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コードギアスの二次創作サイト。 ルルーシュ(ゼロ)至上主義です。 管理人は闇月夜 零です。
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ギ ア スの小説を書いています。
ゼロ(ルル)至上主義です。
騎士団多め。
表現力がなく×ではなく+どまり多数。
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※「暴走」の続きです。

カレンが室内に見たモノは、惨状とも呼ぶべき状態。
ソファは切り裂かれ、切り口からは綿が溢れているし、机は真っ二つになって傾いている。
壁や天井にも幾つも線が走っていたし、床にも何かの破片が散乱している。
メカオレンジがおかしな格好で固まっているのはともかく、全員が身動ぎしないのに、カレンは少し怯んだ。
剣を持ってる卜部と朝比奈、銃を手にした千葉、四聖剣の中で一人武器を持っていない仙波は破片を避けて壁際に立っている。
C.C.は一人、ソファに座っている。
カレンはゼロの姿を求めて視線を動かし、仙波に隠れていた藤堂とゼロを見つけて目を見張った。
「ゼロッ、どこか怪我を!?」
膝をついた藤堂が、やはり床に膝をついているゼロの様子を伺っているのだ。
「放っておけ、カレン。ゼロがうっかり禁句を言っただけだ。‥‥そうだな。とりあえず、武器は没収しとけ。危ないからな」
呆れたC.C.の言葉に、カレンは結構ドジな面もあるルルーシュを思い浮かべて、思わず納得してしまった。
なので頷いてメカオレンジに向かったのだが、そんなカレンを見た四聖剣は驚いた。
「ゼロ命!」なカレンならば、C.C.につっかかるか、気にせずゼロの様子を見に行くかすると思っていたからだ。
カレンはメカオレンジに対して手を差し出した。
「武器を。ここにいるって言うなら、渡せ。でなければ、ゼロが反対したって、わたしが、あんたを排除する」
ギギギィ‥‥と、メカオレンジの上がったままだった手が下がり、姿勢がゆっくりと戻ってカレンに向き合った。
「‥‥‥‥言い訳ムダ」
ポツリ、とメカオレンジが呟いた言葉に、カレンは訝しげな視線を向ける。
「‥‥わたしは武器を渡せ、と言ったんだ。言い訳でもなんでもないだろうが。渡さないなら全力で排除しに掛かるわ」
気を取り直してカレンは再度宣告した。
「‥‥‥‥‥言い訳ムダ」
しかしメカオレンジはカレンの言葉を聴いていないかのように、再び同じ台詞を口にした。
「ッかぁ~~。追い出すッ!」
頭に血を上らせたカレンがメカオレンジに飛び掛ろうとするのを、卜部に持っていた剣を投げ渡した朝比奈が慌てて止めた。
「ま、待った、紅月さん。落ち着いて。ちょっとだけ待った、ホントに少しで良いから」
後ろからカレンを羽交い絞めにしながら、朝比奈は上擦った声を掛ける。
必死な様子の朝比奈に、カレンは少し暴れるのをやめた。
「何ですか?朝比奈さん。庇うなら、一緒に」
「ぅわ、そーじゃなくて。‥‥。藤堂さん、ゼロ落ち着きました?」
カレンからギロと睨まれた朝比奈は、慌てて否定してから、藤堂に声を掛けた。
「‥‥ゼロ。まだ無理か?」
藤堂が、ゼロにそっと声を掛けた。
ゼロは仮面から右手だけを外すと藤堂の肩を掴み、顔を上げた。


またやってしまった。
なんたることだ!手が勝手に剣を持ちあの方に襲い掛かろうとするとは!
一度は許された、だが今度は許される事はないだろう。
折角、温情を頂けたと言うのに!
自らそれを壊してしまったとは!
言い訳など、最早欠片も出て来ない程の大失態だ!
穴があったら埋まりたい、いや、いっそ造ってしまうか?
あの方を傷つけるなど、己であっても、いや、己だからこそ余計に許されない!
滅殺だ、瞬殺だ、抹殺するのだ!


ゼロは藤堂の手を借りて立ち上がり、その肩にすがりながらも、声を出した。
「──わたしは、『いい加減にしろ』と言ったはずだぞ、ジェレミア・ゴットバルト」

低い、それはあまりにも低い声だった為、室内の空気が、人間毎一気に固まった。
そう、C.C.さえも例外ではない程に。

「‥‥‥んーと?ゼロ?それって、『言い訳ムダ』ってのの事?どんな意味?」
「ん?‥‥ぁあ、それは別にカレンに言った訳じゃない。ジェレミアが言い訳しようがない程後悔してるってだけだ」
「へ‥‥‥?どうしてわかるの?」
カレンが呆然として、思わず口調もゼロに対するものではなく、ルルーシュに対するそれに変わっている事にも気付かず尋ねる。
「ジェレミアは、‥‥言ってみれば二重人格か?分裂症かな?ジェレミアにわたしを傷つける意思はないそうだ」
「だが、先程のあれは‥‥」
千葉が、まだ銃を構えたまま、口を挟む。
「あれが別人格だな。禁句で浮上してくるらしい。そちらはわたしを恨んでいる。復讐したいと思っているようだ」
あっさりと言うゼロに一瞬唖然とした一同だったが、四聖剣とカレンは、慌ててメカオレンジとゼロの間に立ち位置を変更した。
「ッてそれが判ってるならどうしてここに来たんですかッ!」
四聖剣よりもゼロに近かったカレンが思わず、ゼロに対してそう叫んでいた。
「煩いんだ。人格AとBとが言い合うところなんか、ハッキリ言えば聞いていたくはない。‥‥耳鳴りもするから止めに来た」
「‥‥不徳が最大」
ポツリ、とメカオレンジが呟く。
「C.C.。何か言う事はあるか?」
「‥‥すまなかった。これからはそいつでは遊ばないようにしよう。‥‥これで良いな?」
「今回は、な」



───────────
作成 2008.04.10 
アップ 2008.06.23 

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「中佐ァ~、今日は『父の日』なんだからゼロんとこ行かなくて良いのか?」
卜部が藤堂にそう声をかけたのは、月下周辺に藤堂と四聖剣しかいないまだ朝の内だった。
昨日、有った作戦の終了が遅かった為か、アジトに泊まったゼロは、まだ姿を見せていないから自室にいると思われる。
藤堂も今日が「父の日」であることは知っていた。
と言うか、昨夜眠る前にも「明日は父の日だな‥‥」と呟いていたりする。
いや、更に数日前から幾度となく「後何日で父の日か‥‥」と思ったりもした藤堂である。
なのにゼロの部屋に向かうのを躊躇っているのは、昨夜、最後に会った時にもゼロが何も言わなかったからだ。
単に忘れているだけかも知れないが、それでも藤堂は二の足を踏んでいた。

それが四聖剣には不思議でならない。
母の日ですら「母親役」としてゼロのところへ行った藤堂がまさか「父親役」として行くのを渋るとは思わなかったのだ。
「あ、でも『父親役』なら仙波さんとかの方が適任じゃないですか?」
朝比奈が提案してみる。
勿論、「母親役」が藤堂に適任だったとは思っていないのは言わなくても判っているのだが。
「わし‥‥か?」
指名された仙波はどうしたものかと思い藤堂を窺う。
藤堂はますます悩んだ。
藤堂は「自分が行くか、誰も行かないか」と言う選択肢しか考えていなかったのだ。
まさか他にお鉢が回る事があるとは思わなかった藤堂は「迂闊なのだろうか?」とも悩む。
しかし藤堂は、結局ゼロの部屋に向かう事に決めた。
たとえ四聖剣の仙波とはいえ、この役を譲る気にはなれなかったからだ。
四聖剣に「行って来る」とだけ言い置いて、藤堂はゼロの部屋へと向かったのだった。
藤堂が格納庫から消えて程なく。
ラクシャータが珍しくも少し慌てた様子でやって来て四聖剣は何事か生じたのかと身構えた。
「早いわねぇ、あんた達はいつもぉ。‥‥んで?藤堂はぁ?」
ラクシャータはそう言って月下隊長機の方を透かし見て「コックピットの中ぁ?」と尋ねる。
「えっと‥‥今、ゼロのところに向かったけど?」
朝比奈が言うと、ラクシャータは本当にらしくない程に慌てた。
「ちょッ‥‥すぐに連れ戻してきなさい。今日はダメなのよッ!」
一瞬四聖剣は驚き、まず千葉が身を翻し、次いで卜部がその後を追った。
「‥‥ダメ、とは。いかなる理由か聞いても構わぬか?」
藤堂を連れ戻すのは卜部と千葉に任せてその場に残った仙波がラクシャータに問いかける。
朝比奈が残ったのはラクシャータが慌てる程の行動を藤堂に嗾けた事に愕然としていてまだ動けないでいるからだ。
「えぇ!?わたしはぁ。ゼロの母親とは交流有ったしぃ、尊敬してたけどぉ。父親とは直接会った事もないからねぇ」
答えるラクシャータの表情に嫌悪の色が見て取れて仙波は戸惑った。
「ゼロはその、両親についてはどのように?」
「‥‥‥‥。わたしが言ったなんて他言したら赦さないわよぉ」
ラクシャータが脅しの言葉を紡ぐと仙波どころか、落ち込み中の朝比奈も慌てて頷く。
「母親の事は尊敬して、憧れて、愛してたでしょうねぇ。‥‥‥父親に関しては、ブリタニアよりも憎んでるんじゃないかしらぁ?」
ラクシャータの言いように、仙波と朝比奈は目を見開いて驚く。
ゼロがブリタニアを憎んでいるのはその言動の端々から窺い知る事が出来ていて、或いは騎士団にいる誰よりもと思うことすら有った。
なのに、「更に父親に対する憎しみの方が上なのか?」と二人は驚いたのだ。


やがて、藤堂が戻ってきた。
しかしその様子はとてもいつも通りとは言えない。
卜部が藤堂の背を押すようにしながら強引に引き連れてきたというべきだろう。
千葉が周囲に視線を走らせ、誰にも見られないように気を配っている。
仙波は「間に合わなかったか‥‥」と嘆息し、朝比奈は「どうしようどうしようどうしよう‥‥」と「すみませんすみませんすみません‥‥」だけが脳内で踊っている。
ラクシャータは一人、「藤堂をあんな風に呆然とさせちゃうなんてぇ、なぁに言ったのかねぇ、ゼロはぁ?」と面白そうに呟いた。

藤堂は何も説明せずに「暫く一人になる‥‥」と言って、月下隊長機のコックピットに消えていった。
ラクシャータは「つまらなぁい」と呟いてから、仙波と朝比奈に今一度口止めをするとのんびりと立ち去っていった。
残った四聖剣の内、卜部と千葉は何の事かと二人に視線を向けるが説明は得られなかった。
仙波は約束したからで、朝比奈はそれどころではないというのが理由だったが。
また、逆に卜部と千葉にも言うべき事がない。
二人がゼロの私室の前に着いた時には、既にあの状態の藤堂が一人ぽつんと佇んでいたからだ。
四人は同時に溜息を吐くと、月下隊長機へと視線を向けたのだった。


コックピットに篭った藤堂は、ただいま絶賛混乱中だった。
ゼロの部屋の前で、それでも往生際悪く暫く悩んでから藤堂はノックをした。
「ゼロ。‥‥藤堂だが‥‥」
そこまで言った藤堂は、中から投げられた言葉によって口を閉ざす事になる。
半分以上突っぱねられる事を想定していたから、ぴしゃりとした言葉が飛んできていても藤堂はここまで無防備な姿は晒さなかっただろう。
だが、結果的に藤堂は、卜部と千葉がやって来るまで、いや、やって来てさえ、無防備な状態から脱出できずにいた。
藤堂を案じる四聖剣に気づいていたのに何も言えずに、こうやって篭っているわけだが。
距離が近くなったと思い不用意に踏み込み過ぎた事に恥じ、まさかゼロがあんな風に言うとは思わず藤堂は混乱する。
そしてラクシャータが知るというゼロの素性に藤堂自身、思い当たる人物がいた事についても「どうすれば‥‥」と悩んでいたりした。
藤堂は一旦狭いコックピットの中を見回してから、「当分出れそうに無いな」と溜息と共に吐き出していた。


ゼロは、‥‥いや、この場合はルルーシュと言うべきか。
ルルーシュは悩んでいた。
勿論、悩むのにもわけがある。
昨年まではここまで悩まなかったと自信を持って言えるし、実際ちょっとした鬱憤晴らしをするだけで済んでいたのだ。
だが、今年はかなり盛大に悩んでいた。
原因は藤堂鏡志朗にある、‥‥いや、その言い方もまた語弊があるだろう。
簡単に言うならば、単にルルーシュが味を占めてしまっただけの話である。
すなわち「行事の日には藤堂が甘えさせてくれる」というものだ。
既に「こどもの日」と「母の日」によってそれは証明されていて、だからこそルルーシュは現在悩んでいるのだ。
ルルーシュにとって「父の日」とは今まで鬱憤を晴らす日でしかなかった。
最近ではリヴァルとどこぞへ出かけたり、ミレイと料理を作ったり馬鹿な話をしたりして余り考えないようにしていた。
ナナリーと二人だけではどうしても「あれ」を思い出してしまうので、大勢でいるようにしたりと工夫もした。
なのに、今年は少しだけ期待して、その事に驚いて自己嫌悪に襲われる。
「母の日」や「父の日」とはそれぞれに対し感謝する日だが、「あれ」に対して感謝したい事など欠片もないのだ。
ならばそんな日がある事自体を無かった事にすれば良いのだとずっと無視してきたのだ、今までは。
なのに、今年は期待してしまった。

そして、ルルーシュが何かを言う前から、藤堂がやってきてくれたのに。
ルルーシュは考えすぎて混乱したままに、藤堂を追い返してしまったのだ。

ルルーシュは余計に落ち込み、悩み事が増えてしまった。

そこへ再びノックが聞こえて、ルルーシュは抱えていた頭を上げる。
『そのままで良いですからぁ聞いてくださいますかぁ?』
続いて聞こえたのはラクシャータの声で、ルルーシュは失望している自分を見つけて自嘲する。
つまりは「藤堂が戻ってきたのではないか?」と期待しているのだ、ルルーシュは。
『今日が何の日だろうと、関係ないですよぉ?人が誰かに甘えたいと思うのは自然ですしぃ。貴方には必要な事ですからねぇ』
「‥‥‥しかし‥」
ラクシャータの言葉に、迷うルルーシュに対して、扉の向こうで笑う気配が伝わってくる。
『理由が必要ですかぁ?』
「‥‥‥必要だ。少なくともわたしにはッ!」
『ならぁ。別の理由を作っちゃえば良いんですよぉ。行事に拘るから動けなくなってしまうんですよぉ。「傍にに居たい」それだけでも理由としては十分ですって』
ラクシャータの言い分に、ルルーシュは戸惑い躊躇う。
『行事なんて気にしたくないなら気にしなければ良いんですよぉ。それともぉ「妹の日」にしか妹に会えない、なんて言わないですよねぇ?』
「待てッ!そんな日は初めからないだろう!?」
ナナリーに会えないなんてとルルーシュは慌てて反論する。
『まぁそうですけどねぇ。‥‥だからぁ関係無く藤堂に甘えてきなさいなぁ?』
「関係無く?‥‥‥‥しかし、ラクシャータ。それでは藤堂に迷惑だろう?」
ルルーシュはますます混乱する。
『‥‥‥‥ゼロぉ?‥‥ま、まぁ一度藤堂に言ってみれば良いと思うわねぇ、わたしはぁ?』
ラクシャータは何か問いた気だったが、続いたアドバイスに混乱していたルルーシュは頷いた。
「わかった。そうする。‥‥先程の件も謝らなければならないし‥‥」
『それならぁ。何か作って持って行ってやればぁ?‥‥‥‥ちなみにぃ、なんて言ったか聞いて良いかしらぁ?』
ルルーシュは「そうか、詫びに和食でも‥‥」と思っていたので、ラクシャータの問いかけに素直に答えていた。

「ん?わたしは、『すみません、藤堂さん。今は一人にしておいてくれませんか?』と‥‥あ、‥‥」
その言葉の意味に気付いてルルーシュは固まった。


(あらぁ‥‥もしかして藤堂のあれって‥‥バレたのかしらねぇ?殿下の素性?)
とりあえずは大丈夫だろうと判断したラクシャータは固まったままのルルーシュをそのままに部屋の前から離れたのだった。



───────────
作成 2008.06.15 
アップ 2008.06.15 

※「会話」の続きです。

「‥‥‥理解は不幸!無礼が大量!抹殺!滅殺!」
機械の目を怪しく光らせたメカオレンジは、藤堂と四聖剣に一歩近づく。
「するな、と言ったはずだぞ、ジェレミア卿。藤堂は軍事の責任者で、四聖剣はその補佐をしている。わたしにとっても必要だ。判るな?」
ゼロが止め、藤堂と四聖剣が必要だと説明しなおした。
「‥‥‥‥理解はシアワセ」
渋々、メカオレンジは頷いて、下がった。
「よし」
ゼロは、満足気にそれを見た後、C.C.に視線を転じた。

「C.C.。再度言っておく。あまりからかうな」
一段落着くと、ゼロはC.C.に向かって改めて注意した。
「何故だ?お前がからかいたいからか?先にからかい倒したから怒っているのか?」
しかしC.C.は悪びれることなく、言い切った。
「違う。わたしが迷惑すると言っている」
実際に迷惑を蒙ったゼロは簡潔ながらも譲らず切り替えした。
「ん?お前の所有物に手を出すなとでも?」
けれどC.C.にはやっぱり伝わらず、にやにやと笑って言い返すのみ。
「C.C.。冗談事じゃないんだよ?ホントに、ゼロが迷惑してるんだから、少し控えた方が良いと思うけど?」
朝比奈が、気の毒に思って口を挟んだ。
「そうそ。さっきまで耳鳴りと頭痛が酷かったらしくって、それで『耳鳴りを止めに行く』ってここに来たくらいなんだからなぁ?」
卜部も同意して補足する。
「‥‥‥ちょっと待て。なんだそれは。ガウェインにいたのだろう?‥‥‥まさかとは思うが」
「知らん。お前にわからない事が、わたしに判るわけがないだろう?だが、事実だ。だから控えろと言った」
珍しく焦るC.C.の言葉に、ゼロは首を振り、何が「だから」なのかは知らないが、説得を繋げた。
「‥‥‥そうだな、すまん。わかった。暫くは控えておく」
そして、暫く考えていたC.C.が折れた事に、藤堂と四聖剣は純粋に驚いた。
「のぉぉぉおお。理解不能!説明をイタダキマセ!」
そしてやはり理解しなかったらしいメカオレンジもまた、吼えた。
耳に痛いのはともかく、内容はその通りだと思ったので、口を挟まずゼロに視線を向けた。
「お前が言うな、ジェレミア卿。お前が言い争いなんぞしなければ、済む話だろうが、わかったか?オレンジ君‥‥あ。」
本当にポロリ、とゼロはその名前を口にしてしまった。
これまで、事有る毎に散々言ってきたのだから、条件反射になっていたのかもしれないが。
言った張本人であるゼロが固まったのは、流石に面と向かって言う気はなかったからだろう。
「‥‥‥のぉぉぉぉおおおおおお」
散々C.C.にからかわれていたせいか、メカオレンジがキレた。
「ぅわ。ちょッ、どーするんですか、これはッ!」
何処からともなく両手に剣を取り出したメカオレンジに、朝比奈が悲鳴を上げる。
藤堂は固まったゼロを庇って、半ば抱えるように後退する。
「藤堂。そいつを正気に戻して呼びかけさせろ。どうやらゼロの言葉しか聞き入れないようだ」
暴れるメカオレンジが同じ室内にいると言うのに、C.C.だけは変わらずソファに座ったままで、指示を出した。
ブルンブルンと振るわれる、二本の剣先から、四聖剣は藤堂とゼロを庇いつつ避けまくる。
藤堂は腕の中に収まるゼロを見ると、ゼロは再び仮面に手を置いて、というより両手で仮面越しに耳を押さえているようにも見えた。
ドゥン、ドゥンと銃声が二度鳴り、メカオレンジの動きが止まる。
「って千葉さんッ!?」
流石にそこまでは思っていなかった朝比奈は煙の上がる銃を構えた千葉を見た。
「‥‥。中てるつもりだったが、剣で弾かれた。‥‥とんでもない運動能力だな」
焦ると言うよりは呆れた口調で言いながら、千葉は額に汗を浮かべた。
「──ぃい加減にしろ、ジェレミア・ゴットバルトッ!!」
動きが止まったメカオレンジはついでに言い争いも一時的に止まり、その隙を突いたゼロが怒りの声を張り上げた。
再び剣を振り回そうとしていたメカオレンジはピタリ、と止まった。
姿勢はそのままに、ガランガランと手から離れた剣が落ちる。
朝比奈と卜部がそろそろと近づき、落ちた剣を拾って素早く下がる。
「てか、よくこんな重い剣、片手で振り回していられるよな」
卜部が感心しながら言う。
「あ。弾が喰い込んでる。‥‥ホントに剣で受け止めたんだ‥‥。凄いな」
朝比奈もまた、銃弾を剣で受け止めた事に驚きを表してた。

バタバタバタバタバタ
廊下を物凄い勢いで駆けて来る足音が急速に近づいてきた。
バタンッ
扉が勢い良く開き、一人の少女が中に飛び込んで来た。
「ゼロッ!!ご無事ですか!?」
カレンは開口一番そう叫んだ。


ナナリーを生徒会メンバーと咲世子さんの元へ送り届けたカレンは、同じG1の廊下の角で奥の様子を見ている玉城の背中を見た。
「‥‥何してるの?玉城」
ビクッ!!と大袈裟に肩を震わせた玉城は、ガバッと振り返った。
「‥‥ッなんでぇ、カレンか。脅かすなよ」
「勝手に驚いてるの、あんたじゃないの、玉城。で?何してるの?」
「ゼロが藤堂と四聖剣連れて禁句野郎のところに行ったんだけどよ、C.C.が平然と禁句を口にしてるから、避難してきたんだよ」
玉城が説明するのを聞いた途端、カレンは駆け出した。
「あんの、ピザ女~~!!」
と言う、カレンの声だけが、玉城に残された。



───────────
作成 2008.03.18 
アップ 2008.06.14 

騎士団幹部達は、格納庫で作業をこなしつつ、消えたゼロと藤堂、四聖剣とラクシャータが戻ってくるのを待っていた。
どのくらい経った頃か、戻ってきたのはラクシャータとゼロ、それに四聖剣の内の千葉と朝比奈だった。
声を掛ける事も出来ずに幹部達が凝視する中、あっさりと素通りした一行は、月下隊長機の傍で立ち止まる。
それはすなわち月下隊長機をゼロに合わせて調整するという事に他ならず‥‥。
「なッ‥‥ゼロ乗せたら月下まで壊されちまうってのに良いのかよ、おい」
思わず玉城が叫んだのも無理からぬ事だと、事情を知らされていない一同は思う。
千葉と朝比奈は顔を見合わせ、玉城の声など気にせずに早速作業を始めたラクシャータとゼロ(中身藤堂)を見てから、玉城の方へと近寄ってきた。
「な、なんだよ」
玉城は思わず及び腰になりながらも突っかかる。
「あのさ。今度の一件については藤堂さんもおれ達もラクシャータも納得した事だから、暫く黙って見ててくれないかな?」
「暫くだけだ。その内、また中佐が乗る事になる。それまでは‥‥口出しは無用に願う」
朝比奈と千葉が立て続けに説明し、「口出し無用」と言い切った。
「ちょっと待ってくれ。なら藤堂さんがゼロの無頼に乗るのか?」
扇が慌てて声を掛ける。
「‥‥いや。中佐は暫く戦場には出ない」
本当は今日のように、ゼロ(外見藤堂)は無頼に乗って戦場に出る気だったのだが、四聖剣が一致団結して却下したのだ。
今日のように「無頼を壊して、万が一にでも怪我をしたら大変だ!気になって戦闘に集中できないから、出てくれるな」と誠心誠意説得したのだ。
藤堂の身体を理由にされては、ゼロとて強硬に出るわけにはいかず、押し切られる形で折れたのだった。
「怪我!?」
驚く扇の疑問形の叫びに千葉と朝比奈は揃って首を横に振って否定した。
「そうではないが‥‥。ゼロは中佐が復帰するまでの間、月下に乗る事になったのだ。説明は以上。ではな」
千葉は話を強引に終わらせると踵を返して月下に向かっていった。
朝比奈もそのまま後を追い、腑に落ちない顔の他の幹部が残されたのだった。


一方、ゼロ(外見藤堂)は仙波、卜部とゼロの自室にいた。
流石に藤堂の姿で頻繁にここに来る訳には行かないので、必要な物を取りに来たのだ。
「なあ、一つ聞いて良いか?中佐はいつゼロの事知ったんだ?今回の件でか?」
卜部が藤堂(中身ゼロ)から受け取った書物や書類を仙波に渡しながら尋ねる。
「‥‥いや。藤堂を助けて、騎士団に入って、わりとすぐだったな」
ゼロ(外見藤堂)は四聖剣の前では取りつくろおうとする事すらやめたようで、藤堂の姿のままで平然と「藤堂」と呼び話題にする。
「へ?‥‥会って早々?何故なんだ?元からいた幹部達にだって教えてねぇんだろ?」
「‥‥藤堂は顔を隠したままの相手と手を組む事に納得しないだろう?」
卜部から受け取った書物をテーブルに乗せようとしていた手を止めて仙波は藤堂(中身ゼロ)を見た。
「確かにその通りだとわしも思いますが、‥‥藤堂中佐の事を良くわかっているようですな、ゼロ」
「‥‥確か、武士の鑑と言ったか?‥‥武人だったかな?」
そう答えて藤堂(中身ゼロ)は首を傾げて見せた。
ある意味視界の暴力に仙波と卜部は揃って視線をそらせていた。

プルル‥‥と着信音が響いたのは、そんななんとも言えない空間にだった。

「すまない、わたしだ」
そういってゼロ(外見藤堂)は携帯を取り出し相手を確認する。
藤堂(中身ゼロ)の表情が困惑に彩られて、仙波と卜部は戸惑った。
「どうしたんだ?中佐‥‥じゃなくてゼロ」
卜部が尋ねるがゼロ(外見藤堂)はそれには答えず携帯を耳にあてた。

留守メッセージが流れた後、ミレイの声がゼロの耳に入って来た。
『また留守電~?全然捕まらないんだから~。あんまり休んでばっかだと留年しちゃうわよー』
明るい声での前置きの後、本題に入るのがミレイのいつものやり方だ。
『‥‥ナナちゃんとの約束、破ったんですって?心配してるわよ?何かあるなら力になるし‥‥連絡待ってるわねー』
そう言うと、通話は切れた。

「携帯は交換してるんだな?声違うと取れないんじゃないか?今みたいに」
「藤堂中佐にはあまりかかって来る事は有りませんが‥‥ゼロは表の付き合いも有りますからな」
「メールを入れておくさ。不可抗力とは言え、約束を破ってしまったからな」
「ゼロ!落ち込み中すまぬが、藤堂中佐にそのような表情をさせるのは、どうかやめていただきたい」
「てか中佐の表情ってちゃんと動くんだなー。ゼロ、とにかくさ。辛いなら辛い、心配なら心配だって口に出して言いな。聞いてやるからよ」
仙波、卜部の言葉に藤堂(中身ゼロ)の顔からすっと表情が消えた。
普段の藤堂がまだ表情豊かに見える程完璧な藤堂(中身ゼロ)の無表情振りに、二人は慌てた。
「ゼロ違うッ!隠せっとも消せっとも言ってねぇ。あんな表情になる原因をさくっと解決しろって言ってるんだ。その為の相談には乗るからって」
「すまぬゼロ。わしの言い方が悪かったようだ。押し隠した表情を知っていては、その無表情を見る方が辛い」
慌てて対応策を述べる卜部に、平謝る仙波を見たゼロ(外見藤堂)は、無表情はやめて苦笑を浮かべたが、それでもクレームは飛んできた。
「‥‥それって、作り笑いって言わねぇか?ゼロ。無理に笑えっとも言ってねぇからな」
「藤堂中佐は普段あまり笑う事をなさらないから、その不自然さは余計に目に付くのだ」
「そんなにおかしいか?‥‥まぁ、表に戻れないのが少々痛いと思っているだけだから、あまり気にするな」
ゼロ(外見藤堂)は書類の選定に戻り、仙波と卜部の心配そうな視線に気付かない振りをした。

───────────
作成 2008.04.24 
アップ 2008.06.12 

──「親展と感想」編──

【特派】
宛名は『黒の騎士団総司令ゼロ様へ』とあり、親展の判が押されていて、それを初めに見た時、軽い眩暈を覚えた。
よくもまぁ、これで届いたものだと感心すると同時に、検閲に合うとは思わなかったのだろうか?と差出人に対して呆れてしまったのだ。
差出人の名前は無く、少し躊躇った後、開封して中身を取り出した。
『こんにちわ、ルルーシュ殿下。セシル・クルーミーと申します』
そんな始まりに、本当に気が遠くなるのを感じた程だ。
『上司のロイドさんがご迷惑をおかけしてませんか?
ホントにあの人ッたら、ランスロットだけ持ち逃げして、わたし達を置いていくなんて酷いと思いません?殿下』
自然におれの名前や「殿下」と書いてくる辺りが凶悪だった。
第一プリン伯が事後処理をキチンとやって来ないのが悪い。
説得するなりなんなりとしているものとばかり思っていたというのに、まさか何も言わず、白兜だけ持ち逃げ同然にしていたとは。
『入団申請書類を送付したと思うのですが、お手元に届いておりませんか?』
それなら今頃不採用通知が届いているはずだぞ、と思う。
ディートハルトにそのように指示を出したのだからな。
『特派一同、黒の騎士団に身を寄せたいと思い、書類を送付したのですが、まだ何の音沙汰も無いんですよね』
なら、行き違ったんだな、と思いつつ特派と聞いて思い浮かべた体力馬鹿に、まさかあいつまで出してたんじゃないだろうな、とげんなりする。
『あ。念の為言っておきますが、元ランスロットのパーツには何も言っていません。
ですから、殿下。わたし達特派一同も騎士団に置いてくださいな。
快いお返事をお待ちしておりますね♪』
「‥‥セシルと言えば、プリン伯やラクシャータと同じ研究所にいた女性だな‥‥。パワフルな人だったから覚えているなぁ」
更に続いた特派の技術者達からの親展の手紙は気力が追いつかず斜め読みしてセシルの手紙と一まとめにしておいた。


【グラストンナイツ】
宛名書きは『黒の騎士団』と『ゼロ』だけのシンプルなもので、それよりもでかでかと『親展』と書かれている。
少々乱暴な表書きに、嫌々ながらも開封して中を見た。
『ゼロッ!!貴方は一体ダールトン将軍に何をしたんですかッ!!!』
この出だしに、こいつ等、まさか気づいていないのか?と思わず呆れてしまった、いや知られている方がダメなのだから良いはずだというのに。
『何も無くダールトン将軍が敵に寝返るなんて有り得ない!!一体、何をしたんだッ!!』
おいおい、将軍。お前もか?お前もなのか?
お前に傾倒しまくっているグラストンナイツを丸ごと無視して、何の説明もなく来ているなんて思わないだろ?普通。
段々とやさぐれていくのを感じながら先を読む。
『良いか、見ていろよ、ゼロ。ダールトン将軍は必ず取り戻すからな!!!』
そうか、将軍にしか目が行っていないから、ゼロの素性にまで気が回らなかったか、こいつらは。
まぁ、それが普通だから、こいつらに腹は立たないが、‥‥将軍には一言言ってやら無いと気が治まらないな、これは。
おれは五人全員から来ていたこいつらの手紙を残りは斜め読みして纏めて置いた。
バラバラに出してきておきながら、内容はほとんど一緒なのだから一種の嫌がらせなのだろう、これは。


【キョウト】
宛名は『黒の騎士団総司令殿』となっていて差出人がないが、これはどこから来たかすぐにわかった。
キョウトだ、間違いなく。
なんと言っても達筆過ぎる筆遣いからそれが判る。
やはり開けたくは無かったのだが、本当に渋々開封し、中身を取り出した。
『ゼロ、その後いかが過ごしておるかの?』
き、桐原の奴、なんのつもりだ?
『あれ以来事務的な連絡を団員を通してしか寄越して来ぬから少々物足りなくての?
たまには年寄りの相手もするもんじゃよ。
今度キョウトに参られよ。
美味い茶菓子を用意して待っていよう』
何の誘いだ?一体。
わたしは何か?茶飲み友達か?そうなのか?
『藤堂や四聖剣も貸しておるのだし、ナイトメアや資金援助もおこなっておるのだし、たまには良いのではないかと思うておるのだがの?』
‥‥‥それとこれとは話が別だろう?
第一わたしは忙しいし、キョウトに行っている暇など有りはしない。
‥‥‥よし、放っておこう。

次の手紙に移り、再び固まる。
宛名書きが、『愛しい未来の旦那様』と親展の印。‥‥なんだ?これは。
てか何故それでここに届くのだ?
『ゼロ様!?早くお会いしたいと思いますわ。旦那様』
ハイテンション過ぎる文面と踊る文体に、眩暈が酷くなって行く。
『お忙しいのは判っています。神楽耶も何かお手伝いが出来たらと思うのですが‥‥』
き、気持ちだけで十分だ。
今はあまりあちこちで動かれても対処なんぞ出来るものか。
『この間、入団希望の書類をしたためておりましたら、桐原に邪魔をされてしまいました』
良くやった、桐原。それだけは褒めてやる。
ディートハルトとて神楽耶の名前くらい知っているだろうが、日本人でもある事だし万が一にでも通過してはやばい。
『ですから、騎士団の活躍をこころよりお祈りいたしますわ。
そして、勝利を収めてわたくしを迎えに来てくださいまし、未来の旦那様』
‥‥‥迎え、か。
というか、確定なのか?その「未来の旦那様」とやらは?
同意は一度もした事がないのだが‥‥。
‥‥‥それも後回しだ、返事なんぞはいるまいな、これも。
キョウトからの手紙もまた束ねて置いた。


【皇族】
これまでの固まり方はマシだったのだな、とその宛名書きを見て完全無欠に固まりながら思う。
『愛しのヴィ家の長子へ』‥‥‥‥。何故これで届くんだ?ここに?
ふざけてるのか?ふざけてるだろう?あんの甘やかし宰相はッ!!
『やぁ、ルルーシュ。元気そうでなによりの朗報だよ』


ぶちッとキレて立ち上がったおれは、扉に向かうとバタンッ‥‥と力任せに扉を開けたのだった。

───────────
作成 2008.05.28 
アップ 2008.06.10 

──「合流と変化」編──

カレンがいつアジトに戻ったのか、実は誰も気づかなかった。
それも当然で、カレンはゼロに抜け道を教えられ、そこを通ったからである。
通りながら「こんな道、いつの間に‥‥」と思わないでもないカレンだったが、途中で着替えを置いた小部屋を見つけたので、「あぁなるほど」と納得した。
だから、出入り口からではなく格納庫へとやってきたカレンとその同行者に、格納庫にいた団員──ほとんどが幹部だったが──は驚いた。
カレンに気づいたのはほぼ同時だったロイドとジェレミアは、しかしその反応は真逆だった。
ジェレミアは喰いつくような勢いでカレンに迫り、逆にロイドはじりじりと後退さっていて、それに気づいた者が「あれ?」と思う。
もう一人、ディートハルトもまた、固まった笑顔を貼り付けたままたらりと汗をかいて逃げ腰だった。
「か、カレン。いつ戻ったんだ?ゼロは一緒じゃないのか?後、その子達は?」
扇が代表してカレンに問いかけるが、カレンの視線はディートハルトに固定されていた。
「紅蓮弐式のパイロットッ!主は何処に!?」
しかし、ジェレミアにそう詰め寄られれば言い返さないわけにもいかず、カレンは怒鳴り返す。
「オレンジ卿ッ!いい加減その呼び方やめてよね。ちょっと紅蓮に負けたからって!」
「へぇ~。オレンジ卿まで入団してたのかぁ~。生オレンジ!初めて見たぜ~」
カレンの後ろに続いていたリヴァルがジェレミアを繁々と見ながら喜んでいる。
「そうねぇ~。これがゼロ命名オレンジ君かぁ~。ていうかぁ『お久しぶり~』って挨拶した方が良いのかしら?」
リヴァルに同意してから、カレンの前に出たミレイがジェレミアに声をかけた。
「‥‥お前ッ!?ミレイ・アッシュフォードかッ!?」
ジェレミアの表情が訝しげなものから驚愕に変わり、数歩下がりながら指差し叫ぶ。
「まぁねー。こっちも落ちぶれちゃってるけどねー。久しぶりなのに、その言い方はないんじゃないのぉ~?‥‥てかそこ!逃げてるんじゃないわよ!プリン伯爵ッ!」
けらけらと笑って肯定したミレイは、踵を返そうとしていたロイドを発見して一転きつい声を投げつけた。
観念したロイドは再び振り返って、「や、やぁ、ミレイ君。久しぶりだねー。元気そうでなによりだよ、うん」と力なく笑って応じる。
「あらぁ、ホント久しぶりねぇ。アッシュフォードのお譲ちゃん。ガニメデは元気にしてた~?」
「お久しぶりです、ラクシャータさん。でも、それおかしくないですか?幾ら落ちぶれたアッシュフォードの価値がガニメデだけだって言っても傷つきますよ?」
「気にしないの~」
「あの、会長?‥‥全員顔見知りなんですか?」
続く挨拶に呆然とする日本人幹部達を見て気の毒に思いながら、カレンもまた唖然とした思いを抱えて尋ねる。
「そうねぇ。後ダールトン将軍も知ってるけどー?ほら、腐っても元大貴族じゃない?アッシュフォードって。そっちのカレンから目の敵にされてた人は知らないわね」
「あ、そうだった。ディートハルトちょっと来て説明してもらうわよッ!」
カレンの言葉に、ディートハルトもまた観念したように近づいてきた。
「カレン?説明って何のだ?」
「団員採用の最終判断はゼロがしているはずだってのに、ゼロが知らない団員が存在してたって事についてです」
カレンの説明に、非難の眼差しがディートハルトに集中し、扇は再びカレンに視線を戻してから尋ねた。
「‥‥それもブリタニア人、なのか?」
「違いますよ。この女性です」
一人無言だった同行者を示してカレンは言う。
副指令である扇も初めて見る女性に、再びディートハルトへと視線を向けた。
「どういう事か説明してもらえるか?ディートハルト」
「はぁ。その。というか、何故発覚したのでしょうか?」
「聞いてなかったの?この人が名乗ったでしょう?『ミレイ・アッシュフォード』だって。そう言えばわかるんじゃないの?」
カレンの言葉に、ディートハルトの目が見開かれる。
「‥‥まさかッ。あの、今回の面接場所がアッシュフォード学園だったなどとは‥‥」
「言うわよ。何の為にわたしが同行したと思ってるの?ゼロを生徒会室まで案内する為よ」
「‥‥では」
「今回の入団希望者で採用になったミレイ・アッシュフォードとリヴァル・カルデモンドね。愛称は多分『会長』と『悪友』になると思うわよ」
「へ?マジッすか?決定なのそれ」
「多分ね。なんたって、プリン伯爵に将軍にオレンジ卿と来てるもの。‥‥じゃなくて説明しなさいよね、ディートハルト」
「‥‥あの、ゼロはどうなさったのでしょうか?」
「‥‥戻りがけにC.C.に遭遇したから先に来ただけよ。‥‥『落ち込んでるみたいで気になる』って」
「あの。まさかとは思うのですが、ゼロもアッシュフォード学園の関係者なのですか?」
ディートハルトの問いに、ミレイとリヴァルは顔を見合わせ、既に知っているメンツは無言を通し、カレンは藤堂を見てから頷いた。
「そうよ。アッシュフォード学園でわたしの同級生よ」
カレンが認めた事に、ゼロが学生だったという事に、驚いた幹部達が驚愕の声を上げる。
「会長とリヴァルともう一人はゼロの素性に気付いて共に戦いたいって入団を希望したの」
友人想いな動機に驚愕の声が収まって行く。
「カレン。もう一人、というのは、彼女の事か?」
「え?咲世子さんは既に団員だっていうから数には含めてないわよ。こんな煩いところに連れて来る気なかったからゼロの部屋にいるわ」
扇の問いに対する、カレンの答えは何気ない一言、だったはずだ。
にも拘らず、反応は面白い程に分かれた。
ダールトンは表情を引き攣らせ、ロイドとジェレミアは青褪め、ラクシャータは嬉しそうな笑みを浮かべる。
藤堂は「あれはこう言う事だったのか」と納得し、四聖剣はそんな藤堂に問いた気な視線を向け、残りの幹部は驚いていた。
リヴァルは「騎士団って思ったより面白いのな」と率直な感想を述べ、「ゼロも色々大変なのねぇ」とミレイは溜息を零した。

C.C.と連れ立って戻ってきたゼロは、ディートハルトに対して厭味に近い叱責を浴びせた後、「今回のみ不問にしてやろう」と言って咲世子の件は終わらせた。
「会長。例の件は技術班と相談の上、万全を期してください。お前もしっかり聞いていろよ?我が悪友どの?」
「判ったわ、ラクシャータさんと相談すれば良いわよね」「う~ん。唯の『悪友』よりは良いかなー?」
ゼロの指示に二人はそれぞれ頷いた。
「咲世子さん。お願いできますか?」
「お任せ下さいませ、ゼロ様。さぁ、参りましょう、C.C.さん」
咲世子とC.C.はゼロの部屋の方へと平然と去って行き、幹部達は「さん付け!??」「敬語!?」と驚いた。

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作成 2008.05.25 
アップ 2008.06.05 

黒の騎士団、何故かいつもは夜おこなわれる幹部会議が朝も早くから招集された。
まだ眠そうな幹部達が集まり、ゼロの話を静かに聞いていたのだが。
話を聞き終わった時、その場にいた誰もが固まった。
そう例外はない。
藤堂も四聖剣もだ。
「‥‥‥‥ぜ、‥‥ぜろ?あ、あぁぁぁあああのさ」
扇がどもりまくってゼロに声を掛ける。
「どうした?扇」
「いぃぃぃぃいまの!もう一度ぃぃぃいってくれないか!?」
「なんだ、聞いていなかったのか?」
そう言って再びゼロは同じ事を口にする。
当然ながら、幹部達の耳にも同じ内容が届く、聞き間違いじゃなかったのか‥‥と遠い目をする幹部達。
「ちょッ‥‥‥‥っとまてよ、ぜろ。そそそそれはおれたちきしだんんんのしごとじゃねえだろお」
と何故か動揺しまくったまま玉城は反論し、「よっしよく言った玉城。伊達に楯突いてるわけじゃなかったんだな」と褒める(褒めてるのかこれは)。
「何故だ?我々は正義の味方だと言ったはずだな?ならば当然、すべき事だろう?」
心底不思議そうに玉城に仮面を向けるゼロに、これはこのまま黙っていては流されると幹部一同慌てた。
「ちょっと待てゼロ。一体何故こんな事を言い出した?正義の味方とはいえ、我々はテロリストだぞ?ボランティアグループでもなんでもない」
「ボランティア?何を言ってる千葉。こんな事は当たり前の事だし、本来は毎日でもすべき事だろう?」
千葉の抗議の言葉にもゼロはやっぱり不思議そうに言い返すのだ。
そして「確かに正論なのだが、どこかズレてる!」と思うのだが、もうどうして良いかわからず頭を抱える者多数。
「‥‥ゼロ。質問して良いか?本来は毎日‥‥とそう思っているのならば、何故今日そんな事を言い出す?しかも朝早くにやってきてまで」
藤堂が問いかける。
「決まってる。今日は────」
ゼロの返答に、一同はズッこけたのだった。
しかしゼロの説得に失敗した幹部達は、泣く泣く団員に指示を出し、ゼロの言う「作戦」を決行に移した。


***********

「何?騎士団がおかしな動きをしている?‥‥なんだそれは」
報告を受けたコーネリアは訝しげに聞き返して首を傾げた。
「はぁ。シンジュクゲットーのあちこちに出没しているとの報告が上がって来ているのですが‥‥」
主に問われて、しかしギルフォードは曖昧にこちらも首を傾げながら報告する。
「‥‥また毒ガス作戦でもおこなう気か?」
コーネリアはエリア11に赴任前に起こった事件を例に上げてみる。
「お言葉ですが、姫様。毒ガス事件は黒の騎士団の仕業ではありませんが」
ダールトンが訂正するが、確かに黒の騎士団の仕業ではないが、幹部の一部が関わっていたりするからむ関係とはいえない(実際には毒ガスではなかったが)。
「‥‥それで?出没して何をしているのだ?」
コーネリアはダールトンの言葉に頷いてから、気を取り直してギルフォードに尋ねる。
「‥‥‥‥‥はぁ、それがその‥‥」
またもや歯切れの悪い返答をするギルフォード。
「良いから言ってみろ」
「それが‥‥掃除と、ゴミ拾い‥‥です、姫様」
ギルフォードの答えに、コーネリアとダールトンの目が点になったのだった。


***********

『ゼロッ!ブリタニア軍が接近しています!』
第一報はカレンだった。
『だぁからナイトメアまで持ち出すのはやめようって言ったんだッ!』
玉城が慌てて泣き言を言う。
玉城の言葉通り、ゼロのガウェイン、カレンの紅蓮、藤堂と四聖剣の月下他、数機のナイトメアがこの「作戦」に駆り出されていた。
『カレン。指揮を執っているのは誰か解るか?』
しかしゼロは慌てず、軍を発見したカレンに尋ねる。
『グロースターが見えるからコーネリアが騎士連れて来てるみたいです、ゼロ。‥‥どうしますか?』
『恐らく、すぐに戦闘に突入する事にはならない。‥‥わたしが行く。お前達はその場で待機していろ』
『なッ!一人でなんて危険過ぎます!!』
『ゼロ。おれも紅月に賛成だ。せめておれと四聖剣をつけろ』
カレンが反対し、藤堂もまたそれに便乗する。
『‥‥藤堂だけで良い。他は待機だ。行くぞ、藤堂』
改めての指示に、これ以上は言っても無駄だと一同は渋々頷いていた。
『‥‥わかった』
藤堂もまた反論を諦めて了承した。


***********

『ゼロッ!貴様一体何を考えている!?』
コーネリアの第一声。
『おやおや。コーネリア皇女殿下御自ら、協力しに来てくださったのですか?』
しかしゼロは平然とそう言ってのけた。
コーネリアのグロースターのすぐ後ろに控えるダールトンとギルフォードのナイトメアも、その後ろに続く親衛隊機も更に後ろに控えるサザーランドもお構いなく。
『ふざけるな。わたしを愚弄する気か?』
『まさか。‥‥貴女こそ今日が何の日かご存じなくやってこられたのですか?』
ゼロは驚きさえ声に乗せ、問い返し、藤堂は「通じるはずがないだろう?」と頭を抱えた。
『今日‥‥‥?』
コーネリアは訝しげに呟き考える。
『今日は5月30日ですね』
『‥‥はっ、まさか!?』
ギルフォードもまた日付を口にして考えていたが、それでコーネリアが思い至ったらしい。
『やっとわかりましたか?コーネリア皇女殿下』
『すまない。‥‥そうだな。今日だけは停戦し、協力してよう』
コーネリアの言葉に、それを聞いていたゼロ以外の者が当然ながら驚く。
『『姫様ッ!一体どういう事ですか?』』
『ダールトン、ギルフォード。手分けして隊を振り分け、周辺のゴミ拾いをさせよ』
コーネリアの命令に、騎士二人を筆頭にブリタニア軍将兵はことごとく驚愕した、顎が外れるのではないかというくらい驚いた。
その様子を間近で見ていた藤堂は朝の自分達を見ているようで、ブリタニア軍に同情した。

そんな部下達に目を向けて、コーネリアは平然と言ってのけた。
すなわち、

『今日は5月30日。つまり530。ゴミゼロの日だッ!』

そうして終日、敵味方入り乱れてゲットーのゴミ拾いに終始したのだった。



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作成 2008.05.30 
アップ 2008.05.30 

──面接「ミレイ&リヴァル」編──

今回、面接に立ち会う事になったのは、カレンだけで、ゼロはカレン一人を従えてアジトを離れた。

「彼女一人だけ連れてくなんて、今回の入団希望者ってどんな人達なのかな~?我が君に危険な事は?」
未練がましく遠ざかるゼロの姿を見送りながら、ロイドは引き返そうとする藤堂に尋ねた。
藤堂は足を止めて振り返る。
四聖剣が立ち止まり、ロイドと一緒になって聞く体制になっていたダールトンとジェレミアはもとよりラクシャータとディートハルトも注目する。
周囲に残った面子に、藤堂はゼロの危惧が判る気がした。
「問題ない」
藤堂が返したのはその一言だけだった。
「だけどー。ゲットーって何かと物騒だしー?」
ロイドの心配は「外見はどうみてもブリタニア人に見える子ども二人では危険」というものである。
そう考えてから、ロイドは「おや?紅蓮のパイロットは知らないんだっけ?」と今更ながらに思ったが。
「問題ないな。今回の面接場所は租界だと言っていたからな」
藤堂は曖昧に応じたが、実際にはその「面接会場」が「生徒会室」で有る事も知っていた。
藤堂の言葉に、ディートハルトを除いたブリタニア人達は慌てた。
「主を誘き寄せる為の罠という事はありえないのかッ!?」
「租界で不審な行動を取るのは、流石に目に留まり易いと思われる。今からでも止めに行った方が‥‥」
「そうですよ。今は軍も殺気立ってるだろうしー?」
「う~ん、わたしはぁ。ゼロがわざわざ租界を指定してまで面接しようとしている今回の入団希望者に興味あるわねぇ」
その時、半数が騒ぐ一行の横を、C.C.が歩いて通り過ぎる。
「あれ?C.C.どこ行くの?」
「ゼロが出かけた事だしな。わたしも戻って休む。ここではゆっくり休めなくなったからな」
「いかにゼロの『共犯者』といったところで、現状租界が危ない事には変わりない。アジト内で大人しくしている事を勧めるが」
ダールトンがC.C.に真っ向から意見する。
「流石堅物だけの事はあるな。ゼロより口喧しい。だが、その案には従えない。わたしにはするべき事があるのだからな」
そう言ってC.C.が踵を返そうとするのを、ジェレミアが腕を掴んで止めた。
「ッ‥‥離せッ、オレンジッ!」

C.C.の勢いに気圧されたジェレミアは、掴んだ腕を離して数歩後退る。
「‥‥‥わたしに触れるな。わたしは誰の指示にも従わない。ゼロに関する事なら聞く事もあるが命令されるのは真っ平御免だし、触られるのも嫌だ。覚えておけ」
幾分抑えた声音で言った後C.C.は再び歩きだす。
辛うじて藤堂がその背中に「気をつけて行け」と声を投げただけでC.C.の姿は一同の視界から消えた。
「あ~あ、C.C.の機嫌損ねたねー、オレンジ卿。後であの子とゼロに謝っときなよー」
朝比奈がまだC.C.の消えた路地に視線を向けたまま、ぽつりと呟いた。
「ゼロにも、というのは?」
未だ衝撃から覚めないジェレミアに代わり、ダールトンが尋ねる。
「C.C.がやけ食いに走ると、ゼロの懐直撃だから?」
朝比奈の何故か疑問形な回答に、ダールトンとロイドがジェレミアの肩を叩き、ジェレミアは呆然と「はい」と呟いたのだった。


「へぇ~?やっと認めるってわけね?」
生徒会室に入ると既に待っていたミレイの声がかかる。
「おれ達、話してくれるのず~っと待ってたんだぜ~」
次いでリヴァルの声が恨めしげに飛んでルルーシュとカレンにぶつかった。
「‥‥‥‥リヴァル、ナイトメアの騎乗は?」
ルルーシュは肯定も弁解もせずに質問を投げる。
「おれ?ガニメデならまっかせなさ~い?」
リヴァルは首を傾げてからおどけた様子でそういって笑った。
「会長ですか?リヴァルにガニメデを教えたのは」
「あったり~♪アッシュフォードから四機つけちゃうわよ~。ガニメデ部隊ができるでしょー」
ミレイも笑う。
「四?また中途半端な数字だな、ミレイ。つまり騎乗者は既に決めているんだな?」
ルルーシュはそんな二人に苦笑した後、口調を変えてミレイに問い掛けた。
それと気付いたミレイもまた口調と態度を改めた。
「はい。わたしとリヴァル。後は咲世子さんと‥‥‥‥ナナリー様です、ルルーシュ様」
「そうか、わかった。その覚悟があるのなら、入団を認める。ガニメデを弄れるとなれば技術班が泣いて喜ぶだろうし?」
二人のまるで芝居がかったやりとりにリヴァルとカレンは驚き目を見張る。
「ありがとー♪ルルちゃん。でもねー、他はともかくロイド伯爵喜ばすってのはねー。誘ってもくれなかったしー?」
だが、ミレイは即座に元通りに戻ってしまい、二人はがっくりと肩を落とした。
「報復がしたいなら別の事でしてくださいよ、会長。あいつの技術力はナナリーの為にも必要なんですから」
「わかってるって。‥‥‥‥んー?驚いた?だぁてねー、これからルルちゃんの下で働くわけでしょー?これくらい出来なくちゃ?」
「会長のノリはころころ変わるってわかってるだろ?リヴァル。こんな事で驚いてたらこの先大変だぞ」
「てか、なんで平然としてるの?ナナリーちゃんをナイトメアに乗せるって言ってるのに!」
「とめてやめるならとめてる。本当に危険と判断したら絶対に乗せたりはしない」
そのルルーシュの言い分にカレンは勢いを削がれ続きを待った。
「だがな、カレン。ミレイがこう言った以上、ナナリー用にガニメデの調整は出来てるだろうし、そうである以上、ナナリーの腕はぴか一なんだ」
「「‥‥‥‥へ?」」
カレンとリヴァルの声が被る。
「調整はばっちりよ~♪ナナちゃんに合わせてるから他の人は乗れないけどねー」
「それで?二人は?奥か?」
尋ねるルルーシュの視線は会長室に向けられる。
するとカチャと扉が開いてナナリーの座る車椅子を押した咲世子が入ってきた。
「お兄様‥‥‥‥」
「すまない、ナナリー。黙っていて。いつ気付いたか、聞いて良いかぃ?」
「スザクさんが乗ってらしたランスロットが黒の騎士団に参加したと知った時からです。乗ってらっしゃるのはロイド伯爵でしょう?」
「あぁ、迂闊だったな。ナナリーは以前ロイド伯と何度か手合わせした事が有ったからな‥‥気付いて当然か」
「「「‥‥‥‥あの、ルルーシュ(様)。手合わせ、とは‥‥ナイトメア戦、(だよな?)」(です)よね?」」
「そうだ。流石に6歳の少女に白兵戦を挑もうとする愚か者はいなかったからな。‥‥で、ナナリーが勝てなかったのは一人だけだった」
「‥‥‥‥ナナリーちゃん?ルルーシュの言ってる事、ほんと?」
「はい♪お母様には一度も勝てませんでした。とっても強くって‥‥。いつかわたしもお母様のように強くなってお兄様をお守りしようってそう思っていました」
恐る恐る尋ねたカレンの言葉ににっこりと笑ってナナリーは応じたが、それはちょっとばかりズレた答えでもあった。
「しかし、‥‥一度に四人か‥‥」
「‥‥あの、ルルーシュ様?わたしは既に騎士団に所属しているのですが‥‥ご存知ではありませんでしたでしょうか?」
咲世子の控えめな問いに、ルルーシュとカレンは顔を見合わせる。
「あいつか」「それしかないでしょ」「何のつもりだ?一体‥‥」「戻ったらとっちめてやりましょう」「そうだな」と、ルルーシュとカレンはげんなりとした表情で言い合った。
「あ、そうだ、会長、それにリヴァルも!どうしてスザクの話流せって教えてくれなかったんですか?」
「あっら~。やっと気づいたの~てか教えたのルルちゃんね~?」
「んなの、ささやかな嫌がらせに決まってるじゃん。おれら出し抜いて騎士団に所属してるからだぜー?」
カレンはミレイとリヴァルの言葉に、がっくりと肩を落とした。

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作成 2008.05.13 
アップ 2008.05.25 

──審査「ミレイ&リヴァル」編──

様子を見に行ったダールトンが戻って来て藤堂とカレンに声を掛けた。
「藤堂と紅月。まずは二人を、との事であった」
呼ばれた二人は同時に立ち上がり、足取り軽いカレンの後に、足取りの重い藤堂が続いてゼロの部屋へと向かった。

ソファに座るゼロの前に置かれた経歴書が二枚。
向かいに座りながらカレンはその表面にチラと視線を流していた。
完全に座る直前に固まってストンとソファの上に腰が落ちた。
続いて座ろうとしていた藤堂だったが、嫌な予感を覚えて、ソファから少し離れた。

「なッ、なッ、なッなぁに考えてるんですか!あの人達はぁ~~!?」

叫びながらカレンが思い浮かべた人物は、写真を見るまでもなく、生徒会長のミレイ・アッシュフォードと生徒会役員のリヴァル・カルデモンドだった。
叫んで荒い息を吐くカレンに、ゼロは追い討ちを掛けるように、経歴書のそれぞれの一点、備考欄を指し示した。
藤堂もまた、ソファの後ろからその場所を見る。
『既にカレンって言うわたしと同じ学生も採用してるんだから、まさか断りはしないわよね~?』
『入団志望の動機はさぁ。とある人物への個人的制裁がしたいからってやつかな?なんとかならね?枢木スザク』
藤堂はリヴァルという少年の備考欄に書かれた内容に渋面を作ると、尋ねる。
「スザク君は、学園で一体何をしているんだ?」
しかしカレンは自分が騎士団に所属している事が既にミレイに知られていた事に動揺して、藤堂の話を聞いていないので、溜息を吐いたゼロが応じる。
「‥‥ゼロと騎士団への批判が凄まじいんだ。生徒会でな。それも似たような事しか言わず、生徒会のメンバーが辟易しているのにも気付かない」
「それは‥‥スザク君ならやりかねないが‥‥」
藤堂にはその様子がありありと想像出来てしまい、「不甲斐無い弟子を持ってしまったな。‥‥申し訳ない」と心中で詫びた。
「初めはみんなもスザクの話をちゃんと聞いていたんだがな。今ではカレン以外は素通りさせていてまともに聞いていないぞ」
藤堂とゼロの会話を聞いていたカレンは「あれ?」と思う。
そして、ミレイに知られていたと言う衝撃以上の衝撃を覚えてゼロを凝視した。

「あ、‥‥‥。ぜ、ぜろ?‥‥ってやっぱり、るるー、しゅなの?」

驚きすぎて巧く回らない口を何とか動かして、カレンは尋ねるが、否定して欲しいのにも関わらず、ゼロはあっさり頷いた。
駄目押しとばかりに、藤堂もまたカレンの隣に座る危険を避けて一人掛けのソファに座りながら頷いていた。
「なんで、ルルーシュがゼロなんてやってるのよッ。貴方、スザクと親友だって、そう言って笑ってたじゃないッ」
カレンが憤って、問いただす。
「7年前は確かにな。戦後、最後に会った時までは確かに親友だった。最近、再会した時もそうだと思ったんだがな」
ゼロの仮面をつけたまま、淋しげに紡がれる言葉に、カレンの勢いは削がれた。
「‥‥違ったの?」
「わたしは七年前、スザクに初めて会った時には既に、ブリタニアを憎んでいた。スザクの前で『ブリタニアをぶっ壊す』と言った事もある」
ゼロの、ルルーシュの言葉に、カレンの表情は別の意味で険しくなる。
「だが、再会した時のスザクは、既に名誉ブリタニア人で、軍にも所属していた。わたしの言葉等、あいつの中には残っていなかったらしい」
声音に自嘲の色が混ざるゼロに、カレンはますますスザクへの怒りを増加させた。
「あいつは人の話ってものをひとっつも聞こうとしないんだもの。それに頭が空っぽで身体にしか栄養回ってないから覚えてないんだわ」
そう言ってから、カレンは再び「あれ?」と首を傾げた。
「‥‥って、待った。さっき、わたし以外がどうとかって‥‥」
「あぁ、スザクの話は一度聞けば十分だからな。それ以降、同じ事しか言わないだろ?聞き流していても話は通じるんだ」
ゼロのと言うよりはルルーシュの言葉に、カレンは今までの苦労を思って肩を震わせた。
「ど、どーして教えてくれなかったのよ?わたしが何度あいつを張り飛ばそうと思ってそれを必死に抑えてたと思うのよ」
「あぁ。みんなして『カレンは真面目だな』と思って見ていたんだが、流石にスザクを前にして『聞き流せ』とは言えないだろう?」
「な、ならあいつがいない時にでも言って欲しかったわ。たくさん有ったじゃない」
「‥‥病弱なカレンさんはおれを嫌っていただろう?話しかけると露骨に嫌な顔をするし、会長のイベントなんかで忙しい事も多かったからな。忘れていた事もある」
ゼロ‥‥というか、ルルーシュとカレンの言い合いを、藤堂は渋面を作って見ていたが、「そろそろ止めるか」と思って口を挟んだ。
「ゼロ。‥‥何故、紅月にバラしたんだ?」
「てか、藤堂さんはどうして知ってるんですか?」
藤堂とカレンが前後して疑問を口にする。
「藤堂は昔の知り合いでな。早い段階でバレたんだ。この二人が来る事になれば、流石にカレンにもバレるからな。先にバラしておく事にした」
「え!?会長とリヴァルは知っているんですか?」
「教えてはいなかったが、入団を希望してくる以上知っているとしか思えない。この先の展開まで予測出来てかなり嫌なものはあるがな」
ゼロは疲れた様子で溜息を吐いた。
「‥‥ゼロ。いっそ、幹部にだけでも仮面を外してみないか?後から来る者がみな知っている状態では古参の者達が不満に思う」
藤堂が提案する。
「素性を明かせ、と言うのか?藤堂。気付けばお前以外は、ブリタニア人しか残っていないなんて事になりかねないのに?」
ゼロの言葉に、半分ブリタニアの血が入っているカレンは首を傾げた。
「顔と名前だけでも良い。なんなら紅月に説明してもらえば良いだろう?」
「ってなんでわたし?」
「今のおれを知る者は、カレンとC.C.くらいだからな。まぁ、会長やリヴァルが来ればまた別だが」
「あ。それで会長達は本気で入れるんですか?」
「本音は入れたくはない。特に会長には色々と世話になっているからこれ以上迷惑は掛けたくないが、カレンの事がバレている以上そうも言ってられないからな」
ゼロは嘆息すると、「二人とも入る気満々だろうから、何が有っても退かないだろう?」と言ってカレンを見た。
「‥‥そ、そーですよね。でも騎士団に入って何をするんですか?あの二人」
「言っておくが、会長のナイトメアの操縦はかなりのものだぞ。カレンとタメを張るかも知れない」
「‥‥へ?会長が!?」
「あぁ。‥‥っと、しまった。そうすると、ラクシャータに頼んで、ナイトメアを‥‥いや、プリン伯もいる事だし」
驚くカレンが聞き返すと、ゼロは機械的に頷き返してから、自分の考えに没頭し始めた。
「‥‥ゼロ。今回は面接もせずに合格にするのか?」
藤堂の問いに、ゼロは固まる。
「‥‥い、いや。そうしたいのは山々なんだが、流石にそういうわけにはいかないな。そんな前例を作れば、後続のブリタニア人達を落とし難くなる」
ゼロの言葉のニュアンスに、藤堂とカレンは顔を見合わせてからゼロに視線を戻した。

───────────
作成 2008.04.24 
アップ 2008.05.23 

──「親展と発覚」編──

近頃、ゼロ宛に親展の手紙が来るようになっていた。

トレーラーの1階で幹部──既に新規参入ブリタニア人三名も幹部の仲間と見做されている──達が休憩していた。
その時、1階にいたのは藤堂と四聖剣、扇、カレン、ディートハルト、ラクシャータ、ロイド、ダールトン、ジェレミアである。
突然、バンッと二階から勢い良く扉が開け放たれる音が響いてきて、幹部達を驚かせた。
バッと音のした方を振り仰ぐ者が大半だったが、ロイドとジェレミアは「我が君」「我が主」と言いながら先を争うようにして階段を駆け上っていた。
腰を浮かして警戒したのはダールトンだけで、他の元からの幹部達は、ただ首を動かしただけに留まった。
案じるロイドとジェレミアを纏わりつかせたまま、ゼロは降りてきて、ディートハルトの前で立ち止まる。
これには流石のディートハルトも戸惑いを覚えて、作り笑いを浮かべながら立ち上がって「どう、なさいました?ゼロ‥‥」と尋ねた。
「わたしは、『当分の間、ブリタニア人は落としまくれ』と言っておいたはずだな?ディートハルト」
ゼロの怒りを含んだ低い声に、藤堂は「またか‥‥」と嘆息し、他の日本人幹部達は嫌そうな表情を浮かべた。
新参幹部はバツの悪そうな表情になってゼロを見、ラクシャータはにやにやと面白そうにそんな一同を眺めていた。
「お言葉ですが、ゼロ。わたしは落としておりますが‥‥」
「あれを落としたとは言わないだろう?『合否判定はまだか』と言う催促の手紙がやってくるくらいだ。保留にしているだけではないのか?」
反論するディートハルトにゼロは容赦なく違いを指摘する。
「ってゼロに直接ですか?」
驚いたカレンが横から口を挟む。
「ここのところ、親展扱いの手紙が良く届く。‥‥まぁ、全てが全てブリタニア人というわけではないが、大半がそうで、内容がその件なんだ」
「申し訳ありません、ゼロ。‥‥ブリタニア人の書類を弾いた後、不合格者のところへ戻すのを忘れていたようです」
「‥‥‥‥‥‥。では今持って来い。ハッキリ引導を渡してやろう」
ゼロがディートハルトにそういった途端、ロイドとジェレミアがゼロから離れ、その事にダールトンとラクシャータ以外が驚いた。
「‥‥え‥っと‥‥。承知いたしました」
ディートハルトは戸惑ってロイド、ジェレミアを見、ダールトンとラクシャータに視線を移してみるが、何も言いそうに無いので返事をして踵を返した。

ゼロがいつもの場所に座ると朝比奈が声を掛けた。
「えーと、さ。ブリタニア人だけじゃないって、日本人からも親展来てるんですかー?」
「桐原公から時たま便りが来る事はあるな、親展で」
「「「‥‥って文通!?」」」
「斜めに読んで必要が有れば連絡を入れるつもりだったが、あれらに返事をする必要を感じず放ってある」
桐原からの手紙を受け取って、それを斜め読みするだけでなく返事を書かないとは‥‥と日本人達は呆れた。
そして桐原とゼロの力関係を思う。
というか、「桐原公、一体どんな内容の手紙をゼロに送っている?」と藤堂や四聖剣ですら疑問に思う。
バタバタを足音がしてディートハルトが戻ってきた、かなり早い。
そしてかなりの量の経歴書の束をゼロに差し出した。
「これ、です」
ゼロは手を伸ばして受け取り、一番上になっている経歴書に視線を落とすとそれなりに覚悟していたはずなのに、即効固まった。
「‥‥‥ゼロ、平気か?」
藤堂が声を掛けると我に返ったゼロは「あ、あぁ」と頷く。
「‥‥ゼロ。あのさ。ホントに落としまくるのか?問答無用で?」
扇が恐る恐る尋ねる。
「‥‥いや。一度目を通さねばならないだろうな。‥‥ラクシャータ」
「なぁにかしらぁ?」
「この後する予定の整備は、紅蓮弐式と月下隊長機から始めろ。二人には後で話がある」
「わかったわぁ。わたしは行かなくても良いんでしょぉ?」
「あぁ。将軍、オレンジ卿、プリン伯爵も手持ちの仕事は終わらせておけ」
「「「イエス、マイロード」」」
3人は一斉に踵を鳴らして敬礼する。
それは既に身に染み付いた行動で、ブリタニア式の敬礼もまた、日本人達の反感を買っている事に、彼等は気付いていなかった。
「ゼロ。その三人に、『郷に入っては郷に従え』ということわざを教えてやれ」
藤堂が忠告を入れる。
「‥‥そうだな。日本人と、敵。どちらかがいる前では止めておけ。‥‥わたしは暫く自室にいる。緊急以外は煩わせるな」
ゼロはそう言うと、立ち上がり、さっさと部屋へと戻っていった。
何故かいつもは扉の前まで纏わりつくロイドとジェレミアも階下でゼロを見送っていた。

「ねぇ。プリン伯爵とオレンジ卿。どうして今日は付いて上がらなかったの?」
二階で扉の閉まる音がしてから、気になっていた事をカレンが尋ねる。
「簡単よぉ。プリン伯爵達はぁ、ゼロの勘気のとばっちりを喰らいたくなかっただけぇ。ねぇ?プリン伯爵ぅ」
ラクシャータは代わりに答えて立ち上がる。
「当然でしょ~。流石にとばっちりで引導を渡されるのは避けたいしー?」
「主の引導はそれはそれは容赦がない。出来うるならばその場に立ち会いたいとすら思わない程だ」
「あぁ、そういえば、オレンジ卿は疑惑の件で体験済みだっけ~?」
「むッ‥‥。プリン伯も体験してみてはどうだ?」
「いッやだねー」
「二人とも、そこまでにしておけ。お呼びが掛かった時に手持ちの作業がまだ残っていた、という事にだけはしておくなよ」
ロイドとジェレミアの言い合いを止めるのは既にダールトンの仕事の一つになっているようで、諌めてからダールトンは溜息を吐いた。
「じゃあ、藤堂とお嬢ちゃんは整備に行くわよぉ」
ラクシャータはまずはと指示された二人を呼ぶと格納庫へ向かって歩き出し、藤堂とカレンがその後に続いた。


一方、ゼロの私室では、ゼロが溜まりに溜まったブリタニア人の経歴書をかなりの速度で仕分けしていた。
そうして仕分け終わった後、枚数的には一番少ない山を持ち上げ、首を傾げた。
「‥‥どうしてバレたんだ?」
「バレていなければ、こいつ等が入団を希望するはずもなく‥‥」とゼロは呆然とする。
手持ちの作業を終わらせたにも関わらずゼロからの音沙汰がない事を訝しんだダールトンが控えめなノックをするまで、それは続いたのだった。

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作成 2008.04.17 
アップ 2008.05.21 

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