたのは、何となくゼロがかわいく見えたから。
「「‥‥い、いや。別に。‥‥そういうわけでは(ッ)」ないんだが‥‥。当たったようだな、ゼロ」
ゼロと千葉の言葉が重なり、ゼロは驚いて途中で言葉を区切り、千葉はくすっと笑ってゼロを見た。
「ッ‥‥‥。失礼するッ」
恐らく真っ赤になってるんじゃないだろうか、なんて三人は思いながら、ラクシャータと千葉は「少しからかい過ぎたか‥‥」と反省した。

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作成 2008.03.11 
アップ 2008.03.14 

三月に入り、ひな祭りも無事に済むと、ルルーシュはいつもの如くミレイにお願いをする。
ミレイは、それを苦笑混じりに聞いて引き受けるのだ。
「ルルちゃんも大変ねぇ~」
というミレイの表情には、いつもの面白がる様子とは別に、同情まで浮かんでいる。
「そう思うのならもう少し何とかなりませんか?」
「ならないわねぇ、こればかりは」
ミレイに即答されて、ルルーシュは溜息をついた。
「とにかく、ここの事は任せましたよ、会長」
「わかってるって。でも、生徒会のみんなには自分で対処しなさいよ」
「わかってますよそれは」
応じてルルーシュは片手を振りながら生徒会室を後にした。

妹は勿論、生徒会も人数が少ないので何とかなるから今までも頼んだ事無いでしょう?との言葉はわかりきった事なので言わないでおいた。
それはきっと、ミレイにもわかってるのだろうけど言わずにいられなかったと言うところだろう。
最近、忙し過ぎたからな、と反省した。
後は‥‥騎士団か‥‥と内心で思う。
一番厄介なのがカレンだ。
生徒会と騎士団と、意味合いが多少違うだろうし、まさか似たような物を渡す訳にもいかないからだ。
バレンタインも厄介だがホワイトデーも厄介だなと、ルルーシュは一人溜息をついたのだった。

当日。

「ナナリー。これ、バレンタインのお返し。受け取ってくれるかい?」
ルルーシュはバレンタインの当日に自分が雲隠れするのでホワイトデーに受け取って貰えなくても仕方がないと思っている。
だから、そんな言い方をする。
「まあ当然ですわ。ありがとうございます、お兄様」
にっこり笑ってそう答えた妹にルルーシュは贈り物を手渡し、そっと髪を撫でる。
「これは、咲世子さんに」
「まあ、ありがとうございます、ルルーシュ様」
咲世子は礼儀正しく頭を下げて受け取った。
「ルルーシュ様?もうお出かけになるのですか?」
渡したすぐ後に鞄を肩にかけたルルーシュに咲世子が訝しげに問い掛ける。
「あぁ。少し用事が有ってね。始業前に生徒会に顔を出しておく事にしたんだ」
ルルーシュはキッパリと授業をサボると言ってみせた。
第一、その為にミレイに生徒会の女子全員に集合をかけて貰っているのだ。
「じゃあナナリー。行ってくるね」
「行ってらっしゃいませ、お兄様」

クラブハウスを出たルルーシュは、生徒会室に向かう。
既に全員揃っていた。
「おはよう、ルルちゃん。時間通りね」
ミレイが笑顔で手を振って挨拶した。
「おはようございます、会長。シャーリーもニーナも‥‥カレンも、朝早くからすまなかったな」
「えーっ。呼びだしたのって会長じゃなくてルルだったの?てかそれで一番最後って‥‥」
シャーリーが驚いて叫ぶ。
「悪いな。こちらの都合で朝早くから集まって貰って」
「‥‥それで。用事って何かしら?」
カレンが普段よりも若干低い声で訊ねる。
カレンの猫かぶりを知らないシャーリーとニーナは気づかない程度の、恫喝を含んだ声音。
「渡したいものが有ったんだ。‥‥勿論、受け取るかどうかはそれぞれで決めれば良い事だが」
とルルーシュは前置きをしてから、まずはミレイに奇麗にラッピングした箱を差し出した。
それを見て、それぞれ今日がホワイトデーである事を思い出した。
「も~ちろん♪受け取るわよ~わたしは。ありがとね、ルルちゃん」
ミレイにしては珍しく悪だくみのそれではない満面の笑みを浮かべて箱を受け取った。
「で~?これの意味を聞いて良いのかしら~?」
と、ミレイは一転悪だくみのそれに変わった笑みでそう尋ねた。
「いつもお世話になっていますからね、会長には。‥‥そう、感謝の気持ち、ですか。ダメですか?」
「ノープロブレムよ。ありがたく戴くわ♪」
ルンルンと本当に嬉しそうなミレイから、ルルーシュは隣のシャーリーに視線を移す。
「シャーリー。君にもお世話、というか仲良くして貰ってるしな。受け取って貰えるかい?」
「もっちろんよ。‥‥ありがとう、ルル」
シャーリーは特別な感情じゃないと言われたけれど、それでも嬉しそうに受け取った。
次に視線を移されたニーナは薄く頬を染めて俯いた。
「え~と、迷惑でなければ受け取って貰いたいのだけど?‥‥そう、また色々と教えて貰いたいし、な?」
ルルーシュは少しおどけてそう言うと、顔を上げたニーナは嬉しそうにコクリと肯いて受け取った。
「ありがとう。わたしで役に立てる事ならなんでも教えるわ」
「期待しているよ、ニーナ」
最後にルルーシュの視線はカレンに向けられる。
「‥‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥」
数瞬、無言で見つめ合い(実際は睨み合い)、ルルーシュは無言のまま箱を差し出してみた。
カレンは視線を箱に移す。
他の三人と同じように奇麗にラッピングされたそれ。
「わたしも、聞いて良いのかしら?これをくれる意味を」
「ん?君のと同じ、と言えば良いのか?‥‥まぁ、わからなければお返し、とでも思っておけば良い」
カレンはそれなら、と渋々手を伸ばして受け取った。
「ルルってばなんでカレンさんにだけそーなわけぇ?」
「‥‥っと、悪いシャーリー。これから少し用事が有って、もう出ないと。会長、後は頼みました」
ルルーシュはシャーリーの苦情に答えず、少し慌てたようにそう言って、さっさと出て行ってしまった。
取り残された女性陣がミレイに問い質し気な視線を向けたのは無理もない事だった。

───────────
作成 2008.03.09 
アップ 2008.03.14 

「軽いショック症状ね。‥‥しばらく休んでいたら落ち着くと思うけどぉ?」
そういって枕元を離れるラクシャータに、咲世子はホッと息を吐いた後、深々と頭を下げる。
「はい。‥‥お手数をおかけしました」
「さぁ~て、と。一応プリン伯爵のところにも行っとこうかなぁ。えっと?付いて来て貰っても良いかしらねぇ?アッシュフォードのお嬢ちゃん?」
「咲世子さん、少しの間お願いしても良いですか?」
ラクシャータに頷いたミレイは咲世子に頼むと一緒に部屋を出た。

二人になったものの、どう声を掛けるべきか、藤堂は悩んでいた。
目の前で憔悴して座るロイドという男は、ルルーシュに対して騎士に‥‥と願ったという。
主と仰ぐ者が、たった一つ、大切にしている存在に仇を成したのだと思えば、この状態はありえない事ではないだろう。
そこへ、控えめなノックが届く。
「‥‥。なんだ?」
ロイドが反応しないので、藤堂が返事を返す。
「あれぇ。藤堂、ここにいたんだぁ?今アッシュフォードのお嬢ちゃんと一緒なんだけどぉ。入れて貰えるぅ?」
「空いている。入ってくれ」
藤堂は青い顔を上げるロイドを見ながら返事をした。
すぐに扉が開いてラクシャータとミレイが入ってくる。
「まずぅ。お姫さまは平気よぉ。少し休めば良くなるわぁ。‥‥あんたを励ますのは業腹だけどぉ、だから元気出したら?」
「‥‥そ、うか‥‥。ありがとう、ラクシャータ」
ロイドが素直に礼を言うと、ラクシャータはすぐさま両腕をさする仕草をした。
「ぅわ~。明日は絶対雪だわねぇ。‥‥藤堂、少し詰めなさぁい。お嬢ちゃん、あんたも座ったらぁ?ちょっと話がしたいからさ?」
「‥‥‥。邪魔なら消えるが?」
「それならそうと言ってるわよ、藤堂。‥‥まぁったく、一人涼しい顔しちゃってさぁ。絶対、部外者じゃないでしょ、あんた」
ラクシャータの言葉に、ミレイとロイドは顔を見合わせ、ミレイはロイドの隣に座って向かいの二人に視線を向ける。
「な~んにも知らないって割には、さっき、あのお姫さまを運ぶ時はすっごく丁重に扱ってたわよねぇ?」
「‥‥って、ラクシャータ、君‥‥」
「そーりゃ、気づくでしょぉ?アッシュフォードがついてたりぃ?幼少時にナイトメアに乗ったり~とか有ればぁ?その場にいた事もあるしぃ?」
ラクシャータは「馬鹿にしないでくれるぅ?」と嫌そうに眉間にシワを寄せた。
「‥‥‥そーだっけ?」
ロイドは首を傾げて昔の記憶を引っ繰り返すも、出てくるのは主の事ばかりで。
「あんたはお姫さまの傍にはあまり来なかったから知らないでしょ~けどぉ。‥‥心配しなくても他に話すつもりはないわよぉー」
ラクシャータはロイドを小馬鹿にしたように言った後、ミレイに向かって他言しないと断言した。
「‥‥言葉を交わした事もなければ、直接会った事もない。ただ、‥‥何度か遠目に拝見しただけだ。‥‥七年前に、な」
三人の視線が集まった事で、藤堂は観念してそう告げた。
「あぁ、なるほどねぇ。あんた、そういえば、枢木スザクの師匠だったっけぇ?」
「そうだ。‥‥開戦のドサクサで亡くなったと聞いていた。身を隠しているのならば、触れない方が良いと判断したから黙っていたが」
スザクの事は軽く肯定するだけに留めた藤堂は、ナナリーについての説明を続けた。
苗字が変わっている以上、身を隠していると判断するのは当然だろう。
「あぁ、な~んだぁ。そういう意図かぁ。何考えてるのかと思ったわぁ」
「‥‥それについては、感謝します。‥‥頼っておいて失礼とは思うけど、ゼロは皇族であるクロヴィス殿下を殺害しているから」
ミレイはみなまでは言わなかった。
「んー?でも待ちなぁ。藤堂、あんた確か、ゼロとも七年前に一度会った事があるとかないとか言ってなかった?もしかして‥‥」
ラクシャータは眉を顰めながら、藤堂を見て言う。
「それは判らない。が、おれが会った時には彼女達は傍にはいなかった。‥‥ゼロの事だから、気づいている可能性の方が高いとは思うが‥‥」
藤堂は曖昧に答える。

そこへ再びノックの音。
ミレイがさっと同席者を見渡して返事をする。
「はい。どなたですか?」
「ゼロだ。荷物がある。不都合がなければあけて貰えるか?」
このタイミングで?とは誰もが思ったものの、荷物と言われてミレイは立ち上がる。
続いて何故か藤堂も立ち上がり、ソファを回った。
「今、開けます」
ミレイが鍵を開けて扉を開くと、ゼロが立っていて、その横にそれ程大きくはない箱が置いてあった。
「キョウトからの荷物に入っていた。わたし宛てだったから開けたが‥‥。中身は客人に宛てられているようだったから持ってきた」
「それは‥‥ありがとうございます。‥‥入ってください。あ、荷物は持ちます」
ミレイは扉を全開にしてゼロを招き入れようとしたが、ゼロが荷物を抱えようとしたので、慌てて制する。
「見た目の割に重いから止した方が良いぞ。‥‥藤堂、頼む」
ミレイがゼロに持たせるのを悪いと思っているのだと気づいたゼロは、近くまで来ていた藤堂に言う。
「あぁ、承知した」
そう言って荷物を持ち上げた藤堂は、ゼロの言った通り見た目に比べてかなり重いそれに眉を顰めた。
だが、何も言わずに持って入ると、ローテーブルの上にそっと乗せ、ミレイは扉を閉めて鍵を掛けるとテーブルに近づく。
「キョウトからって‥‥差出人は桐原公ぉ?」
興味をそそられた様に、荷物の箱に視線を向ける。
「‥‥表向きはそうらしいな。‥‥だから気付かずに開けたのだが‥‥。中に手紙が入っていた。内容は見ていないが」
表向きと言う言葉に、ラクシャータは首を傾げ、ロイドとミレイはハッとして中にあるという手紙を探す。
手紙を見つけたのはミレイの方が早かったが、手を伸ばして浚うのはロイドの方が早かった。
一通の白い封筒、その宛名は「ゼロ」であり、差出人は「桐原」とあり、封もあいているので、ロイドは視線をゼロに向ける。
「‥‥その中にもう一通の封筒が入っている。また中に入れて持って来ただけだ。見てみろ」
「あ、‥‥座ってください。‥‥藤堂さんも」
自分も立っていたミレイが二人を促した。
手前の一人掛けソファの前にはミレイが立ったままだったので、ゼロは奥の一人掛けソファに移動して腰を下し、藤堂とミレイも元の場所に座り直す。
その間に、ロイドは中から封書を取り出した、今度は淡い紫。
宛名には「ロイドとミレイ」とあり、差出人は書いていなかった。
ロイドは丁寧な手つきで封を切り、中身を取り出す。
手紙を開くロイドの横から、ミレイが覗き込んだ。
黙々と文面を追っているらしい二人に、ゼロと藤堂、ラクシャータは無言で二人の反応を見ている。
ロイドは真摯な表情を一貫して動かさず、ミレイは徐々に表情を驚きに変化させながら終わりまで目を通していた。

ロイドは自分のペースで二度読み返すと、手紙はミレイに渡し、荷物を漁る。
「‥‥一体どんなこと書かれてたのぉ?プリン伯爵ぅ?」
何の説明もないまま、箱を漁るロイドに、ラクシャータが不機嫌な声を投げる。
「あ、コレかなぁ~。だってぼくの好物を入れてくれてるって書いてあったんだよ?それが先に決まってるじゃないか」
そんなロイドを見て、ラクシャータは呆れて黙り、藤堂は「どうやら少しは元気になったようだな」と思って少し安堵する。
「‥‥ロイドさん。ナナちゃんと咲世子さんの分まで食べてしまわないでくださいね」
ミレイもまた、呆れた様子でそこだけはと注意する。
断熱素材で包んだ物を取り出したロイドは、傍目にも嬉しそうに包みを解いていた。
「わかってますよ~。それは当然じゃないか~。‥‥あ、君の分は貰っても良い?」
「ダメに決まってるでしょ?わたしだって好きなんですから、譲るつもりはありません」
図々しいロイドに、とんでもないとミレイは拒否する。
包みの中からは保冷剤と、プリン。
十分冷たいそれに、ロイドはご満悦だった。
「‥‥でぇ?わたし達を目の前にして一人で食べるつもりなのかしらぁ?プリン伯爵ぅ?」
プリンを前に小躍りしそうなロイドを見るに、「ラクシャータの呼び方はあながち間違いじゃないな‥‥」と藤堂は実感を持って納得してしまった。
ロイドはむっと顔を顰めて言い返そうとしたが、ゼロの存在に気付いてゼロが来る前の会話を思い出した。
「‥‥ゼロぉ。あんた、あの車椅子の少女の事、知ってたのぉ?」
ロイドの視線が流れた事に気づいたラクシャータがゼロに尋ねる。
首を巡らせてラクシャータを見たゼロは言いたい事がわからずそのまま思案する。
「‥‥おれが七年前、彼女に会った事があると言ったら、ゼロに会ったのも七年前だから面識が有ったのか、と問われていた」
仮面の下で混乱している事を知っていた藤堂が、ラクシャータの問いを補足した。
「‥‥彼女の、素性‥‥か?‥‥なるほど?それで警戒していたわけか。確かに知っているが、殺めるつもりはない」
落ち着いたゼロは内心で藤堂に礼を言い、クスリと笑って肯定し、案じているらしい三人の懸念も取り除く。
「‥‥‥‥。それは七年前に交流が有った、から?」
「いや?ないな。盲目で車椅子、『ナナリー』と言う名前‥‥七年前を知っていればすぐにわかる事だ。‥‥だから藤堂にも訊ねなかっただろう?」
「なら何故?貴方はクロヴィス殿下を殺めているわ。‥‥それとも、クロヴィス殿下個人に何か?」
同じ皇族と言う事でミレイは心配していたのだが、「もしかしてクロヴィス個人?一体どんな恨み?」と考える。
「‥‥日本に送られた時点で、切り捨てられた‥‥つまり縁が切れていると解釈していたが‥‥違ったのか?」
ゼロの考えを口にし、もし違うのならば‥‥と怪しい響きを乗せた最後のセリフに、ロイドとミレイは慌てて否定するべく首を振った。
「違ってない違ってないわ。悔しいけれど、切り捨てられたのは事実だわ‥‥。名目はどうあれ事実上人質だったはずなのにそれでも開戦したんだもの」
「全く。亡くなったって聞いた時には‥‥って、ミレイくんは生きている事知っていたんだよね‥‥ずるいなぁ~」
「‥‥仕方がないでしょう?あの時は亡くなった事にして匿わなければ、本当に日本かブリタニアかに殺されていたんだから」
危機一髪で助けた時の状況を思い出したミレイは、もしあの時間に合わなかったらと身を震わせた。
「勿論、お助けした事と匿った事はちゃんと感謝してるよ~。ご無事ならそれが一番なんだし」
遠くで訃報だけを聞いたロイドと、近くで命を狙われる様を見て来たミレイと、どちらが辛かったかなど比べるべきではない。
二人はその事をわきまえていた。

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作成 2008.02.11 
アップ 2008.03.13 

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