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コードギアスの二次創作サイト。 ルルーシュ(ゼロ)至上主義です。 管理人は闇月夜 零です。
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ゼロ(ルル)至上主義です。
騎士団多め。
表現力がなく×ではなく+どまり多数。
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★上條 心様へのリクエスト作品★
(藤ル.ル+スザ/騎士団の否定話中/颯爽と現れルルを連れ去る藤堂)

ゼロの私室で、ルルーシュは隣に座る藤堂の胸に顔を埋めていた。
藤堂はそっと優しくルルーシュを抱きしめていて、ゆっくりと背中を撫でている。
時々、ルルーシュは藤堂にこうして甘える。
藤堂は甘えられて嬉しいと思う反面、こんな時のルルーシュは不安になっていると判っているだけに気がかりでもあった。
尋ねたいけれど、それで余計に辛い思いをするのではないかと思うと、切り出すのにかなり躊躇ってしまう藤堂だった。

結局藤堂は尋ねるきっかけがないままに時間となり、ルルーシュを、ゼロを表へと送り出していた。
ずっと一緒にいたいと思う反面、遅くなると危険だからと早く返したくもある。
住まいの前まで送って行きたいと思うけれど、幾つもの障害が立ちはだかりそれが出来ないでいる。
ずっと共にいたい、誰の目をはばかる事無く側にいたい、と藤堂はこのところ強く思うようになっていた。


リヴァルがバイトのせいで、スザクと二人で買い出しに出る事になったルルーシュは何度目かの溜息を吐く。
「また溜息?最近多いね、ルルーシュ」
隣を歩くスザクが、明るい声で咎めるように声を掛ける。
ルルーシュは(だれのせいだ‥‥)と思いながら、「‥‥お前は元気だな、スザク」と呆れ口調で言う。
「うん、楽しいよ?学園の生徒会の人達とか、軍の人達もね。良い人達ばかりだから」
尋ねられてスザクはにこにこと嬉しそうに答える。
「‥‥馬が合う‥‥のか?軍‥‥」
スザクと対照的に、暗い表情であからさまに作った笑みを浮かべたルルーシュが更に問う。
「え?‥‥うん。そうみたいだね。ユフィ‥‥皇女殿下にも良くして貰ってるし‥‥。これでゼロと黒の騎士団さえ現れなければ言う事はないかな?」
(言う事ないとは羨ましい事だな。現状に満足して何を変える気なんだ?)
「なぁ、スザク。軍人って人を殺す事を職業にしている人だって知っているか?」
「ぇ‥‥?知っている、けど?仕事だし、命令だから‥‥。どうしたの?ルルーシュ。溜息吐いたり、なんだか少し変だよ?」
首を傾げてから、まじまじとルルーシュを見返すスザクはルルーシュが何を言いたいのか全く判っていない様子だった。
「命じられたからと人を殺すお前と、自分の意思で人を殺すゼロ、黒の騎士団か‥‥。どちらか一方だけが悪いとは思えないけど?」
ルルーシュはさっきまでは溜息を吐きながらもさっさと通り過ぎてしまおうと思っていたゲットー近くの道で完全に足を止め、スザクを見て言う。
「なッ!‥‥ルルーシュ。ゼロは黒の騎士団は間違っているんだよッ!?テロなんて方法を取る必要なんてどこにもないんだからッ!」
スザクも足を止め途端に声を荒げてルルーシュの考え違いを正そうとする。
「軍や警察に入って?確か以前そう言っていたな?」
「そうだよ。軍や警察に入って内側から変えていけば良いじゃないかッ!」
「‥‥入るにはイレブンならまずは名誉になる必要があるな?それは誇りを捨てる事にならないか?」
「え?もしかしてぼくの事心配してくれてた?大丈夫、大した事じゃないよ?テロなんて暴挙に出るよりよっぽどマシだし」
嬉しそうにそれでも苦笑といった笑顔を浮かべながら、スザクは言う。
「なぁ、スザク。知っているか?名誉が軍に入って、普通なら一生を掛けても軍曹どまり、曹長まで行ける者の方が少ないって、知ってたか?」
(そしてそんな立場で変えられるのは自分の小隊のちょっとした待遇くらいだって、知っているか?軍隊に入るって事は兵力を増強させるだけだって知ってるか?)
「‥‥えっと、でもぼくは、少佐なわけだし‥‥」
「ナイトメアの騎乗資格は本来ブリタニア人だけ。騎士になれるのもそう。お前、自分が特例だらけだって気づいてたか?」
(‥‥そして、特例を認めない者はどこにでもいて、鵜の目鷹の目と粗探しや弱点を探しに掛かる。知ってるか?それが周囲にまで及ぶ事を)
「‥‥でもだったら、ぼくがッ!ぼくが頑張って出世して必ず変えてみせるから、だから」
「だから?それをそう言ってゼロと黒の騎士団に投降を呼びかけるつもりか?『自分が頑張るから、大人しく処刑台に上がってくれ』って?」
(今更テロ行為をやめたとしても、ゼロも黒の騎士団もブリタニアが赦さないだけの事を既にしてきているのだから、つまりはそう言う事だ)
「そんな事、ぼくは言ってないッ!」
「それが現実だ。ブリタニアと言う国の。‥‥それに、内側から変えるのにどのくらい掛かる?それは本当に実現可能な事なのか?夢物語ではなく?」
次から次へとスザクにとっての否定的な疑問をぶつけてくるルルーシュに、スザクは訝しげな表情をありありと浮かべた。
「‥‥‥ルルーシュ?何が不安なの?どうして急にそんな‥‥。大丈夫。間違っているのはゼロと黒の騎士団だから。ぼくはちゃんとやるよ?」
「‥‥‥」
(スザクの行動がゼロと黒の騎士団にどんな関係があると?‥‥あぁ、ゼロや騎士団が現れなければ出世なんかしなかったか、スザクは)
「きっとエリア11がこのところ物騒だから不安になったんだね、ルルーシュ。大丈夫だよ、ぼくがゼロも黒の騎士団も捕まえてテロなんてなくしてあげるから」
「‥‥‥‥」
(やはりこいつには何を言っても届きはしない、か‥‥。都合の悪い事は全て都合の良いように置き換えてしまう。これでは届くはずが無い)
ルルーシュはスザクの言葉には答えず、諦めの溜息を吐いた。
「あ、ほら。また溜息。ホントどうしたのさ、ルルー‥‥」
その時、スザクの言葉を遮るように、横合いから人が飛び出してきてスザクとルルーシュとの間で立ち止まった。
「なッ‥‥‥藤堂さんッ!?」
突然現れた藤堂はルルーシュを背に庇うようにしてスザクと対峙する。
「‥‥‥‥‥‥とうど‥さ、ん?」
驚くスザクに鋭い視線を投げた後、藤堂は肩越しにルルーシュを振り返る。
「君はッ。この愚か者の言い分を大人しく聞いていたというのか?ずっと‥‥」
「愚か者って‥‥貴方は指名手配をされているんですよ、藤堂さんッ。ルルーシュ、離れて!藤堂さんは黒の騎士団の」
かつての師匠で、未だに尊敬の念を抱いている藤堂に「愚か者」呼ばわりされた事で、スザクの頭に血が上る。
「黙れ、スザク君。君にはルルーシュ君の親友を名乗る資格はない。一方的に意思を押し付ける、それのどこが親友だ?」
再びスザクを見据えた藤堂はスザクの言葉を遮り、断罪する。
「なッ‥‥。突然現れた貴方に何が判るというのですか?」
「少なくとも君よりはルルーシュ君の事を理解しているつもりだが?」
「‥‥というか、何故藤堂さんがここにいるんですか?」
まだ目を見開いたまま、ルルーシュは呆然と呟いた。
「心配だったからに決まっているだろう?」
当たり前のように言う藤堂にルルーシュは潮時だと悟る。
こんな状況なのに、藤堂が来てくれて、そう言ってくれた事を嬉しいと感じる自分を見つけてしまったから。
「そうですか。少し待ってもらって構いませんか?」
ルルーシュは藤堂にそう言って頷くのを見ると携帯を取り出す。
訝しげな表情をして藤堂とルルーシュとを見比べたスザクを「るるーしゅ‥‥?」と恐る恐る尋ねる。
ルルーシュはそんなスザクにはお構いなしにコールを始めた携帯を耳に当てた。
「あ、おれです。すみませんが、手配をお願いしても良いですか?移ど‥‥そうです、よろしくお願いします」
短い言葉の後、通話を終えたルルーシュは藤堂に対してのみ、「お待たせしました」と告げた。
電話の意味が理解できなかったスザクは、ただ驚きの表情で藤堂とルルーシュを見返す。
電話の意味を正確に理解できた藤堂は、スザクの視線など物ともせずにルルーシュを抱きしめた。
「ルルーシュ君。‥‥このまま浚って良いんだな?」
「構いません。もう箱庭は崩壊したも同じ。おれの生きる場所は藤堂さんの側にしかありません」
二人の言葉が、やっとスザクの脳にも届く、というか直撃した。
「ッな‥‥。ルルーシュッ!箱庭って‥‥。てかナナリーはどうするんだ!?行くなッ!騎士団は悪なんだッ!それに所属する藤堂さんもッ!」
「‥‥スザク君。君は今まで何を見てきた?何をしてきた?もう一度、己の言動を振り返って見直せ」
「藤堂さんッ!貴方を捕まえてルルーシュを取り戻しますッ!」
「ルルーシュ君の意思を無視してか!?」
「無駄です。あいつにおれの言葉は届かない。何を言っても無駄なのだと、諦めました」
藤堂はルルーシュの言葉に諦めと深い悲しみとを察した。
「‥‥そうだな。ではこのまま行くぞ。スザク君。次に会う時は容赦しない。そのつもりでいたまえ」
「なッ‥‥!逃がしませんッ!」
スザクはルルーシュを腕に抱いたまま踵を返そうとする藤堂を制止しようと動く。
「スザクッ!‥‥さよならだ」
「なッ!‥‥るるーしゅ?」
「ルルーシュ君の事はおれが守る。君は君の主の事だけを考えていたらどうだ?スザク君」
そう言って藤堂はルルーシュを連れて立ち去って行く。
スザクはルルーシュの別れの言葉に衝撃を受け、思わず後を見送ってしまい、気付けばどこへ行ったかすらわからなくなっていた。


そして、学園からはナナリーも消えていた。
ランペルージ兄弟が学園から姿を消した事は全校生徒の知るところとなる。
生徒会長のミレイ・アッシュフォードが多くの生徒がいる前で、「貴方のせいでッ!」とスザクを詰問した事でスザクは全校生徒を敵に回した。
居づらくなったスザクは、潮時と思い退学届を提出し、それはすんなり受理される。


「あら、やめちゃったんですか?貴方には学生をやっていて欲しかったのですが‥‥」
とユーフェミアに残念がられるのは、スザクが政庁に戻ってからの事になる。



作成 2008.06.29 
アップ 2008.07.02 
 

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★本樹様へのリクエスト作品★
(独占欲藤堂x周り牽制ルル/甘々)

「最近の藤堂さん、なんだか少しおかしくないですか?」
朝比奈はこのところ抱いていた疑問を、同じ四聖剣の三人にぶつけた。
「まぁ、‥‥そうだな」
仙波はまるで「何を今更」と言いたげな視線を朝比奈に向けてそう応じた。
「で?朝比奈は中佐のどこがどうおかしいって思うんだ?」
卜部もまた、どこか笑いを堪えているような表情で、朝比奈に尋ねる。
「え‥‥っと、ですね。ゼロに頼りすぎてません?」
問い返された朝比奈は、考えながらそう答えた。
「‥‥‥。そうか、朝比奈。お前には中佐のあれがそう見えるか」
千葉は呆れた様子で朝比奈に視線を向けた。
「え?え?え?あの、ちょっと千葉さん?だって藤堂さん。最近特に『ゼロ、少し良いか?』とか『ゼロ、作戦についてなんだが』とかって多いですよ?」
三人の、特に千葉の反応に、朝比奈は慌てながらも「前はそうでもなかったじゃないですかッ!」と言う。
「朝比奈。中佐がそうゼロに言う時の様子、思い返してみたらどうだ?」
卜部がそう言ってからやれやれと溜息を吐いた。
「えっと、さっきは、ゼロは扇さんと話をしてて‥‥。その前はディートハルトからの報告を聞いてました。でも、作戦の件だって急を要したりしますし‥‥」
「問題はそこじゃない、朝比奈。‥‥だが、判らなければそれでも良いとわたしは思う」
千葉が言うと、仙波と卜部も「そうだな」とか「それもそうか」とか言って同意し、一人混乱する朝比奈は答えを聞く事が出来なかった。

「なぁ、ゼロ」
「なんだ、扇」
「思ったんだけど、藤堂さんとの話ってここで出来ないのか?別にわざわざ移動しなくても良いと思うんだけど‥‥」
「あぁ、その事か。‥‥作戦は決まるまでの二転三転している途中経過は知らない方が混乱が減るだろう?」
扇の疑問に、ゼロはさも当然とばかりに答え、それがまた「なるほど」と納得出来てしまう内容なので扇も頷いた。
「うっかりボツにした作戦が耳に残っていて、それで動かれては堪らない」
それをソファに座って雑誌を読みながら聞くとはなしに聞いていたC.C.は危うく噎せるところだった。
もっともらしい事を言っているゼロが、自室で藤堂とかなり和やかな時間を過ごしていると知れば、「驚くだろうな、こいつ等‥‥」とC.C.は思う。
しかもこんな風に言っていれば、今後藤堂を自室に招いている時に邪魔に入ろうとする者は格段に減るだろう。
「ダメだ、笑いたい‥‥」と思ったC.C.は雑誌を放り出して立ち上がると、周囲の目などお構いなしに部屋を出て行った。
きっと暫く後にゲットーの何処かで少女の笑い声が響く事だろう。

藤堂を部屋に招き入れたゼロは、鍵を掛けると即座に仮面を取る。
藤堂を先に座らせて、緑茶と和菓子を出すのは既に恒例の事。
二人だけの時間が嬉しくて、ただ静かに同じ空間を共有する、穏やかな瞬間。

ノックが聞こえて来た時、ゼロと藤堂は同時に顔を顰めて扉を振り返った。
『話中すまない。ゼロ、少し見てもらいたいものがあるんだけど‥‥』
扇の声に、しかし応じたのは藤堂だった。
「ゼロは今奥の部屋に資料を取りに行っていて手が離せない。後に出来ないか?」
『‥‥‥そ、そうか、わかった。ゼロに伝えておいてくれ』
「そうしよう」
即答する藤堂はちらとルルーシュを見るだけで終わらせてしまう。
結局、この時の扇の「見てもらいたいもの」をゼロが見るのは日が沈んでからだった。


「朝比奈」
呼び止められた朝比奈が振り返るとゼロがいて少し驚く。
「なんですかー?」
「これを。提出された書類に不備がある。直しておけ」
渡された書類を受け取って示された場所を見てから「ぅわ、なんて間違いを‥‥」と朝比奈は青褪める。
「‥‥間違いは誰にでもあるから、そう気にする事はない。だが、明日の朝には出来ているか?」
「あ、はいッ。明日の朝には再提出しますッ!」
答えると朝比奈は一度藤堂のところへと戻り、事情を話して許可を貰ってから自室へと引き上げて行った。

残る四聖剣は、その光景を少し離れたところで見ていた。
「‥‥‥‥そろそろあるとは思ったけど、見事な追い払いっぷりだなぁー」
乾いた笑いを浮かべながら卜部が評した。
「まったくです。ある意味あからさまなのに、そう見る者が少ないせいか、気付いている者は少ないですね」
千葉も感心したように言って頷く。
「しかし‥‥朝比奈がミスをしていなければ、どうなっていたかと思うと、そちらの方が恐ろしいと思うのは気のせいか?」
「いえ、気のせいじゃないと思います、仙波大尉。わたしもそれは見たいとは思いません」
「当面、朝比奈を忙しくさせとくか?‥‥おれ達の精神衛生上の為に」
「ふむ。それが良かろう」
「賛成です、卜部さん」
三人が頷きあった時、ゼロの仮面が三人を見たので、慌てて首を振った。
すると満足げに頷いた仮面は別の方向、藤堂へと向かい遠ざかっていった。
「‥‥やっぱり朝比奈を忙しくさせとこう」
卜部が言うと、仙波と千葉は声もなく頷いた。

朝比奈に入れ替わるように近付いてきたゼロに、藤堂が先に声を掛ける。
「ゼロ、朝比奈が迷惑を掛けた」
するとゼロはゆるりと仮面を振って側に他に誰かいるでもないのに声を低めた。
「いや、渡りに船と言う奴だ。実はそれ程急ぎではなかったんだが‥‥」
その内容に、上司としては苦情を言うべきなのだろうが、藤堂は笑みを見せて尋ねる。
「そうか。なら今夜は時間があるのか?」
「あぁ。藤堂さえ良ければ‥‥」
「伺おう」
「わかった」
ゼロにみなまで言わせず藤堂が答えると、ゼロは苦笑してから短く答えた。
「‥‥ところで月下について少し尋ねたい事があるのだが‥‥」
「ラクシャータはどうした?」
「先程医務室の方へ行った。暫く戻らん」
真面目に言う藤堂に、一瞬言葉を詰まらせたゼロはくすりと笑って頷いた。
「‥‥そうか。コックピットだろう?」
そう言うと藤堂とゼロは並んで月下隊長機のコックピットへと消えていった。


「あ、千葉さん。ゼロ知らないか?」
「‥‥‥先程までは居ましたが‥‥忙しい人ですから既に移動したのかも知れません、扇さん」
千葉は二人が月下隊長機のコックピットへと消えるのを目撃していたが、しれっと答える。
「そうか。ありがとう」
そんな事は知らない扇は礼を述べてからゼロの姿を求めて格納庫を後にしたのだった。



作成 2008.06.29 
アップ 2008.06.30 
 

★明日咲様へのリクエスト作品★
(「攻撃相手が違うだろ!」の続編/ネリ達にゼロバ.レ)

「ジェレミア卿。あのナイトメアモドキを格納庫に戻して来い。それからラクシャータに言って整備もちゃんとして貰え」
『何故デシタ!?貴方様はゼロ!傍に!』
「確かに傍にいる事は認めるといったが、仕事をしないのならば邪魔だ。わかったら今言った事をして来い」
『理解は幸せ!直ちにイキマセ!』
メカオレンジはそう応じると敬礼をして踵を返しナイトメアモドキに歩いていった。
それを見て、藤堂と四聖剣はホッと息を吐いた。
「藤堂。怪我はなかったか?」
「あぁ。‥‥平気だ。‥‥しかし、なるべくと言っていたが、かなり沸点が低そうだったんだが‥‥」
「そうだな。普段は冷めていて穿った見方をする奴なのに、キレるのは早いし、そうなると手がつけられないとの評判は聞いた事があるな」
さらっと言ってのけるゼロに、藤堂も四聖剣もこの先を思ってげんなりとした。
「あのさ、ゼロ。さっき聞きそびれたんだけど、藤堂さんが目の敵にされるのって?」
朝比奈がなんとか気を取り直して尋ね直す。
ゼロは何故か周囲を見回して、他に人がいない事を確認すると、一つ息を吐いてから答えた。
「それは、だな。‥‥わたしが藤堂を特別に想っている事が何故かオレンジ君にバレているからだな」
仮面の正面はさり気に藤堂や四聖剣から外されていて、「ぅお、テレてるのか!?」と卜部はゼロを可愛いと思ってしまう。
「それって‥‥」と朝比奈は聞き返しながら、「今までそんな素振りなんて見た事無いのに‥‥」と首を傾げる。
「それは、恋愛対象として特別、と捉えて良いのか?ゼロ。‥‥ちなみに、両想いですか?中佐」
千葉は何故か冷静に、尋ねるところは尋ねる。
「あぁ。恋愛対象として、だな。わたしはそう言う意味で藤堂が好きなんだが‥‥。何故オレンジ君にバレたのかは不思議に思っている」
ゼロが答えたので、四聖剣の視線は藤堂に向かい、4人は固まって頬を染める藤堂を発見した。
「と、‥‥藤堂中佐?いかがなさったか?」
仙波が恐る恐る尋ねると、藤堂はハッとした後片手で口の辺りを隠した。
「い、‥‥いや。る‥‥ゼロがそんな事を言ってくれたのが‥‥初めてだったので、‥‥な」
テレる藤堂に4人は呆れの混じった驚きの表情を浮かべてしまう。
「そ、‥‥そうだったかな?い、いや。わたしはちゃんと好きだと言った事は有ったはずだ。何度も」
「ゼロ。『恋愛感情として』の好きと言う事ではないか?中佐が聞きなれていないのは。それとも『愛している』とも言ったか?」
「そッ‥‥そんな恥ずかしい事は言えないッ」
「‥‥‥何が言えないと?」
唐突に割って入ってきた声に、ゼロと藤堂と四聖剣は入り口を振り返る。
そこには扇とコーネリアとギルフォードが立っていた。
「扇?何故連れてきた?」
「あその、すまない、ゼロ。‥‥ラクシャータからおれん‥‥じゃなくてジェレミアのナイトメアモドキが来たと連絡が有って、そしたらもう平気だろうって‥‥」
「あぁ、‥‥そうか。扇。オレンジ君はこのまま騎士団に残る事になった。『オレンジ』とは言わないように徹底させておけ。特に玉城に」
ゼロの言葉に、扇は引きつりながらも頷き、気の毒そうな視線を藤堂と四聖剣に向けた。
それからコーネリアとギルフォードをゼロと藤堂達に任せると、扇は今のゼロの指示を徹底するべく、立ち去って行った。

「‥‥で?何が言えないと?」
扇が姿を消してから、コーネリアはゼロに向き直り尋ねる。
「『愛している』とか『恥ずかしい』とか聞こえていましたね、姫様。テロ等をしながら恋愛とは余裕のある事ですな」
「‥‥聞こえていたのか。テロリストだからと全てを諦めなければならない理由にはならないと思うが?」
「ほぉ?それで?黒の騎士団の総司令は誰と恋愛をしていると?」
コーネリアは面白そうに尋ねる。
「‥‥‥これでは立場が逆ではありませんか?もう少し捕虜らしくなさって頂きたいですが?」
「だから抵抗はしていないだろう?それよりも気になるのだから答えよ、ゼロ。まさか『オレンジ卿』か?」
コーネリアの開き直りとも言うべき言葉と、それに続く問いに、藤堂と四聖剣はげんなりとし、ゼロはきょとんとする。
「‥‥オレンジ君?何故そこにオレンジ君の名前が挙がるのですか?」
心底不思議そうにゼロは言って仮面を傾けた。
四聖剣はオレンジとの間に有るのが恋愛感情では有りえない事を知って藤堂の為にホッと息を吐く。
つまりゼロとオレンジの間に有るのはゼロに向かう一方的なベクトルだけのようだ。
「ならば‥‥」
コーネリアが次の人物を挙げようとした時、どどどどど‥‥と地響きつきで派手な足音が近付いてきて、その場の全員が音を振り返る。
『貴方様はゼロ~~~!』
当然ながらやって来たのは、話題に上っていたメカオレンジだった。
藤堂がゼロの前に立ち塞がり、その前に四聖剣が布陣してゼロとの間に垣根を作る。
ギルフォードはコーネリアを庇いつつ下がる。
オレンジはゼロの姿が遠い事に即座にキレた。
『抹殺ッ!滅殺ッ!排除~!』
藤堂は溜息を吐くと「ゼロ下がっていろ」と声を掛けてから四聖剣を従えつつオレンジとの戦闘に突入した。

暫く唖然として先刻に酷似したやり取りを見ていたコーネリアとギルフォードはぽつねんと佇むゼロの呟きを耳にした。
「‥‥良いな。じゃれてるなんて。‥‥わたしは除け者か‥‥」
羨ましそうに呟かれた寂しさ混じりの言葉に、二人は顔を見合わせて笑みを見せる。
さっきまで敵としか思っていなかったというのに、たった一言だけで憎めない存在になった事を互いに確認してしまったのだ。
「‥‥ゼロ。もしかすると先程の話は『奇跡の藤堂』か?」
質問者がコーネリアとは思っていないのか、ゼロは戦闘を見ながらこくりと頷いた。
その仕草があまりにも可愛く見えてしまってコーネリアはうろたえた。
そしてそれは側で聞いていたギルフォードにしても同じだった。

いい加減うんざりしてきた朝比奈は「やっぱりゼロに止めて貰おう!」と思ってゼロの姿を探し、そして声を上げた。
「ゼロぉ!何呑気に敵将と井戸端会議なんてやってるのさ。まずはこれどうにかしてからにしなよー」
半分以上オレンジをコーネリアに嗾ける為だったのだが、オレンジは全く反応せずに藤堂との戦いに終始している。
当然ながら朝比奈は疑問に思った。
仲の良さそうなゼロとコーネリア、コーネリアが側にいても藤堂の時のようにキレないオレンジ、何かおかしい。

「ちょっと待った~~~~!!!」

朝比奈は声を張り上げ、藤堂とオレンジとの戦いも止まって朝比奈は注目を集めた。
「藤堂さん。一つ聞いても良いですか?」
その朝比奈の言葉に嫌な予感を覚えた者は二名。
ゼロと藤堂は揃って「気づいたか‥‥」と苦く思い、この場でそれを言われるとどう転ぶか判らなくて「危険かも知れない」とも思うのだ。
なので、藤堂の答えは「ダメだ」の一言だったりする。
一瞬漂う「さてどうしたら?」と言った空気に、動いたのはオレンジで、ゼロに向かって突進する。
その勢いにゼロが思わず後退したら、今度はコーネリアとギルフォードが間に立ち塞がっていて藤堂と四聖剣を驚かせた。
そして更に驚いた事に、オレンジが勢いを止めて手前で立ち止まった事だ。
『‥‥‥‥‥貴女様は皇女殿下‥‥‥』
まるで今気づいたとでも言うように、オレンジはぽつりと呟いた。
オレンジの言い回しに「あれ?」と思った者が順次ゼロに視線を向けて行き、集まった視線にゼロは嘆息した。
「‥‥‥‥まさかとは思うがゼロ、お前‥‥‥」
ゼロは仮面の下で気づかれないように藤堂を見て、藤堂もまた諦めに近い表情を見せているのに気づいてゼロは肩を竦めた。
「その通り、だと申し上げればどうなさいますか?」
ゼロとコーネリアの意味深な会話に、ギルフォードと四聖剣が首を傾げる。
「‥‥なるほどな?オレンジ卿がゼロについた時点で気づくべきだったな、すまない。わたしもお前に味方しよう。構わないだろう?」
「姫様ッ!?」
ギルフォードの驚きの声が広間に響き、ここまでとは思っていなかったギルフォードは主を凝視する。
「‥‥‥‥本当に宜しいのですか?わたしは‥‥」
逆にゼロは戸惑った声音で問いかける。
「構わない。クロヴィスとユーフェミアの事は確かに残念だし悲しかったし辛かった。‥‥だが、お前のそれに比べればまだマシなのだと思うからだ」
コーネリアはそう言ってゼロを抱きしめた。
オレンジは黙ったままだったが、若干二名が動く。
「姫様ッ!」
「ゼロッ!」
ギルフォードがコーネリアをゼロから引き離し、解放されたゼロを藤堂が庇う。
そして途端に騒ぎ出すオレンジは暴れだす前になんとか四聖剣の男三人が押し留める事に成功した。
「‥‥第二皇女。弟妹の死を構わないと言い、ゼロを抱きしめたのは何故か話して貰おうか?」
千葉がコーネリアに向かって詰問する。
「‥‥そうか。『奇跡の藤堂』とオレンジ卿は知っているようだから言うが、ゼロも我が弟だ。それと知って敵対し続ける事などは出来ない」
「「「「「‥‥‥ッおとうと~~~!???」」」」」
四聖剣とギルフォードの声が重なる。
「ぁーあ。バレたぞ、藤堂。後で四聖剣には口止めしておけよ」
ゼロは藤堂の腕の中に納まったまま、嘆息してから藤堂に指示を出す。
「‥‥判っている」
藤堂はゼロを抱きしめる腕に力を入れながら憮然として応じた。
もっとも四聖剣が藤堂に従わない事はほとんどないので、口止めは楽勝だろうとは思う藤堂だが。
「‥‥ところで『奇跡の藤堂』!いつまでゼロを抱きしめている!?オレンジ卿。引き剥がせッ!」
コーネリアの声にオレンジがバージョンアップしたのに気づいた四聖剣は慌てて抑える手に力を込めた。
四人に共通する思い、それは「従う相手が違うだろッ!オレンジ~~~!!」というものだったはずだ。



───────────
作成 2008.06.14 
アップ 2008.06.26 
 

★疾風真神様へのリクエスト作品★
(朝ゼロi.n騎.士団/風邪引き朝を看病するゼロ/ゼロバ.レ任意)

「ちょっとちょっとぉ」
ラクシャータの呆れたような声が唐突に格納庫内に響き渡り、みな作業の手を止めてラクシャータの姿を探した。
ラクシャータは月下や紅蓮が並んだ区画にいて、目の前には朝比奈の姿があった。
「なぁにしてくれるわけぇ?もっとちゃんと見なさぁい。どうやったらこの配線切断できるのぉ?」
傍に寄ってきた残りの四聖剣がラクシャータの指す朝比奈の手元を見て絶句した。
操作系のメインとなる為それなりの太さがある線がものの見事に切断されていたのだ。
単なる整備でこんな状態になるなんて普通ならば有り得ない。
「朝比奈‥‥」
千葉もまた呆れた声を出した。
格納庫の入り口付近で扇と話をしていたゼロはその様子を見上げていたが、扇との話も一区切り付いていた事だしとそちらに足を向けた。
「ラクシャータ。予備はあるのか?」
「月下や紅蓮の線は今ないわよぉ。無頼のならあるからとりあえずそれつけとくけどぉ。操作伝導率が下がるわねぇ」
話に割り込んできたゼロに、ラクシャータは難しい顔をして応じる。
「そうか。月下専用の配線は至急取り寄せるようにしよう。‥‥藤堂」
「‥‥なんだ?ゼロ」
ゼロは月下隊長機の傍から様子を見ていた藤堂に声を掛け、藤堂が返事をすると朝比奈を指差した。
「朝比奈を借りるぞ。どの道、こんなミスをするようではこれ以上整備をさせるわけには行くまい」
「‥‥‥わかった。ゼロ、任せる」
藤堂は数瞬の間をおいてから頷いた。
「なッ‥‥藤堂さん、おれ出来ますよ」
「煩いぞ、朝比奈。‥‥藤堂、卜部も少し借りる。卜部、黙って朝比奈を連れて付いて来い。方法は任せる」
今度はあっさり頷いた藤堂に、ゼロは卜部に指示を出してから踵を返して先に歩き出した。
「ほら、行くぞ朝比奈。中佐の許可貰ったゼロに逆らうのは時間の無駄だって」
卜部はそう言ってそれでも動かない朝比奈の腕を掴んでからハッとして藤堂を振り返る。
「卜部、急げ。‥‥ゼロを待たせているぞ」
藤堂は小さく頷いてからそう指示を出し、卜部はひょいっと朝比奈を担ぎ上げた。
「なッ卜部さん!?」
「いいから大人しくしてろ」
卜部はそれ以上朝比奈の言葉を聞かずにゼロを追いかけたのだった。

到着した場所は朝比奈の部屋でも医務室でもなく何故かゼロの自室で、卜部は初めて入る部屋を見回しながら奥に入り、朝比奈をゼロのベッドに下ろした。
「すまないな、卜部。朝比奈、体調管理も仕事の内だぞ。無理を重ねても今回のように失敗するだけだ」
「そうそう。中佐も心配してたし。‥‥てかゼロ。良く判ったな。おれ等も気付かなかったってのに」
「来た時から大人しいから気になっていた。卜部すまんが着替えさせてやってくれ。終わったら戻って良い。まだする事があるだろう?」
ゼロはそう言うと着替えを卜部に渡して寝室から出て行こうとする。
「着替えって‥‥ゼロの服か?なんなら朝比奈の部屋から取って来るが‥‥」
卜部は渡された着替えの服を広げながら提案する。
「そうか、では頼む。‥‥それから、今後このような無茶をしないように後で言いきかせておけ」
「あ、あぁ‥‥。そうしよう。あ、そうだ、ゼロ。何だってここに連れて来たんだ?」
踵を返して扉に向かいながら、卜部は尋ねる。
「お前達の部屋には台所が付いていないだろう?ここならば氷や水の調達が楽で良い」
「へ?台所、付いてるのか?」
「あぁ。ほら、急げ、卜部。朝比奈が悪化する」
「あ、そうだな、すまん」
指摘された卜部は慌てて部屋を出て行った。

【朝比奈】
ラクシャータの声を聞いて我に返って手元を見て、おれは固まった。
有り得ない、有り得なさ過ぎる。
ちょっとぼーっとしていた事は認めるけどさ、まさかこの配線切断するなんて有り得ない。
けれど、目の前には今切断されたばかりに見える配線と、右手に持つペンチが、否定しきれない現実を突きつけていて。
「朝比奈を借りるぞ。どの道、こんなミスをするようではこれ以上整備をさせるわけには行くまい」
「‥‥‥わかった。ゼロ、任せる」
唐突に飛び込んできたゼロと藤堂さんの会話に、更に蒼白になっておれは慌てた。
「なッ‥‥藤堂さん、おれ出来ますよ」
反論するも、ゼロに「煩いぞ、朝比奈」の一言で即座に却下されてしまった。
余りにも早い返答に、おれが固まっていると、いきなり浮遊感を伴って視界が回った。
「なッ卜部さん!?」
卜部さんの肩に担がれた自分を発見しておれは慌てた。
「いいから大人しくしてろ」
卜部さんの呆れたような声に、おれはそれでもジタバタともがくが、その抵抗は何故か思ったよりも弱いものだった。

目を開けると場面が切り替わっていた。
どうやら意識がなくなっていたらしい。
おれはベッドで横になっていて、酷く喉が渇いていると思った。
「あぁ、気づいたのか?朝比奈。まだ眠っていていいぞ?」
「‥‥ぁ、‥‥ゼ、ロ‥‥?」
かすれてしまって巧く声が出ないおれの視界に、薄暗い部屋の中ゼロの仮面が近づいてきた。
「喉が渇いているみたいだな。‥‥飲めるか?」
はっきり言って薄暗い中に浮かぶ黒光りする仮面は不気味である。
しかし、ゼロの普段とは余りにも掛け離れた行動に驚きすぎて不気味な仮面も余り気にならなかった。
誰が信じるだろうか?
甲斐甲斐しく病人(おれだけど)の看護をするゼロなんて。
横になっている人に対して飲み物を飲ませるのも手馴れているし、そうまるでずっとそう言う介護とかをしていた人みたいなのだ。
「イメージが全然違う!」と思うのだが、介添えするゼロの手が気持ちよくて些細な事に思えてしまう。
「‥‥朝比奈?どこか辛いのか?」
目を細めてついうっとりしていたおれに、ゼロの心配そうな声が降って来る。
「ぇ、‥‥ゼロの手が気持ち良いなぁって」
思考力も落ちているのか、素直に答えてから流石に「あ、まずいかな」と思ったが。
しかしゼロは溜息を吐いた後、「仕方ないな」と椅子をベッドに更に引き寄せて座りなおした。
「暫くこうしていてやるから、大人しく眠っておけ」
ゼロはそう言うと、白い手をおれの額に乗せた。
「‥‥白ッ!?」スルーしそうになったけれど、いつの間にかゼロが手袋を外している事に気づいて驚いた。
驚きの声は音にならなかったので、ゼロは気づかないで白い手を引っ込める様子も無い。
おれはなんだか色々なゼロを見れた気がして嬉しくなり、「たまには風邪を引くのも良いかも」なんて不謹慎な事を思いながら、眠りについた。

【ゼロ】
みんな元気で、風邪を引いたと言う報告もなかったから、余り考えた事がなかった気がする。
ブリタニアと言う強国を相手に戦争を吹っかけようとしていたからつい局地的な視野が疎かになりがちなのだろう。
もしかするとおれが気づかなかっただけで体調の悪かった者は他にもいたかも知れないが。
とにかく、気づいたのは朝比奈が最初だったのだ、きっとそれだけだったのだと思う。
藤堂に許可を得て、朝比奈を隔離したのも、これ以上足を引っ張られては困ると思ったからに過ぎない。
なのに。
おれは朝比奈が眠っている間に、クラブハウスに連絡を入れ、戻れない事を告げている。
咲世子さんには苦情を言われたが、ナナリーには取り成してくれると言ってくれたから安心して任せられると、おれは戻らなかった。
うんうんと苦しそうに唸る朝比奈に、思わず「もしこのまま‥‥」なんて思ったのがいけなかったのだろうと推測する。
死はいつも近くに在ったから、目を覚ますまで不安だと思った、それだけのはず。
目を覚まして平気そうなら、後はソファにでも横になって仮眠を取るつもりも満々だった。
なのに。
「ぇ、‥‥ゼロの手が気持ち良いなぁって」
消え入りそうな声で朝比奈がそう言うものだから、側を離れられなくなった。
おれは溜息を吐いた後、「仕方ないな」と呟いてから、椅子をベッドに更に引き寄せて座りなおす。
「暫くこうしていてやるから、大人しく眠っておけ」
おれはそう言うと、手を朝比奈の額に乗せた。



翌朝。中々出てこないゼロと朝比奈を心配した藤堂と四聖剣の残る三人はゼロの私室の前で立ち往生していた。
風邪を引いた部下(同僚)を結局任せきりにしてしまったのだ、忙しいゼロに。
ノックをするかどうかで迷っているとC.C.がやって来た。
事情を話して中に入れて貰った4人とC.C.が見たものは。
ベッドの中からゼロの仮面を愛しそうに撫でる朝比奈と椅子に座ってベッドに突っ伏して眠っているゼロの姿だったそうな。



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作成 2008.06.14 
アップ 2008.06.24 
 

★hidori様へのリクエスト作品★
(千葉ルルというか、女性陣とゼロ(ルル)の話)

その時、格納庫にいたほぼ全員が驚愕の声を上げた。
ゼロが格納庫に顔を出す事は、それ程珍しい事ではない。
ラクシャータに用が有ったり、ガウェインのメンテナンスをする為に訪れたり、その他にも各種所用で来る事があるからだ。
だからゼロがやって来た事に関しては誰も驚いたりはしなかった。
驚いたのは、千葉がゼロの元へと向かって行った事だ。
‥‥いや、それだけならば、「ゼロに用事があるんだろう」と思うだけで珍しいとは思っても驚き尚且つ声を上げたりはしなかっただろう。
声を上げる程驚いた原因は、千葉の言葉から続いた一連の会話にある。

「ゼロ。この前はありがとう。良ければ礼がしたいのだが‥‥」
「この前」が何を指すのかわからないが、「作業中に持ち場を離れてまで言う事でもない気がする」と言うのが大半の思いだ。
「別に大した事ではない。そう気にするな」
ゼロはさらっと受け流す。
「いや!そうはいかない。‥‥それに‥‥実はまた頼みたいと思っているし、だから是非何か」
しかし千葉は譲らずに首を振った後、心持ち躊躇い気味に付け加える。
「それは別に‥‥。いつもと言う訳にはいかないが、それで良ければ構わないし、礼にも及ばない」
ゼロもまた千葉の様子に戸惑いながら応じる。
すると千葉は誰もが初めて目にするのではないか?という程の満面の笑顔を見せて喜んだ。
「ありがとう、ゼロ。嬉しい‥‥」
ゼロは目の前で自分に向けられたその表情に、仮面の下で驚いて目を見張る。
うっかりそれを目撃してしまった朝比奈と卜部はあんぐりと口を開けて、初めて見る同僚の表情に唖然としてしまっている。
しかしゼロや周囲が驚きから冷めぬ内に、千葉は表情を改め、真面目な面持ちになるとゼロの手を持ち上げて握り締めた。
そして問題の、驚愕の声を上げる原因になった言葉を千葉は発したのだ。
すなわち──

「ゼロ!‥‥いっそ、わたしの嫁になってくれ!!」

突発的な出来事にはからきし弱いゼロは、当然ながら驚いて、手を握られている事も忘れ果てているように固まっていた。

まず我に返ったのは朝比奈だった。
「ち‥‥‥ちちちちち千葉さんッ!!何言ってるんですか!?曲がりなりにも千葉さんは女性なんですから嫁は貰えないですよ!」
しかしツッコミどころは間違っている。
千葉はゼロの手を握ったまま朝比奈にチラと視線を向ける。
「何を言う、朝比奈。わたしよりもゼロの方が良い嫁になる。そしてわたしはゼロよりも良い婿になってゼロを守るから釣り合いは取れている」
きっぱりすっぱり言い切る千葉に、「釣り合いの問題じゃないですよ、千葉さんッ!」と朝比奈は再度ツッコミを敢行する。
「何故だ?‥‥わたしはゼロを幸せにしてみせるし、必ず守る。だからゼロ。嫁に来い」
千葉は朝比奈に対して一言言って首を傾げた後、再びゼロに向き直って真正面からプロポーズをおこなう。
勿論それを黙って見ている事が出来ない者はいる。
ディートハルトが進み出ようとするのを素早く沈めてからカレンが突進する。
「千葉さん、ずるいですッ!」
「ダメだぞ、紅月。わたしに譲る意思はないからな」
カレンのゼロに対する想いを知っていても千葉は大人気なくもそう言い切る。
「そんな酷いです、千葉さん!とにかくまずその手を離してくださいッ!」
カレンが尚も食い下がっていると、いつの間にかラクシャータと井上が近寄っていた。
「確かに千葉さんだけなんてずるいわね。わたしだってゼロを是非お嫁さんに貰いたいもの」
井上がカレンに同意しつつも言うその言葉に、旧扇グループは絶句する。
「あらぁ。あんた達に渡すくらいならぁ。わたしが貰うわよぉ、嫁にぃ。だぁからぁ、千葉、その手を離しなさいねぇ」
ラクシャータまでもが、ゼロを嫁にと言い出し、男性陣は全員パニック状態に陥った。
カレンはまだ判るのだ、常日頃からゼロへの想いを隠そうとしないから、気づいていないのは当のゼロだけだったからだ。
しかし、千葉の奇行に始まって、井上とラクシャータが参戦するに至り、揃いも揃って「嫁に」と言う彼女達に疑問を覚えたのだ。

「‥‥まさかとは思うけどよ。ゼロって女なのか?」
玉城がその可能性に思い至って、恐る恐る尋ねる。
しかし、「馬鹿を言うな。それでは結婚なんて出来ないではないか」と千葉に一蹴されてしまう。
当事者であるところのゼロは未だに放心状態にあるのか無反応なので、説明を求めたい男性陣は途方に暮れた。

「‥‥千葉。とりあえず、ゼロの手を離してやれ。それから、事情を説明しろ」
藤堂が男性陣からの視線に押されるようにして、声を掛けた。
「すみません、中佐。ゼロの返事を聞くまで待ってください」
しかし、藤堂至上であるはずの四聖剣だと言うのに、千葉はそう言って藤堂の言葉を後回しにしてしまったのだ。
これに慌てたのは当然ながら残りの四聖剣である。
「千葉ッ!いい加減にしとけよ。中佐の言葉まで退けるなんて」
「千葉。そのようなプライベートな事は、せめて任務外にするべきであろう?」
「う~ん。ゼロ、返事してあげたら?そしたら落ち着くみたいだし?」
卜部と仙波が千葉に注意をするが、朝比奈は千葉に言っても無駄な事を早々に察してゼロに声を掛けた。
「‥‥‥わたしは男で、嫁になるのは無理だが?何故、そう言う話が出てくるのだ?千葉」
ゼロはまだ状況が良く判っていないようで、断りながらも説明を求めている。
それは遠巻きで見守るだけの男性陣も是非知りたいと思っていた事なので、固唾を呑んで返事を待つ。
しかし続いた千葉の言葉は説明ではなかった。
「平気だ。手続きや形式上はゼロが婿、わたしが嫁で一向に構わない。だから『嫁に来い、ゼロ』」
更にプロポーズは続くらしく、千葉の言葉はおかしいだろうと思いつつも、なんだかどうでも良くなってくる男性陣。
ゼロは溜息を吐いた。
「朝比奈、扇、杉山、ディートハルト‥‥は寝ているのか?‥‥ならば技術班。今は任務中だろう?」
ゼロは女性陣に意見する事を諦めたのか、それぞれに近しい者達に引き剥がすように命じる。
「「「「ゼロ。答えを聞いてない」」」」
「後にしろ、後に。‥‥わたしは藤堂に話が有ってきたんだ」
その言葉に、千葉がやっとゼロの手を離した。
「では、休憩時間になったら返事を聞きにいきますね、ゼロ」とカレンは言ってうきうきと作業に戻る。
「ふぅ~ん。後で答えてくれるのねぇ。楽しみぃ」と言うラクシャータは楽しげに持ち場に戻る。
井上は気負うでもなく「楽しみにしてるわね、ゼロ」と言って杉山に引きずられて離れていく。
千葉だけが「‥‥快い返事を待っている、ゼロ」と真面目に訴えてから、朝比奈の手を振り払いつつ戻る。
ゼロは「とりあえず助かった‥‥」と安堵の息を吐きながら、藤堂への用件を告げるべく、近付いたのだった。


この後の休憩時間で、ゼロが女性陣を相手にどう答えたのか、男性陣が知るのはかなり後の事になる。



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作成 2008.06.14 
アップ 2008.06.22 
 

★臣近様へのリクエスト作品★
(ルル(ゼロ)を愛し守ることを誓う騎士団と生徒会)

カレンはルルーシュがやっと動いて息を吐き出すのを見た。
「‥‥‥る、るるーしゅ?」
カレンの躊躇いがちな声に、視線が集まる。
「まさか、受け入れられるとは思わなかったな」
「お兄様は考えすぎなのです。みなさん良い方達ばかりなのでしょう?信じて差し上げたら宜しいのではありませんか?」
自嘲気味に呟くルルーシュを、優しく諭すような声をかけるナナリー。
「ナナちゃん。急には無理よ~。あ~んな事仕出かしてくれちゃった人がいたんだしぃ?」
「まぁ疑心暗鬼にもなるよなぁ。おれだったらグレてるぜぇ~。なぁ?」
「リヴァル。貴方それ以上どうやってグレるつもりなのぉ?いっつも脱走とかしてるのにぃ」
「シャーリー。リヴァルはグレてないつもりなのよ。じゃないと副会長を誘ったりしないと思う」
「あぁ、そう言う事なの~?」
生徒会のメンバーが口々に言い始めた言葉は、藤堂の「ルルーシュ君」と言う呼びかけによって収束する。
「信じてくれないか?みんな、君達を。君を裏切らない。裏切ったりはしないだろう」
藤堂の言葉に、ルルーシュがまっすぐに藤堂を見、そしてその紫の双眸が驚きに見開かれる。
「‥‥気づいた、と言うのか?」
「あぁ。何故こんな手段を取ったのかも理解した。同じ目的を持っているか改めて確認したかったのだろう?」
「‥‥そうだな。騎士団の目的は『弱者を虐げない優しい世界』その為の『正義の味方』だと言う事だったからな」
「あぁ、そぉいうことぉ?ってぇ、なぁんだぁ。結局信じてるから来たんでしょぉ」
ラクシャータが納得の色を声音に乗せて嬉しそうに言い切った。
「そうですわね。信じてらっしゃらなかったら、初めからキョウトに向かっていたでしょうね、ルルーシュ様ならば」
咲世子がにっこりと笑って肯定した。
「‥‥つまり君はこの騎士団をそれなりに気に入ってくれていたわけだな?‥‥自惚れて構わないだろうか?」
藤堂の言い回しはまるでルルーシュが騎士団に来た事があるかのようで、それに「自惚れる」って?と団員達は混乱する。
と、朝比奈がぽんと手を打った。
「藤堂さん。もしかしなくても、その『ルルーシュ君』がゼロなんですか~?」
朝比奈のある程度の確信を持った言葉に、驚いた幹部達は数瞬後、一斉に汗を噴き出させた。
「受け入れない」と答えていた場合、幹部達自らがリーダーであるゼロを切り捨てていた事になるのだから。
「自惚れて良いぞ、藤堂。でなければ、そいつが大事な大事な妹を連れてくるはずがないし?」
黙ったままのルルーシュに代わって答えたC.C.の言葉に、「あ、なるほど」と納得したのは藤堂とラクシャータ、それにカレンと生徒会メンバー。
「悪かった!ゼロ!」
玉城が真っ先に声を上げた。
驚いた視線が集まる。
「お前が若いってのは気づいてたし、正直意地になってたところは有るけど、今まで悪かった」
「‥‥どうしたんだ、玉城。お前が謝るなんて雪でも降らすつもりか?」
ルルーシュはまだ驚いたまま呆然と言い返す。
玉城の名前を知っていた事で、幹部達は彼がゼロだと納得した。
「若いと思ってたけど成人はしてると思ってたんだ。だから甘えてた。まさかこんな子供に頼ってばっかだったなんて‥‥恥ずかしいと思う。すまなかった」
玉城の言い分に幹部達は確かにと納得し、同様に今までゼロに強いてきた無理を思う。
ゼロは完璧でだから少しくらい頼ったって良いだろうと思っていた節は大なり小なり確かにあるのだ。
それに思い至った幹部達は一斉に居住まいを正して頭を下げた。
「「「「すまなかった、ゼロ!!」」」」
「あぁ、なんだ。みんな結構無茶を強いるなぁって思ってたらまだ子供だって事に気づいてなかったんだねー」
あはあはと朝比奈が笑い、「そこは笑うところじゃないだろう?」と千葉に咎められていた。
一斉に頭を下げられたルルーシュは唖然とした後、ふいと顔を背けた。
「‥‥別に。おれが隠していたからそれは仕方がない事だ。気にしていない」
そう言うルルーシュの頬は誰の目にも明らかに朱に染まっていた。
「あっらぁ~。テレてるのねぇ、ルルちゃん。かっわいぃ~」
ミレイがからかうような声を上げる。
「ッ‥‥からかうな、ミレイッ!」
ますます赤くなるルルーシュに見慣れていない幹部達は呆然と見惚れた。
C.C.は「落ちたな‥‥」と呟き、それを聞いていたラクシャータは「そりゃぁそぉでしょぉ」と笑う。
「まぁこれで団員達があいつを裏切る事はなくなったな」
「そうでしょぉねぇ。‥‥ねぇ、あんた達ぃ。ゼロを裏切ったりはしないわよねぇ?」
ラクシャータは呆然と見惚れたままの幹部達に声を掛けて正気に戻す。
「あぁ‥‥まさかあんなに可愛いとは‥‥」
「てかうっかり守りたくなるわよねぇ」
「目的が『弱者を虐げない優しい世界』だって言うんだから、彼を守るのに何も問題はないよ」
「問題がないどころか、彼がいないと進めないだろおれ達」
そうした呟きが口々に零れ出し、そうして思いは一つになった。
「「「「ゼロ!!いや、ルルーシュ君。おれ達は君についていく。一緒に『弱者を虐げない優しい世界』を作ろう!!」」」」
唐突に唱和された言葉に、ルルーシュは再び幹部達を見て目を見開く。
「「「「だから、もう無理はせずに、おれ(わたし)達に頼ってください。君を守るし裏切らないと誓うから!!」」」」
「良かったですね、お兄様」
ナナリーが声もなく驚くルルーシュに声を掛けその手に触れると、ルルーシュの頬に涙が伝った。
「‥‥ここにいる者達は、君が選んだ。君の名付けたとおり、君の騎士団になる。ここが君の新しい居場所だよ、ルルーシュ君」
「ちょっ‥‥藤堂さんッ!ゼロの騎士はわたしですからね!!」
「紅月。抜け駆けは禁止だ。みんな騎士団に入っている以上、リーダーであるゼロの騎士には違いないはず」
「ぅ‥‥あ、でも零番隊はゼロの親衛隊だわ」
「カレン、てめやっぱり抜け駆けする気だな!?」
「ゼロ、写真を」
「「ゼロに近付くな変態!!」」
賑やかに騒ぐ幹部達を、生徒会メンバーは楽しそうに見る。
ルルーシュに近付いた藤堂はそっとルルーシュの涙を拭ってやった。
「良かったな、ルルーシュ君」
「‥‥ノリで騒いでいるだけじゃないのかって思うのは気のせいですか?」
「そうかもしれないが、みんな君を裏切る事はない。信じてやってくれ」
「そうそう。裏切ったりしたらわたし達がちゃぁ~んととっちめてあげるから、ね?」
「「「「あー。藤堂(さん/中佐)抜け駆け禁止です!!!」」」」
「‥‥なんか、裏切りそうにないんだけども?ルルーシュ」
「‥‥‥。あぁ、おれもそんな気がしてきた」

黒の騎士団、『正義の味方』を唱えるエリア11最大のテロリストグループ。
しかし、そのアジト総本部は、今日も平和です。



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作成 2008.06.06 
アップ 2008.06.19 
 

★臣近様へのリクエスト作品★
(ルル(ゼロ)を愛し守ることを誓う騎士団と生徒会)

カレンは片手で額を押さえながら、一行の一番後ろを付いていっていた。
「もうどうしようもない」と言うのがカレンの思いである。
事前に扇に連絡を取ったものの、ゼロは不在だと言われ、事情を話そうとしたら「行くわよ~」とミレイに急かされて途中で連絡を切る羽目になった。
お陰で、騎士団メンバーの警戒の強い事強い事。
格納庫に平然と入っていく生徒会一行の後ろで、カレンに気づいて戸惑い声を上げそうな人を見つけてはキッと睨んで黙らせるのがやっとだった。
格納庫の中央で、一行は足を止める。
戸惑う幹部団員の中で、驚いている者が数名いた。
藤堂とラクシャータ、それにディートハルトだ。
藤堂とラクシャータは驚いた表情のまま黒髪の少年と車椅子の少女に視線を向けている。
ディートハルトの視線は車椅子を押す女性に向けられていた。
スチャっとミレイが片手を挙げて注目を集めた。
「こんにちわ~。黒の騎士団のみなさん。わたしはミレイ・アッシュフォードと言いまして、この一行の責任者で~す。アッシュフォード学園から来ました~」
ミレイはそのまま騎士団の幹部達を見渡して、明るい声で挨拶をした。
「なッ。ブリキのガキが何しにきやがった?」
ミレイの挨拶に我に返った玉城が早速悪態をついた。
「頼りたい人がいたんだけどー。ていうか、知り合いがいるとは思わなかったわ。貴女もいたんですね、ラクシャータさん」
ミレイの視線はまっすぐにラクシャータに向けられていて、ラクシャータは一行に満面の笑みを浮かべた。
「久しぶりねぇ、アッシュフォードのお嬢ちゃん。‥‥貴方達の安全はわたしが保証するわぁ。誰にも手なんて出させないから安心して良いわよぉ」
「なッ。ラクシャータ、テメッ。何勝手な事言ってやがんだ?」
「煩いわよぉ、静かになさぁい。彼等に何かしたら、怒らせるのわたしだけじゃないと思ってなさいねぇ?」
「心強いわ、ラクシャータさん。頼りにさせてもらいますねー」
「良いのよぉ。こんな事なんでもないんですものぉ。アッシュフォードの成した事に比べれば微々たるものよぉ」
笑い合うラクシャータとミレイに他の幹部が戸惑っていると、スッと藤堂が一行に向かって歩き出した。
途端に、緊張が走る。
しかし、一行の前で止まった藤堂は黒髪の少年と車椅子の少女に向かって笑みを見せた。
「無事だったんだな。良かった」
藤堂の聞いた事もない程の穏やかな声に、旧扇グループどころか四聖剣までもが驚いた。
「藤堂さんですね?貴方が騎士団にいらっしゃる事を知っていたので、頼らせて貰いに来たんです。ご迷惑でしたでしょうか?」
ナナリーの言葉に、一行の中ではカレンだけが驚いた。
「‥‥知り合いなの!?」
「はい。まだここが『日本』だった頃、とてもお世話になったんです。わたしも、お兄様もとても慕ってたんですよ」
にこにこと笑ってナナリーが説明し、カレンは再び違和感を覚えてルルーシュに視線を向ける。
ルルーシュは知り合いだと言う藤堂の顔すら見ようともしないで、やっぱり黙って俯いたままだった。
「迷惑とは思わない。おれを頼ってきてくれたのも嬉しいと思っている」
「‥‥ってちょっと待ってくれ、藤堂さん。それにラクシャータも。今、騎士団のリーダーであるゼロが不在なんだ。勝手に決めるわけには‥‥」
受け入れるが如き藤堂やラクシャータの意見をそのままにしておく訳にはいかなかった副指令の扇が、慌てて割って入る。
しかし更にそれに割って入った者がいた。
「いいや。今、お前達が決めろ」
奥から出てきたC.C.がそう言いながら歩いてきた。
「C.C.?おれ達がって‥‥ゼロが不在なのに?」
「そうだ。『あいつの一存で決めたとしても、絶対従わない奴がいるだろうから』と言うのが理由だな」
C.C.は持ったピザを振りながら、「判断はお前達に任せるそうだぞ」と言ってのけた。
その場にいた幹部達は、いや、生徒会の一行さえ、C.C.の言葉に驚く。
顔を見合わせながらヒソヒソと小声で相談する者がいる中、藤堂が口を開いた。
「先に言っておく。おれは彼等を受け入れたいと思う。そして守りたいと」
「はいは~ぃ。わたしも藤堂と同意見よぉ。あんたはどぉ?」
ラクシャータはそう言ってカレンを見る。
「‥‥わたしも賛成です。学園が安全ではなくなったってそう言ってました。だから‥‥追い返す事なんて出来ません」
答えたカレンに驚きの目を向けたのはシャーリーとニーナ。
「か、カレンさん?」
「どうして、カレンさんが?」
「あら、言ってなかったっけ?二人とも。カレンは騎士団のメンバーよ~。当然病弱なんてのも偽りよね~」
にんまりと笑うミレイにカレンは唖然とする。
「えぇぇえ~~!!カレンさんが騎士団‥‥。‥‥咲世子さんが騎士団に入ってるのは知ってたのに、まさかカレンさんもだったなんて」
シャーリーの言葉に、少数の例外を除いた騎士団のメンバー達が驚いた。
驚きの声やら意味不明な喚き声やらをBGMにしてカレンが「本当なの?」と尋ねると咲世子は平然と頷いた。
「はい。あちらの方にお聞きくだされば」と咲世子が指したのはディートハルトで、視線が追って集中するとかくかくと頷いていた。
「藤堂さんが認めるなら、おれもおっけーだよ~」と言う朝比奈の言葉に、仙波、卜部、千葉が同意を示して頷いた。
「お前達はどうする気だ?扇」
「‥‥ゼロは、本当におれ達に?」
「くどいぞ。わたしは気が短いんだ。さっさと決めろ。それともわたしが決めてやろうか?」
C.C.の言葉に、「‥‥ちなみに君に決めさせた場合、どうするんだ?」と扇は尋ねてみる。
「迷う奴等を頼ったところで不幸になるだけだろう?なら『キョウト辺りに送ればどうだ?』と言ってやるが?」
平然と言うC.C.に扇は迷い、カレンを見るとしっかりと頷かれ、更に迷う。
「カレン。学園が安全ではなくなったって言ってたけど、‥‥それは?」
「どこかの頭の中にお花が咲き乱れたお姫様とその騎士になった体力だけのお馬鹿な名誉ブリタニア人が学園内でおかしな事をしてくれたせいでね~」
「てかおれらの学園祭ぶっ潰してくれただけじゃないってのに、全然気づかない似た者主従のせいだよなぁ」
ミレイとリヴァルの辛辣なしかし有る意味的を射た説明に、誰の事を何の事を言っているのか気づいた幹部達は憤る。
「‥‥受け入れて良いぜ?‥‥さっきは悪かった」
まずは玉城がそう言ったのを皮切りに、次々と賛同の声が上がった。
「C.C.。とりあえず、全員一致で彼等を受け入れる事に決まったが‥‥。ホントに良いのか?」
「‥‥受け入れ、か。‥‥カレンとそっちのメイドは日本人で元から団員だから除外として残りはみんなブリタニア人だぞ?」
C.C.が念を押す。
「それを言ったらカレンはハーフだし、他にも日本人じゃない団員は3人はいるんだし‥‥」
「そいつらよりそいつらの居場所を奪ったって言う主従が気に入らないからな」
C.C.は扇の言葉よりも玉城の言葉に反応して笑う。
「なんだ。あの体力馬鹿もたまには役に立つではないか。いつもいつも邪魔ばかりしているっていうのになぁ?」
その言葉は誰かに話しかけているようでもあり、幹部達は顔を見合わせた。

後編に続く。

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作成 2008.06.06 
アップ 2008.06.18 
 

★臣近様へのリクエスト作品★
(ルル(ゼロ)を愛し守ることを誓う騎士団と生徒会)

アッシュフォード学園文化祭の最中に突如おこなわれた宣言。
それは何もかもをぶち壊しにしてしまった。
文化祭そのものも。
既に壊れかけていたとは言え、箱庭としての役割も。
アッシュフォード学園の本来の存在意義も。
必死に息を潜め、隠れていた者の居場所も。
そう、何もかも。
そして、宣言をおこなった者はその事にかけらも、本当にひとかけらも気づいてはいなかったのだ。


はぁ~あ。
盛大な溜息が、リヴァルの口から吐いて出る。
ここは生徒会室で、リヴァルの他にはミレイとシャーリーとニーナ、それにカレンがいた。
呼び出したルルーシュはまだ姿を見せていない。
はぁ~あ。
再びリヴァルの溜息。
「リヴァル。それやめてくれない?わたしの気まで余計に滅入るんだけど」
シャーリーが沈んだ声で注意する。
「だぁってさぁ~。何様だよ、あんの主従はぁ。こんな事ならガニメデあいつに任せるんじゃなかったぜ」
しかしリヴァルはそう愚痴った後にまたもや盛大な溜息を吐いてのけた。
カレンは内心「そうそう、しかも失敗してるんじゃないわよッ!白兜に騎乗する騎士様なのにッ!」と憤りながら同意する。
「そーねぇ。ルルちゃんが乗ってなかっただけマシと言えばマシだけど‥‥」
「その点はナナちゃんに感謝ですね。でもこれなら会長がやった方が良かったんじゃないですか?」
本来ルルーシュがガニメデに乗っていたはずのところをナナリーの鶴の一声で乗らない事になった、それはナナリーの手柄だった。
だが、その後を本職だから、とスザクがやった為に、今こんな事になっている。
「そーよねぇ」
「‥‥わたし、‥‥助けていただいた事も有ってユーフェミア様の事、お慕いしていたけれど‥‥でも」
ニーナはぽつりぽつりと俯いたまま言葉を紡ぎだす。
カレンはユーフェミア贔屓だったニーナが否定的な事を言い出すのを不思議な思いで聞いていた。
「副会長とナナリーちゃんを辛い目に合わせるなんて‥‥ユーフェミア様でも赦せません‥‥」
「当然よッ!スザク君なんてルルの親友とか言いながら、ちっともルルの事考えてあげてないしッ!」
「ルルの優しい気持ちに胡坐かきまくってるの見るのすっごく不愉快だよなぁ」
「まぁったくね。ルルちゃんもナナちゃんも人が良いんだから」
カレンは一致団結でルルーシュの肩を持ち、スザクを批判する生徒会一同を呆然と眺めていた。
「んー?まさかカレンさん、スザク君の方が正しいなんて言わないでしょうね?」
「‥‥言わないわ。彼、言ってる事矛盾だらけなんですもの。聞いているだけで凄く腹が立ちます」
「て事はカレンも同士ね。いつもの、行くわよ。『わたし達は!』」
ミレイはカレンににっこりと笑ってから一同を見渡して言う。
「『ルルーシュを愛し!』」
「あ、リヴァルそこわたしが言いたかったのに‥‥。『ナナリーちゃんも愛し!』」
シャーリーがリヴァルに小さく苦情を言ってから、先を続ける。
「『助け、守る事を‥‥』」
ニーナが小さいながらに声を出す。
そして、4人はカレンを見る。
「‥‥‥『誓うもので‥‥ありま、す』?」
カレンは視線の集中砲火に耐え切れなくなって続きそうな言葉を思わず告げていたが、思い返してみてしまったと思うが後の祭りで。
「良く出来ましたー。これでカレンも仲間よね~。一緒にルルちゃんとナナちゃんを守りましょうねー」
ミレイが逃がさないとばかりに詰め寄りながら確認を取ってくるのに、カレンは頷くしか取る術がなかったのだった。

「‥‥ミレイ会長。カレンに何を強制しているんですか?」
扉が開くと同時にルルーシュの呆れた声が響く。
一同が振り返ると、ルルーシュに続いて車椅子に乗ったナナリーとそれを押す咲世子が入ってきていた。
「えぇ~え!?だってカレンもスザクには腹が立つって言うから~」
「あいつに腹が立つ事と、おれ達を守る事は別物ですよ」
「この場合は同じだろー。あの主従がお前苦しめてるのは事実だし。‥‥第一その格好!」
「‥‥出て行くの?」
「言っておくけど、3人だけで出て行くって言うなら認めないわよ?」
「そうよルル。わたし達はルルとナナちゃんの行くところについて行くんだからね?」
「わたしも‥‥」
「‥‥ちょッ、と待って?一体どういう事?」
生徒会メンバーが口々にルルーシュとナナリーが出て行く前提で引き止めているのか付いていこうとしているのかしているのにカレンは混乱した。
「‥‥少し複雑なんだ、カレン。ただ、おれはここを。この箱庭を出て行く。それは確定事項だ」
きっぱりと言い切ったルルーシュに、カレンはナナリーと咲世子を見、ミレイ達を見る。
どの顔も真剣で、冗談を言っているわけではない事が察せられた。
「は~い!わたしも付いていくわよ?拒否は認めません!」
「おれもー。絶対ついてくからな、ルルーシュ」
「はーい。わたしも付いていきま~す」
「わたしも‥‥付いていきたい」
ミレイを筆頭に、次々に手を上げて宣言した。
「‥‥ルルーシュ。ここを出て、どこへ行くの?」
カレンは即答を避け、少し悩んだ後にそう尋ねる。
「お二人には黒の騎士団に身を寄せていただこうかと考えております」
そう応じたのは咲世子で、ルルーシュはカレンの反応が判っているのでそっと俯いた。
「‥‥‥ッ、ききき、騎士団ですってぇ~~ッ!」
病弱設定らしからぬカレンの悲鳴に近い叫びが生徒会室内に響き渡ったのだった。

中編に続く。

───────────
作成 2008.06.02 
アップ 2008.06.17 
 

★nao様へのリクエスト作品★
(ゼロの騎士と推進会の続き/推進会の活動)

6月13日。晴れ。

【カレン】
今日も藤堂さんとゼロの部屋に訪れる。
やはり一日の始まりはここから始めるべきよね。
藤堂さんがゼロと今日の簡単な打ち合わせをしている間に、わたしはナナリーちゃんと挨拶がてら会話をするのよね。

「おはようございます、カレンさん」
「おはよう、ナナリーちゃん。今日も調子良さそうね」
「はい、こちらに来てからはとても体調も良いのですよ」
そう言いながらナナリーはわたしにディスクを手渡す、勿論最愛の兄に見つからないように、だ。
まぁ、ナナリーちゃんがそんなヘマをするはずが無いから、見つかるとしたら相手のミスだろうと、戦々恐々なのだけど。
わたしはディスクを受け取ると、「今日の予定は?」と尋ねる。
「今日はお兄様が騎士団のお仕事でお出かけになるから、咲世子さんとここで待っているんです」
「ナナリーちゃん‥‥。安心して、待っていてね。お兄さんはわたしや藤堂さんがちゃんと守るから」
「はい。お兄様の選んだ騎士ですもの、信頼しています、カレンさん」
「紅月、そろそろ行くぞ」
藤堂さんの合図で、わたしはナナリーちゃんから離れる。

「ではゼロ。また後で」
「あぁ。二人とも頼んだ」
「承知」「分かってるって」

ゼロの部屋を出ると、ナナリーちゃんから受け取ったディスクの内容を印刷するべく藤堂と別れたのだった。


【藤堂】
毎朝、名誉会長に何故か納まっているゼロの、ルルーシュ君の妹であるナナリー君から抹殺計画書が渡される。
良く尽きる事が無いものだと、最近は感心してしまうくらい、その計画書はバリエーションに富み、会員になった者は必死にその内容と自分の役割を覚え込む。
ナナリー君の凄いところは、会員の能力を全て諳んじているかのようなところだろう。
一度も会った事のない団員、もとい会員に対しても適材適所としか思えない役割を割り振っているのだ。

おれは会長とは言え、名ばかりなので、ナナリー君の計画書を読み、指示を出す事くらいしか役には立っていなかったが。


【扇】
最近、というか、推進会が発足して以来かな?ゼロの作戦内容が若干違ってきていると感じている。
え?勿論おれも入っているけど。

なんというか、推進会の活動の機会がさり気に与えられているというか、動く余地が残っているというか。
以前なら、「指示に従え」、「勝手な事をするな」、「想定外の行動を起こされたんでは策を練る意味が無い」とか言っていただろう。
なのに、今はその余地の範囲内で勝手に動いても怒られる事はない。
仕切っているのがゼロの騎士になったと宣言した藤堂さんとカレンだからだろうか。

そう、カレンは元々零番隊の隊長だったり、「紅蓮の騎士」などと呼ばれていたからそれ程驚く事は無かったけれど、藤堂さんが一緒だったのには驚いた、心底。
それは四聖剣も同じで、彼等にさえ一言も無く決めた事にも驚いていたりする。

そして今日も今日とて、推進会幹部からの指示が回ってくるのだ。


【朝比奈】
いつも通り何故か遅れて現れる白兜が戦場に姿を見せた時、藤堂の指令が伝わってくる。
今回は「28番。パターン13」だと言うから、おれは千葉さんと白兜の背後に回る。
はっきり言って白兜にというかそれに乗ってる枢木スザクに目にモノ見せてやれるのは望むところなんだ。
おれだって推進会に入っているわけだし?
藤堂さんが会長だっていうから、入らない手は無いしね。

ん?藤堂さんがゼロの騎士になった事について?
関係ないはずだけど?推進会にしては‥‥まぁ、藤堂さんが選んだ事だからおれ達は従うだけだよ。
藤堂さんがゼロを守りたいなら、おれ達だって全力を挙げてゼロを守るさ。
んー親衛隊みたいなもんだね、おれ達四聖剣や黒の騎士団はさ。

問題なのは日々増えていく抹殺計画書を付属パターン毎に自分の行動を覚えなければならない事、かな。
毎日計画書が作成され、そのパターンは少ない時でも5、多い時だと20以上ある事もあるからね。
玉城なんかは悲鳴上げてるし。


【卜部】
これくらいでネをあげてどうする、朝比奈。
紅月に比べれば、まだ良い方だぞ?
紅月は学園での計画書まで覚えているという話だからな。
まぁ、学園でやれる事と言えば、抹殺等ではないのかも知れないけどさ。

おれは白兜の左側面に回る。
事が始まったら、右側面に回った仙波大尉と連携して白兜の注意を引くのが役目だ。
今は紅蓮が白兜の正面で仁王立ちしているから、注意はそっちに向けられているけどな。

しかし、傍目に見ても仮面をつけた状態だったとしても、判る程あのゼロが愛情を一身に向ける、ゼロの妹が考えたんだよな‥‥これ。
毎日新しい抹殺計画書が届くから読むけどよ、なんつーか。
‥‥あ、これ提出有りか?
いや、ホント素晴らしい出来だよな、うん。


【仙波】
口は災いの元と言うくらいだ、もう少し気をつけよ、卜部。
とは言うものの、確かに少々堪えるのは確か。
藤堂中佐がゼロの騎士になったからと、わし等四聖剣を中心に、親衛隊なるものも構成しつつあるから、忙しさはそれでなくとも倍増している。
更には同じく正式に騎士になった紅月と共に、この推進会を発足させ、団員が次から次へと入会するものだから、会の運営も当然忙しい。
だが、そこまではまだ良かったのだ。
問題は‥‥‥、やはりゼロの妹がやって来てからといえよう。
尽きる事無く、次から次に作成されていく抹殺計画書を覚えるのが大変なのだ。

藤堂中佐の合図を受け、わしは白兜に向かってスラッシュハーケンを発射していた。


【カレン】
「あら?珍しい人がいるわね。何をしに来たの?枢木君?」
カレンは久しぶりに登校してきたスザクを目ざとく見つけて声を掛けた。
「あ、カレンさん。おはよう。うん、今日は暇が出来たから‥‥学校へ行っておいでって」
「あら、そうなの?あぁ、来たのなら丁度良いわ。裏庭の木に猫が登って降りれなくなったみたいで。今人を呼びに行こうと思っていたところなの」
「あ、じゃあぼくが行ってくるよ」
「お願いするわ。‥‥わたしがついていかなくても良いわよね?」
「うん、平気だよ?ちゃんと猫は降ろしておくから。‥‥その猫ってアーサー?」
「違うわ。アーサーなら生徒会室にいたと思うもの。じゃあ、よろしくね、枢木君」
そんな会話をカレンが枢木スザクと交わしたのは数日前だ。
その日、スザクはクラスに顔を出さず、当然授業も受けず、生徒会室にすら顔を見せる事はなかった。
昼休みに一度カレンが裏庭を覗きに行って見たのは、スザクが木の上で寛いでいる大量の猫をひたすら下に降ろそうとする姿だった。
猫はスザクが近づくと警戒し、手を伸ばすと引っかき、降ろされる間も暴れまくっていた。
降ろされた後、次の猫に取り掛かるスザクの視界の外で再び木に登る猫もいた。
スザクが全ての猫を降ろした時には、既に真夜中をとっくに過ぎて空が白み始めた頃だったとか。
「学園編、31番。パターン1(猫任せ。猫の調教は終了済み)」は成功かしら?
多分次に持ちかけても、頷いてくれないでしょうけどね。

紅蓮の右手を突き出して、輻射波動をぶち込む。
白兜はそれを剣で受け止め、紅蓮と白兜は暫しの睨みあい。
コックピットの中にいる、スザクがあちこちに猫による引っかき傷だらけかと思うと、哂えるものがあるカレンはそれを必死に抑えていた。


【ナナリー】総評
今日もお兄様が可愛らしく首を傾げていました。
「なぁ、藤堂。白兜が出てくると、途端にみんな作戦にない動きをするんだが‥‥何か知っているか?」
藤堂さんがチラとわたしを見た気がしたので、わたしはにっこりと笑みを浮かべてみる。
「‥‥いや、すまないな。やはり気に入らない‥‥か?」
「いや。ナナリーから『いつもの事なのでしたら、そうなると諦めてみたらどうでしょう』って言われたからな。半分諦めている」
お兄様は苦笑してそう言うのですが‥‥まだ半分だったのですか‥‥「後でもう少しお願いしてみましょう」とわたしは考えた。
「そう言えばカレン。昨日かな、リヴァルが2、3日前にスザクを見たはずなのにクラスにも生徒会にも顔を出さなかったって不思議がってたが‥‥知っているか?」
「‥‥来たの?最近見てないわよ?わたしは。‥‥大方、登校してすぐに呼び戻されたか何かしたんじゃないの?」
カレンさんはさらっとそんな事を言って誤魔化しているけれど、「学園編31番」が功を奏した事は既に報告を受けているので、わたしはくすくすと笑っていた。
やはりスザクさんにはもっともっと酷い目に遭って頂いてから、地獄巡りにご招待するべきですわね、とわたしは心に誓い、新たな計画を立案する事にした。

本日の収穫。
白兜の腕1本。
どこかでどなたかの悲鳴が聞こえた気がしましたけれど、きっと気のせいだと思いますわ。



───────────
作成 2008.06.04 
アップ 2008.06.15 
 

★明日咲様へのリクエスト作品★
(白シ.ュナル.ル/共闘/騎士団内でブラコン発揮)

そこは戦場だった。
黒の騎士団とブリタニア軍とが戦火を交えている場所だった。
黒の騎士団の主力はガウェインと紅蓮弐式、月下が五機。
対するブリタニア軍はランスロットとグロースターが八機。
それぞれの指揮官、ゼロはガウェインに、コーネリアはグロースターに騎乗しつつ指揮を執る。
主戦力だけならば互角だが、兵力の差は歴然の戦場。

そんな両軍に一つの報告が飛び込んできた。

『アヴァロンが接近しています!』

アヴァロンはかなりの攻撃力を有したブリタニアの第二皇子シュナイゼルのご乗艦である。
当然ながらブリタニア軍の将兵は喜び士気を上げ、黒の騎士団は愕然として士気を下げる。
例外はゼロだけだった。
C.C.は驚く素振りすら見せないゼロを見上げて首を傾げた。
「おい。撤退の指示を出さなくて良いのか?」
「しばらく様子を見る」
「何故?」
「そろそろ痺れを切らせる頃だからな」
ゼロの返答にC.C.は「ん?」と更に首を傾げたのだった。

アヴァロンの砲筒が標的を定めるように動き出す。
期待に満ちるブリタニア軍将兵と、逃げ腰になる黒の騎士団は、同時に「あれ?」と思った。
動く砲筒に「照準角度が違うくないか?」と思ったのだ。
照準が固定されるとエネルギーが集束していく様が見え、一部、危険を感じた者達が逃げを打つ。
動いたのはブリタニア軍側だけだった。
枢木スザクも危険を感じたけれど、「まさか‥‥‥‥」と呟くだけで実感が沸かないのか信じられないのか、ただアヴァロンを見上げるだけで。
アヴァロンから放たれた一撃は黒の騎士団には全く被害を与えずにブリタニア軍のランスロットの側近くに大穴を空けていた。

「どういう事だ?」
C.C.が眉をしかめてゼロを見る。

『待たせてしまったかな?ゼロ』
アヴァロンからオープンチャンネルで、シュナイゼルの言葉が発せられる。
『共闘を申し込みたいのだけど、受けてくれるかな?ゼロ』
シュナイゼルの言葉のその内容に、静寂が落ちたのは、咄嗟に理解できなかったからだろう。

『随分と時間がかかったようですが?』
そして、ゼロもまたオープンチャンネルを開いて平然と応じる。
シュナイゼルの声が友好的なものなのに対して、ゼロのそれには冷ややかな響きが乗せられていたが。

『待ちたまえ、ゼロ。これでも可能な限り急いだのだよ。けれど、わたしは宰相と言う役目柄雑務が山のように‥‥‥‥』
シュナイゼルが慌てたように言い訳を始めるに至り、我に返ったコーネリアが割り込む。
『義兄上ッ!何を仰せになっているか、わかっておられるのですかッ!しかも自軍に攻撃を仕掛ける等とッ!第一宰相の仕事を雑務だ等と』
『ゼロに比べれば全てが雑務だ。わたしはゼロと手を組むと言ったのだよ?‥‥ゼロ、遅れた事は謝るから機嫌を直してくれないか?お土産も用意したし』
コーネリアにはサラっと応え、シュナイゼルは再びゼロへと言葉をかける。

『‥‥良いでしょう。貴方が確かにお忙しいのは理解していますし。共闘の申し出、ゼロの名においてお受け致しましょう』
『本当かぃ!?よかった。そうと決まればこの場のケリも付けてしまおうか』
シュナイゼルは声を弾ませ、本当に嬉しそうに言い、ブリタニア軍への攻撃命令を出そうとする。
その様子に慌てたコーネリアはシュナイゼルが命令を口にするより早く叫んでいた。
『ッ全軍、撤退するッ!!』
コーネリアの声にブリタニア軍将兵は、脱兎の如く逃げ去っていった。

蜘蛛の子を散らせるような見事な退き様に残された騎士団は唖然とする。
『わたし達も撤退する。C.C.、ガウェインは任せた。わたしは今後の共闘の件を話し合う為アヴァロンに向かう』
『なッ!一人で行くなんて危険過ぎます!それに話し合いなら幹部も参加した方が絶対良いですからッ』
カレンが必死に訴える。
『‥‥ならば撤退の指揮は扇に任せる。残りの幹部は各自の判断で撤退の補佐かわたしに同行するか決めろ。‥‥構いませんね?』
『ゼロ!おれは副司令だし話し合いに立ち合いたいと思う』
『ならば、撤退の指揮は玉城、杉山、吉田、南、井上に任せる』
『ゼロの判断に任せるよ。わたし的にはゼロさえ会ってくれるのなら他はいようがいまいがどちらでも』
ブリタニア本国では腕利きな宰相閣下のはずの第二皇子はまるでイエスマンのようにゼロの言葉に頷くばかりで、騎士団を更に唖然とさせていた。

なんとなく危険はなさそうだと思いながらも、藤堂と四聖剣、扇とカレンはゼロに従ってアヴァロンの廊下を歩いていた。
ちなみにゼロは早々にガウェインをC.C.に託すと藤堂の月下隊長機の肩を借りてアヴァロンへの移動を果たしている。
「ゼロ、ホントに良かったんですかー?紅蓮に月下、破壊されちゃうと大変ですよー?」
朝比奈は藤堂と並んで先頭を歩くゼロに向かって声を投げる。
「平気だろう?あれを壊せばどうなるか判っていて、それでも壊そうとする度胸のある奴はいないさ」
ゼロは全く気にする様子を見せずにきっぱりと言い切った。
「‥‥聞くのが怖いんだが、ゼロ。‥‥どうなるんだ?」
扇がそろっと訊ねる。
「まさか宰相閣下を怒らせるような事はしない、という事さ」
扇を見もせずに答えたゼロに、怒りに燃える第二皇子が想像できず、幹部達は首を傾げたのだった。

扉が開くと、満面な笑顔でシュナイゼルがゼロを迎えた。
「良く来たね、ゼロ。待ちかねたよ。‥‥しかしまぁ、ぞろぞろと付いて来たものだな。適当に座りたまえ。ゼロはこっちに」
ゼロと幹部とでは明らかに違う態度でシュナイゼルは言い、いそいそとゼロに近づくと手を取ってソファに案内して座らせ、隣に座る。
「‥‥‥座る位置が違いませんか?」
唖然とする幹部達を気の毒に思ったゼロは、シュナイゼルに物申す。
「えぇ!?少しくらい良いだろう?わたしはゼロさえ来れば良いと言ったはずだし、勝手について来た者達には適当に座らせておけば良いだろう?」
「一応許可を出したのはわたしで、貴方も同意したはずですが。‥‥藤堂、扇。適当に座れ」
結局ゼロもシュナイゼルも動かず、ゼロは溜息と共に幹部達に座るように促し、促された幹部達は本当に適当に座る事になる。
「さて、ゼロ。これでコーネリアから本国へも情報が伝わるだろうから、そちらに移りたいのだけど、構わないかな?」
「構いませんよ。‥‥しかしあっさりと宰相位を捨てましたね。後釜に厄介な輩が納まったらどうするつもりですか?」
「なに、その時は色々と手を回すから心配要らないよ、ゼロ。わたしはゼロの傍にいられるのなら、宰相位なんていらないしねぇ」
シュナイゼルはあっさりと応じ、「ゼロがいなかったからこそなったのだし」と言ってのける。
「‥‥‥あのー‥‥。なんだかお知り合いみたいなんですけどぉー」
朝比奈が躊躇いがちに尋ねるとあっさり双方に頷かれてしまって固まった。
「わたしの最愛の人だからね、ゼロは」
シュナイゼルはそう答えてゼロを抱きしめ、カレンが意味不明な叫びを上げる。
「まだ言ってたんですか?いい加減懲りない人ですね。それより土産とやらを出してください」
「つれないなぁ。そこがまた良いんだけど」と言いながら、シュナイゼルは鈴を鳴らし、間を置かずやってきた者達がお茶菓子を配って去っていった。
かなり偏りまくった配り方に、幹部達は言葉も無く供された茶菓子を見つめる。
紅茶の入ったカップはそれぞれにちゃんと配られていたが、問題はお茶受けの菓子の方だ。
ゼロとシュナイゼルの前にはいちごプリンといちごタルトといちごのたっぷり乗ったショートケーキが置かれている。
残りの幹部達の前には、そのいずれか一つだけが配られていっていた。
「全て君の好物ばかりだろう?これからは毎日お茶の時間には用意させるからね、ゼロ」
甘い声で嬉しそうに語るシュナイゼルに、カレンがキレた。
「ゼロッ!あのッ、いちご‥‥お好きなのですか?」
キレたが向かう先が果てしなく違っている。
「あぁ、好きだな」
「‥‥しかしゼロ。茶菓子が出されたが、仮面をつけたままでは食べられないだろう?」
藤堂が「どうする気だ?」と尋ねると、ゼロはあっさりと仮面を外してしまった。
「相変わらず綺麗だなぁ」
シュナイゼルは目を細めてゼロの素顔に見入った後、再び頬擦りせんばかりに抱きしめる。
「って‥‥るるるるる、るるーしゅぅ!!???」
「‥‥君だったのか。‥‥ある意味納得できたが、コーネリアとかは良かったのか?」
「コーネリアの一番は実妹のユーフェミアだからね。わたしの一番を見せるわけが無いだろう?」
「おれの一番も実妹なんですが?」
「わたしが二番目だろう?君が死んだと聞かされてからも、絶対生きていると信じて待っていた甲斐が有ったよ」
藤堂は正面で展開されている異母兄弟同士の会話を聞いて、シュナイゼルを認める事にした。
カレンはそれどころではなく、名前を叫んでしまった為に、扇や四聖剣から質問攻めに遭っている。
7年前、死んだと聞かされて、藤堂はそれを真実だと思い嘆いた。
だが、シュナイゼルは生きていると信じ、ずっと待っていたのだという。
ならば、シュナイゼルのゼロ=ルルーシュに対する想いはきっと本当なのだろうと思ったからだ。
それに、ルルーシュは「シュナイゼルが二番目」と言う言葉を否定しなかった。
口では、態度では嫌そうな素振りを見せていても、抱きしめるシュナイゼルの腕を振り払う事はしていない。
ならば良いと藤堂は思ったのだ。
「ゼロ。宰相位もなく、騎士団に来れば皇族とはいえ廃嫡される可能性すらある。それでもシュナイゼルを騎士団に入れるんだな?」
「そうだ。その条件下においてさえ、義兄上に逆らおうとする者などブリタニアには皆無に近い。これからはかなり楽になるぞ」
「ルルーシュ。そう言ってくれるのはとても嬉しいけど、素性ばらしてしまっているよ?良いのかぃ?」
さらりと「義兄上」なんて言った義弟に、シュナイゼルはやんわりと注意を促した。
「あ‥‥‥‥。まぁ良いさ。口の堅い連中ばかりだ。それに義兄上がその調子でしたらすぐに知れる事でしょうから」
一瞬固まったものの、開き直ったのか気を取り直したのか、平然と続けたルルーシュにシュナイゼルは満面の笑みを浮かべて抱きしめる。
「好きだよ、ルルーシュ。ずっと君の事だけを想っていた。そしてそれはこれからも変わらない」
「少しは義弟離れをしたらいかがですか?わたしも義兄上は嫌いでは有りませんが」
「ルルーシュ離れなんてとんでもない。君も素直に好きと言ってくれても良いだろう?」
二人はの会話は既に幹部達を完全に無視したものに変わっていて、各自で判断してついて来た幹部達は、ついてきた事を激しく後悔した。
「‥‥ゼロ。‥‥いや、ルルーシュ君。いつになったら話し合いを始めるんだ?」
扇、カレン、四聖剣の視線を受けた藤堂が、ルルーシュに尋ねる。
「ん?‥‥そうだな。食べ終わってから?」
藤堂の問いに、ルルーシュはこてんと首を傾げてちらりとシュナイゼルを見る。
「あぁ、そうだったね。わたしの分も食べて良いからね?ルルーシュ」
「そ、そうですか?」
シュナイゼルの言葉に嬉しそうにいそいそとスプーンとプリンを手に取ったルルーシュ。
そうして、目の前で展開される甘い会話に、胸焼けを起こした幹部達がなんとか出されたデザートを食べ終わるまで、それは続いたのだった。


「あの。これってもしかしてこれからずっと続くんですか?」
朝比奈の悲壮な言葉に、藤堂は黙然と頷いていた。



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作成 2008.05.29 
アップ 2008.06.13 
 

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