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コードギアスの二次創作サイト。 ルルーシュ(ゼロ)至上主義です。 管理人は闇月夜 零です。
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ギ ア スの小説を書いています。
ゼロ(ルル)至上主義です。
騎士団多め。
表現力がなく×ではなく+どまり多数。
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★hidori様へのリクエスト作品★
(朝ゼロの騎士団日常話 or 周囲からから見た朝ゼロまたはゼロ(ルル)の話)

それを目撃したのが、別の者ならば未だに知る者は少なかっただろう。
だが、目撃したのは玉城で、仰天した玉城はその場ですぐには動けず、当事者達が立ち去った後我に返り、幹部達が集まる場所へと駆けて行ったのだ。
当事者達は別の場所に行ったのか、そのラウンジにはおらず、まぁいないのは二人だけと言う、お誂え向きなメンツに向かって玉城は叫んだ。
「ゼロがッ!」
ガタガタと何人かが玉城の慌てぶりに立ち上がって振り返り、「どうしたッ!?」と尋ねかける。
「いや、朝比奈がッ!」
その名前に藤堂と四聖剣が渋面を作って思う事は「今度は一体何をやったんだ、あいつは」である。
「ちょ‥‥少しは落ち着きなさいよ。玉城。何が言いたいのかさっぱりわからないじゃないの!‥‥で、問題なのはゼロなの?朝比奈さんなの?」
「どっちもだよ。さっき、あっちで!」
「あっちで何かなー?その続きはー?」
玉城の裏返り気味の声に被さるように、朝比奈の声が聞こえて玉城は慌てて振り返って「朝比奈ッ!」と叫んで後退る。
「‥‥朝比奈。何が有ったんだ?」
藤堂が尋ねる。
「えーっと。報告必要ですかー?藤堂さん」
朝比奈は藤堂の問いに、「どうしようかなぁ」と思案の様子を見せ、四聖剣の三人は「珍しいな‥‥」と呟いた。
「おれとしてはー。報告するのは別に良いんですけどー。ゼロがいないところで言うと、後で怒られそうなんでー。玉城怒られてみる?」
朝比奈が玉城に尋ねると、玉城はぶんぶんと首を振った。
「い、言わねぇ」
「‥‥で、ゼロはどこにいる?」
「‥‥‥えっと?さっきピザ屋の請求書を悲しそうに見てたから、自室でC.C.と喧嘩してるんじゃないかなー?」
藤堂の問いに、朝比奈は「わたしは自室に戻ってC.C.に意見してから行く。先に行っていろ」と言うゼロの言葉を思い出しながらそう言った。
「千葉。ゼロに来てもらえ。ゼロがいなければ言えないのならばゼロに来てもらうしかないだろう」
「承知」
藤堂の指示に、千葉はあっさりと頷くとゼロの部屋へと向かっていった。
「‥‥って藤堂さん!?報告必須?なんですか?」
「みんなが気にしている。このままでは気になって仕事が手につかない恐れがありそうだ。特にディートハルトや紅月が」
言われて朝比奈がそちらを向くと、ギンギンと突き刺さってくる視線が痛い事に気付いた。
「あちゃー。どうするのさ、玉城。大袈裟に騒ぐからこんな事に‥‥」
「ぅ、うっせー。あんなところであんな事をしてる方が悪いんだろうが」
と玉城は再び気になる言い方をしてのけ、朝比奈は「これはダメだ」と諦めた。


少しして、ゼロと千葉がやってきた。
「すまないな、ゼロ」
藤堂がゼロに詫びる。
「いや。それで、話とはなんだ?」
「‥‥あー、ゼロ。とりあえず、座った方が良いと思うよ。おれは」
朝比奈がゼロにそう進言すると、即座にゼロの定位置までの道が出来る。
「‥‥お前がそんな事を言う時は、ろくな事にならないからな。‥‥このまま引き返すという選択肢はないのか?」
「う~ん、多分ないと思う~」
ゼロが敵前逃亡並みの提案をしてみるが、朝比奈があっさりそれを退けたので、ゼロは溜息を吐いて定位置に向かって行って腰を下ろした。
朝比奈が当然のようにゼロの後に続いてゼロの隣に座る。(ちなみに逆側は藤堂だ)
「それで?」
ゼロは藤堂に尋ねる。
「玉城が何かを見たらしく、先程慌てて駆け込んできた。それには君と朝比奈の名前が挙がって、詳しい事を聞こうと思ったんだが」
「玉城が話す前におれが来ちゃって。そしたら今度は藤堂さんに何が有ったのか聞かれてー。で、ゼロがいないのに言ったら怒られるからって答えたところー」
藤堂の説明の後を朝比奈が引き継いで説明した。
ギギギとゼロの仮面が、藤堂から玉城へと移る。
「‥‥つまり、あれか?‥‥あれを見た‥‥と?」
そう言うゼロに、玉城は「ゼロが来てても十分怖ぇじゃねぇか」とびびりながらもこくこくと頷いた。
「見たのに、その場では何も言わずに、いない場所で言いふらそうとしたわけだな?」
「ご、誤解だそれはッ!驚きすぎて固まってただけだッ。気付いたらお前等いなくなってるしッ!」
「だからって本人いないところで話そうとしていたんだから、言いふらそうとってのは事実なんじゃない?」
言い訳をする玉城に朝比奈がツッコミを入れる。
「‥‥それで、朝比奈。ゼロがいるところでなら報告するのだろう?」
「藤堂。玉城が見たのは‥‥活動外だ。報告の必要は認められない」
藤堂が朝比奈に向かって再度尋ねた言葉に、朝比奈が「えっと」と考えていると、ゼロが割って入った。
「‥‥だが、ゼロ。玉城の驚きようは只事ではない。このままではみな気になって作業に支障を来す恐れがある」
「‥‥‥‥。藤堂、お前もか?」
「そうだな」
あっさりと頷く藤堂に、ゼロは溜息を吐いた。
「‥‥後悔しても知らないぞ。それで良いなら玉城か朝比奈に聞け。わたしは何も言わない」
そう言うと、ゼロは立ち上がる。
「えー。ゼロ行くんですか?てかどこまで話して良いか、いまいちわからないんですけどー」
「朝比奈、後で報告に来い。わたしはまだC.C.に苦情を言い足りないんだ」
ゼロは朝比奈の問いにも答えずに、そう言うと避ける団員の前を通り過ぎて自室に戻って行った。

後編に続く。

───────────
作成 2008.04.30 
アップ 2008.05.12 
 

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★咲様へのリクエスト作品★
(藤堂ルル←メカオレンジ君)

結局、ブリタニアとの最終決戦と思われていた戦いは、『オレンジの寝返り』によって黒の騎士団側の勝利として幕を閉じた。
まともな戦いにすらならないその戦場では、ギルフォードですらどうする事も出来ずに、敗北を余儀なくされたのだ。

政庁の謁見の間に騎士団の幹部と捕虜待遇の総督コーネリアを筆頭としたブリタニア高官が一同に会する。
軍人はコーネリアとギルフォードがいるだけだった。
他の軍属含む軍人達は、武装解除された上で騎士団の団員達に見張られていた。
ちなみに余談だが、白兜のデヴァイサーだけは、危険だと言う事で雁字搦めに拘束されていた。
更に言えば、両手両足が自由な軍属含む軍人達と同じ場所に放り込まれているにも拘らず、誰も拘束を解こうと動く者はなかった。

「ゼロ。まず一つ答えろ。どうやって『オレンジ卿』を手懐けた?」
「姫様。その単語を口になされるのは‥‥」
「知らんな。オレンジ君が勝手にこちらについただけだろう?」
ゼロはコーネリアの問いを一蹴するが、「嘘だ、それは絶対嘘だ。何かしたんだ絶対!」とブリタニア側どころか騎士団幹部達も思っている。

『ゼロッ!大変だ。囲みを突破して「ジェレミア」がそっちに向かったッ!』
団員からの報告が唐突に謁見の間に響き、次の瞬間には轟音と共に壁が一面なくなっていた。

「ジェレミア・ゴットバルト。攻撃を中止しろ。停戦を命じる。動きを止めろ、ジェレミア卿」
ゼロの命令が飛び、ジェレミアが遅れて動きを止めたが、その時にはナイトメアモドキは謁見の間の中に侵入を果たしていた。
『殲滅が未完!条件が残留!止めるは不幸』
「敗北を認めると言って来ているのだ、殲滅の必要はなくなった。暫く大人しくしていろ。それと、それから降りておけ。わたしまで危険だろう?」
オレンジのわけのわからない言い分に、何故かゼロは平気で応じて指示を出している。
ゼロ以外、その最大の謎に首を傾げる者が続出する中、ハッチが開いてジェレミアが降りて来た。
姿を現したジェレミアの変わり果てたナリに、驚愕が室内に満ちる。
『デシタラ、排除が最大イイデシタ?』
「ダメだ。藤堂も騎士団の団員だという事を忘れるな。排除されてはわたしが困る」
それでも続く何故かエコーが効いたメカオレンジの言葉を、平然としたままのゼロは即座に却下してのける。
「って、また藤堂さんッ!?どうしてそう、藤堂さんが目の敵にされているんですか?」
突然入って来た藤堂の名前に、藤堂と四聖剣は特に驚いて、朝比奈が反射的に訊ねる。
「ゼロ、おれも知りたい」
藤堂も気になっていたのか、戦闘も終わった事だしと、訊ねてみた。
「それは‥‥だな。‥‥、話しても良いが‥‥オレンジ君は強いぞ?藤堂、身を護りきる自信はあるか?」
「「「「は?」」」」
ゼロの躊躇った末の言葉に、四聖剣は思わず揃って聞き返していた。
「つまり、これを言ったらオレンジ君の矛先は藤堂に固定されるだろうと予測できるのだが‥‥それでも聞きたいか?」
『貴方様はゼロ~~!!排除が最大!』
「あ、手遅れだったか。藤堂、全力で逃げろッ!オレンジ君がキレた。四聖剣、死ぬ気で藤堂を護れッ!」
「って止めてくれないんですかッゼロ!」
指示を飛ばすゼロに、仙波、卜部が藤堂の前に立ち塞がり、千葉はその場からジェレミアに向けて銃を構え、朝比奈はゼロに意見した。
「手遅れだと言っただろう。説得には時間がかかる。それまで逃げ切れ、藤堂。‥‥それから、コーネリア殿下」
開始された藤堂+四聖剣v.s.メカオレンジの攻防を他所に、ゼロはコーネリアに話しかける。
「‥‥‥‥なんだ?」
「ここは少々危険なようですから、暫く別室で待機しておいてくれませんか?」
「そうだな。バカげたとばっちりはゴメンだ」
「扇。お前達はブリタニア側の者を別室に。一応軟禁という扱いだ。丁重に扱えよ」
「わ、わかった。‥‥それより、あれ、どうにかしないのか?」
扇は頷いて、藤堂と四聖剣以外の幹部を振り返ってゼロに従うように促すと、チラと藤堂達を見て言う。
「‥‥平気だろう?一応、騎士団の団員には手を出さないようには言ってあるのだから、多少は鈍っているだろうし。行け、扇」
「あ、あぁ、わかった。その、‥‥健闘を祈る、ゼロ」
扇達騎士団の幹部がブリタニア高官を連行して謁見の間を去ると、ゼロは溜息を吐いて騒動を振り返った。
変わり果てたメカオレンジ君の繰り出す攻撃を、藤堂がかわし、四聖剣が受け流し、そらし、何とか防いでいるが、そう持ちそうもない。
ゼロは進み出ると藤堂の前に立った。
「これ以上の攻撃は認めないぞ、ジェレミア卿」
途端にピタリと止まるメカオレンジに、「全然時間かかってないじゃないか!」と朝比奈は疲れを覚える。
『邪魔が最大!排除が必須!』
「ダメだと言っているだろう!?」
『信頼が激怒!嫉妬が最大!排除が必須!』
「お前はッ‥‥。‥‥ではこうしよう、ジェレミア卿。藤堂を排除しないのならば、わたしの傍にいる事を認める。排除する気ならば即刻出て行け」
「って認めるんですかッ!?あんなに藤堂さんを目の敵にしているのにッ!?」
「突発的に中佐を狙わないとも限りません。傍に置くのは危険だ、ゼロッ!」
「‥‥藤堂。お前も反対か?」
朝比奈と千葉の言葉を聞いたゼロは藤堂にも尋ねてみた。
「‥‥‥‥ゼロ。彼は君のなんだ?」
何かを悟っているらしい藤堂は、頭から否定せずにゼロに問い返す。
「オレンジ君か?そうだな、昔の馴染み、だな。恐らく何かの拍子でわたしの素性に気付いたのだろう」
「そうか。‥‥という事はおれを狙っているのもその延長線上か?」
「‥‥そうなる、と思うが。どこでバレたんだ?」
首を傾げるゼロに、メカオレンジが声を上げた。
『信頼が激怒!労いが憤怒!雰囲気が!声音が!』
「そ、‥‥そうか。‥‥それで、オレンジ君。どうするんだ?」
『肯定なのデシタ!?‥‥‥‥居場所が幸せ!我慢が最大!』
「わかった。‥‥藤堂。時々、暴走するらしいが、何とか凌いでくれるか?」
「って、ゼロ!本気で傍に置くんですかッ!?」
「むッ、藤堂中佐に危険が及ぶようならば安全な場所に」
「仙波。おれは離れる気はない。決めるのはゼロだからそれは好きにすれば良いが、降りかかる火の粉は払うぞ?」
「当然だな。やられたりしたら、許さないからそのつもりで頑張れ、藤堂」
「わ、わかった。善処しよう」
ゼロの言葉に頷く藤堂を見ながら、千葉は「まさか中佐はゼロと付き合っているのか?」と思ったが、オレンジを警戒して口には出さなかった。



───────────
作成 2008.05.05 
アップ 2008.05.11 
 

★咲様へのリクエスト作品★
(藤堂ルル←メカオレンジ君)

『おはようございました』
目覚めたジェレミアは、バトレーが率いる研究者や軍人を振り払う。
ナイトメアにすら見えないのに何故か知っているマシンに乗り込みその場を飛び出して行った。

「祖界に攻め込むぞ」とゼロが言った時、誰もが無謀だと声をあげた。
いや、藤堂が黙っていた為、四聖剣も声をあげ損ねたが、内心は他と似たりよったりであった。

祖界の外苑部がそこに展開していたコーネリアの軍を巻き込んで崩壊するさまを、騎士団の団員もまた唖然として見ていた。

「‥‥ではこれより、作戦通り進撃する。右翼は朝比奈、左翼は仙波、中央本陣は藤堂と卜部に千葉。カレンは側面に。指揮は藤堂に任せる」
藤堂は『了解した』、四聖剣は『承知ッ!』、カレンは『任せてください、ゼロ!』とそれぞれ返事をして自分に割り当てられた部隊を率いて突入した。
「わたしはガウェインで先行して、コーネリアを抑える」
『ゼロ、無茶はするなよ?』
「わかっている。藤堂こそ、気をつけろ」
ゼロは藤堂と短い会話を交わした後、ガウェインで戦場の上空を駆ける。
しかし、ガウェインの前に立ちはだかる形で見慣れないマシンが割り込んできてC.C.はガウェインを停止させた。
『貴方様はゼロ~~!』
「その声は‥‥オレンジ君か。どうした?こんなところまでやってきて。それに、そのマシンはなんだ?とてもナイトメアには見えないぞ」
『ゼロッ!相手は未知だ。一旦下がれ』
「そうだな。本陣の手前を突っ切れ」
「無茶を言ってくれる」
割り込んで来た藤堂の言葉に、ゼロはあっさり同意し、見慣れぬオレンジの機体を置いてガウェインを急降下させた。
急に目の前から消え失せたゼロの乗る機体、ガウェインに、ジェレミアは一瞬呆然と何もなくなった空間を見詰めた。
『のおおおおおおおおおお』
オレンジの機体から叫び声が上がったかと思うと、その機体はずんぐりな外見からは想像出来ない程俊敏な動きでもって急降下を始めた。
「ガウェインを追ってる!!」と誰の目にも見えたのだが、実際には違っていた。
急降下の後、地面すれすれの戦場の鼻先を掠めたガウェインが急上昇に入ったのもお構い無しに、急降下しながら前方に向かって攻撃を仕掛けたのだ。
攻撃は唯、月下隊長機だけを狙っているようで、『卜部、千葉。隊を任せるッ』と言い置いた藤堂は月下を突出させた。
当然のように後を追う攻撃に、藤堂は内心で焦る。
『『攻撃相手が違う(だろ)!なんだって中佐が狙われるんだ!?』』
卜部と千葉は隊を任されたために、藤堂を追って突出するわけには行かず、訳がわからないままに叫んだ。
藤堂の月下隊長機は単独でブリタニア陣営を駆け巡り、その攻撃を避けながら、追ってくる攻撃を誤爆させていく。
「おい。何故藤堂が狙われているんだ?『オレンジ』と言ったのはお前だろう?」
「‥‥あー‥‥。考えられる事は、一つ、だけかな。‥‥あれは止めた方が良いと思うか?」
「そうだろう?流石の藤堂でもそういつまでも持たないんじゃないか?」
「だが、ブリタニアのナイトメアが確実に減っていっている。もう少し様子を見るわけには行かないかな?」
『って、ゼロッ!理由判ってて止められるんだったらさっさと止めてくださいッ!』
『その通り。このままでは藤堂中佐の身がッ!』
『『ゼロッ!!』』
四聖剣の抗議に、ゼロは溜息を吐くと、オレンジのマシンに呼びかけた。
「ジェレミア・ゴットバルト。‥‥それ以上、月下への攻撃を続けるようならば、わたしにも考えがある。今すぐ攻撃を中止しろ」
そう、それはただの呼びかけにしか過ぎず、「ゼロに恨みがあるオレンジが言う事聞いて攻撃やめるなんて思えないッ」と敵味方問わず思った。
だが、実際にはオレンジのマシンはピタリと攻撃をやめ、いや、動き自体すら止めたのだ。
藤堂は丁度ブリタニア陣営から離れたところだったので、これ幸いにと本陣の卜部と千葉の元へと戻る。
『何故!確保が絶対、空席が必須、排除がナイデシタ!』
戦場に響くオレンジの言葉、だがその意味は誰もが図りかねて首を傾げる。
「ならば‥‥。攻撃相手が違うだろ!そう思うのならば、まずはブリタニア軍を排除しろ。それ以前に月下に手を出すというのならば、わたしは」
しかしゼロは驚く事に理解したのか、嗾けるようにオレンジに対して一喝して言い募る。
『‥‥‥違いマシタカ!?デスガ、邪魔が最大デシタ。理解は不幸。ワタシガ最大』
「何故そんな無茶苦茶な文法になっているか知らないが、わたしと敵対したいというのならば遠慮はいらんぞ?オレンジ君。相手になってやるから向かって来い」
『ってッ、危険ですゼロッ!今の動き見た限りじゃかなり性能良いですよ!?もしかしたら白兜よりも上かも知れないのにッ』
カレンの声が飛び込んでくる。
それ以前に、「敵対したいも何も敵だろう?」と誰しもが思わないでもない。
「心配ない、カレン。‥‥ジェレミア・ゴットバルト。わたしに従いたいと言うのならばわたしのモノに手を出すな。そうすれば傘下に入る事を認めるぞ?」
『はぁ~あ?何、冗談言ってやがんだッ、ゼロ!オレンジはゼロの事憎んでるんだろッ!何だって傘下がどうとかって話になるんだよ、おい!』
「バカがッ」
ゼロのボソリとした呟きを認識したと同時に、オレンジの叫び声と、攻撃が同時におこなわれる。
『のおおおお。死ンデイタダケマスカ!?』
『どぅおぉおおわッ!!』
攻撃を受けて間一髪で避けた玉城はしかしナイトメアの腕を一本持って行かれる。
「ジェレミア・ゴットバルトを『オレンジ』と呼べばそうなる。今後は気をつける事だな。こればかりはわたしにもとめようがない」
さらっと言い切るゼロに、C.C.は呆れた溜息を吐いた。
「‥‥ゼロ。攻撃相手が違うだろ?こんなときくらい団員の玉城を庇ってやればどうだ?」
「そうか?自業自得の責任まで負えと?‥‥ジェレミア。わたしの気が変わらない内に、態度を決めた方が良いぞ」
ゼロは不思議そうにC.C.に応じておいて、オレンジに呼びかけた。
『ゼロ。まだそいつを味方に引き入れようとするのか?今騎士団を攻撃しただろう?』
「あれは玉城の失言だからな。‥‥ジェレミア。『オレンジ』と言った以外の団員に攻撃を仕掛けたならば、そこまでと思っていろよ」
『ゼロ。何故君はその単語を言っているのに攻撃されないんだ?』
「わたしだからだよ、藤堂。わたし以外が『オレンジ』と言えば、あーなるんだ。藤堂、特にお前は気をつけていろよ」
『へ?どうして藤堂さんが特にって言われないといけないんですか?』
朝比奈が目の前のナイトメアを破壊しながらも驚いた声を上げる。
「‥‥‥‥説明が面倒だ。戦いが終わって落ち着いたらその内話してやる。今はそう言うものだと覚えておけ」
「そうだな。お前達、今が戦闘中であり作戦行動中だという事を忘れていないか?ゼロ、お前もだが」
「そうなんだがな。ジェレミアをこのまま放置しておくわけにもいかないだろう?」
「ならばさっさとどうにかしろ」
「わかった。ジェレミア。即答を命じる。わたしに従い騎士団につくか、わたしと敵対するか。どちらかだ」
『貴方様はゼロ~~~!!認識を確認!対象が把握!標的が殲滅!』
オレンジが本当に即答すると、くるりとそのマシンが反転して即座にブリタニア軍に向かって突進していった。
そして誰もが唖然とする中で、ブリタニア軍に対する攻撃を始めたのだ。
『『『『攻撃相手が違うだろーーーー!!!!』』』』
ブリタニア軍将兵から、一斉に叫び声が上がり、逃げ惑う。
「あー‥‥、藤堂。とりあえず、とばっちりを喰わないように、精鋭以外は下げろ。‥‥意図して騎士団を狙う事はないと思うが‥‥」
『‥‥わかった。紅月は零番隊とゼロの傍に。四聖剣は壱番隊、弐番隊とおれに続け。残りは扇の指示に従って後方へ』
ゼロの要請に従った藤堂の指示に、それぞれが承諾の返事をして行動に移した。

後編に続く。

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作成 2008.04.30 
アップ 2008.05.10 
 

★武嗣彩人様へのリクエスト作品★
(藤堂とルルが付き合うに至るまで)

【ルルーシュ】
藤堂が、おれを好き?有り得ない。
いや、「ゼロ」をと言ったが、それはゼロがおれだと知らないからだ。
「誰だろうと」と言ったところで、それが「おれ」だと知ればそんな事も言っていられなくなるだろう。
「関係ない」と言っても、おれが何をして来たかを、何をしたかを知れば、離れて行くだろう。
なのに、これ以上、おれを「ゼロを好きだ」なんて言ってくれるな、藤堂。
罪悪感だと思った、だが、シャーリーに対して感じたものとは違う。
日を追うにつれて、藤堂に黙ったままでいる事が辛くなって行く、これはなんだ?
いっそのこと、ゼロがやった事を、洗い浚い言ってしまえば楽になるだろうか?とさえ思う。
藤堂や四聖剣のかつての同志だった、解放戦線に対して、ゼロが、おれがやった事。
河口湖のホテルジャック事件で草壁達を自殺に追いやり、止めもしなかったのだと。
ナリタでは解放戦線のアジトがあると、解放戦線にさえ被害が及ぶ事を知りながら、土砂崩れを起こしたのだと。
逃げる手引きを依頼してきた片瀬達を自爆に見せかけて船ごと爆破させたのだと。
告げるべきではないと理解しているのに、黙っているのが、何故、こんなにも苦しいのだろうか。

**********
立ちあがって背を向けるゼロに、藤堂は今を逃せば機会は最早訪れないのだと直感した。
だから藤堂も後を追うように立ち上がると、背を見せるゼロに近づいて後ろから抱き締めたのだ。
「なッ‥‥。離せッ!」
心底驚いたのか、ゼロは慌てて身を捩る。
「これ以上は何もしない。だが、君が消えてしまいそうに思えたんだ」
そう言う藤堂は、確かにゼロを抱きすくめる以上の事はしないので、ゼロは動きを止めた。
今ならばその手を伸ばして仮面を外す事すら容易だというのに、藤堂はそれをしようとしないのだ。
「‥‥何の真似だ、これは」
「おれは君におれの背負う荷の、その重さを軽くして貰った。今度はおれが君の荷の重さを軽くしてやりたいと思う。‥‥教えてくれないか?」
藤堂の言葉に、ビクンとゼロの身が跳ねる。
藤堂はそれについては何も言わず、唯ゼロが答えるのをじっと待っていた。
「‥‥‥‥騎士団は、確かに『正義の味方』だが、わたしはその手段を選ぶつもりはない、という事だ」
ゼロは、軽く息を吐いた後、そう答えた。
「そうだな。それはある程度正しいと、おれも思う。手段を選んで結果が得られなければ、意味はないだろう」
藤堂はゼロの意見に同意して頷き、「君は被害を最小限にしようと努力している。その上での選んだ手段なのだとしたらそれは正しいと思うぞ」と付け足した。
「‥‥バカなッ!何をしたかも聞かずに、それでは盲信にも程があるッ!」
「盲信ではない、ゼロ。‥‥『奇跡』ではないおれ自身を望んだのは、『奇跡』が起こらないと思っているからだろう?」
「‥‥そうだ。『奇跡』なんてそう簡単に起きてたまるか」
「『奇跡』を期待しない君は、最後まで目標に向かって、己の力の全力を用い、努力する事をやめないだろう。その姿勢も偽りか?」
「偽りであるものか。どんな手を使ってでも、わたしには創りたい世界がある!」
「ならばッ。おれはその結果を受け入れる。受け入れた上で、言うのだ。君が好きだと」
きっぱりと言い切った藤堂は、少しだけゼロを抱きしめる腕に力を込めた。
藤堂の言葉に、ゼロの、ルルーシュの中で何かが切れたと、ルルーシュは感じた。
「‥‥‥‥受け入れる‥‥だと?ナリタでの戦いの時、土砂崩れを起こしたのが、わたしだと言っても?解放戦線も麓の住民も巻き込んでッ」
「だが、その介入が有ったお陰で、あの時解放戦線は壊滅せずに済んだ。おれ達も間に合った」
藤堂は頷いて肯定し、「麓の住民には気の毒だったが、ブリタニア側が戦闘前に避難を徹底していれば回避出来た事だな」と続ける。
「片瀬を殺したのがわたしだと言ってもか?」
ゼロの告白に、藤堂は「泣きそうな声だ‥‥」と思った。
仇と思う前に、こんな声を出させるまで悩ませてしまった事を、藤堂はすまないと思ってしまったのだ。
「‥‥‥‥。そうか、それでおれを避け、怯えていたのか?ゼロ。おれが片瀬少将に殉じようとしていた事を知っていたから、許さないだろうと?」
「‥‥そうだ。わたしはお前が命を掛けていた相手を殺した。いや、何度あの場面を迎えようと、何度でも殺すだろう」
「すまない、ゼロ。あの時のおれには、君に既に見えていた事が見えていなかったのだ。だから君の手を煩わせてしまった‥‥」
藤堂の詫びの言葉とその内容に、ゼロは驚いて仮面の下で目を見開いた。
「どういう意味だそれは。見えていれば藤堂が片瀬を殺めていた、と?」
「違う。見えていれば、勇退を勧める事が出来ただろう。少将が咄嗟の時、最終的な判断が、既に出来なくなっていた事を、認めたくなかったのだ」
というよりは、解放戦線自体が数だけを頼みとして実際には弱体化していて、片瀬少将が問題視される事がなかったから気付かなかったと言うべきか。
黒の騎士団が現れて、初めて顕在化し、浮き彫りにされてきた問題だ。
初めに草壁の一派が暴走し、ナリタの件で一気に瓦解し、敗走する段階では既に解放戦線としての体裁も保ててはいなかったのだ。
その結果をゼロ一人の肩に背負わせてしまった事を、藤堂はすまなく思った。
「‥‥そう、か。‥‥だが、わたしに仮面を取る意思はないぞ?」
「構わない。おれは君が好きだ。‥‥愛しく思う、ゼロ」
「‥‥ぃ、言っておくが、わたしは愛してなどいないぞ、藤堂。‥‥真実を知ったお前が、わたしを憎む事になると怯えていたのは確かだが‥‥」
ゼロの言葉に、「憎まれたくないと思う相手」である事に気づいた藤堂は嬉しく思った。
「おれは君が好きで、嫌いになったりはしない。‥‥時々、こうして抱きしめても良いだろうか?ゼロ」
「‥‥藤堂、お前。本気でわたしが良いと言っているのか?仇なのだろう?得体まで知れないのだぞ?」
呆れ混じりのゼロの声に、藤堂は苦笑した。
「勿論だ。片瀬少将の事はもう気にするな。ゼロの目標の手前に、彼の目指すものも有った。だからもう良い」
ゼロは、ルルーシュは藤堂の言葉に、心の中に淀んでいた何かが拭われるのを感じた。
「‥‥良いだろう。時々だな?‥‥但し、座らないか?立ったままのこの姿勢は疲れるのだが。それとわたしは作業をしているからな」
「あぁ、ありがとう。ゼロ」
ゼロの了承に、藤堂は笑みを浮かべ、やっとゼロを離す。
「‥‥ところで、託けた書類は読んだのだろうな?藤堂」
「あ‥‥。すまない、忘れていた」
振り返ったゼロはテーブルに投げ出されたままの書類を見つけ、藤堂に確認すると、バツの悪そうな声音と表情で藤堂は詫びた。
「仕方がないな。ここで読んで行け、藤堂。質問が有るならば受ける。わたしもまだする事が残っているしな」
そう言ったゼロは、藤堂の横をすり抜けてソファに座り、少ししてからぽんぽんと隣を叩いて藤堂を招いた。
藤堂は「これからこんな穏やかな時間をたくさん作って行こう」と決めながら、ゼロに近づいて行った。

二人が正式なお付き合いを始めたのは、それから暫く後の事であった。



───────────
作成 2008.05.05 
アップ 2008.05.08 
 

★武嗣彩人様へのリクエスト作品★
(藤堂とルルが付き合うに至るまで)

「中佐。少しお話があるのですが‥‥」
千葉が藤堂に声を掛けたのは、藤堂が一人になった時だった。
「なんだ?」
腕を組んでずっと考え事をしていた藤堂は顔を上げて部下を見ると、そう短く先を促した。
「ゼロの事で」
千葉が切り出すと藤堂は眉間の皺を深くする。
そう、最近のゼロの態度、それもまた藤堂の悩みの種だったからだ。
初めは気付かなかったが、段々と顕著になっていくようで、このままではいずれ他の者も気付くだろうと言う程度になってきている。
「‥‥ゼロがどうした?」
とりあえず、話を聞こうと、そう尋ねる。
「‥‥中佐は、騎士団に合流してから、‥‥その、ゼロに何かしましたか?」
千葉が珍しく躊躇いがちに尋ねる言葉の意味を計り兼ねた藤堂は、「なにかとはなんだ?」と聞き返した。
「‥‥。『計り兼ねている』‥‥そのような感じだったゼロの視線に、『怯え』を感じるようになったものですから」
千葉の言葉に、藤堂は目を丸くして驚いた。
避けられている、とは思っていたが、まさか怯えられているとは思っていなかったからだ。
「避けられているのは気付いていたんだがな‥‥」
藤堂は自嘲気味な笑みを浮かべる。
初めは他の幹部と同じ接し方をしていたはずのゼロは、藤堂に対してだけ距離を置くようになった。
距離を置かれた当人だけしか気付かないくらい開いた空間に、藤堂は寂しいと感じていた。
だがまさか、怯えられていたとは思っていなかった藤堂は少し、いやかなりショックを受けた。
「中佐?」
千葉とて藤堂がゼロを怯えさせるような何かをしたとは思っていない。
だが、実際に怯えているとしか思えない視線を感じてしまっては、千葉も念の為に尋ねずにはいられなかったのだ。
「‥‥おれは何もしていない」
憮然とした表情で、藤堂は千葉に答えた。
大体、「自分を誘って引き入れた相手が自分を怯えているなんて思うはずがない」と藤堂は理不尽に思う。
沈んだ部屋に、ノックと同時に開いた扉から賑やかに顔を見せ、部屋の空気を入れ換えた朝比奈にタイミングが良いと言うべきか、千葉は迷った。
「返事を待ってから開けろといつも言っているだろうが、朝比奈。ノックの意味がないぞ、それだと」
しかし、だからと言って言うべき事を控えるつもりは千葉にはない。
「はーい。でですね、藤堂さん。これ、藤堂さんに渡してくれって預かりました。ゼロから」
千葉に対しては一言返事をするだけで、後は藤堂に向かって言いながら近付いた朝比奈は、持っていた書類を藤堂に差し出した。
藤堂は書類に視線を向けるも手を伸ばそうとはしない。
「朝比奈、どこでそれを?」
「え?‥‥っと、ゼロが月下のところに来たんですよ、藤堂さんはいるかーって。部屋だと答えたら渡しておいてくれと」
千葉が横から口を挟むのに、朝比奈は一瞬驚いてから千葉を見て、答える。
「それで、今ゼロは?」
「えぇ?えーと‥‥ラクシャータと話をしてて、扇さんとディートハルトが来たから、どちらかと話をしてるか、自室かな?」
朝比奈はそう答えてから、「あ、そう言えば、扇さんに次来る時の話をしてた気がするからもしかしたら表に出たかなぁ?」と付け足した。
藤堂は立ち上がると、千葉の方を向きながらも差し出しっ放しだった書類を朝比奈の手から取り上げ歩きだす。
「藤堂さん?」
「健闘は祈りますが、穏便に願います、中佐」
首を傾げる朝比奈の横で、千葉はそう言って藤堂を送り出した。

**********
ゼロの部屋にやって来た藤堂は暫く扉を見つめてからノックした。
『‥‥‥‥誰だ?』
部屋に戻ってきていたようで、中からゼロの誰何の声が聞こえて来た。
「おれだ、藤堂だ」
名前を言えば開けてくれないかも知れないと思いながらも、藤堂は応じて反応を待つ。
少ししてから、扉は開き、ゼロが姿を見せた。
「どうした、藤堂?珍しいな、お前がここに来るのは」
藤堂にはゼロが怯えているようには見えず、「千葉の気のせいか?」と思いながらもここまで来たのだしと問いに答える。
「少し、伝えたい事と聞きたい事が有ってやってきた。今、良いか?」
「‥‥あぁ。入れ」
ゼロは入口から下がって藤堂に入るように言い、藤堂はそれに従った。

ソファに向かい合って座った後、ゼロは「それで?」と藤堂に話を促した。
藤堂はじーっとゼロの仮面を正面から見つめている。
なかなか話そうとしない藤堂にゼロが再び促そうとした時、ようやっと藤堂は口を開いた。
「‥‥ゼロ。おれは君の事が好きらしい」
藤堂の言葉はそれはもう唐突だった。
「‥‥‥‥‥‥‥‥な、に?」
仮面の下で驚きに目を見開き、固まったゼロはなんとか聞き直す。
「‥‥おれはゼロが好きだ、と言ったのだ」
今度はキッパリと藤堂は断言した。
「‥‥本気か?いや、正気か?藤堂。素性の知れない仮面の男を相手に、何を言っているのか、わかっているか?」
ゼロは驚きかつ呆れた声音で更に聞く。
「おれは正気だし、本気だ。君がおれを避けていると感じた時、寂しいと、悲しいと思った。今、千葉に怯えられていると言われて辛いと思った」
「‥‥‥‥なッ」
「君を目の前にして、嬉しいと感じた。‥‥だが、確かに怯えているのだと知って‥‥今は辛い。おれの何が君を怯えさせている?」
切々と言って藤堂は「直せるのならば直す。だから教えてくれ、ゼロ‥‥」と願う。
「‥‥素性どころか、素顔さえ知らないというのに?これまで何をして、どう生きて来たのかも知らずに?」
ゼロはいつもの自信に満ちた声ではない、どこか揺らいだ声音で藤堂に尋ねたが、藤堂はそれを表現する言葉を持っていなかった。
「世の中には『一目惚れ』という言葉もある。それよりはマシだろう?君が好きだ、ゼロ」
苦笑して例を挙げた藤堂は、再び真面目な口調に戻って告白する。
「‥‥わたしの素性を知れば、そんな事を言っていられなくなるぞ。わたしが成した事を知れば、憎みすらするだろう」
ゼロは首を振って拒絶し、理由を告げた。
「関係ない。おれに、『奇跡』ではなく『おれ』を求めたのは君だった。そう、あの時から、君がおれの一番になっていたのだと思う」
諦めない藤堂のまっすぐな言葉にゼロは驚いた。
「助けに行った時、から‥‥だと?」
「そうだ。誰もが『奇跡の藤堂』としてしか、おれを見ようとしなかった中、君は『藤堂鏡志朗』を望んだ」
「‥‥‥‥それならば、四聖剣もそうなのではないのか?別に藤堂が『厳島の軌跡』を起こしたからではなく、それ以前から付き従っていたのだろう?」
「そうだな。だが、奴等は共に戦ったからな、『厳島』でも。それがどんなものだったのか、知っている」
「‥‥‥‥藤堂。話がそれだけならば、出て行って貰おう。これ以上言葉を重ねようがわたしの答えは変わらない」
ゼロはそう言い捨てるとソファから立ち上がった。

後編に続く。

───────────
作成 2008.04.30 
アップ 2008.05.07 
 

★武嗣彩人様へのリクエスト作品★
(藤堂とルルが付き合うに至るまで)

【仙波】
藤堂中佐をお救いし、黒の騎士団に正式に加入してから、幾つか気になる事が出来た。
ふとした拍子、ちょっとした瞬間に、藤堂中佐の意識が他所へ向けられる事がある。
お尋ねしても、「いや‥‥」とか「なんでもない」と言われるだけで、或いは中佐ご本人にも良くわかっていないのかもしれなかったが。
それとは別に時折感じる視線。
新参者を快く思うておらぬとか、そういった負の視線ではない。
視線の主を捜しても、わしには見つける事が出来なかったが。

【朝比奈】
藤堂さんの様子がおかしい。
表面上はいつも通りに見えたって、おれ達四聖剣の目はごまかせない。
視線?関係ないね、そんなもの。
藤堂さんに害意や敵意がないなら、おれは気にしないから。
それよりも今の問題は藤堂さんの事じゃないか。

【卜部】
中佐にだって、考える事の一つや二つ有るって事は、おれにだってわかるけどさ。
煮詰まった時くらいはおれ達四聖剣に相談してくれたって良いとおれは思うわけで。
視線ねぇ?
おれは気づかなかったな。
そんなに露骨だっていうなら、これからは少し気を配るか‥‥。

【千葉】
中佐の様子がおかしい事はわたしも気付いている。
そうだな、「心ここに在らず」と言うか、「物思いに耽る」と言うか、そのように見えたな。
今暫くは、黙って様子を見た方が良いと思うぞ、わたしは。
視線?あぁそれならば、ゼロだ。
中佐と我ら四聖剣とを計り兼ねているような、そんなふうに取れたので、放っているが。
仮面をしているのに何故わかるかだと?
‥‥視線には敏感なんだ、それを辿ったらゼロに行きついただけだ。

【藤堂】
黒の騎士団のリーダー、ゼロ。
桐原公により、身元を保証され、素顔を晒さぬ事を認められた者。
おれを救い出し、死を覚悟していたおれに「奇跡の責任を取れ!」と言い切った男。
「正夢にしてみせるがな」と笑う男に、かつては「奇跡」と言う名の夢を他人に見せたおれが夢を見た。
「この男の下でならば‥‥」そう思った時には、口元に笑みを浮かべて頷いていた。
実際、以前から凄い男だとは思っていたが、目の当たりにして更に感心した。
観察力と分析力に優れ、戦略にも長けている。
引き際も弁えていて指揮官としても申し分はない。
統率力も有り、一部反抗している者がいるが、団員が増えているだろうに、全体に混乱があるようには見えない。
反抗といっても、それも問題になるようなレベルではない事は見て取れた。
それなのに何故か気にかかった。
これほどの男が今まで表(?裏と言うべきか?この場合)舞台に出て来ず、身を隠していた訳が気になるのかも知れない。
これだけ多才ならばいずれかの分野で注目を集めていても不思議ではない。
なのに、それがないのだからゼロとなる前から目立たないように日々を送っていたと言う事だろう。
それはいずれ立つ気が有ったからなのか、それともずっと隠れているつもりだったのか。
「その辺りが気になるのかも知れないな」と、ふと思った。

【ゼロ】
「厳島の奇跡」、「奇跡の藤堂」藤堂鏡志朗。
絶対の忠誠を誓う四聖剣を従える男。
経験に裏打ちされた知略と戦略、戦術を有し、戦闘指揮官としても、一個の武人としても優れている。
追記としては、枢木スザクの師匠。
昔と全然変わっておらず、真面目で実直で義理堅く、主と定めていたという日本解放戦線の片瀬に殉じようとしていた男。
片瀬の死がわたしの手に因るものと知れば、黙ってはいないだろう。
扇が四聖剣の到着と藤堂の救出依頼を伝えて来た時、わたしは安堵すると同時に恐怖を覚えていた。
間に合った事に対する安堵と、直接対面する事への恐怖だ。
藤堂が片瀬の死の真相を知れば‥‥、そう思うと何故かすくんでしまう。
後悔はしていない。
あれは必要だったのだと理解しているし、真相など自分以外知る者がいないのだから、不審に思ったところで疑惑どまりなのだ。
それでも、死を選ぼうとした藤堂には、申し訳ないと思ってしまう。
「きれいごとでは世界は変わらない」と、捨てたはずの罪悪感からなのかもしれない。
ゼロを、「わたし」を「おれ」と結び付けられる数少ない人物でもある。
やはり、必要最小限の接触に留めた方が良いのだろうな。
そう結論付けたのは、それでも藤堂の力を認めているからで有り、抜けられると困ると思ったからだ。

【C.C.】
やれやれ、また何か考え込んでいるらしいな、あいつは。
ま、自分の事と恋愛事になると途端に鈍感になるあいつらしいと言えばそうなんだがな。
‥‥良いか、面白いから放っておこう。


**********
不意に翳ったかと思うと、頭を軽くぽんぽんと叩かれた。
「こぉら、ルルーシュ~?今寝てたでしょ~」
顔を上げると丸めた書類を片手に掲げて身を乗り出したミレイの姿。
「‥‥寝てませんよ、会長」
実際、ルルーシュは寝ていたわけではないので、無駄とは思いつつ反論を試みる。
「手が止まってた」
「だからっていつもいつもそうぽんぽんと叩かないでくださいよ」
「んー、それよりルルーシュ。ちょっと疲れてる?顔色悪いんじゃない?」
苦情を申し立てるも、ミレイはあっさりと話題を変え、どこか真剣な表情で尋ねてくる。
「そんな事ないですよ。ちょっと気になっている事はありますが、それだけですし、疲れてもいません」
なんて言ってみてから、ルルーシュは失敗を悟ったが、既に遅い。
「お?ルルちゃんのお悩み相談、この生徒会長直々に、応じてあげようではないか。さぁ言ってみなさい」
ミレイに勢い良く喰いつかれてしまって、ルルーシュは諦めの溜息を吐いた。
こうなると、納期の迫っている書類仕事もそっちのけで、面白い事や目新しい事に突進していくミレイを何とか宥める。
しかし、宥めきれるものではなく、「書類仕事を終わらせてから相談しますから」と言わされてしまったのだ。

そして、そんなイベントを黙って見過ごして帰るような殊勝なメンバーはこの生徒会にいるはずもなく。
軍の用事で泣く泣く後ろ髪引かれる感じ182%のスザクを見送った残る生徒会メンバーの視線がルルーシュに突き刺さったのだ。
「‥‥で?」
と尋ねたのはルルーシュだった。
「で?じゃないでしょ~?相談するのはルルちゃんなんだから」
ミレイが呆れた口調で返す。
ミレイのほかにはリヴァルとシャーリーとニーナ‥‥と、そこまでは判るのだが、カレンまでいるのは何故だろう。
まぁ、つまりスザク以外の全員がここに集まっている事になるのだが。
「と言われましても、会長。おれにだって良くわかっていないんですから」
ルルーシュはそう言って肩を竦めてみせた。
「珍しいな。ルルーシュが自分の事わからないなんて言うの(とある方面にとてつもなく鈍いけど、それは本人気付いてないしなぁ)」
「ねぇ。とりあえず『気になってる事』って言うの教えてくれる?わたし達になら判るかも知れないんだし」
リヴァルが心底珍しそうにルルーシュを見ると、シャーリーがそう言い、ニーナが同意するように頷いた。
「‥‥‥気に掛かる奴が、いるんだが」
「恋ッ!?‥‥そっか、ルルちゃんもお年頃だもんね~。それって誰?どんな人?」
ミレイが一人喰いついて、勝手に話を進めだし、興味津々な表情で「続き続き」とルルーシュに催促を始める。
ミレイの予測に、「まさかルルーシュが恋愛相談!?」と固まる他のメンバー。
「会長。どうしてそんな話になるんですか?」
ルルーシュは呆れつつも、額に手をやってあるはずのない頭痛をやり過ごした。
「違うの?じゃあどうして気になるのかなぁ?」
ミレイがまるで「あら残念」とでも言いたげな口調で、続きを促す。
「‥‥どちらかといえば、怖いもの見たさ?ですね、多分。恐れているのに、いえ、恐れているから情報を集めようとしている‥‥?」
ルルーシュは考えながらも曖昧に答える。
「あぁ、まぁルルーシュは、不安要素は徹底的に調べないと気がすまないからなぁ」
リヴァルがホッとした様子でうんうんと納得して頷く横で、ミレイはさっと顔色を変えて、ルルーシュに尋ねる。
「ルルーシュ。まさか、‥‥」
「違いますよ、会長。それに、実際にはそう怖い人でもないですし」
「おいおいルルーシュ~。なぁに会長と二人だけで話終わらせてるかなぁ?」
リヴァルが抗議し、シャーリーとニーナがうんうんと頷く。
「いや、まぁ、それはわたしの勘違いだったみたいだしぃ。‥‥で、どこの人?学内?」
「学外、ですよ。多分、‥‥誰も知らないと思いますよ」
ミレイの言葉を否定するルルーシュを見て、ミレイは視線をリヴァルに移す。
「リヴァル~?まぁた、ルルちゃんを外に連れ出してるのぉ?」
「無実!会長、おれ無実ですって。ルルーシュ、何とかしろよ~」
気の有る相手に非難の眼差しを向けられたリヴァルは元凶となった相手に助けを求めた。
「会長。誰も知らないと思いますと言ったばかりでしょう?リヴァルは関係ないですよ」
ルルーシュは「確かおれの相談だったはずじゃなかったか?」と思いながらも、取りなしを始めた。
カレンは「気に喰わないルルーシュの弱みでも握れればと思って残ったのに」と残った事を少し後悔した。

中編に続く。

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作成 2008.04.25 
アップ 2008.05.06 
 

★hidori様へのリクエスト作品★
(四聖剣とゼロ(又はルルーシュ)がメインの話)

「ゼロってぇ、藤堂さんの事、結構信頼してますよね?」
朝比奈の問いは唐突だった。
その場にいた他の四聖剣にしてからが、訝しげな視線を朝比奈に向ける。
それは尋ねられたゼロにしても同様だったが。
「いやぁ、今逃したら、こんな機会ないと思って。藤堂さんもいないし、おれ達四聖剣とゼロだけだし。だから丁度良いかなって」
朝比奈の明るい口調に、ゼロは溜息を吐いた。
「藤堂の戦略や戦術の知識は経験に基づいているし、頭も切れる。十分に信頼に値すると思うが?」
それでも答えるゼロに、仙波、卜部、千葉も「確かにこんな機会はないかもしれない」と話を聞く体勢をとる。
「ゼロはおれ達が合流する前から、藤堂さんの事知ってたりしました?」
朝比奈の質問はまだ終わらないらしいと、ゼロは手に持っていた書類をテーブルに戻した。
「『厳島の奇跡』はこの地ではあまりにも有名だからな。当時、ブリタニアに土をつけたと聞いて喝采を上げた程だ」
ゼロのその答えには、四聖剣は驚いた。
「当時、からですと?」
仙波が呆然と尋ねる。
「そうだが?わたしは昔からブリタニアが嫌いだったのでな」
ゼロは首を傾げてから頷き、「何をそんなに驚く?」と不思議そうに仙波を見た。
「筋金入りだな~。ゼロって、主義者って奴か?」
そんなゼロの様子に卜部が問うが、ゼロとしては一括りにされたくはないと言う思いもないではない。
「ブリタニアの政策だけではなく、ブリタニアという国の在り方そのものを憎んではいるが、な」
「‥‥‥。何故か、と聞くのもいけないことか?ゼロが何を思って黒の騎士団を率いているのか、それが判らないままでは不安が残る」
千葉が言葉を選びながら尋ねる。
「黒の騎士団を作ったのは、力が欲しかったからだ。一人でブリタニアを相手取るには、少々手間が掛かる。だから騎士団を作った」
ゼロのその言葉は「一人でもやってやれない事はない」と言っているようにも取れる。
「ふむ。つまり、わし等は駒か?」
仙波が冷静に尋ねる言葉に、ゼロは躊躇いもせずに頷いた。
駒という認識のされ方に、眉を顰めないでもない四聖剣だったが、それも束の間の事だった。
「そうだ。一応、指し手はわたしのつもりだが、‥‥そう、言わば賭チェスのようなものだな。負ければ指し手も諸共だ」
そう言って笑声を発するゼロに、「駒は駒でも捨て駒ではないのだ」と納得できたからだった。
「ゼロ。一つ忠告をしておくが、人は駒呼ばわりされる事をあまり好まぬ。少し言い回しに気をつけた方が良かろう」
仙波は真面目な口調で諭すように告げた。
「‥‥そうなのか?‥‥そうか。わたしの戦略の構想の基盤はチェスなのでな。‥‥そうか、気をつけよう」
ゼロは首を傾げ、まるで今始めて知ったとでもいうように、しきりに頷いている。
「真面目だよね、ゼロって」
そんなゼロを見て、朝比奈が評すると、三人は同意するように頷いた。
「当然だろう?人命が掛かっているんだぞ?それに指揮官たるもの、犠牲は最小に留めた上で、最大の効果を得なければならないのだからな」
ゼロは「真面目でなくてどうする?」と不思議そうである。
「なるほど。上に立つ者としては当然の気構えだな。仮面を被っているのに、人がついてくるわけがわかった気がする」
「犠牲は最小って、なら一つ改めた方が良いんじゃないかなぁ?」
千葉は納得し、朝比奈は首を傾げた。
「どこをだ?」
「君だよ、ゼロ。指揮官だからといって、毎回最前線に出る必要はないと思うけど?適材適所って言葉、知ってるよねー?当然」
朝比奈がゼロを指差して説明していると、千葉が横から「指を差すな、指を」と朝比奈の手を叩き落とした。
「しかし、トップが動かなければ、誰もついてこないだろう?」
「まぁ、そーなんだがな。ゼロはこれまでに十分実績を積んでる。少しくらい前線に出なくなったからといって、途端に誰も従わなくなるなんて事はないぞ?」
「卜部さんの言うとおり。だから、前線はおれ達に任せて、後方で指揮に専念すれば、もっと良い成果とか出ると思うんだけどな。ほら、白兜とか」
卜部や朝比奈の言う事もわかるのだが、ゼロは更に反論してみた。
「だが、藤堂も前線に出ながら指揮をしているだろう?」
「藤堂中佐は戦術レベルの指揮官。だが、ゼロは戦略レベルの指揮官、全体を把握しておく必要があり、一つの戦場に出る事がマイナスとなる場面もある」
「‥‥‥そうか。わたしはリーダーが動かなければ、誰もついて来ないと思っていたし、『行け』と言うより、『ついて来い』と言う方が好きなのでな」
「ゼロ‥‥。言いたい事はわかるし、同感だが、好き嫌いで選ぶのはどうかとも思う」
千葉が少し呆れながらも意見を述べた。
「だが、命じられる側も後方で踏ん反り返って『行け』と言われるよりも、先頭に立って『ついて来い』と言われる方が従いやすいだろう?」
「ま、まぁ、確かに前線に立った事すらない上官からただ『行け』と命じられるのは少々辛いのは確かだが‥‥」
「けど、ゼロは前線の事だってちゃんと理解してるからな。無謀で無意味な『行け』にはならないだろう?ならば従うさ、みんな」
仙波と卜部が唸りながら言ったのは、状況を検討していたからだろう。
「ゼロって軍隊にはいた事ないみたいなのに、良く分かってるんだね、そう言うところ」
朝比奈が感心したように言うと、ゼロは軽く溜息を吐いた。
「‥‥そうでもない。ゼロになってから兵法の書物を読みあさりはしたが付け焼刃なのは自覚している」
「待て、ゼロ。ゼロになってから?と言う事は、クロヴィスを暗殺してからなのか?兵法を学んだのは」
千葉が驚きの表情を隠しもしないで、ゼロに尋ねる。
「以前にも読んだ事は有ったが、随分と昔の話だったので、改めて読み直した。‥‥やはり問題だったか?」
ゼロは「そんなに驚く事だったか?」と思いながら質問に答え、仮面を傾けた。
「問題ないから驚いていると言うか‥‥。随分昔って?読み直したってどのくらい?」
朝比奈が呆然と首を振りながら答えた後、とりあえずの疑問点を尋ねてみた。
「そうだな。‥‥日本に来る前の話だからな。‥‥八年くらい前までか?読み直したのは、図書館で関連の書物を総浚いしただけだ」
「‥‥『総浚い』を『だけ』とは言わないと思うが」
ゼロのズレた感覚に、千葉は頭痛を覚えながらも一応の訂正を試みる。
「エリアのせいか、蔵書量が少なくてな。関連と言ったところで昔読んだ分の半分にもならなかった」
残念そうに言うゼロに、租界にあるブリタニアの図書館を思い浮かべた四聖剣の面々は首を傾げた。
「かなり大きな図書館だと思ってたんだが、‥‥本少ねぇのか?」
「そうだな、日本人が建物の外観で考えるよりは少ないだろう。ブリタニア人は無駄な空間を取るのが好きなようだ」
不必要に吹き抜けだったり、天井が高かったりする建物の構造を思い浮かべてゼロは答えた。
「確かにねー。そこまで大きくしなくてもーとか思うのって結構たくさんあるよね、あちこちにさ」
「この地は狭いのだから、極力無駄は省くべきだと言うのに、大半がブリタニアにいる時の感覚で物事を処理しようとしているからな」
そう言ったゼロの視線が、時計に向かい、四聖剣もつられるように時計を見た。
「もうこんな時間か。朝比奈、質問はもう良いか?そろそろ会議の準備を始めないと間に合わなくなる」
「あ、じゃあ後二つ」
と言う朝比奈に、ゼロは軽い溜息を吐いて、「それで?」と問う。
「おれ達の評価を聞いていいかな?ゼロがおれ達四聖剣をどう思っているのか」
「藤堂の部下。絶対に藤堂を裏切る事はしないだろうし、何が有っても藤堂に付き従う。騎士団にいるのは藤堂がいるから、だろう?」
ゼロが即答すると、朝比奈は少しだけ不満そうに「他には?」と尋ねる。
「‥‥流石に軍人だけ有って、藤堂共々、他のメンバーよりも戦闘力は高いし、一から十まで懇切丁寧に説明しなくて良い分楽だな」
促されてゼロはそう続けたが、それでも朝比奈は不満そうに「それで?」と続きをねだる。
「‥‥‥‥。続きを聞くか、二つ目を言うか、どちらが良い?」
数瞬黙ったゼロに逆にそう聞かれて、朝比奈は二つ目を口にした。
「また、時間くれる?それで、『おれ達と話をしませんか?』」
朝比奈の二つ目に、そう来るとは思っていなかったゼロは、くつくつと笑った。
「良いだろう。時間が有ればな。一つ目の続きもその時に言ってやる」
ゼロはそう言うと、書類に手を伸ばし、朝比奈は「やったぁ~」と喜んだ。
「では、わし等も準備をしに戻ります。行くぞ」
仙波が言い、ゼロが頷くと、四聖剣はそれぞれゼロに暇の挨拶をして、一旦部屋に戻る為にその場を後にした。

「おかしな奴等だな」
ゼロはそう呟くと、本格的に書類を読み始めた。

以来、団員達は時々、ゼロと四聖剣が語らう姿を目にする事になる。
藤堂は少し淋しく思いながらその様子を見、団員達はそんな藤堂に少し同情した。



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作成 2008.04.24 
アップ 2008.05.02 
 

★霧崎睦月様へのリクエスト作品★
(藤ルル/白主従糾弾)

「‥‥ところでスザク君。君達こそ何故ここにいるんだ?」
藤堂が、重い口調でスザクに問いかける。
「え‥‥っと。それはルルーシュとは友達だから」
「君は騎士になったのだろう?ブリタニア第三皇女の。とてもその自覚を持っているとは思えないが」
藤堂はチラとユーフェミアを見てから、厳しい声音のまま非難した。
その唐突な始まりに、ルルーシュまでもが驚いた。
目を見張って自分を見るルルーシュに藤堂は気付いたが、やめる気も抑える気もなかった。
何故なら、藤堂が思っていた以上に発揮されている、この目の前の二人のお気楽振りに呆れたからだ。
「そんな事ありませんわ。スザクは良くやってくれています」
自分が選んだ騎士を悪く言われてむっとしたのか、スザクがけなされて怒ったのか、ユーフェミアが反論する。
「良くやる‥‥というのが、お忍びと称して主を一人連れ出す事を差すのか?それならば一人で対処できない事もあると学んだ方が良いぞ、スザク君」
「そんな‥‥スザクはちゃんとわたしを守ってくれますわ」
「君もだ。第三皇女。『ただの』と言うが、どう足掻こうが皇族だろう?結果まで考えて行動する事を誰にも教わらなかったのか?」
藤堂の言葉に容赦は存在しなかった。
「わたくしとて考えています」
「ならば考えが足りないのだな。姉の第二皇女にでも周囲の補佐する大人達にでも尋ねれば、周囲を振り回して呆れられる事も少なくなるだろう」
藤堂の言葉に、「『なくなる』と言わないところが藤堂らしいな」とルルーシュは思う。
「なッ‥‥藤堂さん。ルルーシュ達の事はユフィ以外知らないんです。他の皇族や、軍人に相談なんてッ」
慌てて割って入るスザクに、藤堂は氷のように鋭い眼差しを向けた。
「お前達はッ!そこまで頭が回りながら、何故、その先を考えないのだ!?」
声を荒げて藤堂は二人を断罪するが、二人は戸惑いながら首を傾げるだけだった。
「皇族の行動は護衛という名の監視がつく。騎士になる者の周囲には調査の手が入る。何故それでこの場に現れるのだ!」
「‥‥ッだけど、ぼくはッ」
「騎士になったのならば、即座にルルーシュ君との繋がりを断つべきだったのだと言っている。それが嫌ならばそもそも君は騎士になるべきではなかったのだ」
「ですがッ!」
「中途半端に関わって、ルルーシュ君を苦しめるだけ苦しめて、その事にすら気付かない。何故お前達はルルーシュ君の気持ちを考えない!?」
藤堂の言葉に、ユーフェミアとスザクの視線がルルーシュに流れる。
「‥‥だ、だって。‥‥ルルーシュは『おめでとう』って、ぼくにそう言ってくれて‥‥」
スザクの眼差しは既に助けを求めるかのように揺れていて、ルルーシュは溜息を吐いた。
「めでたいんだろう?‥‥スザクにとっては。なら、友達としては祝福してやるべきなんだろう?‥‥『君は喜んでくれる?』って目で見られたらな」
ルルーシュはそう応じて、最近の習い性になっている笑みを浮かべた。
「‥‥ルルーシュ君。『無理に笑う必要はない』と言ったはずだ。‥‥いつもそんな表情で笑っていたのか?君は」
痛ましそうに、藤堂はルルーシュの作った笑みを浮かべる頬に手を滑らせ、ルルーシュの表情から不自然な笑みが消えた。
藤堂が「そんな」という笑みが、どんな表情を差すのかわからず、ルルーシュは藤堂の手を振り払うでもなく首を傾げた。
「ルルーシュ。わたくしが貴方を苦しめていたというのは本当なのですか?わたくしは貴方やナナリーが安心して暮らせる場所を」
ユーフェミアの更に続くだろう言葉を、ルルーシュは聞きたくなくて「ユフィ」と名前を呼ぶ事で遮った。
「君は勘違いをしているぞ、第三皇女。政事に私情を挟んではいけないと、言われた事はないか?公私の区別は必要だ」
続けたのは藤堂だった。
「むッ。‥‥わたくしとてそのくらいの事は知っています」
「とてもそうは思えない。ルルーシュ君達の為に『特区』を作る?『日本人の為』と謳っておきながら!それの何処が公私混同ではないというのだ!?」
段々とヒートアップする藤堂を、ルルーシュが止めた。
「藤堂さん。そこまでで良いです。一度にそれ以上言っても、二人には整理できないでしょうから」
ルルーシュの視線の先では、愕然とした表情で項垂れる二人がいる。
「ユフィ。スザク。今日はもう帰れ。話ができる状態でもなさそうだし」
「‥‥今のうちに言っておくが、改善が見られないようならば、何度でも言うぞ?」
藤堂の言葉はどう聞いても、「来るなら来い。返り討ちにしてやる」にしか聞こえない。
「あ、‥‥あの、さ。る、ルルーシュ。‥‥藤堂さんは、ま、また来る、のかぃ?」
藤堂のいない時を見計らおうとでも思ったのか、スザクは上滑りする思考で尋ねる。
「‥‥それを聞いてどうする?スザク君。今度は軍人として、ここまで捕まえに来るのか?」
「違いますッ」
藤堂の言葉を慌てて否定するが、藤堂の言った事の方が軍人としては正しいのだと、スザクは考えつかないらしい。
ルルーシュは溜息を吐き、藤堂も遅れて溜息を零す。
「咲世子さん。帰るそうだから、二人を玄関まで送ってください」
ルルーシュの言葉に、二人はもう言葉もなく立ち上がった。
なんだか、色々と言われすぎて、頭が真っ白になって、「一体今日は何をしに来たんだろう?」なんて二人は考える。
咲世子が開いた扉に向かう途中で、チラとルルーシュを振り返ったユーフェミアとスザクは、振り返った事を後悔した。
とうとう尋ねる事が出来なかった問い、「ルルーシュと藤堂さんの関係って‥‥?」の答えがそこにあったからだ。
藤堂は先程までの刺々しい雰囲気を払拭してルルーシュを優しく抱きしめ、ルルーシュも安らいだ状態で身を預けていた。
「さぁ、まいりましょう。お二方。これ以上ここにいては馬に蹴られてしまいますわ」
咲世子が二人の耳元で、こっそりと囁くその声の調子とその笑顔に、逆らってはいけないと思った二人は、静かに廊下に出て、扉が閉まるのを見た。

「ルルーシュ。‥‥筋書きを無視してしまって、すまなかったな」
ユーフェミアとスザクがいなくなってやっと落ち着いた藤堂は、カッとなっていた自覚があるだけにルルーシュに謝った。
「いや。初めから加わっていてくれたお陰で、色々すっ飛ばせたから、却って良かった」
ルルーシュは首を振って応じてから、藤堂の胸に顔を埋めた。
「‥‥どうした?やはり、堪えたか?」
心配して尋ねながら、藤堂は優しくルルーシュの髪を梳く。
「違う‥‥。こうしていると落ち着いて‥‥暫くこのままでいて良いか?」
すっかり安心しきった様子で言うルルーシュに、藤堂はルルーシュに見えないのを良い事に顔を顰めながらも頷いた。
「あぁ。なんなら暫くと言わず、今日はずっとこうしていても良いぞ?」
藤堂は「これでこの先もずっと安心されていると、おれの抑えが利かなくなるが」と言う考えは、慎重に押さえ込んだ。
こんな時くらい、いつも以上に優しくしようと藤堂は思うのだ。
許可を得て顔を上げるルルーシュに、藤堂は即座に渋面を解く。
ルルーシュは心の底からの嬉しそうな笑みを藤堂に見せると、再びその胸に顔を埋めたのだった。

一方、政庁に戻ったユーフェミアとスザクは、コーネリアとダールトン、ギルフォードからきついお叱りの言葉を頂いて、更なるダメージを受けていた。



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作成 2008.04.23 
アップ 2008.04.30 
 

★霧崎睦月様へのリクエスト作品★
(藤ルル/白主従糾弾)

夕刻、チャイムがなったので咲世子は玄関に出る。
扉を開けた先にいたのは、ユーフェミアとスザクで、どちらも私服‥‥というか一般人のような服装である。
「やあ、咲世子さん。ルルーシュ、いるかな?」
笑ってそういうスザクに、咲世子はチラとユーフェミアに視線を向けてから、尋ねる。
「いらっしゃいませ、スザクさん。今日は軍人としていらっしゃったのですか?それとも騎士として?」
本来ここで、スザクは「騎士として」と応えなければならないのだ、隣に主たるユーフェミアがいるのだから、尚の事。
それ以外が答えられた場合、主は騎士を糾弾出来るのだが、恐らくユーフェミアはそれすら知らないのだろう、そしてスザクも。
「ルルーシュの友人、としてだよ?軍は休みなんだ。ユーフェミア様も休みが取れたし」
公人だろうが私人だろうが主は主だし、騎士は騎士なのだが、それすらユーフェミアもスザクもわかっていないのだ。
「わたくしも、ただのユフィとして参りました。ルルーシュはいるでしょうか?」
スザクの言葉に、ユーフェミアも頷いて応じたが、これもまたおかしな話である。
皇族は生まれを指すのだから仕事が休みだろうが皇族のはずである、それを返上するか廃嫡されるまでは。
この二人はどう思っているのか、と咲世子は心底不思議に思う。
もしも咲世子ではなく、別の人が取次ぎに出ていれば、ユフィの言葉はルルーシュを詮索させるだけのものを有しているのだ。
だが、咲世子は「ただのユフィ」と「ルルーシュの友人スザク」を通す。
咲世子はルルーシュに頼まれていた事、「言質を確かに頂戴いたしました」と胸のうちで呟いた事に、当然ながら二人は気付いていなかった。

ユーフェミアとスザクが通されてくる事になっている部屋で、ルルーシュは少し緊張しながらソファに座っていた。
藤堂はそんなルルーシュを見かねて隣に腰掛け肩を抱いた。
初めは部屋の隅にいる予定だったのだが、予定は未定、繰り上げても問題なかろうと藤堂は考えたのだ。
「藤堂‥‥。すまない」
ルルーシュはそう言って藤堂にもたれかかる。
「謝る必要はない。おれは頼られて嬉しいと思っている。‥‥このまま二人きりならもっと嬉しいんだがな」
「‥‥そう、だな」
藤堂がルルーシュに笑みを向けると、ルルーシュもまた、同意してぎこちないながらも笑みを見せた。
緩やかで穏やかなそんな時間は、咲世子のノックが聞こえるまで続いていた。

その部屋に通されたスザクは、視線を巡らせた後、ピキリと固まった。
スザクに続いて部屋に入ったユーフェミアもまた、それを目撃するなり絶句して目が離せなくなった。
咲世子は気にする事無く、部屋に入ると扉を閉めて、既に用意してあるお茶のセットの傍にいき、準備を始める。
目を離すとどうなるか不安だったので、咲世子は事前に準備して持ち込んでいたのだ。
スザクとユーフェミアが見たもの、それは、藤堂(ユーフェミアは見知らぬ男と認識した)の肩にもたれて眠るルルーシュの安らいだ姿だった。

「‥‥なッ!なんで、藤堂さんが、ここに‥‥ッ!」
我に返ったスザクが発した声はあまりにも大きかった。
「スザク君。眠っているのが見えないのか?気遣って声を落とす事も考え付かないとは‥‥」
藤堂はスザクの問いに答えずに、非難がましく苦情を述べる。
だが、スザクの声はルルーシュが目覚めるには十分で、ルルーシュにとってはなんとも不快な目覚めとなった。
警戒も露わに上体を起こすと、ルルーシュは室内を見渡し、ユーフェミア、スザク、咲世子、藤堂の順に視界に入れてから、警戒を解いて座りなおした。
「来ていたのか‥‥。転寝していたようだ。話があるんだろう?座れば良い」
ルルーシュは藤堂の事にはふれずに、二人にソファを勧めた。
「ルルーシュ様。お休みだったとは気付かず、申し訳ございませんでした。ご友人のスザクさんとユフィさんがお越しですわ」
と、咲世子が言質を取った事を知らせる為に、遅ればせながらそんな報告をしながら、お茶をテーブルに置いて行く。
だが、スザクもユーフェミアも藤堂が気になって動かない。
「る、‥‥るるーしゅ?どうして、と、藤堂さんがここに?」
動揺したまま、スザクが尋ねる。
ルルーシュはスザクを見上げ、瞬いて首を傾げた。
「いけないのか?スザクも昔は世話になっているだろう?」
「どなたですの?ルルーシュ」
やっと我に返ったユーフェミアが尋ねる。
「藤堂鏡志朗。以前はスザクの師匠だった男だ。‥‥そうだな、ユフィには『厳島の奇跡』と言った方がわかりやすいか?」
このエリア11ではあまりにも有名なそのフレーズを、だがユーフェミアは知らない様子で首を傾げていた。
それが意味するところは、このエリアの事を何も学んでこなかったという事だ。
「い、いけないのかって。だって藤堂さんは黒の騎士団の人間なんだよ!?知らないわけじゃないだろ、ルルーシュだって」
スザクはルルーシュと藤堂の落ち着きぶりに憤って叫んだが、ユーフェミアはルルーシュがゼロである事を知っているので却って納得した。
「スザク、座りましょう。今日は話をしに来たのですよ」
ユーフェミアはスザクを注意すると、ルルーシュの向かいのソファに腰かけた。
スザクもまた藤堂を気にしながらも、ユーフェミアの隣に座る。
「る、ルルーシュ?学園の警備って厳しいんだろ?部外者の藤堂さんをどうやって入れたの?」
スザクが驚くのは、「だって藤堂さんって顔も知られているし、手配だってされてるだろうし、見つかるとやばいだろ?」と思ったからだ。
「何言ってるんだ?スザク。お前だってユフィを連れて来ているじゃないか。ユフィだって学園関係者じゃないんだし、同じ事だろう?」
ルルーシュはとりあわず、首を傾げてスザクを見る。
「え?だけど、ユフィは皇族だし」
「今は唯のユフィなんだろ?その唯のユフィを通しているんだ。唯の藤堂さんを通したって別におかしくはないだろう?」
混乱するスザクにルルーシュは笑って「藤堂さんも今日は騎士団が休みなんだ」と言った。
勿論ルルーシュ自身はおかしい事を承知でそう言っているのだが。
「‥‥休み?」
「なんだ、スザク。お前だって軍、休んでるんだろ?騎士団にだって休みが有っても不思議じゃないよ。年中無休でテロしてるわけじゃないんだし」
「けど‥‥手配書が回っているんだし‥‥」
「一度でもテロリストに手を貸したら、それ以後どんな状況でも犯罪者‥‥か?」
「う、うん。そうだよ、ルルーシュ」
「スザク。そこまで言ってしまっては誰も改心する事が出来なくなりますわ」
ユーフェミアの言葉に、スザクは「そうかなぁ?」と思いながらも曖昧に頷いた。

後編に続く。

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作成 2008.04.23 
アップ 2008.04.29 
 

★霧崎睦月様へのリクエスト作品★
(藤ルル/白主従糾弾)

月下の整備をしていると、ゼロがやって来るのに気付いて、藤堂は手を止めた。
遠目にも様子がおかしい事がわかったからだ。
近くまでやってきて足を止めたゼロに、藤堂は尋ねた。
「ゼロ、何か有ったのか?」
ゼロが来るなりの藤堂の言葉に、傍にいた四聖剣は驚いてゼロを見るが、普段通りだろうと首を傾げる。
「‥‥整備が終わってからで良いのだが、‥‥少し相談したい事がある。時間を作って欲しい」
ゼロの言葉に、藤堂は微かに顔を顰め、今後の予定を思い浮かべてから頷いた。
「わかった。一時間後、部屋にお邪魔する」
「おれとの予定があるのにッ!」とでも声を上げそうになっていた朝比奈の口は卜部が抑えて封じていて、藤堂は表に出さずに卜部を褒めた。

藤堂は時間通りにゼロの私室を訪れ、ゼロは即座に室内に通した。
勧められるままにソファに座って、藤堂は「それで?」と用件を尋ねた。
ゼロは仮面を外してルルーシュとなり、向かいのソファに座って、暫くしてから切り出した。
「‥‥‥。藤堂、お前の手を借りたい事があるんだが‥‥」
ルルーシュの言葉に藤堂は表情に出さずに驚く。
ルルーシュは、これまで気を張って生きてきて、誰かに頼るという事自体に慣れておらず、藤堂にすら頼る事があまりない。
有能だから誰かに頼らずとも大抵の事は難なくこなしてしまい、頼らなくてもなんとかなるのも要因の一つだったりする。
そんなルルーシュがわざわざ藤堂を呼びに来てまで手を借りたいと言った事に驚いたのだ。
「おれに出来る事ならば何でもしよう」
一体どんな難題にぶつかっているのかと、藤堂は眉間の皺を深くしてルルーシュを見た。
「‥‥実は、明日の夕方にクラブハウスに客が来るのだが‥‥」
ルルーシュは言い難そうに、そう説明を始める。
「ミレイに頼んで、ナナリーに明日はミレイの本宅に泊まるように言ってあって、それについては問題ないのだが‥‥」
藤堂は「最愛の妹を遠ざける程の客とは」と危険を感じ、「その客人は一体何者だ?」とルルーシュに尋ねた。
「‥‥『ゆっくり話がしたい』、『明日の夕方から少し纏まった時間が取れる』、『話をしよう』、『遊びに行く』‥‥。ろくに返事も出来なかったよ」
そう言って苦笑するルルーシュに、藤堂は「やはり、か」と思う。
「‥‥ユーフェミア皇女とスザク君、なんだな?」
確認の為に尋ねる藤堂に、ルルーシュは力なく頷いた。
「一人では、最後まで笑っていられる自信がない。第一笑っていられる話でもないだろう。昔話もあるかも知れないが、『特区』の件がメインだろうからな」
「無理に笑う必要はない。妹君もいないのならば、尚更だ。そうすれば、少しは二人も身に沁みるかも知れない」
「沁みないさ。その場限り、表面を通り過ぎるだけだ。留まりさえしない。その時だけ悲しそうな表情を作るだけで、変わりはしない」
藤堂のある意味希望的観測を、ルルーシュは一蹴してのけた。
言われてみれば確かに、と藤堂はルルーシュの言葉を認める。
身に沁みるのならば、これまでの間に、言動になんらかの変化が有ってしかるべきだったのだから。
「だから、藤堂。二人が来る時に、同席していて欲しい」
そう続いたルルーシュの言葉に、しかし藤堂は目を見開いた。
「‥‥おれが、黒の騎士団に所属している事は、知られている。君も関わりがあると知れてしまうぞ?」
藤堂も同席してルルーシュを守りたいと思ったが、その前に懸念事項について尋ねる。
「ユフィはゼロの正体を知っている。だからこそ公衆の面前でゼロに呼びかけた。『ルルーシュならば応じるだろう』と安易に信じ込み、おれに確認すらせずに」
「同席しよう。いつどうやって行けば良い?」
ルルーシュの返答に、藤堂はあっさり前言を翻して即座に応じた。

藤堂は四聖剣に「出かけてくる。何もなければ戻るのは二日後だ。後は頼む」と言ってアジトを出てきた。
突然の事に、四聖剣の面々は驚いたり、単独行動を心配したりと忙しかったが、藤堂は何とか四人を宥めた。
ゼロは出てくる前に扇に「表が少し忙しいので数日来れない。特区は会場の工事等で日は有るから、戻ってから話をしよう。後は任せた」と言っておいた。
藤堂は外でゼロの衣装ではなくなったルルーシュと合流し、地下の秘密の回廊を通ってクラブハウスまで人に見られる事無く移動した。

「ごめんね~、ナナちゃん。無理言っちゃってぇ~」
苦笑を浮かべて明るい声で平謝りするミレイにナナリーは優しく微笑む。
「良いんです、ミレイさん。じゃあ、咲世子さん。お兄様をよろしくお願いしますね」
「お任せください、ナナリー様」
朝早く、迎えに来たミレイが短いやり取りの後、ナナリーの車椅子を押してクラブハウスを出て行った。
「‥‥宜しかったのですか?ルルーシュ様」
「あぁ、構わない。今日は少し難しい話になるかも知れなくてね。ナナリーには後で謝っておくよ」
ミレイとナナリーの姿が見えなくなってから、咲世子が憂い顔で尋ねると、ルルーシュは苦笑して頷く。
「そうですか。‥‥本当にそうなさってくださいね、ルルーシュ様」
咲世子にとってはいつも世話をしている分、ナナリー至上なので、ついルルーシュに対しても咎める色合いが声音に混じってしまうのだ。
「うん。勿論だよ、咲世子さん。ところで、今日の件、宜しく頼むね」
「心得ております。わたくしと致しましても、皇族や軍の方をお招きしたいとは思いませんし‥‥。お任せくださいませ、ルルーシュ様」
咲世子はそう請け負って頭を下げたのだった。

中編に続く。

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作成 2008.04.23 
アップ 2008.04.28 
 

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