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★未来(みく)様へのリクエスト作品★
(ルルーシュ=枢機卿猊下/枢機卿権限(皇帝を超える程のものと捏造)で日本を手に入れ、楽園を築く)
『昨日、エリア11の総督に就任致しました、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアです』
それが、放送のはじまりの挨拶だった。
何故か、声だけの放送に首を傾げながらも「今度は一体なんなんだ?」的な表情を作る。
『今日はみなさんに幾つかの報告をしたいと思います』
アヴァロン。
ロイド:「始まったねー、セシルくん」
セシル:「あまり浮かれ過ぎていてはいけませんよ、ロイドさん」
『一つ。希望するブリタニア人は本国へ戻る事が出来ます』
生徒会室。
ミレイの緊急招集で、生徒会役員が集まっていて、ミレイ以外は絶賛大混乱中である。
リヴァル:「ん?なぁに始める気なんだ?てか、ルルーシュが皇族!?総督ってなんだよ?」
ミレイ:「ルルちゃんが皇族だったら嫌?それとも隠してた事が嫌なの?リヴァルは」
リヴァル:「う~ん。後者、かなぁ?会長は平気なんですか?」
ミレイ:「わたし?知ってたからね~。ルルちゃん達が皇族だって事。『ランペルージ』姓を用意したのアッシュフォードだからね」
リヴァル、シャーリー、ニーナ:「「「‥‥‥‥え~ッ!」」」
『二つ。本日正午より、このエリア11に「合衆国日本」を建国する事を宣言します』
ブリタニア本国への帰途の皇族専用機。
ギルフォード:「無茶をなさいますね。『行政特区日本』を潰したばかりで信用する人なんてそんなにいないとわからない方ではないはずなのに」
コーネリア:「そうだな。だが、無茶だろうと無謀な事はしないだろうからな。何らかの勝算はあるのだろう」
ギルフォード:「そうですが、『特区』をそのまま用いて改革をおこなった方が混乱は少なく済んだのではないでしょうか?」
コーネリア:「‥‥‥‥そう、だな。‥‥一体、どうする気なんだ?」
『以前、一皇族の個人名で宣言された「行政特区日本」とは違い、「合衆国日本」の宣言は枢機卿の名でおこなわれます』
「「「枢機卿!?‥‥って何!?」」」
『三つ。「合衆国日本」のトップはキョウトの皇神楽耶とし、「合衆国日本」の民は「日本人」と呼ばれます』
「「「キョウト!?皇って!!‥‥じゃなくて枢機卿ってなんだよ!?」」」
『四つ。本日正午、「合衆国日本」建国と同時に、エリア11は廃止し、永久欠番とします。ブリタニア本国とは関係のない独立国となります』
「「「「「独立国だと~~~~!!!」」」」」
「日本‥‥」
「日本人‥‥」
「『合衆国日本』‥‥」
『最後に、「合衆国日本」の国民は一月後、現在エリア11と呼ばれるこの地にいる者全てとします』
黒の騎士団アジト。
幹部のみが集まる会議室内。
朝比奈:「ぅわぁ~。強引だな~。てかそれで前総督御一行は本国に戻したのかなぁ?」
千葉:「それより、総督という挨拶はしていたが、枢機卿というのはどこから来たのだ?」
卜部:「いや、その前に、その枢機卿ってなんだよ、そもそも?」
仙波:「聞いた事がありませんな」
ディートハルト:「確か、永らく空席だったはずです。というより、歴代の皇帝はその地位を埋める事をよしとしていなかったものですから、大抵は空席ですが」
ラクシャータ:「そりゃそぅよねぇ。何と言っても、皇帝よりも権限持っちゃってるんだから、皇帝にとっちゃ目の上のたんこぶなんだしぃ?」
扇:「‥‥皇帝よりも権限を?」
ディートハルト:「はい。かつては皇帝の戴冠式を執行していた関係で、枢機卿は皇帝の上に位置されているのですよ。ゼロが就かれたとは知りませんでしたが」
ラクシャータ:「んーとねぇ。宰相の第二皇子がぁ、色々動いたみたいねぇ。まぁったくぅ、お陰でプリンから『これからよろしくー』なんて言われちゃったじゃないのぉ」
カレン:「‥‥‥‥プリンて何?」
ラクシャータ:「第二皇子の学友でぇ、特派‥‥白兜要する部隊の主任でぇ、そのデヴァイサーの上司よぉ。伯爵だから普段はプリン伯爵って呼んでるけどぉ」
『「日本人」になりたくないブリタニア人及び諸外国の方々は、一旦帰国し、「合衆国日本」となった後、来日する事になります』
生徒会室。
リヴァル:「てことはやっぱりおれ達も一旦本国に戻らないと?」
ミレイ:「まぁねぇ。多分、アッシュフォードの生徒もかぁなぁり、減る事にはなるんだろうけどねぇ」
ニーナ:「ミレイちゃん、学校廃校にはしないんだね?」
ミレイ:「あったりまえよ~。なんたってルルちゃんとナナちゃんが残るのは確実なんだもの。絶対存続させて見せるわ」
シャーリー:「なら、わたしも戻ってきます、会長」
リヴァル:「お~れも♪」
ニーナ:「わたしも」
『名誉ブリタニア人となったかつての日本人にも勿論適用されます。注意事項としては「合衆国日本」に入国するにはパスポートが必要となります』
ブリタニア本国への帰途の皇族専用機。
スザク:「名誉‥‥」
ユーフェミア:「スザク?やっぱり、『日本人』に戻りたいのですか?」
コーネリア:「枢木、よもやユーフェミアを見捨てたりはしまいな?」
スザク:「も、勿論です。コーネリア皇女殿下」
『この「合衆国日本」については、EUや中華連邦をはじめとする諸外国からも既に枢機卿の名で合意を得ております』
ざわり、と現在はまだ「エリア11」と呼ばれる地全てがざわめいた。
『神聖ブリタニア帝国枢機卿の権限は、同皇帝のそれを上回ります。諸外国からも承諾を得た以上、「合衆国日本」を侵略しようとする外敵はいません』
生徒会室。
リヴァル:「有りなのか?皇帝より偉いって!?」
ミレイ:「知らないの?枢機卿って皇帝の戴冠式の時、冠授けたリしてたのよね。だからその関係で色々と特権持ってるのよ」
『最後に。「合衆国日本」が発足する本日正午を以てエリア11総督及び副総督は解任されます。‥‥後3時間と短い期間ですがどうぞよしなに。以上』
新総督の放送はそれで終わった。
アヴァロン。
ロイド:「史上最短の就任期間だよねー」
セシル:「良かったのでしょうか?」
ロイド:「枢機卿までやめるわけじゃないからねー。問題ないよー。『日本人』になるわけでもないしさー」
セシル:「え?そうなんですか?」
ロイド:「うん。流石に『日本人』になっちゃうと枢機卿でいられなくなるから、ブリタニア人のままでいるって仰ってたんだよねー」
セシル:「なら、ロイドさんもですよね?」
ロイド:「もっちろん。当日はバックレるから、セシルくんも付き合うよねー?」
セシル:「はい。あ、じゃあ、パスポート用意しておかないとですね」
ロイド:「そのとーり」
『神聖ブリタニア帝国宰相、第二皇子シュナイゼル・エル・ブリタニアです。さて、新総督のご挨拶は聞いた通りだけど、今度は副総督として一言』
ブリタニア本国への帰途の皇族専用機。
ダールトン:「シュナイゼル殿下?一体‥‥?というか、シュナイゼル殿下が副総督だったのですかッ!?」
コーネリア:「なんらかのフォローだな。一種の点数稼ぎとも言うが」
ギルフォード:「姫様、流石にそれは言い過ぎではないかと‥‥」
コーネリア:「事実だ」
ギルフォード:「‥‥しかし、枢機卿が総督、宰相が副総督とは‥‥最強コンビですね」
『一つだけ補足しておこう。出国する為の便には限りがある事を念頭に入れておいた方が良いよ。今から予約して果たして取れるかどうか‥‥』
黒の騎士団アジト。
幹部のみが集まる会議室内。
ディートハルト:「取れるかどうかって‥‥」
玉城:「ぁん?てめぇ、ブリタニアに戻る気か?ディートハルト」
ディートハルト:「わたしは『日本人』になりたくて参加したわけではありませんから。あくまでもブリタニア人として参加していたつもりですが?」
ラクシャータ:「そぅねぇ。別に『日本人』じゃないからって『合衆国日本』の為になにかしちゃいけないって話じゃないんだしぃ」
『それと、今から宣言しておく。「合衆国日本」からと受け取りたまえ。皇帝シャルル!「貴方は立入禁止です」。入国は断固認めません』
アヴァロン。
ロイド:「ぅわー。言っちゃいましたねー。殿下ってばー」
セシル:「今まで色々溜まってたんでしょうね‥‥」
『第三皇女ユーフェミア。「貴女は立入禁止です」。これは「日本人」からと受け取りたまえ。入国は断固認めない』
生徒会室。
ニーナ:「ユーフェミア様、来れないんですね‥‥」
ミレイ:「ニーナも本国に残る?」
ニーナ:「‥‥ううん、来るわ。ルルーシュやナナリーちゃんやみんなといる方が楽しいもの」
リヴァル、シャーリー:「そうこなくっちゃ」
『第三皇女の騎士、枢木スザク!「貴様は立入禁止だ」。これは枢機卿からの言葉と受け取るが良い!入国は永久に断固認めないからそのつもりで。以上』
黒の騎士団アジト。
幹部のみが集まる会議室内。
カレン:「よっしゃ、良く言った~~~!あーすっきりしたー。これであいつの顔見ないで済むと思うと一番の朗報だわ」
扇:「よ、よっぽどストレスが溜まっていたみたいだな、カレン‥‥」
カレン:「有ったり前よ~。もう、もうほんとーにイライラする日々だったわ」
朝比奈:「藤堂さん?どうしました?」
藤堂:「いや、なんでもない。ゼロの怒りの程が良く分かる言葉だと思っていただけだ」
千葉:「裏切ってはいけないものを全て裏切った偽りの騎士には似合いの結末だ」
藤堂:「‥‥ゼロが幹部一同を政庁に招くと言っているが、‥‥行くか?」
一同:「「「「勿論!行きます!!」」」」
6に続く。
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作成 2008.05.10
アップ 2008.05.26
★未来(みく)様へのリクエスト作品★
(ルルーシュ=枢機卿猊下/枢機卿権限(皇帝を超える程のものと捏造)で日本を手に入れ、楽園を築く)
黒の騎士団幹部はその日も大忙しだった。
ぱったりと活動をしなくなった事に不満を抱く団員達を抑えるのに、ほぼ全ての労力を割かねばならない程になっていたからだ。
しかし、朝一番でディートハルトが持ってきた情報により、そんな事はなんでもないのだと、幹部達は俄かに活気付いていた。
ゼロの事前情報、である「総督交代」が報じられれば、「もうすぐゼロが戻ってくる」のだと、早くもホッとする者もいた。
しかし、次にもたらされた「『特区』の中止」には、団員だけでなく、幹部ですら愕然としてしまった。
幾ら先がないとはいえ、まさかそこまで思い切ったことをするとは思わず、しかも「宰相の横槍」と聞いては不安が高まる。
「まさか、敵に?」とは、幹部達の誰もが思うことだった。
だが、それは暫く姿を見せなかったC.C.の一言によって改まる。
「‥‥甘いとわかっていたが、ここまで甘いとはな。まさか自ら汚れ役を引き受けるとは‥‥」
「どういうことだ?」
「ん?簡単だ。全てのマイナス面を白紙に戻した状態で新総督に渡したかったのさ」とC.C.は言って、さっさと立ち去った。
そしてその日、最後にもたらされた「新総督は第十一皇子」という報告に、幹部一同は目の前が暗くなるのを感じた。
昼間のC.C.の言葉からして、これは最初からの計画だったのだと思うと、悲しくなった。
そこへ再びやってきたC.C.が「藤堂、お前に電話だ」と持っていた携帯を差し出した。
C.C.を経由している以上、相手はゼロでしかありえず、幹部達の視線はその携帯に注がれる。
携帯を受け取った藤堂はそれを耳にあてた。
『藤堂さん?ずっと連絡できなくてすみませんでした。しばらく本国に戻っていましたので‥‥』
「いや。君は‥‥。総督になって何をするつもりなのだ?」
『ここまで来たら今種明かしをしてしまっては勿体無いでしょう?明日の発表を待ってくれませんか?』
「『特区』を中止し、君は何をなす?」
『中止にしたのは義兄上ですよ?「宰相の許可を取り付けたと勘違いしたユーフェミアの独断による行動を否定したのだ」と言っていましたが』
「だが、C.C.は『第二皇子が君に甘いから』だと言っていた」
「余計なことまで言う必要はないだろう?藤堂」
藤堂の言葉にC.C.が憮然とした表情で言葉を挟む。
『確かに義兄上が矢面に立ってくださった形にはなりますが‥‥。連絡を取ったのは伝えたい事が有ったからです。聞いてくださいますか?藤堂さん』
「‥‥伝えたい事?」
『ええ。明日の発表の後、それに納得が出来ましたら、政庁にお越しください。‥‥そう、幹部一同をご招待します。来る来ないの判断は各自に任せますが』
「‥‥だが、幹部が揃ってアジトを空ければ、団員達が暴走するぞ?」
『‥‥かもしれませんね。ですから、その判断は明日』
「何故今日ではないのだ?」
『無茶を言わないでください、藤堂さん。流石に準備をしなければなりませんし。どんなに急いでも明朝まで掛かります』
「‥‥そ、そうか。すまない」
『納得したのでしたら、カレンに代わってもらえますか?』
「わかった。‥‥紅月。君に代われと」
藤堂は携帯を耳から離して、カレンを振り返って差し出す。
「は、はいッ」
カレンは慌てて藤堂に近づいて携帯を受け取った。
『カレンか?おれだ』
「そ、それで?」
『事情は藤堂に説明した。カレンにはやって貰いたい事があるが』
「何?」
『学園に行って、妹に。今声を聞くと、全てを放り出して会いたくなってしまうからな』
「わかったわ。なんて伝えれば良いの?」
『‥‥「待たせた」と「これからはずっと傍にいる」‥‥だな。後は会長に、「長電話が過ぎるのでは?何時掛けても話中ですよ?」と』
「わ、わかった。伝えておくけど‥‥わたしからで良いの?」
『構わないだろう?会長は‥‥ミレイはおれの素性を知っているからな。きっと今日の発表を聞いてあちこちに連絡とっているんだと思うが‥‥』
「え、っと。そっちもだけど、こっちの件は?」
『教えてはいないな。知っていても不思議じゃないって程度か。‥‥この後、キョウトにも連絡をしないといけないから、そろそろ切るぞ?』
「あ、うん。そうね。‥‥てか団員達には?それも藤堂さんに言ってるの?」
『団員?‥‥「黒の騎士団は破壊だけが目的のテロリストグループではなく、正義の味方である事を再度頭に入れ直せ」と言っておけ』
「そ、そうよね」
『後は、「破壊する事よりも、創る事を、守る事を考える時が来ている事を自覚しろ」ともな』
「‥‥創る、‥‥守る?わ、わかったわ」
カレンの返事の後、通話はすぐに切れた。
「藤堂さん。ゼロは藤堂さんに事情を説明したって言ってましたけど‥‥なんて?」
カレンの問いかけに、藤堂は「果たしてあれをして事情の説明というのか?」と渋面を作る。
「明日、おこなわれる発表を待て。そう言っていた。ディートハルト。何か情報を得てはいないか?」
「確かに明日、何かしらの発表があるらしいとは噂されていますが、誰もその内容までは知らない様子。後」
ディートハルトは藤堂に応じた後、途中で言葉を切った。
「後?なんだ?」
「前総督及び前副総督とその供の一行は今夜本国へ発つとか。その発表がなんであれ、その者達には関係ないことなのだと推測されます」
「つまり、お飾り皇女は言いっ放しのやりっ放しで逃げ切りなわけ?」
「コーネリアは手強かったから助かる、か?」
「いや、それよりも今度の総督の事のが問題じゃねぇ?てか副総督は誰だよ?」
「お前達。おれ達は彼についていく、と決めたはずだな?何故最後まで信じない?」
「彼の想いは変わっていないわ。ならやる事だって変わらないはず。わたし達を裏切ったりなんてしないわ」
藤堂の言葉にカレンもまた同意すると、携帯を扇に差し出した。
受け取る扇に、カレンは「わたしはこれからゼロの用事で出かけて来るから、後はお願いします」と言った。
「紅月、明日の朝にはアジトに戻って来ていろ」
扇よりも早く藤堂が声をかけた。
「夜の内には戻ってると思います」
カレンはそう言うと扇の手から「それはわたしのだ」と携帯を奪い取るC.C.を尻目に、出かけて行った。
「あぁ、ミレイ君かぃ?そっちの状況はどーなってるのかなー?」
『状況も何も、今朝の告知で、彼は本国へ行く事に決まっているのですから、当然転校の手続きは致しましたよ?』
「あはー。本国初めてで、ナンバーズの彼を受け入れるような学校があるとは思えないんだけども~?」
『既に職業軍人、就職しているのですし、高校は義務教育でもありませんから、そこまで心配する必要はないでしょう?』
「まーそーなんだけどねー。それで、その他の事は?」
『この学園は箱庭ですから、その辺りはおいおい。少なくとも残留出来る体制は整えていますわ』
「そっかー。なら十分だよねー?でも、知れる事になるけど、その後のフォローとか考えとかはー?」
『学園の生徒をなめないで頂きたいですわ。特に生徒会メンバーは、ね』
「あはー。期待してますよー?」
『そちらこそどうなっているんです?』
「どうって、特派?特派は第二皇子の直属部隊だからね。何も枢木スザクに同行する必要はないんだよー?当然ランスロットも返して貰うしー?」
『なるほど、了解です』
5に続く。
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作成 2008.04.30
アップ 2008.05.25
★未来(みく)様へのリクエスト作品★
(ルルーシュ=枢機卿猊下/枢機卿権限(皇帝を超える程のものと捏造)で日本を手に入れ、楽園を築く)
その日、エリア11の政庁から、ブリタニアの発表が幾つかおこなわれた。
一つ目。朝一番に発表がなされた事と言えば。
エリア11の総督、及び副総督が交代される、というものである。
第二皇女コーネリア・リ・ブリタニアと第三皇女ユーフェミア・リ・ブリタニアは、その騎士共々一旦本国へ帰る事になったと発表が有った。
「行政特区日本」の宣言をユーフェミアがして以来、大人しかった事もあり、コーネリアはゼロと騎士団をそのままに去る事になったのが気がかりだった。
ダールトンはやりかけの「行政特区日本」の先行きが案じられた。
誰に引き継ぐとか、その後どうなるのか、等が曖昧だったからである。
ギルフォードはコーネリアの行くところが自分の赴くべきところだと、割り切っているようでも有った。
枢木スザクはエリア11、日本がどうなるかわからないままに離れる事と、そして騎士団とゼロが健在である事が気に入らなかった。
ユーフェミアは「困ったわ。折角特区と言う素晴らしい案が実現しようとしていたのに‥‥」と悲しそうに瞳を伏せた。
二つ目は正午近くに発表された。
「行政特区日本」の中止である。
これには参画していたダールトン(本来はユーフェミアと言うべきだろうが)を筆頭としたブリタニア側は驚いた。
参加しようとして申請を出していたイレブン達も驚き、かつ激怒した。
参加するかどうか迷い、或いは申請して断られたイレブン達も呆れ、怒った。
中止の理由としては、「神聖ブリタニア帝国宰相、第二皇子シュナイゼル・エル・ブリタニア」の鶴の一声、としか伝わってこなかった。
そして三つ目。夕方になる前に有った発表。
新たにエリア11の総督、及び副総督になる人物の発表だったのだ。
と言っても、副総督は名前も身分も伏せられていた。
総督も名前は発表される事はなかったが、「第十一皇子」と聞けばわかる者にはわかるのだ。
まだエリア11にいたコーネリア達本国帰還組は目を見張った。
「「「「「‥‥‥‥る、ルルーシュ((殿下))が‥‥!?」」」」」
全員の口から、同時に出た名前に、それぞれ顔を見合わせる。
「ど、どうしてルルーシュが!?姉様やわたしを追い出したりなんか‥‥」
「ま、待て、ユフィ。その前に驚く事があるだろう?‥‥生きていたのか!?」
生きていた事に驚くコーネリアにダールトン、ギルフォードと、総督になった事に驚くユーフェミアとスザク。
「‥‥ユーフェミア様、それに枢木。もしや、ルルーシュ殿下の御存命を知って‥‥?」
違和感に気づいたギルフォードが、詰問口調で二人に問いかけた。
「「‥‥‥‥」」
二人は答えられずに視線を逸らせるが、その行動が肯定を表している事に、二人は気づいていないらしい。
「‥‥では、ナナリーも生きているのだな?」
コーネリアはそう言って、踵を返すと部屋を出て行こうとする。
その直前で開いた扉から入って来る者がいた。
「シュナイゼル義兄上ッ!何故、突然このような‥‥。それに『特区』まで。いえ、今の放送は真ですか?ルルーシュが生きて‥‥」
部下兼友人のロイド・アスプルンドを連れたシュナイゼルを見たコーネリアは性急に訊ねた。
「まず、最初に忠告しておくべきだね、コーネリア。今後、あの方を呼び捨てる事は許されないよ?」
落ち着いたシュナイゼルにダールトンとギルフォードは訝しげな表情を作った。
「例えルルーシュ殿下が生きていらっしゃったとしても、義姉君なのですし、皇位継承順位もコーネリア殿下の方が上なのに?」と疑問に思って当然だ。
「実はね。あの方は永らく空席だった枢機卿の地位を得てね。『猊下』か、『ルルーシュ様』とお呼びするように」
「‥‥‥‥お、お待ちください。枢機卿とエリア総督とを兼任なされるというのですか?」
驚きを無理やり抑え込み、尋ねたのはダールトンだ。
「別に出来ないわけじゃないだろう?なんと言っても、枢機卿の権限は皇帝のそれよりも上なのだから。その気になったらどうとでもなるんじゃないかな?」
「‥‥‥‥る、‥‥。お義兄様の望みはエリア11の解放なのではありませんか?」
ユーフェミアがくしゃりと顔を歪めながら訊ねる。
「その通りだよ、ユフィ。あぁ、君は知っていると聞いている。無茶な真似をしたね、ユフィ。だから本国へ戻されるのだよ?」
「だから?どういうことですか?シュナイゼル義兄様?わたくしは、」
続けようとするユフィの言葉を、シュナイゼルは遮る。
「ユフィ。そこまでにしておきなさい。ロイド。ユフィとその騎士とを別室に。君の部下なのだからそのくらいしてくれるのだろう?」
「わかりましたよ、殿下。しかしあの件はお忘れなく」
ロイドは気軽に引き受け、シュナイゼルが「判っている」と応じた時には、スザクの腕を掴み、ユーフェミアに歩くように促している。
スザクはロイドのあまりの速さについていけないまま腕を取られ、その痛みに声すら出ない状態だ。
「なッ、義兄上ッ!?ユフィをどこへ?」
「別室に案内して貰うだけだよ?コーネリア。君達とは少しばかり難しい話をしたいのでね」
シュナイゼルの言葉の語尾にパタンと扉の閉まる音が重なり、視界からユーフェミア、スザク、ロイドの姿が消えた。
「コーネリア。君と君の騎士には悪い事をしたと思っている。すまなかったね」
突然の謝罪の言葉にコーネリアも二人の騎士も驚いて固まる。
「当初の予定では、総督の交代はなかったのだけどね。少々それが難しくなってしまって、このような形を取らざるを得なくなってしまったのだよ」
「‥‥ルルーシュ‥‥猊下については?生きているなど、聞かされておりませんでしたが」
「7年前、確かに危なかったのだけどね。アッシュフォードがあの方と妹姫とを保護したのだよ。以来エリア11で隠れるように過ごさせてしまったが‥‥」
「そう言えば、あの折、シュナイゼル殿下はルルーシュ様の死亡報告を信じず、公式記録への記入をことごとく退けておられましたね」
ダールトンは当時を振り返り、「死亡したと認識されていても、ルルーシュ様は未だに第十一皇子にして皇位継承権も有している」事を思い出した。
「戻る場所を確保してあげたかったのだよ。わたしはね。それから、わたしは地位を順調に昇って行き、目的だった宰相になった」
「‥‥宰相になるのが‥‥目的?なのですか?」
「そうだよ?そうすれば、かなりの権限を持つ事が出来る。それを用いて、あの方が枢機卿になられるように裏で動いたのはわたしだからね」
「何故ですかッ!義兄上ッ!何故、わたしには何も知らせて下さらなかったのですか?今も、また本国へ戻すような真似を」
「だからすまないと言っている。このエリア11はあの方が望まれたのでね。あの方を傷つける要素は全て排斥する事にしたのだよ」
「待ってくださいッ義兄上ッ!わたしもギルフォードやダールトンも、ユフィも、ルルーシュ‥‥猊下を傷つけるなんて気はッ」
「君と君の騎士についてはそうだろうね。だから詫びている。けれど、ユフィとその騎士は‥‥。既に排斥するに十分の事をしているのだよ」
悲しそうな口調で言うシュナイゼルの瞳は、剣呑な瞳を帯びてチラと問題の二人が出て行った扉に流れた。
「‥‥‥‥。ユフィと枢木が一体何をしたと?」
「んー。あの方に聞いた話だけどね。7年前、ユフィの騎士はあの方に言ったそうだよ?『君達はおれが守る』とね」
シュナイゼルはそう言って、「7年前、日本に送られたあの方と妹姫がどこに預けられたのかは知っているだろう?」と冷やかに付け足した。
「「「‥‥‥‥」」」
「実際にはユフィの騎士になり、ユフィを守る事にしたようだけど?それを見てあの方と妹姫がどう思うかなんて二人とも気にしなかったようだね」
嘆息するシュナイゼルに、絶句している三人は言葉もない。
「そう、どちらもあの方が生きている事を知っていたのに、ね。だから、彼等は排斥する事になったのだよ」
そういってからシュナイゼルは口調を和らげて「君達にはそのとばっちりを受けさせる事になってしまったけれどね」と再び謝った。
「‥‥‥‥しかし、このエリア11は、この後どのような形を?」
「恐らく『特区』とは別の、ブリタニアの支配から離れた、日本という名前に戻るだろうね?そうして、ユフィとその騎士は入国を禁じられる事になるだろう」
「わ、我々は‥‥!?」
「コーネリア達は、ほとぼりが冷めるのを待って解禁、という事になると思うけどね。他に入国できない者は‥‥」
シュナイゼルはギルフォードの問いに答えてから、思案気に言葉を切った。
「皇帝や許可のない皇族もそうかな?まぁ、皇帝が来ようとする日は来ないのだろうけどね」
4に続く。
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作成 2008.04.28
アップ 2008.05.24
★未来(みく)様へのリクエスト作品★
(ルルーシュ=枢機卿猊下/枢機卿権限(皇帝を超える程のものと捏造)で日本を手に入れ、楽園を築く)
扇の持つ携帯にゼロからの連絡が入ったのはそれから三時間後の事だった。
扇と藤堂、ディートハルトは揃ってゼロの部屋へ向かった。
「暫く、騎士団の活動は停止する事になった」
室内に招かれた三人がソファに座るのを待って、ゼロはそう言った。
「「‥‥停止!?」」
扇とディートハルトの声が重なる。
「どういう事だ?ゼロ」
「ブリタニア側に動きがある。それが落ち着くまでは何をしても無駄で無意味で無益という結論に達した」
藤堂の問いに、ゼロはあっさりと応じる。
「動き?」
扇と藤堂はディートハルトを見て、「本当か?」と尋ねた。
しかし、情報担当のディートハルトの耳にもそんな話は届いていない。
「それはどのような‥‥?」
ディートハルトは訝しげに尋ねるが、ゼロはくすくすと笑うだけで答えない。
「さて。本題はここからだ。もしも、わたしの素性を知った時、お前達はどうする?」
「‥‥教えて頂けるのですか?素性を?」
ディートハルトは一瞬で目を輝かせて信じられないという思いで尋ねる。
「あぁ。ブリタニアが動くからな。これ以上隠せないし、いずれバレる。ならば、お前達には自ら明かした方が良いだろう?」
「待ってくれ、ゼロ。それは‥‥ブリタニアのこれからの行動が君に関わってくるという事か?」
扇はゼロの言葉に慌てる。
「わたしが日本人でない事は既に知っているだろう?」
「‥‥おれは君に助けられた。桐原公の意向もあるが、おれは自分で君に従うと決めた。今更君が誰であれ、それを覆すつもりはないな」
藤堂は息を吐くと、一気にそう告げた。
「あ、あぁ。リーダーになってくれ、と頼んだのはおれだったしな。君にはこれまでの実績もある。君が念を押すくらいだから、悩んだりはするだろうけど‥‥」
扇はそこまで言ってから、思案気な表情になって、「今は君を信じてる。だから、きっと君を信じるって事に落ち着くと思うんだ」と続けた。
「わたしは貴方が誰であろうと構いません。貴方について行くという道しか、わたしには存在しませんから」
ディートハルトは葛藤など存在しないかのように、きっぱりすっぱりと言い切った。
「やれやれ。‥‥良いだろう。今仮面を取ろう」
苦笑したゼロはそう宣言すると、仮面に手を掛け、外した。
黒髪のブリタニアの少年がそこにいて、まだ子供である事にも驚いたが、その美貌にも驚いて固まった。
「君は‥‥ルルーシュ君かッ!?」
「え!?藤堂さん、ゼロの事知っているんですか?」
名前を呼んだ藤堂に驚いた扇が藤堂に尋ね、ディートハルトはそれすら耳に入らないかのようにルルーシュに見入っている。
「えぇ。お久しぶりですね、藤堂さん。しかし、一瞬でわかるとは‥‥随分変わったと思っていたのですけど?」
「「ぜ、ゼロが‥‥敬語!?」」
「驚くところはそこなのか?扇、ディートハルト。‥‥さて、と。おれの素性がわかったところで、今一度答えて頂けますか?藤堂さん」
「従おう。‥‥君に敵対するなんておれには考えられない。また会う事が出来て嬉しく思う
「前から思っていましたがおかしな人ですよね、藤堂さんも。普通は敵対する道しか選ばないと思いますけど」
「「藤堂(さん)!!一体!?」」
苦笑しながらのゼロの言いように、扇とディートハルトは直接ゼロにではなく藤堂に詰め寄ったが、口を開いたのはゼロだった。
「今表では別の名前を使っているがな。ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。神聖ブリタニア帝国の第十一皇子にして、以前は第十七皇位継承権を持っていた」
「「ブリタニアの‥‥皇子!?」」
「そうだ。それでもわたしに従うと?」
「身分など、関係ありませんな。わたしには、今ここにいる貴方が全て!」
元々がブリタニア人のディートハルトはただ崇拝の色を強めてゼロを見返して言いきった。
「‥‥何故、君はゼロになったんだ?」
「大切な人の為。いや人達の為だったが、一人はわたしの元を離れてしまったからな。‥‥今は大切な人の為、だ」
「なら良いんだ。おれは君に従うよ」
少年の答えに扇は頷いて、微笑みながら答える。
「そうか‥‥。ありがとう。‥‥これで第一関門は突破か。幹部に知らせるとなると第二関門が待ってるなぁ‥‥」
誰も離反しなかった事に、ルルーシュは嬉しそうに礼を言ってから、今後の事を思って顔を顰めた。
「‥‥第二関門?」
「あぁ。カレンとラクシャータは『ルルーシュ』を知っていてな。カレンは表でのクラスメイトなんだ。怒るぞ、あいつは」
ルルーシュはそう言って苦笑し、「後は玉城だな。何にでも反発する奴だから、『皇族になんて従えるかッ!』とか言いそうだし」と嘆息する。
否定要素など何もなく、扇は「言いかねないな、確かに」と納得してしまった。
「それで?ブリタニア側の動きとは?それに君が関わってくるというのも気にかかる」
藤堂は、幹部達の事よりもルルーシュの今後が気になっていたので、話を続けるように促した。
「近々、エリア11の総督交代の動きがありまして。勿論、副総督もですが」
「ちょっと待て。では第三皇女の名前でおこなわれている『行政特区』はどうなる?」
予想だにしなかった回答に、藤堂は眉間の皺を深めて問いかけた。
「さて。あれは『ユーフェミア・リ・ブリタニア』の名で宣言されたものですから、後任の総督、副総督が引き継ぐ物ではありませんし」
ルルーシュは冷めた様子で「ユーフェミアが指揮を執るのではありませんか?後任の総督達の許可を取り付けるところから?」と興味すらなさげに答える。
「けど、騎士団やゼロにも名指しで参加の呼びかけが有っただろう?」
「コーネリアは実妹には甘かったからな。本来総督として副総督の勝手な宣言を許すべきではないというのに、事後承諾と言う形でゴーサインを出したが」
「そもそも、総督に許可すら求めずに宣言を発するなど、有ってはならない事でしょう?」
扇の問いかけにも、ルルーシュは動じた様子もなく答え、ディートハルトもまた冷笑を浮かべながら追従した。
「それを後任がそのまま引き継がなければならないわけではないしな。まぁ、コーネリアも今交代する事になるとは思ってもいないだろうが」
「ゼロ。‥‥いや、ルルーシュ君。その話はどこから来たものなのだ?現総督のコーネリアすら知らない情報を入手できるなど‥‥」
「出どころですか?宰相閣下と言えば分りますか?第二皇子シュナイゼル・エル・ブリタニアから、連絡が入りましたので、確かですよ」
くすりと人の悪い笑みを浮かべたルルーシュがニュースソースを尋ねた藤堂に第二皇子の名前を出した。
「お、おい。シュナイゼルと連絡を取り合ってるって言うのか?」
「取り合っているというのは語弊があるな、扇。こちらから連絡を入れた事はないし、シュナイゼルから連絡が来たのもこれが初めてだ」
ルルーシュは「人聞きの悪い事を言うな」と扇に顰め面を見せて言う。
ドキリとした扇は、思わず話題を変えてみた。
「えーっと。ゼロ。どうして藤堂さんにだけ敬語??」
「知り合いだからだ。‥‥と言う事で、騎士団でする事が終われば、わたしは暫くここを空ける。お前達はその間、団員達が暴走しないように徹底していろ」
「えーっと。ゼロ。その『と言う事で』と言うのはどこにかかるんだ?」
「‥‥『シュナイゼルから連絡が来た』と言っただろう?」
「それじゃわからないから聞いているんだが」
「時が来ればわかる。予定はあるが確定ではないからな。一応、シュナイゼルが準備万端だと言って根回しもしているはずだが‥‥」
藤堂が片手を動かして話に割り込んだ。
「一つ聞きたい。第二皇子はおれ達の敵か?味方か?」
「今のところは味方でしょうね」
「今のところ?‥‥何もなく敵になる可能性があるという事か?」
「あの義兄は何を考えているのか、わからないところがありますから。なので、ここで考えていても無意味です」
ルルーシュは肩を竦めて、まだ渋面のままの藤堂に、「それに、第二関門を突破するのが先です」と言った。
確かにある意味優先事項なので、藤堂はひとまず話を置くことにした。
ルルーシュの懸念は大当たりだった。
カレンと玉城は、ほぼ予測通りの反応を示したからだ。
しかし、それは一時の事に過ぎず、幹部達は全員一致で、ゼロの素性を知った後もゼロを受け入れたのだった。
3に続く。
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作成 2008.04.27
アップ 2008.05.23
★未来(みく)様へのリクエスト作品★
(ルルーシュ=枢機卿猊下/枢機卿権限(皇帝を超える程のものと捏造)で日本を手に入れ、楽園を築く)
珍しく生徒会メンバーが全員揃ってお茶を楽しんでいた。
ミレイが溜めに溜めた書類仕事が片付いたところでもあり、みんな少しハイになっているようだと、ルルーシュは見ていて思った。
「ルルーシュ~。今度さー」
「ダメよ、リヴァル。ルルを賭に誘っちゃあ」
「悪の道に誘っちゃいや~って?」
「もう会長、茶化さないでくださいよー」
「ミレイちゃん、からかうのは良くないよ?」
身振りも交えて騒ぐ四人に楽しそうに笑って見る三人。
日常の風景。
ふと、ルルーシュが携帯を取り出して立ち上がった。
マナーにしていた携帯に着信が有ったのだが、これも時々見られる日常。
「会長、少し外します」
言い残して、ルルーシュは足早に部屋を出て行った。
「お久しぶりですね」
『久しぶりなのは確かだけど、挨拶がそれだけなのは淋しいね』
「‥‥用件がないようでしたら切りますが?」
『本当につれないね‥‥。仕方がないから本題に入るけど、事前準備は全て整ったよ。承認も得たしね。後は君にして貰わないといけなくてね』
「‥‥‥‥。もう少し早くそのお言葉を聞きたかったですが。助かりました。一週間後から三週間程でよろしいですか?」
『わかった、根回しはしておくよ。これでも早い方だと思うのだけどね。確かにコーネリアには可哀相な事になったが』
「残念です。後で謝っておいてくださいね。‥‥では一週間後に」
ルルーシュは簡潔に締め括るとさっさと通信を切ってしまう。
しかしそれは、これからする事の多いルルーシュには仕方がない事だった。
「ミレイ会長」
生徒会室に戻るなりのルルーシュの言葉に、ミレイは素早く立ち上がって振り向いた。
ルルーシュにしか見えないミレイの顔には真剣な表情が浮かぶ。
「どしたの?ルルちゃん。まぁたお出かけ~?」
冗談めかして明るく尋ねるミレイにルルーシュはその通りだと頷いた。
「行くところが出来たので、これから準備して行ってきます」
「おいおいまたかよ~。お前ほいほい呼び出され過ぎ!電話の相手に物申しちゃうぞ、おれは」
「そうか、相手には伝えておくよ、リヴァル。だけど今の相手は電話してきたのなんて初めてだぞ」
ルルーシュが苦笑して応じると、リヴァルは驚かず悲しげに眉を下げた。
「おれってポッと出にまで負けるのかー?悲しーぜ、ルルーシュ~」
「悪いな、リヴァル。会長、では一月程よろしくお願いします」
リヴァルに一言詫びたルルーシュは、ミレイに声をかけた。
「わかったわ、ルルちゃん。ナナちゃんと他、こっちの事は任せておいて」
ミレイはサラっと応じたが、他のメンバーには捨ておけない単語に当然反応する。
「「‥‥ひとつきぃ~!?」」
一際大きな声を出したスザクはフラフラと立ち上がってルルーシュの元へと歩み寄る。
「る、るるーしゅ。一か月もどこで何を?」
「それはまだ秘密だな、スザク。その内判ると思うし。危ない事じゃないのは確かだ。スザクはこれ以上成績落とさないように頑張れよ」
聞きようによっては皮肉にも聞こえる事をルルーシュはくすくすと笑って言うと、スザクから視線を外して巡らせる。
「‥‥‥‥帰って来るんだよな?勿論」
「あぁ。用事が終われば戻ってくる。当然だろ?ここは気に入っているんだ」
不安そうに尋ねるリヴァルにルルーシュはしっかりとした頷きを返したので、リヴァルはホッとして「んじゃ、頑張れよ」と声をかけた。
「多少前後するかもしれないが、それはその都度、ミレイ会長には連絡を入れる。‥‥間に合わなくなると困るからもう行くよ」
そう言った後、ルルーシュはもう一度ミレイに「頼みます」と言ってから出て行った。
アジトにやって来たゼロは、誰かに指示をするでもなく、挨拶にも軽く頷いただけで自室に篭ってしまった。
そのいつもとは違う様子に、幹部一同は首を傾げる。
会議には出て来るだろうと気にしながらも待っていたが、時間が過ぎてもゼロは自室から出て来ないので、会議室は騒然となる。
「へッ。どうせ表で何か嫌な事でもあったんだろーぜ。おれ達に八つ当たりしてるんじゃねぇの?」
「別に当たられてないだろ?玉城。‥‥だが、報告や次の作戦について、ゼロがいないと話が進まないな」
玉城の的外れな言葉を一蹴しておいて、扇は途方にくれる。
カチャっと扉が開く音に、幹部達の視線が扉に集まるが、入って来たのはゼロではなく、C.C.だった。
「会議は中止だ。今あいつは手が離せなくてな」
「‥‥手が離せない‥‥とは、一体ゼロは何をしている?」
藤堂が代表して尋ねる。
「ん?さぁ。わたしは知らない。強いて言うならば準備、か?‥‥たぶんそんなところだと思うが‥‥」
C.C.の答えは曖昧で、幹部達は首を傾げざるを得ない。
「あぁ、そう言えば。‥‥扇と藤堂。それにディートハルト。してもらいたい事があるとか言っていたから、後で部屋に行け」
「後で?今でなくても良いのか?」
「今は‥‥入れないぞ?わたしも居られなくなったから出て来たのだし‥‥」
「準備とは‥‥なんの準備だ?」
「知らんと言っただろう?あいつは言わないし、わたしも聞かないからな。とにかく、会議の中止と三人への伝言。確かに伝えたからな」
堂の問いに答えにならない返答を返すと、C.C.はさっさと会議室を出て行った。
「あー‥‥とにかく。今は解散、だな。後でおれ達がゼロに話を聞いて来るから、それまでは今まで通りで頼む」
扇がそう締めくくると、会議は中断と言う形で終わった。
2に続く。
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作成 2008.04.27
アップ 2008.05.22
★砂伊様へのリクエスト作品★
(ルルーシュ皇子時代、ロイドさんと楽しくシュナイゼル兄さまで遊んだ話)
ルルーシュの部屋に戻ると、ルルーシュとロイドがシュナイゼルを振り向いた。
ロイドは驚いた様子だったが、ルルーシュは平然としていて予測していたのだと知れる。
「母上を味方につけたようですね、義兄上」
ルルーシュがそう言って挨拶をする。
「‥‥‥‥って、誘惑!?殿下、マリアンヌ様だけはおよしになられた方が宜しいですよー」
ロイドは目を見開いて驚き、忠告する。
「挨拶をしただけだ。おかしな邪推はやめたまえ、ロイド。ルルーシュが本気にしたらどうする?」
シュナイゼルはほんの少し眉間に皺を寄せてロイドを睨み据えて言う。
「‥‥‥‥その時は『義兄上』ではなく、『義父上』と呼びましょうか?」
ルルーシュもやっぱり渋面を作ってそう言うと小首を傾げた。
「あらー。距離が遠くなりますね~、殿下ー」
「ルルーシュ。そんな事にはならないから、今まで通り『兄上』と呼んでおくれ」
シュナイゼルはロイドの言葉を無視してルルーシュに優しく訴える。
すると今度はロイドがシュナイゼルを無視してルルーシュに話しかけるのだ。
「あぁ、そういえば、ルルーシュ様」
「どうした?ロイド」
「先程は途中になってしまいましたけどー、答えてくださるのですよねー?」
ロイドはそう応えてルルーシュを抱き上げた。
「なッ!ロイドッ!ルルーシュを即刻降ろしたまえ!そのようなうら‥‥おこないは皇族に対して無礼だろう!」
シュナイゼルが慌てて友人の行動を諫め、抗議する。
途中に混じった本音に、ロイドは笑い、ルルーシュは気づかない。
「義兄上、このくらいは構いませんから。義兄上の友人なのでしょう?喧嘩は良くありませんよ」
「ほーら殿下。ルルーシュ様は良いって仰られてるじゃないですかー」
にこにこと優越感に浸るロイドはシュナイゼルに対して得意満面に言う。
「ルルーシュ。以前から思っていたが、君はロイドに少々甘くし過ぎてないかぃ?」
「そうですか?‥‥それでロイド、先程の話とは何の事だ?」
「ですからー、ぼくの事、好きですかー?」
これまたにこにこと笑うロイドに「まだ言っているのか‥‥」とルルーシュは呆れる。
しかしシュナイゼルの心は穏やかではいられなかった。
ふるふると握った拳を震わせるシュナイゼルにロイドは気づくがルルーシュは気付いていない。
「ロイド・アスプルンド。今すぐ、ルルーシュを降ろしたまえ」
シュナイゼルの低い声音にロイドは「少し遊びが過ぎたか‥‥」と思って今度は素直に指示に従ってルルーシュを降ろした。
「あぁ、ロイド。義兄上がスッ飛ばした場所に置いて来たメモを回収して来てくれないか?」
「あぁそうですね、わかりました。すぐ戻りますから」
ロイドはルルーシュにそう答えると部屋を出て行った。
「ルルーシュ。‥‥ロイドに告白されたのかぃ?」
シュナイゼルの突然の言葉に、ルルーシュはきょとんと首を傾げる。
「告白‥‥ですか?」
「今、ロイドが『ぼくの事、好きですか』と聞いていただろう」
「ロイドの事は好きですよ?義兄上もだからロイドと友人をしているのでしょう?」
重ねて問うシュナイゼルに、ルルーシュはあっさりと答える。
本人にでなければ、さらっと言えるルルーシュは気負ったところは全くない。
「ならわたしは?ルルーシュ。わたしの事は好きかぃ?わたしは君の事がとても好きなんだが」
シュナイゼルの突然の告白に、ルルーシュはしかし「またか‥‥」と思う。
今日は何かと本人から「好きか?」と尋ねられ、ルルーシュは「何の日だろう?」と首を傾げてしまう。
そこへ脱兎の勢いでロイドが駆け戻って来る。
「ただ今戻りました、ルルーシュ様!」
汗一つ流さず、呼吸も乱していないロイドに、メモを置いた残りの場所を思い浮かべたルルーシュはあまりの速さに呆れた。
「そんなに急がなくても良かったのに。誰かにぶつかったりしてないだろうな?」
「勿論ですとも、ルルーシュ様。それにルルーシュ様に早く再会したかったものですから」
やっぱりにこにことロイドは応じる。
「‥‥ルルーシュ。わたしの事、好きかい?」
再び尋ねる忘れられた感を覚えたシュナイゼルに、ロイドはルルーシュの解答を知っていてにやりと笑う。
「‥‥それは秘密ですよ?シュナイゼル義兄上」
「そうそう、それは秘密ですよ?殿下」
ルルーシュとロイドはそう言って顔を見合わせると、くすくすと笑った。
憮然としたシュナイゼルと、にこにこ顔のロイドがルルーシュの部屋から去ったのはそれから暫く後の事。
シュナイゼルの部屋に辿り着いた二人は、立場を入れ替えてシュナイゼルの怒りの嵐をロイドは甘んじて受けていたとか。
了
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作成 2008.05.10
アップ 2008.05.20
★砂伊様へのリクエスト作品★
(ルルーシュ皇子時代、ロイドさんと楽しくシュナイゼル兄さまで遊んだ話)
職務の合間にふと顔をあげたシュナイゼルは、ロイドの姿が視界から消えているのに気付いた。
ロイドは腐れ縁としか言いようのない、切りたいのに切れない友人である。
人が増える時には敏感なのに、減る事には少し鈍くなる自覚のあるシュナイゼルは、あの友人に気を許しているようで少し眉を寄せた。
それから、ロイドの座っていた椅子に二つ折りにした紙を見つけたシュナイゼルは、立ち上がって椅子に近づいた。
『殿下へ。お忙しいようでしたから、ルルーシュ様のところへ行ってますねー♪ロイドより』
手にした紙に書かれたその文面にシュナイゼルは思わずその置手紙を握り潰してしまった。
シュナイゼルは逡巡をほんの一瞬で終了させると、ベルを鳴らして部下を招く。
「処理した書類は持っていくように」
簡潔に指示を出し、部下が敬礼してお決まりのセリフを言うのを聞くと、シュナイゼルはそのまま部屋を足早に出てアリエスの離宮へと向かった。
「で~んか」
呼ばれたルルーシュは読書中の本から顔を上げて一人で近づいてくる人影に気付く。
「ロイドか。今日も一人なのか?」
「そーですよぉ。流石に第二皇子ともなると色々とお忙しいらしくってー」
にこにこと笑うロイドにルルーシュは溜息を吐いた。
「後で睨まれるのはお前だろう?ロイド」
「えぇ、そうですねー。でもルルーシュ様には怒ったりなさらないのですから、いーじゃありませんか」
「‥‥どうしてだろうね。ぼくもロイドと一緒にやってるのに」
不思議そうに首を傾げるルルーシュに、ロイドは笑う。
「あー‥‥。えーと、ですねー。それは秘密ですよ?ルルーシュ様。流石にそれをぼくから言ってしまっては怒られるだけではすまなくなるのでー」
少し困ったように言葉を濁したロイドに、ルルーシュは「そうか」と頷いた。
「ロイドは今日は一緒にやらない、というわけだな?帰るのはあっちだ。あっち」
指でビシッと出口を指してルルーシュはロイドに促してみた。
「すみません、ルルーシュ様。教えますから、追い出さないでください、お願いですから」
少しばかり慌ててロイドはルルーシュに謝り倒す。
「それで?」
腕を下ろしたルルーシュはロイドに先を促した。
「つまりですね。シュナイゼル殿下はルルーシュ様の事がとても好きなので、『怒ったりして嫌われたらどうしよう』って思って怒れないんです」
ロイドの答えにルルーシュは首を傾げた。
「ぼくも義兄様は好きだぞ?少し怒られたくらいで嫌いになったりなんてしないのに?」
「ルルーシュ様、ぼくは?ぼくの事も好きですかー?」
好きと言って貰ったシュナイゼルに嫉妬したロイドは、キラキラと期待に瞳を輝かせ、「言って言って」とおねだりモードに突入している。
「‥‥‥質問に答えてないぞ、ロイド」
ルルーシュは「今は義兄様の事を話していたはずなのに?」と不思議に思いながらも知りたい事を教えないロイドに拗ねてみる。
「ルルーシュ様が質問に答えてくださったら答えますから。ぼくの事も好きですかー?」
「嫌いなら無視してる。ここにも入れさせない。特にロイドなら義兄様に頼んで出入禁止にして頂くくらい出来るからな」
本人を前にして「好き」と言える相手は母と実妹の二人だけなルルーシュは、遠回しに言ってみる。
「好きですかー?」
しかし、ロイドは「好き」というまで諦めないのか、同じ問いを繰り返すのだ。
「‥‥‥‥。嫌いじゃない」
「好きですかー?」
「‥‥‥。あのな、ロイド。良いのか?多分義兄様はもうすぐ来るぞ?」
チラと時計を見たルルーシュはそう話題を変えてみた。
「あぁ、いけない、いけない。では今日はどちらへ参りますか?」
「まずは母様に挨拶だ」
「あぁ、『御子息をぼくにください』って?」
「殺されたいのなら止めないぞ、ロイド。墓はどんなのが良い?まずはカタログを取り寄せようか」
「普通墓ではなく、墓に備える花を尋ねませんか?」
「花はすぐに枯れるからな。石の墓も割れたりすると困るか?いっそナイトメアの装甲で墓を作るというのはどうだ?」
「すみません、ルルーシュ様。余計な事は言わずに普通に挨拶しますから」
「そうか。なら行くぞ、ロイド」
ルルーシュはにっこりと笑うとロイドを従えて部屋を出て行った。
ルルーシュの部屋に辿りついたシュナイゼルは、扉が少し開いているのを良い事に、勝手に入り込む。
しかし、思ったとおり中は無人で、テーブルの上にはロイドが残したのと同じ置手紙。
『義兄上へ。少し待ちましたが来られないようなので母上のところへ挨拶に向かいます。ルルーシュ』
シュナイゼルはそっと折り畳んで懐にしまうと、小さく息を吐いた。
「またこのパターンかぃ?ロイドも、本当に懲りないな。ルルーシュをあちこち引っ張り回すなんて‥‥」
ロイドへの怒りを募らせながら、ルルーシュを探す為に、シュナイゼルはマリアンヌの元へと向かった。
「あら。これは、シュナイゼル殿下。いらっしゃいませ。本日は‥‥?」
シュナイゼルが声をかける前にやって来たシュナイゼルに気付いたマリアンヌがにっこりと微笑み挨拶を述べる。
シュナイゼルは畏まって礼をとった。
「挨拶が遅れまして申し訳ありません、マリアンヌ皇妃様。ルルーシュのところにロイドがお邪魔をしていると言うので引き取りに参ったのですが‥‥」
「まぁ。あの子にも困ったものですわね。これを預かっているのですよ。『これから向かう先を書いていますから、義兄上が来られたら渡してください』って」
「困ったもの」と言いながら伝言を頼まれ、楽しそうにシュナイゼルに告げるマリアンヌも十分「困ったもの」である、流石親子と言うべきだろう。
シュナイゼルは差し出された手紙を黙って受け取った。
「ですが、ルルーシュの部屋に行ってみると宜しいですわ。恐らく今からならば丁度戻る頃でしょうから」
と、有力な情報を提供されてシュナイゼルは喜んだ。
「ありがとうございます、マリアンヌ皇妃様。では、失礼いたします」
シュナイゼルは再び礼をとって暇の挨拶をすると、その場を立ち去った。
後編に続く。
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作成 2008.04.30
アップ 2008.05.19
★臣近様へのリクエスト作品★
(ダールル←スザク/仲良しグラストンナイツ(ナナリー)/ネリ+ギルばれ)
ルルーシュは公園で渋面を作ってダールトンを見返していた。
「遅くなってしまって申し訳ございません」
ダールトンはルルーシュの渋面の理由が他に思い当たらず、一番にそう謝罪の言葉を紡いで頭を下げた。
「違う。そんな事で怒っているわけではない。‥‥後ろの奴等は一体何だ?」
ルルーシュはとことん低い声で傍にいるダールトンにだけ聞こえるように言った。
ダールトンはハッとして後ろを振り返る。
遅れ気味で、急ぐ事を優先してしまったダールトンは尾行されている事に気付かなかったのだと判って己の失態を悔いた。
と同時に、そこにいたメンツに驚く。
主であるコーネリアにその騎士ギルフォード、そしてグラストンナイツ全員の姿が確認されたからだ。
しかも自分はルルーシュに頭を下げていて、それを見られたとすれば、無関係などと言い訳する事も出来ないだろうとダールトンは諦める。
「‥‥も、申し訳ござりませぬ」
ダールトンは尾行者一行に視線を止めたまま、ルルーシュに向けて再び謝罪の言葉を紡いでいた。
「仕方がない。騒がれてしまってはそれこそ困るから事情を説明するか。‥‥簡単な説明をした後入口まで連れて来い。先に行ってる」
「承知いたしました」
ルルーシュが背を向けると、ダールトンはコーネリア達に向かって歩き出した。
「‥‥姫様。何故このような場所に‥‥?」
ダールトンは自分をつけて来たと判っていながら、そう尋ねた。
コーネリアの横にギルフォードが立ち、二人の後ろに、グラストンナイツが並んでいる。
「グラストンナイツ達に、お前が行方を消す時間がある、と聞いたのでな。後をつけた」
コーネリアは悪びれずに言い切り、ダールトンはグラストンナイツに視線を向けた。
「「「「「も、申し訳ございません、ダールトン将軍」」」」」
小声での合唱が、ダールトンの耳に届く。
「休みを取って頂かなければ、と思ったのです」
「作業時間が少なくなっているのに、仕事が遅れないとなれば過労なのは明白」
「そう報告すれば休みを頂けるのではないかと愚考いたしました」
「結果、このような事になってしまいましたが‥‥」
「申し訳ございませんでした、将軍」
グラストンナイツがそれぞれ事情やら謝罪やらを口にしていた。
「‥‥つまりお前達は、ダールトン将軍がどこで何をしていたか、知っていた、という事か?」
ギルフォードがグラストンナイツを振り返ってそう尋ねる。
「「「「「はッ、その通りで有ります」」」」」
5人はビシッと敬礼して肯定した。
「ダールトン。今のはルルーシュだったな?生きていた事は嬉しい。何故報告しなかった?何故お前が一緒にいたのだ?」
考え込んでいたコーネリアがダールトンにそう尋ねる。
「最近偶然再会致しました。口止めをされておりましたので。報告は出来ませんでした」
「あッ!そう言えば、行ってしまわれたのは宜しかったのですか?」
もしも今日の二人の時間があれだけだと姫様に知られれば、大変な事になると、グラストンナイツ達は思い至って蒼白になる。
「いや。簡単に説明した後、合流する事になっている。‥‥騒がれるのを厭っておられるので」
「即刻!連れて行け、ダールトン!」
コーネリアがダールトンの言葉に喰いつきそう命じた。
「ルルーシュ‥‥」
コーネリアはこの地で亡くなったと聞かされていた義弟を前にして感極まって言葉が続かないでいた。
「コーネリア義姉上。ご無沙汰いたしておりました。お久しぶりですね」
ルルーシュは苦笑した後、そう言って頭を下げる。
「生きていたのならば、何故連絡してこなかった?わたしならば、お前達を守るために動いたというのにッ。‥‥ナナリーも無事なのだろうな?」
「勿論元気ですよ。‥‥おれは廃嫡され見捨てられた身。皇族と連絡を取れば、皇帝から受ける扱いはわかっていましたからね」
ルルーシュの言い分がわかる一同は押し黙る。
良くて「外交の道具」か、「飼い殺し」や「幽閉」、悪ければ「死」が待っているだろう事が予測されるからだ。
「しかしどうやって‥‥」
「アッシュフォードに匿って貰いました。今も素性を隠し学園で学生生活を送っておりますよ」
ルルーシュの言葉に、コーネリアとギルフォードは同時に顔色を変えた。
「ッ‥‥すまないッ!知らぬ事とは言え、ユフィのせいで安全だったはずの隠れ家を壊してしまったのではないか!?」
コーネリアの謝罪の言葉に、しかしルルーシュは笑みを見せる。
「コーネリア義姉上はすぐにその事に気付かれる。‥‥ユフィとその騎士にはわからなかったようですが」
見せたばかりの笑みが引っ込みルルーシュの表情に憂いを見つけた一同は慌てる。
「ルルーシュ様。‥‥本日はナナリー様もお待ちに?」
ダールトンがルルーシュの肩に手を乗せてそっと声を掛ける。
「あ、あぁ。そうだった。ナナリーがきっと首を長くして待ってるな。‥‥義姉上とギルフォード卿、それにグラストンナイツも同行するだろう?」
「「「「「イエス、マイロード」」」」」
これが初めてではないグラストンナイツは慣れたもので揃って即答し、コーネリアとギルフォードはそれにつられるように頷いた。
それを受けたルルーシュは先頭に立って学園までの地下道を案内し始めた。
(おい、ギルフォード。ダールトンとルルーシュの距離がおかしくないか?)
(おかしいですね。あれはある程度以上親しくなければ不敬罪と言われても仕方がないと思うのですが)
最後尾をついて行きながら、コーネリアとギルフォードがヒソヒソと囁き合う。
一行がクラブハウスにたどり着き、居合わせているスザクをルルーシュのいないところでネチネチといたぶる未来は、まだナナリーしか知らなかった。
了
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作成 2008.05.10
アップ 2008.05.17
★臣近様へのリクエスト作品★
(ダールル←スザク/仲良しグラストンナイツ(ナナリー)/ネリ+ギルばれ)
その情報をコーネリアに伝えたのは、グラストンナイツだった。
‥‥どちらかといえば、泣き付いて来たと言うのが正しいかも知れないが。
「将軍が日に数時間、行方をくらましますッ!」
グラストンナイツの一人、クラウディオの、それが開口一番の台詞だったが、問題にしたいのはそれではないのは表情を見ればわかる。
彼等の表情には、非難の色は欠片もなく、むしろ心配して不安になっているらしい。
「‥‥それで?」
コーネリアはただ続きを促す。
「仕事を全く滞らせません!」
「このままではいくら将軍でも身体を壊しかねません!」
アルフレッドとバートが立て続けに訴える。
つまり仕事をしない時間が数時間あるのに仕事量が変わらないダールトンを案じているのだ。
「‥‥お前達の事だから心配して後をつけたのではないのか?ダールトンはどこに行っている?」
コーネリアがグラストンナイツを見渡して尋ねる。
「申し訳ありません。いつも撒かれてしまって‥‥」
エドガーが悄然と項垂れて応じた。
「そうか。‥‥ならば、次回ダールトンが単独行動に出る前に準備を整えておけ。追跡するぞ」
「‥‥って姫様。ダールトン将軍に尋ねた方が早いのではありませんか?」
コーネリアの言葉に驚いたギルフォードが思わず尋ねてしまっていた。
「尋ねて話す事ならば、ダールトンはとうにわたしに報告しているだろう。それがないのだから、尋ねても答えまい」
「‥‥ぇ‥‥っと。あの。休ませる方向には行かないのでしょうか?」
戸惑った様子でデヴィッドがそっと尋ねる。
「どこで何をしているのかを知る方が先だ。それがわかった後、検討する。‥‥良いな?」
「「「「「イエス、ユア・ハイネス」」」」」
グラストンナイツ達は一斉に敬礼しながら、心の中で失敗を嘆いていた。
『あら、失敗したのですか?』
「ッ‥‥申し訳ありません、姫様」
『そんなに恐縮しなくても、こんな事で怒ったりなんてしませんわ。では参加するのはお二人ですのね?』
「はい」
『お兄様を悲しませるような事があれば、例え貴方達やその上官の方でも』
「わかっております!その事は。そのような事には絶対にならないように全力を挙げて対処いたしますので」
『そう、よかったわ。でしたら後でお茶でもご一緒しましょう、と皆さんにも伝えてくださいね?』
「承知いたしました、姫様」
接続の切れた通信機を片手に、バートが片手を胸に当てて鼓動を抑えるのに必死になっている。
「‥‥‥ギリギリ合格?なんとか失礼に当たらない対応が取れていたな」
傍で聞いていたアルフレッドがそう評価を下す。
「え、ええ。途中でつっかえたりしたらどうしようかと」
そう言ってから、バートは手にした通信機を大事そうに一度胸で抱きしめてから次の当番のクラウディオへと差し出した。
「‥‥ダールトン将軍。‥‥少々お話があるのですが、お時間を頂いても宜しいでしょうか?」
とダールトンに声を掛けてきたのは息子同然に思っているグラストンナイツの一人エドガーだった為、ダールトンは頷いた。
「どうした?」
「あの‥‥。少しお疲れのご様子ですし。休まれた方が宜しいのでは、と」
「大丈夫だ。わたしは頑丈だけが取り柄だからな」
「そんなッ!ダールトン将軍は素晴らしいものをたくさんお持ちです。だけ‥‥等と仰らないでください!」
「あぁ、すまないな、エドガー。別に卑下したわけではなかったのだが」
苦笑したダールトンはエドガーに詫びる。
「い、いえ。わたしの方こそ、強く言い過ぎてしまいました。‥‥ですがあの、本当に休まれた方が‥‥」
「平気だ。‥‥それに、今日も約束をしている。そろそろ出なければならないからそれまでにしておきたい作業もある」
「ですが‥‥。万が一にでもダールトン将軍が倒れられたりしたら、あのお方も悲しまれてしまいます」
そんな事になったら、姫様がどんな行動に出るのかが分かっている身としては止めたいところであるし、あのお方が悲しむ姿も見たくはない。
しかし結局、エドガーはこの時、ダールトンの説得に失敗しただけでなく、当初の目的であった、コーネリアとギルフォードについての報告をもし忘れたのだった。
ダールトンは既に日課になったかのようなお忍びに出掛け、姿を消した。
唯違った事は、前後してコーネリアとギルフォードも政庁から姿を消した事である。
スザクはルルーシュを訪ねてクラブハウスに足を運んでいた。
出迎えた咲世子は一瞬眉を顰めたものの、何も言わずにスザクを通す。
「いらっしゃい、スザクさん。今日はどうなさったのですか?」
やって来たスザクにナナリーがにっこり笑って挨拶をする。
「やあ、ナナリー。ルルーシュに会いに来たんだけど‥‥いるかな?」
スザクもまたにこにこと微笑んでナナリーに挨拶をしていた。
「お兄様にですか?お出かけになっていますわ。‥‥わたしに会いに来て下さったのではないのですね‥‥」
ナナリーはそう言って憂い顔になった。
「勿論、ナナリーにも会いたかったよ。ルルーシュ、遅くなるの?戻るまで一緒にいようか?」
慌ててスザクが言い繕うと、ナナリーは再び笑顔を見せた。
「宜しいのですか?お兄様は買い物に出ると仰って‥‥すぐに戻るとは思うのですけど」
にこにことナナリーが応じると、咲世子が二人の為にお茶を持って入って来た。
後編に続く。
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作成 2008.05.05
アップ 2008.05.16
★hidori様へのリクエスト作品★
(朝ゼロの騎士団日常話 or 周囲からから見た朝ゼロまたはゼロ(ルル)の話)
朝比奈はどう言おうか、どこまで言おうか考えていたが、結局は報告はなされなかった。
「ゼロがあれ程嫌がっているのならば‥‥」そう言ったのは仙波で、みんながそれに頷いたからだ。
普段ならば反対するだろう玉城もまた熱心に頷いていたので反対者は出なかったのだ。
朝比奈はそれに、ホッと息を吐いた。
「最近態度が違うくない?」
「あぁ、朝比奈だろ?」
「朝比奈もそうだけど、ゼロもだよ」
「‥‥やっぱり気になるよな。玉城の奴、一体何の場面を目撃したんだ?」
玉城の目撃騒動から数日、幹部達の間で、そんなやりとりが交わされるようになった。
朝比奈がゼロに対して些細な要求をする場面を何度か見かけ、朝比奈が駄々を捏ねている場面を見かけ。
ゼロはそのことごとくを一言の下に退けているのだが、その口調が何故か優しいと気付いてしまい戸惑っているのだ。
「えぇ~~ッ!」
格納庫に響くような声に、その場にいた者が視線を向けると、ゼロの前に立った朝比奈が声をあげている姿が目に入る。
「何か文句があるのか?」
「とーぜんじゃないですかッ」
呆れた口調で訊ねるゼロに、朝比奈は当たり前だと声を張り上げる。
ゼロは溜息を吐いて言葉を綴る。
「とにかく、わたしは認めない」
「ゼロ~。頼みますって」
「朝比奈。自分がどれ程の声をあげているか、気付いているか?わたしに何も言う気がない事はちゃんと覚えているだろうな?」
「‥‥お願いしますって」
ゼロの言葉に、一瞬周囲に視線を走らせた朝比奈は小声になったもののそれだけで会話を続ける。
「‥‥朝比奈。お前、一体幾つだ?少しはそれを直そうとは考えないか?」
「えー。でもこれもおれですしー?ゼロは嫌ですか?」
「時々な。とにかく、今は忙しい。その話の続きは後だ」
「わっかりましたー。じゃあ後でね~」
朝比奈がぶんぶんと手を振りながら去って行くゼロを見送った。
「朝比奈、お前‥‥」
一人になった朝比奈に、千葉が声を掛けると、朝比奈は千葉を振り返る。
「なんですか?千葉さん」
「最近、ゼロに対する態度が変わってないか?」
千葉の言葉にそれとなく様子を窺っていた周囲の幹部達が「うんうん」と頷いている。
「そうですか?」
朝比奈は自覚がないのかハテナマークを浮かべて首を傾げているようである。
「ゼロは色々と忙しい身だ。あまり煩わせるな」
「別に煩わせてなんていませんて、千葉さん」
「自覚がないのか、貴様は」
「えー。ゼロって本当に迷惑だって思ってるなら、無言で無視して立ち去ってると思いますけどー。呼びとめて玉城とか酷い目に遭ってるけど」
朝比奈の反論に、「そう言えばそうかも」なんて思い当たった周囲の幹部達は頷いてから、「ならなんで?」と首を傾げた。
「それで?『今は忙しい』と言われていただろう?」
「えっとぉ、確かにそーなんですけどね、千葉さん。あれも一種のコミュニケーションというかぁ。ほら、ゼロちょっとギスギスしてたでしょ?」
「それはお前に対してじゃないのか?」
「違いますって。普段はそうそう声掛けないんですけどねー。これからまだ色々仕事残ってるのにあれじゃ参るかなぁって思って」
さらっと言ってのける朝比奈に、「ギスギスしてるらしいゼロとコミュニケーション!?」と驚く一同。
「てぇことはぁ。あんた、もしかしてゼロと付き合ってるなんて言わないでしょぉねぇ?」
ラクシャータがいつもののんびりした口調で尋ねると、玉城が「ぶはっ」と噴いてついで噎せてごほごほと咳き込んでいる。
「‥‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥あぁあ。玉城怒られるのは一人で怒られなよぉ」
無言で、しかしラクシャータの言葉が真実だと確信してしまった幹部一同に、朝比奈は天を仰いで嘆息しながら、元凶の玉城に愚痴を言った。
その話を朝比奈から聞いたゼロことルルーシュは、「やはり玉城にギアスを掛けておくべきだったか?」と少し後悔した後、開き直る事にした。
以来、他の団員とは違う態度で朝比奈に接するゼロを、幹部達は良く目にするようになった。
「ゼ~ロ。怒ってます?」
「当然だな、朝比奈。貴様が認める発言をせずに否定していれば、玉城が幾ら噎せようが誤魔化せたかも知れないのだろう?」
「うわぁ、とばっちりだー。今更だし、これからは幹部公認なんですから、前向きに考えませんか?ゼロ。好きですよ?」
「‥‥‥‥お前は前向きすぎだッ」
足早になって去って行くゼロを、「あ、待ってくださいって、ゼロー」と朝比奈が追いかけて行った。
「なぁ、おれら、これからずっとあのバカップル見続けないといけないのか?」
「玉城にそれ言う資格ないと思うわよ。あんたがあそこで噴いて噎せたりしなければッ!」
「んな無茶言うなよな、カレン。第一おれがあの時見たのはだな」
「‥‥何よ?」
「あ、今更言うんだ?玉城」
「げ、朝比奈!?なんで?さっきゼロと出てったんじゃ‥‥?」
「うんそうだけど、忘れものしちゃって。言っとくけど玉城。ゼロの怒りが収まるまで不用意な事言わない方が身のためだから。じゃーねぇ」
忘れものらしい書類を手に朝比奈が去って行くのを見届けてから、カレンはポツリと呟いた。
「‥‥朝比奈さんて、最近ゼロへの態度が違うと思ってたけど、玉城に対しての態度も違うくない?」
了
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作成 2008.05.05
アップ 2008.05.13